【完結/R18/短編】恋人として君と続いていく日々

テルマ江

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「遥君、来月の懇親会の日は予定空きそう?」
「ええ、大丈夫です。午後休を使って必ず行きます」

 敬久さんは嬉しそうに「良かった」と微笑んだ。今日は仕事帰りに敬久さんと待ち合わせをして、個室の居酒屋に来ていた。

 今は食事もあらかた終わり、そろそろ帰ろうかなんて話をしながら、グラスの底に残っている烏龍茶をちびちびと飲んでいる所だ。

「あなたと一緒に行けるなんて、楽しみです。本当に楽しみで……」

 オレはグラスを離すと、向かいに座る敬久さんに手を伸ばして彼の指先にそっと触れた。

「遥君、酔った?」

 オレはアルコールに弱いので烏龍茶を啜っていたのだが、敬久さんが注文した日本酒が美味しそうだったので少しだけ飲ませてもらった。アルコールには弱いがお酒が嫌いなわけではない。

「懇親会、楽しみなんです」

 一口、二口ほど飲んだ日本酒は口当たりが爽やかでキリリとした辛口の味わいだった。飲んでからしばらく経つが、体がポカポカと熱くなって気分が良い。

「そんなに楽しみなんだ」
「だって、オレ、あなたと出会ったのが懇親会ですし」
「そっかあ……懐かしいな」

 オレが触れている指先を掴んで彼はスリスリと撫でてくれる。個室とはいえ、隣の席と衝立一枚挟んだだけの場所で何をイチャついているんだと頭の中のまだまだ冷静な部分が考えてはいたが、今はその思考を無視した。

「何だか、幸せだなって……」
「遥君、お酒飲んで眠くなって来たんじゃない? 目がトロンとしてるよ」
「ふふ……今日は、敬久さんがオレの家に来るし、まだ眠くないですよ……少しだけしか、眠くないです」
「酔っているなあ 。タクシー呼んどこうか」

 敬久さんは苦笑して、片手で器用に携帯電話を操作しはじめた。もう片方の手はオレの指先を撫でたままでいてくれる。

(敬久さんは本当に優しいな)

 敬久さんが傍にいると気を抜いて酔えると言うか、もしもオレがいつかのように酔って足元がおぼつかなくなり情けなく転んでも、彼なら手を差し伸べて並んで歩いてくれる信頼があるというか――とにかく敬久さんの傍は居心地が良くて安心する。

(これが……年上の包容力という物なのか?)

 確かに敬久さんはオレの11才上だが、仕事の関係者でもあったせいか年齢をそこまで意識したことはない。

(敬久さんは自分のことよく「おじさん」って言うけど、全然おじさんじゃないしなあ)

 包容力は年齢云々ではなく元々彼の気質なのだろう。

(たまに年が離れているのを気にしているけど、オレだって同い年くらいに生まれて、早くに出会いたかったし……とにかく敬久さんは優しくて可愛いし……かっこ良くて、好きだ……)

 言葉選びから確実に思考力が落ちている。ふぅっと深呼吸をして敬久さんの手をキュッと握った。

「大通りの方にタクシー呼んだから、そろそろ出ようか」
「はい……ありがとうございます」
「手を繋いだまま外に出ても良いんだよ?」

 オレが名残惜しさを感じながら指を離そうとしている姿を見て、彼はいたずらっぽくそう言った。

「ぅ……それは、二人だけの時なら全然良いんですけど」
「冗談だよ。離すの寂しそうだったから」

 敬久さんはクスクスと笑って立ち上がり、まだ座ったままのオレの頭をポンポンと撫でた。

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