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また君と星を見上げて・後編(柊山視点)
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寝室の襖を開けるとふかふかの布団が二つ並べられており、手前の布団に遥君がちょこんと正座している。枕元にある灯籠型をした橙色の間接照明が彼をますます妖艶に見せた。
遥君の側には小さな個別包装の潤滑剤とコンドームの箱が置かれている。彼は正座したまま何故か指先でコンドームの箱をつついていた。
「何をしているの?」
僕は彼の謎の行動が可笑しくてつい笑いそうになった。
「箱丸ごとは要らなかったかなって……これじゃあ、オレが沢山したいみたいで」
「ふっ……ふふ……うん、沢山しても良いけれど明日も移動があるから無理はダメだよ?」
「わ、分かってますっ」
遥君はモゴモゴと言い返して来たので口元に手を当てて我慢できずにくつくつと笑ってしまった。
「もう……早くこっち来てくださいよ」
遥君はふっと息を吐き、僕の浴衣の裾を引っ張るので彼の隣に腰を下ろした。弾力のある敷き布団は見た目通りふかふかしている。
「この布団すごくふかふかで気持ち良いね」
「ええ、さっき少しだけ寝転がったんですけど気持ち良かったです」
遥君は僕に身を寄せて嬉しそうに微笑んだ。
「敬久さんも寝転がってくださいよ」
彼はコンドームと潤滑剤を隠すように退けて僕を布団に寝かせた。遥君もいそいそと隣に並んで寝転がり僕の腕に体を寄せた。
「うん、これは気持ちが良いね」
布団の柔らかさと腕に感じる遥君の体温が心地良い。彼はギュッと腕に抱きついて「そうですよね」と小さな声で呟いた。
「和室良いよね。遥君と一緒に暮らすなら和室のある家も良いな」
先程一人で家の間取りを妄想していたのでつい口走ってしまった。気が早いことを言ったので引かれていないかなとそっと彼の顔を窺った。彼は真っ直ぐに僕を見ていたけれど目に戸惑いが浮かんでいる。
「あの……オレ、合鍵にも慣れていなくて……まだ一緒に暮らす家のこととか、ちゃんと考えられていなくて、すみません」
遥君がシュンとして僕の腕に顔を埋めた。僕の先走った言葉でそんな顔をさせてしまったので慌てて彼を抱きしめた。
「ごめん。今日の僕はすごく浮かれていて……君の気持ちを置いて行っちゃっているよね」
寝転んだまま遥君を抱きしめ撫でていると、腕の中の彼がモゾモゾともがいた。
「……置いて行かれたなんて思っていませんよ。オレが早く合鍵に慣れれば良いだけなんですから」
彼は腕の中から身をよじって抜け出し、僕の胸の上に覆いかぶさる様な体勢になった。
「……オレ……早く慣れたいんです。だから、しばらくはあなたの家から職場に通っても良いですか? なんだったら旅行から戻ってすぐにでも」
遥君が消え入りそうな声で呟いた。遥君の真剣な瞳はキラキラと輝いていた。少し涙ぐんでいるのかもしれない。
「仕事から帰ったら敬久さんと食事をしたりお風呂に入ったり、それで、外でお互いに趣味のことをしている時は待ち合わせして一緒に帰ったり……あなたが執筆中は昨日みたいに、オレは先にベッドで眠ったりして……もっとあなたと同じ時間を生きて行きたいです」
遥君は言葉に詰まりながらそう言うと、僕の唇にそっとキスをした。
「あなたがオレのことを沢山愛してくれて、この一年ずっと幸せでした。オレもあなたのことを愛しています。だから、この先もずっと側にいられるように、オレはあなたの気持ちに追いつきたいです」
遥君は僕の右手を取ると薬指にある指輪に唇を落としてくれた。全て言い終えると鼻をすすっていたので、やはり少しだけ泣いているようだ。
僕は遥君のひたむきな愛の言葉に胸がいっぱいになってしまった。
「……君のこと、泣かせちゃったね」
「な、泣いてません!」
遥君は強がる風に言うと僕の胸に顔をグリグリと擦りつけた。何かある度に遥君を泣かせてしまっている。
「はぁ……君に愛して貰えるだけで嬉しいのに……そんなプロポーズみたいなことまで言ってくれるなんて光栄だなあ」
しっかりと遥君を抱きしめたくなったので上体を起こし、彼を腕の中に閉じ込めるように包み込んだ。
「プ……プロ、ポーズ……まあ、その、そう受け取って頂いても、かまいませんが……でも、あの、そ、それなら、もっと、ちゃんと」
遥君はボソボソと腕の中で呟いた。
「ふふ……遥君、声が聞こえなくなっちゃうくらい小さくなっているよ」
愛しさが胸の中でとめどなく湧き上がってくる。腕の中の温かい遥君の体や呼吸の音すら愛おしく感じた。
「ね、遥君はプロポーズする相手が僕みたいな不安定な職業のおじさんで良いの?」
遥君が本格的に何を言っているのか聞き取れなくなって来たので髪の毛に唇を落とし、からかうように言った。
「不安定なんて……」
「不安定だよ。最近はそれなりに頑張っているけれど、少し前まで全然小説を書いていなかったんだよ?」
「そ、そんなの、全然気にしないですっ」
遥君は僕をギュウギュウと抱きしめ返した後に体を離した。
「何かあったとしてもオレが養いますからっ」
遥君の顔が薄暗い照明でも分かるくらいに赤くなっている。
「ふっ、ははっ……」
遥君の身も蓋もない返答に思わず吹き出してしまった。
「うん、確かに。遥君はきちんと会社に勤めているからなあ。いざとなったらお願いしようかな」
「わ、笑わないでくださいよ。真面目に言っているんですからね!」
「うん、ごめんごめん」
遥君はムキになってそう言い返すと僕をグイグイと押し倒した。
「もう……今日は大人しくオレに撫でられてください」
遥君は僕の浴衣の襟を開くと首筋をガブガブと甘噛みした。
遥君の側には小さな個別包装の潤滑剤とコンドームの箱が置かれている。彼は正座したまま何故か指先でコンドームの箱をつついていた。
「何をしているの?」
僕は彼の謎の行動が可笑しくてつい笑いそうになった。
「箱丸ごとは要らなかったかなって……これじゃあ、オレが沢山したいみたいで」
「ふっ……ふふ……うん、沢山しても良いけれど明日も移動があるから無理はダメだよ?」
「わ、分かってますっ」
遥君はモゴモゴと言い返して来たので口元に手を当てて我慢できずにくつくつと笑ってしまった。
「もう……早くこっち来てくださいよ」
遥君はふっと息を吐き、僕の浴衣の裾を引っ張るので彼の隣に腰を下ろした。弾力のある敷き布団は見た目通りふかふかしている。
「この布団すごくふかふかで気持ち良いね」
「ええ、さっき少しだけ寝転がったんですけど気持ち良かったです」
遥君は僕に身を寄せて嬉しそうに微笑んだ。
「敬久さんも寝転がってくださいよ」
彼はコンドームと潤滑剤を隠すように退けて僕を布団に寝かせた。遥君もいそいそと隣に並んで寝転がり僕の腕に体を寄せた。
「うん、これは気持ちが良いね」
布団の柔らかさと腕に感じる遥君の体温が心地良い。彼はギュッと腕に抱きついて「そうですよね」と小さな声で呟いた。
「和室良いよね。遥君と一緒に暮らすなら和室のある家も良いな」
先程一人で家の間取りを妄想していたのでつい口走ってしまった。気が早いことを言ったので引かれていないかなとそっと彼の顔を窺った。彼は真っ直ぐに僕を見ていたけれど目に戸惑いが浮かんでいる。
「あの……オレ、合鍵にも慣れていなくて……まだ一緒に暮らす家のこととか、ちゃんと考えられていなくて、すみません」
遥君がシュンとして僕の腕に顔を埋めた。僕の先走った言葉でそんな顔をさせてしまったので慌てて彼を抱きしめた。
「ごめん。今日の僕はすごく浮かれていて……君の気持ちを置いて行っちゃっているよね」
寝転んだまま遥君を抱きしめ撫でていると、腕の中の彼がモゾモゾともがいた。
「……置いて行かれたなんて思っていませんよ。オレが早く合鍵に慣れれば良いだけなんですから」
彼は腕の中から身をよじって抜け出し、僕の胸の上に覆いかぶさる様な体勢になった。
「……オレ……早く慣れたいんです。だから、しばらくはあなたの家から職場に通っても良いですか? なんだったら旅行から戻ってすぐにでも」
遥君が消え入りそうな声で呟いた。遥君の真剣な瞳はキラキラと輝いていた。少し涙ぐんでいるのかもしれない。
「仕事から帰ったら敬久さんと食事をしたりお風呂に入ったり、それで、外でお互いに趣味のことをしている時は待ち合わせして一緒に帰ったり……あなたが執筆中は昨日みたいに、オレは先にベッドで眠ったりして……もっとあなたと同じ時間を生きて行きたいです」
遥君は言葉に詰まりながらそう言うと、僕の唇にそっとキスをした。
「あなたがオレのことを沢山愛してくれて、この一年ずっと幸せでした。オレもあなたのことを愛しています。だから、この先もずっと側にいられるように、オレはあなたの気持ちに追いつきたいです」
遥君は僕の右手を取ると薬指にある指輪に唇を落としてくれた。全て言い終えると鼻をすすっていたので、やはり少しだけ泣いているようだ。
僕は遥君のひたむきな愛の言葉に胸がいっぱいになってしまった。
「……君のこと、泣かせちゃったね」
「な、泣いてません!」
遥君は強がる風に言うと僕の胸に顔をグリグリと擦りつけた。何かある度に遥君を泣かせてしまっている。
「はぁ……君に愛して貰えるだけで嬉しいのに……そんなプロポーズみたいなことまで言ってくれるなんて光栄だなあ」
しっかりと遥君を抱きしめたくなったので上体を起こし、彼を腕の中に閉じ込めるように包み込んだ。
「プ……プロ、ポーズ……まあ、その、そう受け取って頂いても、かまいませんが……でも、あの、そ、それなら、もっと、ちゃんと」
遥君はボソボソと腕の中で呟いた。
「ふふ……遥君、声が聞こえなくなっちゃうくらい小さくなっているよ」
愛しさが胸の中でとめどなく湧き上がってくる。腕の中の温かい遥君の体や呼吸の音すら愛おしく感じた。
「ね、遥君はプロポーズする相手が僕みたいな不安定な職業のおじさんで良いの?」
遥君が本格的に何を言っているのか聞き取れなくなって来たので髪の毛に唇を落とし、からかうように言った。
「不安定なんて……」
「不安定だよ。最近はそれなりに頑張っているけれど、少し前まで全然小説を書いていなかったんだよ?」
「そ、そんなの、全然気にしないですっ」
遥君は僕をギュウギュウと抱きしめ返した後に体を離した。
「何かあったとしてもオレが養いますからっ」
遥君の顔が薄暗い照明でも分かるくらいに赤くなっている。
「ふっ、ははっ……」
遥君の身も蓋もない返答に思わず吹き出してしまった。
「うん、確かに。遥君はきちんと会社に勤めているからなあ。いざとなったらお願いしようかな」
「わ、笑わないでくださいよ。真面目に言っているんですからね!」
「うん、ごめんごめん」
遥君はムキになってそう言い返すと僕をグイグイと押し倒した。
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