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また君と星を見上げて・後編(柊山視点)
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観光から戻り夕食まで時間があったので、部屋で少し寛いでから館内の温泉に向かうことにした。今回の旅行は二人でゆったりと過ごすことが目的なので周辺の観光は早めに切り上げている。
僕達が泊まっている旅館は広々とした露天風呂や貸切風呂、休憩出来るテラスなどもあり、館内施設が充実している。旅館自体も自然の中に溶け込むような洒落た造りなので歩き回っているだけでも楽しめそうだ。
「遥君、浴衣が似合うね。君は姿勢が良いからキレイだなあ」
「あ、ありがとうございます。敬久さんも旅館に缶詰に来た文豪って感じがして、とても素敵です」
「文豪は言い過ぎだよ……」
館内着の白地に水色の模様が入った浴衣と紺色の羽織に着替え、座卓のある部屋でお互いのいつもと違う姿を写真に撮り合っていた。
部屋は和モダンと言うのだろうか、畳の部屋とフローリングの部屋があり、暗い色の木で出来た調度品の数々が主張し過ぎずに馴染んでいる。生活感はないのに自分の家より落ち着く空間だ。
――外観も内観も洒落ているのにしっくり来るというか、居心地が良い旅館だなあ。遥君と来ることが出来て良かった
ちなみにこの部屋にも温泉が付いている。半露天風呂になっているので湯船に浸かりながらちょっとした景色が楽しめる。こちらはいつでも入浴出来るので館内の温泉巡りを優先することになった。
「まだ着いてから三時間も経っていないのに、写真を撮り過ぎですかね」
座卓の近くに座っている僕に向かって遥君が縁側からカメラを構えながら言った。確かに、僕も遥君もいつもより写真を撮る量が多い気がする。
「予備のバッテリーとメモリーカードがあるから沢山撮っても大丈夫だよ」
「わあ、それなら安心ですね!」
遥君はパアッと明るい顔になってパシャリパシャリとまた僕を撮影した。手持ち無沙汰な僕が備え付けの和菓子を食べていると遥君はその姿も写真に収めた。普段は僕の方が今の彼のように撮っているのでむず痒い気分だ。
「温泉に入る前に水分補給しておかないとね。お茶淹れるよ」
とりあえず一旦遥君に座ってもらおうと水分補給を提案した。
「あ! そうですね。ありがとうございます」
遥君は写真に夢中になっていたのでハッとしたようだ。僕は立ち上がると、遥君を自分の隣の座布団に座らせて備え付けのお茶を淹れた。
「はい、どうぞ」
自分と遥君の席にお茶を置いて座った。お茶は緑茶で中々良い物のようだ。ふわりと爽やかな茶葉の香りがただよい、色味も上品でキレイだ。
「ありがとうございます。頂きます」
「うん、お菓子もあるから沢山食べなよ」
「はい!」
菓子鉢を遥君の前に置くと、彼はにこやかに返事をしてくれた。普段遥君に世話を焼いてもらっているせいか、こういう時にどうしても年上ぶりたくなってしまう。
――こういったイベントの時にやたら張り切るのは引かれるかな? いや、僕は何故か余裕がある風に見えるらしいから、妙に張り切っているとはバレてはいないはずだ……
実際は全く心に余裕がないのに、余裕があるように見えるのはきっと薄暗い思いや焦りを隠すために取り繕っているからだろう。
――遥君は器が大きいから余裕がない僕も受け入れてくれるけれど……そこにずっと甘え続けるのは年上の恋人としてどうなのだろうか……
「敬久さん、こっちのお菓子も美味しそうですよ。半分食べてみますか?」
遥君が半分に割った和菓子を僕の口元に差し出して来た。
「うん……ありがとう」
啜ろうとしたお茶を置いてそのまま彼の手からパクリと食べた。
時々、彼は僕の心が読めるのかなとドキリとする。年上ぶりたい、余裕がある風に見られたいと考えていた所なのに、口元に差し出された和菓子に飛びついてしまった。
咀嚼しつつジッと遥君を見つめていると、彼はきょとんとして首を傾げた。
僕達が泊まっている旅館は広々とした露天風呂や貸切風呂、休憩出来るテラスなどもあり、館内施設が充実している。旅館自体も自然の中に溶け込むような洒落た造りなので歩き回っているだけでも楽しめそうだ。
「遥君、浴衣が似合うね。君は姿勢が良いからキレイだなあ」
「あ、ありがとうございます。敬久さんも旅館に缶詰に来た文豪って感じがして、とても素敵です」
「文豪は言い過ぎだよ……」
館内着の白地に水色の模様が入った浴衣と紺色の羽織に着替え、座卓のある部屋でお互いのいつもと違う姿を写真に撮り合っていた。
部屋は和モダンと言うのだろうか、畳の部屋とフローリングの部屋があり、暗い色の木で出来た調度品の数々が主張し過ぎずに馴染んでいる。生活感はないのに自分の家より落ち着く空間だ。
――外観も内観も洒落ているのにしっくり来るというか、居心地が良い旅館だなあ。遥君と来ることが出来て良かった
ちなみにこの部屋にも温泉が付いている。半露天風呂になっているので湯船に浸かりながらちょっとした景色が楽しめる。こちらはいつでも入浴出来るので館内の温泉巡りを優先することになった。
「まだ着いてから三時間も経っていないのに、写真を撮り過ぎですかね」
座卓の近くに座っている僕に向かって遥君が縁側からカメラを構えながら言った。確かに、僕も遥君もいつもより写真を撮る量が多い気がする。
「予備のバッテリーとメモリーカードがあるから沢山撮っても大丈夫だよ」
「わあ、それなら安心ですね!」
遥君はパアッと明るい顔になってパシャリパシャリとまた僕を撮影した。手持ち無沙汰な僕が備え付けの和菓子を食べていると遥君はその姿も写真に収めた。普段は僕の方が今の彼のように撮っているのでむず痒い気分だ。
「温泉に入る前に水分補給しておかないとね。お茶淹れるよ」
とりあえず一旦遥君に座ってもらおうと水分補給を提案した。
「あ! そうですね。ありがとうございます」
遥君は写真に夢中になっていたのでハッとしたようだ。僕は立ち上がると、遥君を自分の隣の座布団に座らせて備え付けのお茶を淹れた。
「はい、どうぞ」
自分と遥君の席にお茶を置いて座った。お茶は緑茶で中々良い物のようだ。ふわりと爽やかな茶葉の香りがただよい、色味も上品でキレイだ。
「ありがとうございます。頂きます」
「うん、お菓子もあるから沢山食べなよ」
「はい!」
菓子鉢を遥君の前に置くと、彼はにこやかに返事をしてくれた。普段遥君に世話を焼いてもらっているせいか、こういう時にどうしても年上ぶりたくなってしまう。
――こういったイベントの時にやたら張り切るのは引かれるかな? いや、僕は何故か余裕がある風に見えるらしいから、妙に張り切っているとはバレてはいないはずだ……
実際は全く心に余裕がないのに、余裕があるように見えるのはきっと薄暗い思いや焦りを隠すために取り繕っているからだろう。
――遥君は器が大きいから余裕がない僕も受け入れてくれるけれど……そこにずっと甘え続けるのは年上の恋人としてどうなのだろうか……
「敬久さん、こっちのお菓子も美味しそうですよ。半分食べてみますか?」
遥君が半分に割った和菓子を僕の口元に差し出して来た。
「うん……ありがとう」
啜ろうとしたお茶を置いてそのまま彼の手からパクリと食べた。
時々、彼は僕の心が読めるのかなとドキリとする。年上ぶりたい、余裕がある風に見られたいと考えていた所なのに、口元に差し出された和菓子に飛びついてしまった。
咀嚼しつつジッと遥君を見つめていると、彼はきょとんとして首を傾げた。
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