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バスタオルを持って脱衣所を出ると、薄暗い間接照明が照らす大きなベッドの端に敬久さんが腰掛けている。ペットボトルの飲み物を飲みながらオレを見て「遥君」と名前を呼んでくれた。
オレはいそいそと彼の隣に行き、バスタオルをベッドに置いて腕に寄り添うように座った。ジャケットを脱いでネクタイを緩めている敬久さんは色気があってとても格好良い。
「何を飲んでいるんですか?」
「冷蔵庫にあったお茶だよ。遥君も何か飲むかい?」
「オレは……えーと、どうしようかな……」
冷蔵庫には有料のアルコールやお茶が入っているらしい。
「お酒は飲まないんですか?」
「明日も運転するからね。今日はいいかな」
「そ、そうですよね……」
「うん、チェックアウトまでにアルコールが抜けなかったらダメだからね」
「あの、やっぱり……敬久さんのお茶を、一口もらって良いですか……?」
何となくそわそわしてしまうので、敬久さんの飲み物をねだった。
「水とかジュースもあるけど、僕ので良いの?」
「はい、敬久さんのが良いです」
「……うん」
敬久さんは「どうぞ」と持っていたペットボトルをオレに渡して来た。
「ありがとうございます」
一口コクリと飲み、またペットボトルを返した。敬久さんは返されたペットボトルをまた飲みつつ、しばらく無言の時間が続いた。
「急に、ホテルに連れ込んじゃってすみません。どうしても二人きりが良くて……」
オレが敬久さんを見上げると彼はペットボトルに蓋をしてサイドテーブルの上に乗せた。
「謝らないでよ。僕は君に誘われて嬉しかった」
そう言ってオレを抱き寄せ、顔を近づけてキスをした。そのままぎゅうぎゅうと抱きしめられ、温かさに胸がキュンと鳴った。
「……あなたの不安な気持ち、慰めたくて……でも、二人きりじゃないと沢山撫でたり、出来ないから」
「遥君……」
「家に帰っちゃったら……敬久さんは優しいから、今日のことは心の中に閉まって、いつも通りに接してくれるんだろうなって、でも……」
敬久さんはオレが不安そうな様子にはすぐ気付くのに、自分のそういう感情は抱え込んでしまう人だ。優しい彼の心の中にわだかまりが澱のように沈んでいくのが嫌だった。
「……それは、オレが嫌なんです」
これから生涯を共にするのなら、そういった不安や苦しみに寄り添って、出来る限りオレの愛で埋めてあげたいと感じる。全てはオレの我が儘だ。
「今日はオレのせいで傷ついた敬久さんを、オレが出来るだけ、心も体も……慰めたいなって」
体を少しだけ離して「我が儘でごめんなさい」と言い、敬久さんを見つめた。
「遥君のせいじゃないし、それは全然我が儘じゃないよ」
敬久さんは「寧ろ僕の方が我が儘だよ」と言った。
「拗ねれば君が優しくしてくれるって分かっているから、こんな風に……君を振り回すような態度を取ってしまって……遥君の方が辛かったはずなのに」
またギュッとオレを抱きしめ「僕こそごめんね」と囁いた。
オレはいそいそと彼の隣に行き、バスタオルをベッドに置いて腕に寄り添うように座った。ジャケットを脱いでネクタイを緩めている敬久さんは色気があってとても格好良い。
「何を飲んでいるんですか?」
「冷蔵庫にあったお茶だよ。遥君も何か飲むかい?」
「オレは……えーと、どうしようかな……」
冷蔵庫には有料のアルコールやお茶が入っているらしい。
「お酒は飲まないんですか?」
「明日も運転するからね。今日はいいかな」
「そ、そうですよね……」
「うん、チェックアウトまでにアルコールが抜けなかったらダメだからね」
「あの、やっぱり……敬久さんのお茶を、一口もらって良いですか……?」
何となくそわそわしてしまうので、敬久さんの飲み物をねだった。
「水とかジュースもあるけど、僕ので良いの?」
「はい、敬久さんのが良いです」
「……うん」
敬久さんは「どうぞ」と持っていたペットボトルをオレに渡して来た。
「ありがとうございます」
一口コクリと飲み、またペットボトルを返した。敬久さんは返されたペットボトルをまた飲みつつ、しばらく無言の時間が続いた。
「急に、ホテルに連れ込んじゃってすみません。どうしても二人きりが良くて……」
オレが敬久さんを見上げると彼はペットボトルに蓋をしてサイドテーブルの上に乗せた。
「謝らないでよ。僕は君に誘われて嬉しかった」
そう言ってオレを抱き寄せ、顔を近づけてキスをした。そのままぎゅうぎゅうと抱きしめられ、温かさに胸がキュンと鳴った。
「……あなたの不安な気持ち、慰めたくて……でも、二人きりじゃないと沢山撫でたり、出来ないから」
「遥君……」
「家に帰っちゃったら……敬久さんは優しいから、今日のことは心の中に閉まって、いつも通りに接してくれるんだろうなって、でも……」
敬久さんはオレが不安そうな様子にはすぐ気付くのに、自分のそういう感情は抱え込んでしまう人だ。優しい彼の心の中にわだかまりが澱のように沈んでいくのが嫌だった。
「……それは、オレが嫌なんです」
これから生涯を共にするのなら、そういった不安や苦しみに寄り添って、出来る限りオレの愛で埋めてあげたいと感じる。全てはオレの我が儘だ。
「今日はオレのせいで傷ついた敬久さんを、オレが出来るだけ、心も体も……慰めたいなって」
体を少しだけ離して「我が儘でごめんなさい」と言い、敬久さんを見つめた。
「遥君のせいじゃないし、それは全然我が儘じゃないよ」
敬久さんは「寧ろ僕の方が我が儘だよ」と言った。
「拗ねれば君が優しくしてくれるって分かっているから、こんな風に……君を振り回すような態度を取ってしまって……遥君の方が辛かったはずなのに」
またギュッとオレを抱きしめ「僕こそごめんね」と囁いた。
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