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忙しない季節とキスの痕(此木視点)
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丸まって枕に顔を押し付けて泣いていたせいか、敬久さんが寝室に入って来たのに気づけなかった。
すぐ側で足音がしたので慌てて飛び起きると、彼はもうサイドボードの近くまで来ていた。オレが泣いていたのに気づくと、驚いた顔をした。
「泣いていたの?」
彼の優しい声色にまた涙が溢れそうになった。オレは手の甲で涙を拭うと彼と目を合わせた。
「ぅ……あのこれは、今日はオレの心がもう……暴れ回っていてすごいんです」
「ふふ……そうなんだ。すごいんだ」
敬久さんは穏やかに微笑み、ベッドに上がるとオレを背後からギュッと抱きしめてくれた。
「すみません……入って来たのに気づかなくて……」
「ううん、謝らないでよ。君が丸まっているのが見えたから、寝ちゃったのかなって思ってさ。足音を立てないようにしていたんだ」
「さ、流石に寝ませんよ……」
オレから「夜にエッチなことをしてください」と言っておきながら、そんなことは出来るはずがない。
「遥君と並んで眠るのも好きだから、隣に潜り込もうとしたら……君が泣いていたからさ。これは抱きしめないとって思って」
「お気遣い感謝します……」
「ふっ……その言い方、仕事の時みたい」
敬久さんはオレの耳元でクスクスと笑った。吐息が耳に当たり、穏やかになっていた心がまた騒ぎ出した。
「もう今日は人生で……一番狼狽えて……一番嬉しかった日です」
「光栄だなあ」
背後から抱きしめられているので彼の顔が見えないけれど、今は目を合わせない方が落ち着いて話せる気がする。
「ね、遥君。今日はもう、このまま寝ちゃおうか?」
彼は落ち着いた声で囁いた。オレが泣いてばかりなので確実に気を遣われている。
「……でも……オレ、敬久さんとエッチなことしたいです。だって……次は来年になるまであなたに触れないから……」
オレの胴に回された手に指を這わせた。自分でも欲望丸出しだなと思ったけれど止められなかった。敬久さんに呆れられるのではないかと、別の意味でも胸がドキドキしている。
「遥君が『エッチなこと』って言うの……僕と違って可愛いよね。僕が君に言うとおじさんみたいなのに……」
「……敬久さんはおじさんじゃないですが、あなたがたまに……おじさんみたいなことを言うの、実はオレ……けっこう嫌いじゃないです」
彼は考えていることをあまり表に出さないけれど、オレに対しての欲望が言葉の端々や視線に滲んでいると嬉しくなってしまう。
「…………それは、どうも……ありがとう。いや、お礼を言うのは何だか変な感じがするね」
敬久さんは複雑そうな声でそう言った。
「でも、君にそういう風に言われると……僕は調子に乗ってしまいそうだなあ」
手に這わせたオレの指を彼はキュッと握ってくれた。温かい手や体から彼の体温が伝わってくるのがとても心地良かった。
すぐ側で足音がしたので慌てて飛び起きると、彼はもうサイドボードの近くまで来ていた。オレが泣いていたのに気づくと、驚いた顔をした。
「泣いていたの?」
彼の優しい声色にまた涙が溢れそうになった。オレは手の甲で涙を拭うと彼と目を合わせた。
「ぅ……あのこれは、今日はオレの心がもう……暴れ回っていてすごいんです」
「ふふ……そうなんだ。すごいんだ」
敬久さんは穏やかに微笑み、ベッドに上がるとオレを背後からギュッと抱きしめてくれた。
「すみません……入って来たのに気づかなくて……」
「ううん、謝らないでよ。君が丸まっているのが見えたから、寝ちゃったのかなって思ってさ。足音を立てないようにしていたんだ」
「さ、流石に寝ませんよ……」
オレから「夜にエッチなことをしてください」と言っておきながら、そんなことは出来るはずがない。
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「お気遣い感謝します……」
「ふっ……その言い方、仕事の時みたい」
敬久さんはオレの耳元でクスクスと笑った。吐息が耳に当たり、穏やかになっていた心がまた騒ぎ出した。
「もう今日は人生で……一番狼狽えて……一番嬉しかった日です」
「光栄だなあ」
背後から抱きしめられているので彼の顔が見えないけれど、今は目を合わせない方が落ち着いて話せる気がする。
「ね、遥君。今日はもう、このまま寝ちゃおうか?」
彼は落ち着いた声で囁いた。オレが泣いてばかりなので確実に気を遣われている。
「……でも……オレ、敬久さんとエッチなことしたいです。だって……次は来年になるまであなたに触れないから……」
オレの胴に回された手に指を這わせた。自分でも欲望丸出しだなと思ったけれど止められなかった。敬久さんに呆れられるのではないかと、別の意味でも胸がドキドキしている。
「遥君が『エッチなこと』って言うの……僕と違って可愛いよね。僕が君に言うとおじさんみたいなのに……」
「……敬久さんはおじさんじゃないですが、あなたがたまに……おじさんみたいなことを言うの、実はオレ……けっこう嫌いじゃないです」
彼は考えていることをあまり表に出さないけれど、オレに対しての欲望が言葉の端々や視線に滲んでいると嬉しくなってしまう。
「…………それは、どうも……ありがとう。いや、お礼を言うのは何だか変な感じがするね」
敬久さんは複雑そうな声でそう言った。
「でも、君にそういう風に言われると……僕は調子に乗ってしまいそうだなあ」
手に這わせたオレの指を彼はキュッと握ってくれた。温かい手や体から彼の体温が伝わってくるのがとても心地良かった。
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