17 / 48
17
しおりを挟む
ピンポーン
2回目の日曜日が来た。玄関のベルが1時きっかりに鳴る。柊里が出迎えに行った。
蓮は手作りのオムライスをテーブルに並べた。桜華学園は卒業と同時にお嫁入りする生徒が多いので家庭科の授業が多い。蓮も一通りの料理はできるように仕込まれていた。
今日はおうちデートなので如月夫妻と相談し手持ちの服でコーディネートした。在宅の仕事なので部屋着の着心地はこだわりがあり、お気に入りのブランドをネットで定期的に購入していたのでいくつか手持ちがあった。スカイプで相談し、Vネックの少しゆったりとしたTシャツに七分丈のレギンスになった。瞬に言わせると首、手首、足首を全て見せているのがいいらしい。
昼食を作る予定と言ったら、エプロンは付けたままでと注文が入った。フリル付きがいいと言われたが持ってないので、比較的新しいギンガムチェックのエプロンにした。
優斗は白いTシャツに淡いグレーのサマージャケットを羽織っていた。前回のスーツより少しくだけた感じ。髪もワックスで固めておらず、サラサラしていた。
(カッコ良すぎ)
何回も思い返しているうちにどんどん美化しているのではと思うほど空想の優斗はカッコ良かったのに、本物の破壊力は半端なかった。
「蓮君……」
優斗が呆然として蓮を見つめる。
(あれ? 何か変かな?)
蓮は慌てる。
くすっと柊里は笑い、「どうぞ」と優斗を誘導した。
「今日は蓮が昼ご飯作ったんですよ」
3人でテーブルに付く。
「いただきます」
優斗が食べるのをはらはらして見守る。
「上手い」
柊里も「美味しいよ」と言ってくれて蓮も安心して食べ始める。卵の半熟具合が難しいけど得意で、桜華時代もみんなに振る舞って喜ばれていた。
昼食を終え、優斗のお土産のゼリーと食後のコーヒーを飲みながら柊里の取材が開始された。
「私は北海道の利尻島で生まれました。両親は漁業をしております。ベータの夫婦です。弟もいますがベータです。人口の少ない島なのでアルファやオメガは滅多にいません。私がアルファと判明した時は島中のみんながびっくりして見に来ました。両親もびっくりしたようですが『アルファっていっても優秀ってだけで困らないんでしょ。ラッキーだよね。自分達の大切な子供ということは変わらないよね』と特別扱いせず普通に育ちました。小学校に入学すると、あっという間に6年分の勉強が済んでしまいました。やることがないので先生の補助をして上級生に勉強を教えたりしてました。担任の先生が、このままでは私のためにならないのではないかと心配して、札幌にアルファの子が行く中高一貫校があると調べてくれました。父も母も中卒で漁業をやっているので、あまり教育に関心がなかったのですが、担任の先生の熱意にほだされて、私を札幌に進学させてくれました」
優斗はスマホの家族写真を見せてくれた。お父さんとお母さんは同い年で18歳で結婚し優斗が生まれた。弟は蓮と同じ18歳。稚内の高校を卒業し漁業に従事している。こちらは優斗と雰囲気が違うワイルドなイケメン。
利尻の海の写真も見せてくれた。
「ウニが美味しいんだよね。海で取って割って海水で洗って食べるの。お付き合いを公にできるようになったら蓮君と桐生先生もご招待したいです」
柊里は弟の写真をじっくり眺めた。
「沢渡君もいいけど弟さんもいいね。この土地もいい。三島由紀夫の『潮騒』読んだことある? 弟さんと利尻島モデルにオマージュ作品書きたいなあ」
優斗の北海道エピソードを聞きながらスマホの写真を色々見せてもらった。1時間たったら「はい、終了」と柊里はメモを片付けてしまった。
「俺は自室で仕事するから。5時までね」
2人切りになった。
2回目の日曜日が来た。玄関のベルが1時きっかりに鳴る。柊里が出迎えに行った。
蓮は手作りのオムライスをテーブルに並べた。桜華学園は卒業と同時にお嫁入りする生徒が多いので家庭科の授業が多い。蓮も一通りの料理はできるように仕込まれていた。
今日はおうちデートなので如月夫妻と相談し手持ちの服でコーディネートした。在宅の仕事なので部屋着の着心地はこだわりがあり、お気に入りのブランドをネットで定期的に購入していたのでいくつか手持ちがあった。スカイプで相談し、Vネックの少しゆったりとしたTシャツに七分丈のレギンスになった。瞬に言わせると首、手首、足首を全て見せているのがいいらしい。
昼食を作る予定と言ったら、エプロンは付けたままでと注文が入った。フリル付きがいいと言われたが持ってないので、比較的新しいギンガムチェックのエプロンにした。
優斗は白いTシャツに淡いグレーのサマージャケットを羽織っていた。前回のスーツより少しくだけた感じ。髪もワックスで固めておらず、サラサラしていた。
(カッコ良すぎ)
何回も思い返しているうちにどんどん美化しているのではと思うほど空想の優斗はカッコ良かったのに、本物の破壊力は半端なかった。
「蓮君……」
優斗が呆然として蓮を見つめる。
(あれ? 何か変かな?)
蓮は慌てる。
くすっと柊里は笑い、「どうぞ」と優斗を誘導した。
「今日は蓮が昼ご飯作ったんですよ」
3人でテーブルに付く。
「いただきます」
優斗が食べるのをはらはらして見守る。
「上手い」
柊里も「美味しいよ」と言ってくれて蓮も安心して食べ始める。卵の半熟具合が難しいけど得意で、桜華時代もみんなに振る舞って喜ばれていた。
昼食を終え、優斗のお土産のゼリーと食後のコーヒーを飲みながら柊里の取材が開始された。
「私は北海道の利尻島で生まれました。両親は漁業をしております。ベータの夫婦です。弟もいますがベータです。人口の少ない島なのでアルファやオメガは滅多にいません。私がアルファと判明した時は島中のみんながびっくりして見に来ました。両親もびっくりしたようですが『アルファっていっても優秀ってだけで困らないんでしょ。ラッキーだよね。自分達の大切な子供ということは変わらないよね』と特別扱いせず普通に育ちました。小学校に入学すると、あっという間に6年分の勉強が済んでしまいました。やることがないので先生の補助をして上級生に勉強を教えたりしてました。担任の先生が、このままでは私のためにならないのではないかと心配して、札幌にアルファの子が行く中高一貫校があると調べてくれました。父も母も中卒で漁業をやっているので、あまり教育に関心がなかったのですが、担任の先生の熱意にほだされて、私を札幌に進学させてくれました」
優斗はスマホの家族写真を見せてくれた。お父さんとお母さんは同い年で18歳で結婚し優斗が生まれた。弟は蓮と同じ18歳。稚内の高校を卒業し漁業に従事している。こちらは優斗と雰囲気が違うワイルドなイケメン。
利尻の海の写真も見せてくれた。
「ウニが美味しいんだよね。海で取って割って海水で洗って食べるの。お付き合いを公にできるようになったら蓮君と桐生先生もご招待したいです」
柊里は弟の写真をじっくり眺めた。
「沢渡君もいいけど弟さんもいいね。この土地もいい。三島由紀夫の『潮騒』読んだことある? 弟さんと利尻島モデルにオマージュ作品書きたいなあ」
優斗の北海道エピソードを聞きながらスマホの写真を色々見せてもらった。1時間たったら「はい、終了」と柊里はメモを片付けてしまった。
「俺は自室で仕事するから。5時までね」
2人切りになった。
10
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~
液体猫(299)
BL
毎日AM2:10分に予約投稿。
【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸にクリスがひたすら愛され、大好きな兄と暮らす】
アルバディア王国の第五皇子クリスは冤罪によって処刑されてしまう。
次に目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。
巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。
かわいい末っ子が過保護な兄たちに可愛がられ、溺愛されていく。
やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな気持ちで新たな人生を謳歌する、コミカル&シリアスなハッピーエンド確定物語。
主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ
⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌
⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
【完結】王のための花は獣人騎士に初恋を捧ぐ
トオノ ホカゲ
BL
田舎の貧村で暮らすリオンは、幼い頃からオメガであることを理由に虐げられてきた。唯一の肉親である母親を三か月前に病気で亡くし、途方に暮れていたところを、突然現れたノルツブルク王国の獣人の騎士・クレイドに助けられる。クレイドは王・オースティンの命令でリオンを迎えに来たという。そのままクレイドに連れられノルツブルク王国へ向かったリオンは、優しく寄り添ってくれるクレイドに次第に惹かれていくがーーーー?
心に傷を持つ二人が心を重ね、愛を探す優しいオメガバースの物語。
(登場人物)
・リオン(受け)
心優しいオメガ。頑張り屋だが自分に自信が持てない。元女官で薬師だった母のアナに薬草の知識などを授けられたが、三か月前にその母も病死して独りになってしまう。
・クレイド(攻め)
ノルツブルク王国第一騎士団の隊長で獣人。幼いころにオースティンの遊び相手に選ばれ、ともにアナから教育を受けた。現在はオースティンの右腕となる。
・オースティン
ノルツブルク王国の国王でアルファ。
【本編完結】あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~
一ノ瀬麻紀
BL
産まれた時から一緒の二人は、距離感バグった幼馴染。
そんな『幼馴染以上恋人未満』の二人が、周りから「え? あれでまだ付き合ってないの?」と言われつつ、見守られているお話。
オメガバースですが、Rなし全年齢BLとなっています。
(ほんのりRの番外編は『麻紀の色々置き場』に載せてあります)
番外編やスピンオフも公開していますので、楽しんでいただけると嬉しいです。
11/15 より、「太陽の話」(スピンオフ2)を公開しました。完結済。
表紙と挿絵は、トリュフさん(@trufflechocolat)
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる