【完結/R18/短編】恋人として君と続いていく日々

テルマ江

文字の大きさ
25 / 30

25

しおりを挟む
 敬久さんと存分に愛し合った後、オレはしばらく起き上がれずに頭がぼんやりとしてしまっていた。敬久さんはそんなオレの体を拭き、ガウンを着させ、布団までかけてくれた。

(あ、あれ、オレ、何回イッた……? 覚えていないくらいに気持ち良くしてもらってないか……?)

 彼を慰めるのが目的だったはずが、自分の方が慰められたような気がする。

「……敬久さん」
「ん? どうしたの?」

 敬久さんは下着にワイシャツを羽織っただけの状態でオレの傍らに座り、お茶を飲んでいた。

(乱れた格好の敬久さんは普段の感じと違っていて素敵だ……)

 ぽーっと見惚れていると「遥君?」と首を傾げられたのでガバっと起き上がった。

「すみません。見惚れてしまって」
「見惚れる所あったかなあ」

 敬久さんはクスクスと笑ってオレを引き寄せた。

「体は辛くなっていない?」
「はい……何て言うか……ずっとお腹の中が気持ち良くて、すごくて……敬久さんはやっぱり、上手ですよね」
「上手って……うん、ありがとう」

 オレがモゴモゴとそう呟くと敬久さんは気まずそうにお茶を啜った。

「……オレももっと頑張ります」
「遥君は十分頑張っているし、今日も色々考えてくれてすごく嬉しかったよ」
「でも、オレ、もっともっと……あなたを慰めたかったんです!」
「いや……すごく慰めてもらえたし、楽しかったよ」

 敬久さんは「本当に頑張り屋だね」と頭をポンポンと撫でてくれた。

「楽しかったなら良かったです……また、ああいうのしましょうね?」

 オレはベッドのサイドボードに置かれたネクタイをチラリと見た。
 
「……また、あんなことを君にさせて良いの? 本当に?」
「あんなことってオレが言い出したことですし。それにオレ達もうあと何ヶ月かで……こ、恋人になって2年じゃないですか?」
「うん、そうだね」
「いつか倦怠期を迎えたりするかもしれませんし、今までしたことない色々なことを試すのも、良いんじゃないかなって……」

 オレが消え入りそうな声で呟くと敬久さんはゴホゴホとむせた。

「だ、大丈夫ですか!?」
「……うん、お茶でむせただけだから」

 むせたせいか頬が赤くなっている。敬久さんはペットボトルの蓋を閉め、サイドボードに置いて息をついた。

「遥君はそういうことも考えてくれているんだね」
「この先も、ずっとずっと一緒にいるなら、あなたの心も……体も、全部オレが満たしたくて」
「そっかあ。今でも君にすごく愛されている自覚があるんだけど……これ以上があるんだ」

 敬久さんは口元を押さえて「幸せ過ぎておかしくならないかな」とボソリと呟いた。

「ありがとう。遥君」

 返事代わりにギュッと腕に抱きつくと敬久さんもオレの肩を抱いてくれた。

「今日出来なかった夜景デートはいつ行こうか?」
「またデートしてくれるんですか? 嬉しいです!」
「今日は僕が拗ねて台無しにしたからね」
「違いますよ。今日は、何だか……お互い、どうにもならないタイミングがあるって言うか……」

 何と言って良いのか分からないのでしどろもどろになりながら話を続けた。

「こういう、どうにもならない時は……何とか、問題を一つ一つ対処していくしかないですし」

 今日と言う日が無かったことにならなかったのは嬉しいけれど、アクシデントさえ無ければもっと良かったのは事実だ。ただ、今日のアクシデントを起こらないようにするためには、オレが過去に戻って大学生時代からやり直さなければならない。それは無理な話だ。

「オレも敬久さんも喧嘩して発散ってタイプじゃないですから……何かあった時は今日みたいに二人で話し合いたいなって、思います」
「僕は……自分の中で完結させる所があるから、君とちゃんと話し合うよ」
「お互いに……有耶無耶にして、わだかまりみたいになるのは……オレ、嫌なんです」
「うん、分かった」

 敬久さんはオレの左手を取り、指輪を撫でながら頷いた。

「夜景デートはまた今度行けたら嬉しいです! 今月は敬久さんの誕生日もありますし、イベントが重なっちゃいますから……」

 10月の24日は敬久さんの誕生日だ。プレゼントはもう用意してあるが、今月は忙しそうなので去年のように当日にプレゼントを渡しに行き、別日にちゃんとお祝いがしたい。

 敬久さんは「誕生日」と呟き、きょとんとしてからハッとした表情になった。

「本当だ。僕、今月が誕生日だね」
「……忘れてたんですか?」
「うーん、日付は覚えていたんだけど、何だかもっと先のような気分でいたかな」
「忘れちゃダメですよ」

 オレは敬久さんの肩口にグリグリと頭を擦り付けた。

「ごめん。次回からはちゃんとスケジュールに自分の誕生日を入れておくよ」

 敬久さんはオレの頭を撫で「それも何だかなあ」と呟いた。

「……じゃあオレが一ヶ月前から予定を聞くようにします」
「君の手を煩わせるのもなあ……あ、遥君の誕生日は覚えているからね?」
「う、嬉しいですけど、自分の誕生日も大事にしてください」
「うん、ごめんね」

 オレの額に唇を落とし、困った風に微笑んだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

処理中です...