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二人しか知らない秘密・後編(柊山視点)
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ベッドの上に座る僕の横で、遥君が布団を頭から被って丸まっている。こうなった彼は普段なら、撫でたり話しかけたりしていると顔を出してくれる。けれど今回は、声をかけて良いのか思い悩んでいた。
――彼の体を割と……いや、だいぶ好き勝手した挙げ句、彼の下着まで汚してしまったからな……遥君、疲れてこのまま一人で寝てしまいそうだ……彼に寄り添って眠りたかったな……
僕はぼんやりと薄暗い照明を見上げ、どうしてこうなったのかを思い返していた。
行為が終わった後、体を離すと彼はぐにゃりとベッドにへたり込んでしまった。僕が慌てて体を拭くタオルを持って来ると言うと、彼はゆっくりと起き上がった。そして『シャワーを浴びるから大丈夫です』と言い、着の身着のままでパジャマのズボンを抱えて、そさくさと寝室を出ていってしまった。彼のいなくなった寝室で僕は自分の服装を整え、『道具』達の箱を片付けた。
しばらくして遥君は戻って来た。パジャマはきちんと着ており、さっきまであんなに乱れていたのが現実ではない様に感じた。
僕がぎこちなく「お帰り」と言うと、遥君はベッドに上がり、僕の顔をジッと見つめてから触れるだけのキスをした。そして顔を真っ赤にすると、布団の中にモゾモゾと入り込み丸まってしまった。
――叱られるのかなって思ったのに、キスしてくれたのは何故なんだろう……遥君が分からない……
僕は彼の入った布団を撫でようか悩み、手を空中で泳がせた。
――いや、やめておこう……遥君も眠たいだろうし
泳がせた手を引っ込めようとすると、布団の隙間から手が伸びて来てグイッと掴まれた。
「……いつもみたいに、撫でてくれないんですか?」
遥君の声が布団から聞こえてきた。隙間から様子を伺っていたのかもしれない。
「オレ、あなたに撫でられるの好きなのに」
少しだけ拗ねた様に言った。
「あー……遥君、もう、そのまま寝ちゃうかなって思ってね。ほら、今日は、色々して疲れただろうし」
「大丈夫です……」
掴んだ僕の腕を引っ張るので、遥君の隣に寝転ぶような格好になった。彼はモゾモゾと動くと僕に布団をかけ、ギュッと抱きついてくる。胸の辺りにしがみつくような格好になっているので、彼の顔は見えない。
「撫でて欲しいです。敬久さん」
「うん……」
遥君の頭をポンポンと撫でると、彼はふっと息を吐いた。
「遥君、僕のこと叱らないの?」
「え? ど、どうしてですか」
彼は顔を上げてきょとんとした。頬が赤いけれど、僕を非難するような雰囲気はなかった。
――遥君、普段通りだな……? 少し元気がないような感じがしたから、僕が色々したことを叱られるのかなって思っていたのに……
「いや、僕……基本的に君に叱られたいからさ」
「ふっ……また、そんなこと言って……」
遥君はクスクスと笑った。体を重ねた後の彼は色気が漂っているので、思わずため息が漏れた。
「笑わないでよ……さっき、好き勝手抱いたから……君の下着も汚したし……」
「……うっ……まぁ…………激しかったですよね……だいぶ……」
遥君は行為を思い出したのか目を伏せた。
「あ、あんな……下着のままで……腕を……後ろに……引っ張って……なんて……オレ達……今まで、したこと、なかったですものね……」
彼はしどろもどろ喋ると、バタリと僕の胸に顔を伏せた。
「今日は、道具を使って、君に色々していたから……興奮し過ぎちゃって……」
自分でも言い訳がましく言った。遥君はピクッと震えて顔を伏せたまま口を開いた。
「オレの体に興奮してくれるのは、すごく嬉しいです……」
胸の上で吐息混じりに囁かれるのでくすぐったく感じる。僕は彼の頭をまた撫でた。
「……少し強引なあなたも……好きですし…………オレの体、あなたの好きにして良いって、いつも言っているじゃないですか……」
「遥君……」
遥君はモゴモゴとそう言った。彼は顔を上げ僕にそっとキスをしてくるので、彼の唇を少しだけ食んだ。
「ん……遥君、元気がない気がしたから、やり過ぎたこと、叱られるのかなって」
「ぁ、いや……それは……」
彼は僕の胸の上から顔を上げると、僕の隣に横向きに寝転がった。
「…………オレ、あなたみたいに……色々知らないなって思って……」
「どういうこと?」
「……ああいう、セ、セック…………やらしいことの……やり方とか……」
「…………あー」
返答に困ることを言われたので、言葉に詰まった。
――遥君、恋愛の経験が少ないのを妙に気にしていたからなあ……でも、僕だってそこまでは……
「遥君、あのね……」
「オレも、あなたに色々すごいことして、喜んでもらいたいのに……いつも……気持ち良くしてもらって……いっぱいいっぱいになっちゃって……」
遥君は僕の言葉を遮るように続けた。
――遥君もけっこうな頻度で、僕に対してとんでもないことや、大胆なことを仕掛けて来るけれどなあ……
今日も彼の提案で目隠しをしたり、道具を使ったりと普段ではやらないような趣向だった。
「オレ、あなたに嬉しくなってもらいたいのに……もっと……色々なこと……できるように、頑張りますね……」
遥君は首筋まで赤くしながら、絞り出すような声で言った。
――以前から遥君は、思い切った考え方をする青年だけれど、そんな風なことを考えていたんだな。遥君は今のままで良いのに……でも、すごいことがどういったものか気になるな……いや……僕は何を考えているんだ……
理性と彼に対する欲望がぶつかり合うのを感じながら、荒くなりかけた呼吸を整えた。
「遥君はそのままで十分素敵だよ」
「うっ……いや、オレが頑張りたいんです」
彼は決意の宿った瞳をしている。
――きっと僕が何か言った所で、彼は頑張り屋だから諦めないんだろうな。それなら僕は、楽しみに待っているべきかな……
「……そう……そっかあ……無理だけはしないでね?」
「はい……」
遥君は言い終わるとパジャマのボタンを外した。そしていつものように、僕の頭を生身の胸にギュッと抱いてくれた。
「今日はもう……寝ます……おやすみなさい、敬久さん」
「おやすみ……」
今日は遥君に色々したので、僕が彼を抱きしめて眠りたかったのだけれど、先を越されてしまった。
僕は眠れなくなるような遥君の『決意』を聞かされたので、彼の心音を聞くことに集中した。心地良い鼓動に耳を傾けている内に、僕もいつの間にか眠ってしまっていた。
――彼の体を割と……いや、だいぶ好き勝手した挙げ句、彼の下着まで汚してしまったからな……遥君、疲れてこのまま一人で寝てしまいそうだ……彼に寄り添って眠りたかったな……
僕はぼんやりと薄暗い照明を見上げ、どうしてこうなったのかを思い返していた。
行為が終わった後、体を離すと彼はぐにゃりとベッドにへたり込んでしまった。僕が慌てて体を拭くタオルを持って来ると言うと、彼はゆっくりと起き上がった。そして『シャワーを浴びるから大丈夫です』と言い、着の身着のままでパジャマのズボンを抱えて、そさくさと寝室を出ていってしまった。彼のいなくなった寝室で僕は自分の服装を整え、『道具』達の箱を片付けた。
しばらくして遥君は戻って来た。パジャマはきちんと着ており、さっきまであんなに乱れていたのが現実ではない様に感じた。
僕がぎこちなく「お帰り」と言うと、遥君はベッドに上がり、僕の顔をジッと見つめてから触れるだけのキスをした。そして顔を真っ赤にすると、布団の中にモゾモゾと入り込み丸まってしまった。
――叱られるのかなって思ったのに、キスしてくれたのは何故なんだろう……遥君が分からない……
僕は彼の入った布団を撫でようか悩み、手を空中で泳がせた。
――いや、やめておこう……遥君も眠たいだろうし
泳がせた手を引っ込めようとすると、布団の隙間から手が伸びて来てグイッと掴まれた。
「……いつもみたいに、撫でてくれないんですか?」
遥君の声が布団から聞こえてきた。隙間から様子を伺っていたのかもしれない。
「オレ、あなたに撫でられるの好きなのに」
少しだけ拗ねた様に言った。
「あー……遥君、もう、そのまま寝ちゃうかなって思ってね。ほら、今日は、色々して疲れただろうし」
「大丈夫です……」
掴んだ僕の腕を引っ張るので、遥君の隣に寝転ぶような格好になった。彼はモゾモゾと動くと僕に布団をかけ、ギュッと抱きついてくる。胸の辺りにしがみつくような格好になっているので、彼の顔は見えない。
「撫でて欲しいです。敬久さん」
「うん……」
遥君の頭をポンポンと撫でると、彼はふっと息を吐いた。
「遥君、僕のこと叱らないの?」
「え? ど、どうしてですか」
彼は顔を上げてきょとんとした。頬が赤いけれど、僕を非難するような雰囲気はなかった。
――遥君、普段通りだな……? 少し元気がないような感じがしたから、僕が色々したことを叱られるのかなって思っていたのに……
「いや、僕……基本的に君に叱られたいからさ」
「ふっ……また、そんなこと言って……」
遥君はクスクスと笑った。体を重ねた後の彼は色気が漂っているので、思わずため息が漏れた。
「笑わないでよ……さっき、好き勝手抱いたから……君の下着も汚したし……」
「……うっ……まぁ…………激しかったですよね……だいぶ……」
遥君は行為を思い出したのか目を伏せた。
「あ、あんな……下着のままで……腕を……後ろに……引っ張って……なんて……オレ達……今まで、したこと、なかったですものね……」
彼はしどろもどろ喋ると、バタリと僕の胸に顔を伏せた。
「今日は、道具を使って、君に色々していたから……興奮し過ぎちゃって……」
自分でも言い訳がましく言った。遥君はピクッと震えて顔を伏せたまま口を開いた。
「オレの体に興奮してくれるのは、すごく嬉しいです……」
胸の上で吐息混じりに囁かれるのでくすぐったく感じる。僕は彼の頭をまた撫でた。
「……少し強引なあなたも……好きですし…………オレの体、あなたの好きにして良いって、いつも言っているじゃないですか……」
「遥君……」
遥君はモゴモゴとそう言った。彼は顔を上げ僕にそっとキスをしてくるので、彼の唇を少しだけ食んだ。
「ん……遥君、元気がない気がしたから、やり過ぎたこと、叱られるのかなって」
「ぁ、いや……それは……」
彼は僕の胸の上から顔を上げると、僕の隣に横向きに寝転がった。
「…………オレ、あなたみたいに……色々知らないなって思って……」
「どういうこと?」
「……ああいう、セ、セック…………やらしいことの……やり方とか……」
「…………あー」
返答に困ることを言われたので、言葉に詰まった。
――遥君、恋愛の経験が少ないのを妙に気にしていたからなあ……でも、僕だってそこまでは……
「遥君、あのね……」
「オレも、あなたに色々すごいことして、喜んでもらいたいのに……いつも……気持ち良くしてもらって……いっぱいいっぱいになっちゃって……」
遥君は僕の言葉を遮るように続けた。
――遥君もけっこうな頻度で、僕に対してとんでもないことや、大胆なことを仕掛けて来るけれどなあ……
今日も彼の提案で目隠しをしたり、道具を使ったりと普段ではやらないような趣向だった。
「オレ、あなたに嬉しくなってもらいたいのに……もっと……色々なこと……できるように、頑張りますね……」
遥君は首筋まで赤くしながら、絞り出すような声で言った。
――以前から遥君は、思い切った考え方をする青年だけれど、そんな風なことを考えていたんだな。遥君は今のままで良いのに……でも、すごいことがどういったものか気になるな……いや……僕は何を考えているんだ……
理性と彼に対する欲望がぶつかり合うのを感じながら、荒くなりかけた呼吸を整えた。
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――きっと僕が何か言った所で、彼は頑張り屋だから諦めないんだろうな。それなら僕は、楽しみに待っているべきかな……
「……そう……そっかあ……無理だけはしないでね?」
「はい……」
遥君は言い終わるとパジャマのボタンを外した。そしていつものように、僕の頭を生身の胸にギュッと抱いてくれた。
「今日はもう……寝ます……おやすみなさい、敬久さん」
「おやすみ……」
今日は遥君に色々したので、僕が彼を抱きしめて眠りたかったのだけれど、先を越されてしまった。
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