27 / 251
英雄達の肖像編
大都市フィラ・ルクス
しおりを挟む世界には、"色"というのは無数にある。
画家にっとては作品を彩り、引き立たせるためにある存在だろう。
その中でも、最も美しい"色"とはなんなのであろうか?
この答えに辿り着いたゆえに描かれた絵画は、それを見る者を魅了するのか……?
それとも……恐怖させるのか?
__________
ガイとメイア、クロード、ローラの4人はフィラ・ルクスが見える丘まで来ていた。
この町の大きさはカレアやリア・ケイブスとは比較にならないほど大きい。
貴族も多く住む、この町はセルビルカ王国でも三大都市と言われるほどだった。
ここまで4日半。
ほぼ休みなく歩きっぱなしだったので、少なくとも疲労の表情は見える。
特にローラの顔は青ざめていたが、みなのペースに合わせるためにか無理していた。
「おいおい、お前、大丈夫かよ」
「だ、大丈夫よ!!全っ然平気!大丈夫!」
顔色を伺うに全く大丈夫そうには見えない。
ここまでメイアが何度、"休もう"と言ったかわからなかった。
「まぁ、もう少しで町に着く。町に着いたら、ゆっくり休んだらいい」
クロードの言葉に皆が頷くが、ただ1人、メイアだけ目を細めて町の方を見ていた。
「メイア、どうしたんだ?」
「んー。何か列のようなものが見えるのだけど……」
「列?」
皆も一斉に町の方を見る。
確かに、"黒く長い何か"が伸びているように見えた。
「とにかく行ってみよう。日が暮れるまでには町に入りたいからね」
「ええ」
こうして町の方へ向かうこと数刻。
夕方になりかけた頃に町の前に到着した一向が目にしたのは、メイアの言う通り、ぞろぞろと並ぶ商人や冒険者たちの長蛇の列だった。
「なんだ……これは……」
「こ、こんな列、見たことないわ……」
一番驚いていたのはローラだった。
それもそのはずで、見慣れた町の入り口の門前が尋常ならざる状態であったのだ。
「何かあったのかしら?」
「聞いてみたらいいんじゃないか?」
「確かに」
クロードは前に立つ商人に話しかけた。
商人は振り向き、快く応対してくれた。
「すまない。何かあったのかな?」
「私にもよくわからないんだよ。前の方にいる奴の話だと、町で惨殺事件があったとかなんとか」
「惨殺事件?」
クロードはそう言いつつ、ローラの方を見た。
目が合ったローラは"あたしは何も知らないです"との意思表示で首を横に振る。
「ああ。詳細はわからないが、そのせいで検問が厳しくなってるって」
「そうか……ありがとう」
クロードは3人に向き直る。
するとメイアだけ首を傾げていた。
「おかしい……ですよね」
「どうして、そう思う?」
「だって、中で事件があるのに、なぜ入る側の検問が厳しいのかしら?」
クロードはメイアの言葉にニヤリと笑った。
ガイとローラは"確かに"という表情で頷く。
「いい着目点だ。だが、もう一歩だな」
「え?」
「僕らが、ここに着いてから、町から出てきた人間はいたかい?」
「い、いないです」
「つまり、この町に入ったら出られないんだ。中に入れる人間を厳しく検問しているというよりも、中に入れる人間を極力制限しているということになる」
「おいおい……それじゃあ俺たち……」
「このままだと、この町には入れないな。入れたとしても数日後か……。まぁローラが貴族特権を使うなら別だが」
「え……」
ローラの表情が固まった。
目があさっての方向へズレていくのを見ると、"やましい"ことがあると簡単に想像がついた。
「無理ならいいさ。この町に来たのは興味本意だからね。無理して入らなくてもいい。他の町を目指そうか」
「そ、そんな……」
メイアの悲しげな表情にローラは少し心を痛めていた。
クロードは少し笑みを溢すと口を開く。
「事件が収まったら、また来たらいい」
「は、はい……」
そんなやり取りをしていた時だった。
後方、列の横を数頭の馬が歩いてきていた。
ガイたちが見ると、それは騎士団の馬で、跨った女性に見覚えがあった。
「ん?」
「ん?」
先頭の馬に跨る女性はガイたちの横で止まった。
紫色の三つ編みにされた髪を肩に乗せ、上半身には軽装の銀の鎧を羽織る。
下は動きやすいようにか、短い赤色のスカートで、足にはブラウンのブーツを履いていた。
腰には細剣を差す。
「あら、君たちは……」
「君は、リリアン・ラズゥか」
クロードがそういうと、列に並んでいた商人や冒険者達が一斉に振り返る。
そして、皆が顔を赤らめ、まじまじと彼女を見ていた。
この周りの反応でリリアンという女性の人気ぶりが伺えた。
「数日ぶり……くらいかしら?まさかこんなに早く尋ねて来てくれるなんて」
「ガイが、"どうしても君が気になる"って言っててね。それなら行こうとなったわけだ」
「俺はそんなこと言ってねぇだろ!!」
顔を赤らめ反論するガイ。
メイアとローラが呆れ顔でそんなガイを見る。
嫌な視線を感じ取ったガイは2人を睨んだ。
一方、リリアンは笑みを浮かべていた。
「あら、それは嬉しいわね。是非、私の屋敷に招待したいわ」
「僕らも是非お邪魔させて頂きたいが、この列だ。残念だが入るとなると二、三日はかかるだろう」
「それなら私の貴族特権で入ればいい。ついて来なさい」
「それは助かる」
クロードがニヤリと笑った。
ガイとメイア、ローラは顔を見合わせていた。
あまりにもスムーズに事が運んだことに驚いていたのだ。
4人は、これ以上無いタイミングでの運命的な出会いによって、この日のうちに大都市フィラ・ルクスに入ることができのだった。
1
あなたにおすすめの小説
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
愛鶴ソウ
ファンタジー
十二の公爵によって統制された大陸の内、どの公爵にも統治されていない『東の地』
そこにある小さな村『リブ村』
そしてそこで暮らす少年剣士『クロト』。
ある日リブ村が一級魔物『ミノタウロス』によって壊滅させられる。
なんとか助かったクロトは力を付け、仲間と出会い世界の闇に立ち向かっていく。
ミノタウロス襲撃の裏に潜む影
最弱属性魔剣士の雷鳴が今、轟く
※この作品は小説サイト『ノベルバ』、及び『小説家になろう』にも投稿しており、既に完結しています。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる