【完結/R18/短編】恋人として君と続いていく日々

テルマ江

文字の大きさ
8 / 30

8

しおりを挟む
「遥君、お帰り」
「た、ただいま、です」

 浴室を出るとオレのベッドに腰掛けた敬久さんが話しかけて来た。湯上がりのオレは乾かしたばかりの髪の毛をいじくりながら、何気ない風を装って隣に腰掛けた。

(敬久さんがオレの家で、オレの服を着て、オレのベッドにいる姿はいつ見ても感動する……)

「明日は何時に起きる?」

 携帯電話を手に持ったまま、オレを抱き寄せてコロンとベッドに寝転がった。

「平日だし、仕事だよね。7時くらいで大丈夫かな?」

 アラームを設定する画面をこちらに見せながら尋ねて来る。オレはもうだいぶ夢心地でされるがままになっていた。

「はい……」
「ふふ、もう眠そう。今日は会えて良かったよ」
「オレもです」
「そう、嬉しいな」

 彼はオレの頭に顔を寄せると、額に唇を落とした。

(敬久さんも時間を作って会いに来てくれて、オレもすごく嬉しい。好き……敬久さんが、すごく好きだ)

 敬久さんの顔をジッと見ていると、不思議そうな顔で見つめ返された。照れくさくなったので目をそらすと顔が近づいて来た。

「何か言いたいことがあるって顔してない?」
「……大丈夫です。幸せを噛み締めていたので」
「何それ」

 笑いながら顔を離すとサイドボードに携帯電話を置き、布団をオレにかけて自分もモゾモゾと潜り込んだ。

「僕といると幸せって思うんだ?」
「はい……」
「僕もだよ」
「あ……ぅ……う、嬉しい。嬉しいです」

 寝転がる敬久さんの胸に体を寄せると、抱きかかえるような態勢になって背中を撫でてくれた。

「遥君はいつも素直だけど、お酒が入ると更に素直になるね」

 ふっと息をついて「そういう所も好きだよ」と呟いた。

「ね、もう、僕の所に来たら良いんじゃないかな?」
「……それは、すごく、行きたいんです。でもオレは……今のオレは……」
「うん……遥君はちゃんと考えたいんだよね。ごめんね、僕がせっかちで」

 敬久さんは少しだけ気まずそうに言うと顔を近づけて来てチュッと軽くキスをした。

「もっとしたいけど、あんまりするとお互いに眠れなくなりそうだね」

 背中を撫でる手が熱くなった気がした。オレはアルコールが入っているせいもあってか心地良くてうとうとし始めた。

「このまま連れ去れたら良いのになぁ」

 ボソリと呟き、彼はオレの髪の毛に唇を落とした。

「遥君、おやすみ」
「おやすみなさい、敬久さん……」

 敬久さんも様々な葛藤があるのだろう。傍にいて彼を支えて――オレが敬久さんの傍で感じる安らぎを与えられるようになりたい――温かな腕の中でお互いの息遣いを聞きながらオレは眠りに落ちた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。  そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。   最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m

処理中です...