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第五話 怒りが増幅していくルシャール殿下
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継母とオディナティーヌの言葉によって、今やわたしは、四面楚歌の状態になった。
どうしてわたしがこんなことを言われなければならないのだろう?
わたしは継母にかわいがられたことなど一度もない。
それどころか、ずっと敵視されていた。
オディナティーヌには向ける笑顔も、わたしには怒った表情や厳しい表情を向けることが多く、笑うのは嘲り笑う時だけだった。
わたしは、オディナティーヌに対して礼儀作法を指導していた。
わが公爵家にきた頃は、礼儀作法が全くといっていいほどなっていなかった。
継母が甘やかしてきたのが大きいと思う。
これでは公爵家の令嬢として生きていくことはできない。
継母は、この公爵家に来てもオディナティーヌを甘やかすだけだった。
そこで、わたしがオディナティーヌを公爵家令嬢としてふさわしい女性にする為、指導しようと思った。
オディナティーヌもそれを受け入れたのだけれど、まだ初歩的なレベルなので、それを高いレベルにする為には、厳しい指導をするしかないと思った。
そして、それを実行した。
イジメと言われて思いつくのはそれぐらいだ。
しかし、これはイジメではないとわたしは思っている。
わたしはオディナティーヌが素敵な淑女になってほしいという思いで指導をしていたからだ。
そして、オディナティーヌは、わたしが少し厳しく指導しても、決して怒ることはなく、従順な表情で接してくれていた。
イジメであれば、その場でつらそうな表情をするだろう。
もちろん指導が厳しすぎたというのであれば、反省はしなければならないだろう。
ただ、公爵家に来た時よりは、だいぶましになってきたとはいうものの、今時点でも礼儀作法が身についているとは言い難いオディナティーヌだ。
もっと厳しく指導をしてもいいくらいだと思っている。
いずれにしても、これをイジメと言われるのであれば、はなはだ心外なことだ。
ルシャール殿下は、この二人に惑わされてしまったのだろうか……。
もしそうだとすれば、ルシャール殿下の目を覚まさなければならない。
わたしはそう思っていると、ルシャール殿下は、
「どうだ、リディテーヌ。きみはこうしてオディナティーヌのことを傷つけていたのだ。その点、オディナティーヌは親孝行だし、そして、きみにここまでイジメられても、けなげにきみのことを姉として慕っている。こんなに素敵な人はなかなかいない。この人であれば、きっといい妃になってくれると思った。だからこそ、わたしは新しい婚約者としてこのオディナティーヌを選ぶことにしたのだよ。理解してくれたのかな、この傲岸な態度を取る人よ! きみは、わたしの婚約者としてふさわしくないのはもちろん、人間としても最悪の部類の入るほどの人間だ。このようなものがわたしの婚約者であり続けていたのは、わたしの恥でもある。恥ずかしいことだが、わたしは、きみと婚約をした時、きみに対する悪い噂は聞いていないわけではなかった。しかし、それはきみのことを妬む人たちが、大げさに言っていたものだと思っていたのだ。そして、わたしはきみのことが好きになってしまった。容姿がわたしの好みであったのが大きかった。今思うと、なぜきみのことが好きになり、『愛の言葉』を言い続けてしまったのだろうと思う。このような人を婚約者にしてしまったのは、恥ずかしい話だ。これではわたし自体の権威が低下してしまう。わたしはもうきみの顔など二度と見たくない!」
と吐き捨てるように言った。
わたしは一気に頭に血が上ってきた。
どうしてわたしにそういうことを言うの!
周囲の讒言を信じるなんて!
「ルシャール殿下、わたしはルシャール殿下の思っているような最悪の部類の入る人間ではございません!」
わたしはそうルシャール殿下に向かって叫ぶ。
そして、自分が思っていることを話そうとする。
ルシャール殿下は、周囲、特にこの継母とオディナティーヌのわたしに対する讒言に惑わされているということを話そうとする。
しかし……。
わたしがそのような話をする前に、ルシャール殿下に遮られてしまう。
「黙れ! リディテーヌ。きみはまだ自分が周囲に対して迷惑をかけ、嫌われていることが理解できないのか?」
ルシャール殿下にそう言われ、わたしの心は沸騰していく。
「ルシャール殿下こそ何をおっしゃっているのです。この継母やオディナティーヌ、そして、物事の上辺しか理解できない者たちの讒言をそのまま信じてしまうとは。殿下とあろうものが、全く何をしていらっしゃるのでしょうか? 今から人の讒言を信じているようでしたら、暴君コースまっしぐらですわ。王室の方々や貴族たちや領民たちのどれだけ迷惑をかけることになるのか、想像もつきません。殿下ともあろうお方が……。わたしは悲しくて涙が出そうになってきます。そのようなルートに行きたくなければ、このようなものの讒言を取り上げることなく、わたしとの婚約を維持し、妃にしてほしいものですわ」
わたしは、怒りを抑え込んで、高笑いをした。
それがルシャール殿下の怒りを増幅させていく。
どうしてわたしがこんなことを言われなければならないのだろう?
わたしは継母にかわいがられたことなど一度もない。
それどころか、ずっと敵視されていた。
オディナティーヌには向ける笑顔も、わたしには怒った表情や厳しい表情を向けることが多く、笑うのは嘲り笑う時だけだった。
わたしは、オディナティーヌに対して礼儀作法を指導していた。
わが公爵家にきた頃は、礼儀作法が全くといっていいほどなっていなかった。
継母が甘やかしてきたのが大きいと思う。
これでは公爵家の令嬢として生きていくことはできない。
継母は、この公爵家に来てもオディナティーヌを甘やかすだけだった。
そこで、わたしがオディナティーヌを公爵家令嬢としてふさわしい女性にする為、指導しようと思った。
オディナティーヌもそれを受け入れたのだけれど、まだ初歩的なレベルなので、それを高いレベルにする為には、厳しい指導をするしかないと思った。
そして、それを実行した。
イジメと言われて思いつくのはそれぐらいだ。
しかし、これはイジメではないとわたしは思っている。
わたしはオディナティーヌが素敵な淑女になってほしいという思いで指導をしていたからだ。
そして、オディナティーヌは、わたしが少し厳しく指導しても、決して怒ることはなく、従順な表情で接してくれていた。
イジメであれば、その場でつらそうな表情をするだろう。
もちろん指導が厳しすぎたというのであれば、反省はしなければならないだろう。
ただ、公爵家に来た時よりは、だいぶましになってきたとはいうものの、今時点でも礼儀作法が身についているとは言い難いオディナティーヌだ。
もっと厳しく指導をしてもいいくらいだと思っている。
いずれにしても、これをイジメと言われるのであれば、はなはだ心外なことだ。
ルシャール殿下は、この二人に惑わされてしまったのだろうか……。
もしそうだとすれば、ルシャール殿下の目を覚まさなければならない。
わたしはそう思っていると、ルシャール殿下は、
「どうだ、リディテーヌ。きみはこうしてオディナティーヌのことを傷つけていたのだ。その点、オディナティーヌは親孝行だし、そして、きみにここまでイジメられても、けなげにきみのことを姉として慕っている。こんなに素敵な人はなかなかいない。この人であれば、きっといい妃になってくれると思った。だからこそ、わたしは新しい婚約者としてこのオディナティーヌを選ぶことにしたのだよ。理解してくれたのかな、この傲岸な態度を取る人よ! きみは、わたしの婚約者としてふさわしくないのはもちろん、人間としても最悪の部類の入るほどの人間だ。このようなものがわたしの婚約者であり続けていたのは、わたしの恥でもある。恥ずかしいことだが、わたしは、きみと婚約をした時、きみに対する悪い噂は聞いていないわけではなかった。しかし、それはきみのことを妬む人たちが、大げさに言っていたものだと思っていたのだ。そして、わたしはきみのことが好きになってしまった。容姿がわたしの好みであったのが大きかった。今思うと、なぜきみのことが好きになり、『愛の言葉』を言い続けてしまったのだろうと思う。このような人を婚約者にしてしまったのは、恥ずかしい話だ。これではわたし自体の権威が低下してしまう。わたしはもうきみの顔など二度と見たくない!」
と吐き捨てるように言った。
わたしは一気に頭に血が上ってきた。
どうしてわたしにそういうことを言うの!
周囲の讒言を信じるなんて!
「ルシャール殿下、わたしはルシャール殿下の思っているような最悪の部類の入る人間ではございません!」
わたしはそうルシャール殿下に向かって叫ぶ。
そして、自分が思っていることを話そうとする。
ルシャール殿下は、周囲、特にこの継母とオディナティーヌのわたしに対する讒言に惑わされているということを話そうとする。
しかし……。
わたしがそのような話をする前に、ルシャール殿下に遮られてしまう。
「黙れ! リディテーヌ。きみはまだ自分が周囲に対して迷惑をかけ、嫌われていることが理解できないのか?」
ルシャール殿下にそう言われ、わたしの心は沸騰していく。
「ルシャール殿下こそ何をおっしゃっているのです。この継母やオディナティーヌ、そして、物事の上辺しか理解できない者たちの讒言をそのまま信じてしまうとは。殿下とあろうものが、全く何をしていらっしゃるのでしょうか? 今から人の讒言を信じているようでしたら、暴君コースまっしぐらですわ。王室の方々や貴族たちや領民たちのどれだけ迷惑をかけることになるのか、想像もつきません。殿下ともあろうお方が……。わたしは悲しくて涙が出そうになってきます。そのようなルートに行きたくなければ、このようなものの讒言を取り上げることなく、わたしとの婚約を維持し、妃にしてほしいものですわ」
わたしは、怒りを抑え込んで、高笑いをした。
それがルシャール殿下の怒りを増幅させていく。
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