色づく世界の端っこで

第一章

12 番外編

「それはな。依澄が家にいるたびに重い顔をしていたからかな。まるで、息苦しいかのように。だから、なにか楽しいことをさせたいなと思ってな。色々進めてたら、特にドラムに興味あったらしく、ずっと、その動画見ててな。ほんとに面白かったわ。それで、強引に軽音部に入部しようと誘ってみたんだ。」
と、昔を懐かしむような笑顔を見せた。逆に、香山は今までそれを知らなかったのか。口をぽかんとさせた。
「ふふふ。絆ってすごいね。みんな、笑顔で溢れてるね。」
と、目を細めて笑った。そして、また、星井が次のターゲットを起こそうとしたとき、悪魔のような笑顔を浮かべた仲野先生と天使のような笑顔を浮かべた和中が近づいてきた。そして、香山は、黒縁眼鏡をかけ直し、微笑みを浮かべた。
「では、星井くんもそろそろ満足したでしょうから、寝ましょうか。流石に、もう寝ないといけませんよ。」
「仲野先生の言うとおりだ。睡眠時間を削るのは、活動に支障をきたす。早く寝る。」
「そういうことやな。星井くん。僕の布団においで、ポカポカして気持ちからな。」
と、すごい力で、布団に引き込まれた。星井は、また泣きそうになったが、そうなる前に、和中が子守唄を歌った。しばらくするとと、スヤスヤと、寝息を立てながら夢の中に入っていた。三人はその姿を見ながら、目があって笑った。そして、星井の意外な部分が見れなかった日伊野や夏海については、残念だったな。と、考えていた。星井は、周りを起こし、迷惑をかけたが、結果的には、過去を振り返らせ、絆を深めた、キューピットのような役を担ったのである。しかし、仲野先生については、面倒くさい出来事を起こしてしまったかもしれない。だが、一つ言えるのは、普段見れない、星井の笑顔、考えが知れたのかもしれない。ちなみに星井はこの夜のことを覚えていない。朝起きたら、和中の布団の中にいて、一瞬戸惑ったが、無表情でスッと布団から抜け出した。仲野、香山、和中は、起こせれたせいか、なかなか寝れずに、少し目の下にくまができていた。それを見つけた星井は
「どうしたんですか。」
と、無表情で訪ねてきた。それを見て三人は、寝ぼけてた星井は、少し面倒くさいけれど、可愛いな。と思い。もう、あの星井は、見れないのかと寂しく思ったことを、星井、夏海、日比野は知らない。