最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

文字の大きさ
28 / 251
英雄達の肖像編

メリル・ヴォルヴエッジ

しおりを挟む

大都市フィラ・ルクス


王国で三大都市に数えられる大きさを誇るこの町は、白を基調としたシンプルな建造物が多く、その大きさは他の町とは比較にならない大きさだ。

中央には川が流れて大きな橋がかかる。
北と南にきっちりと区画分けされ、北は貴族が多く住む地区で、南は平民が大半を占めていた。

ガイ達が入ったのは、ちょうど中央に位置する南東門。

川沿いに面した平民街を歩き、中央にかかる橋を渡ると、そこは見たこともないほど大きな建物が並び立つ。

ガイとメイアは"屋敷"と呼ばれる建物は見た事がなかったため、2人で目を丸くした。

先頭をゆっくり馬で歩くリリアンは、そんな2人を少し振り向き見ると微笑んだ。

「もうすぐ私の屋敷だよ」

リリアンがそう言って間もなく、大きな門がある屋敷に辿り着いた。

門から屋敷までの距離は数百メートルはあり、中央には大きな噴水がある。

その光景を見たガイとメイアは屋敷の入り口前に着くまで口が開きっぱなしだった。

入り口に到着すると馬を降りるリリアン。
その馬を若い執事らしき男性がお辞儀をしながら手綱を取る。

そして、玄関先から、1人の執事服を着た白髪で初老の男性が歩いてきた。
 
「おかえりなさいませ、お嬢様。ご心配致しました……」

そう言ってお辞儀をした。
この立ち振る舞いで、この屋敷の執事長であることが容易に伺えた。

「すまなかったね。私も油断した」

「いえ、ご無事でなによりでございます。その方々は?」

「ああ。私の命の恩人だ。今日はお茶に招待したのよ」

「そうでございましたか……ですが、お嬢様、本日は"ヴォルヴエッジ家"のご令嬢との会合の日でございます」

執事長のその言葉に、リリアンは"あっ"と声を上げた。
その後すぐに大きくため息をつくと、ガイ達の方を見た。

「すまない。すぐ終わるから、待っててくれるかい?」

「ああ。僕たちは構わないよ」

「彼らを客間に通してくれ。失礼の無いようにな」

「かしこまりました」

執事長が頭を下げると、ガイ達を客間まで案内した。
その間、屋敷の中をキョロキョロと見渡すガイとメイア。
今まで見たことのないものだらけで興奮していた。

「あんたたち、落ち着きなさいよ」

「落ち着いてられっかよ。なんだよ、あのでっけぇ置物……」

「あれは"竜"かしら?」

「太古の昔は存在したらしいからね」

その置物にはクロードも興味を示す。
一方、ローラは呆れ顔だった。
なにせ自分も貴族で、見慣れたものばかりだったからだ。

「"竜"って昔いたのか?」

「らしいね。僕らが生まれる何万年も前の話しさ。四人の竜の子が父親である魔竜を倒す神話がある」

「すごい!」

「そして、その中でも世界最強と言われる"火の王"と呼ばれた存在に勝った伝説の男がいた。その男も炎を纏ったという」

「マジか!俺と一緒だ!」

「だが、彼が纏ったのは"黒炎"だったそうだ。波動を黒炎に転換するなんてありえない。黒い炎なんて存在しないからね。単なる御伽話さ」

ガイとメイアは目を輝かせてクロードの話に聞き入った。
ローラは相変わらず呆れ顔だった。

そんな会話をしていると客間に到達した。
中に入ると広い空間に、高そうな絨毯が敷かれ、真ん中には四角い木造りのテーブルがあった。
それを囲むように高そうな椅子が置かれ、窓方には向かい合わせるように2人掛けのソファもおいてある。

「な、なんだ、この部屋は……俺の家よりでけぇ……」

「あんた、それは言い過ぎでしょ」

「ローラさん……事実です……」

「え?」

ローラは申し訳なさそうに苦笑いした。
そこまで、この2人が貧乏だったとは思いもよらなかった。

「ま、まぁ、私の家とか、この家とか、ヴォルヴエッジ家が特別なだけだから……」

「フォローになってねぇよ……」

ガイのこめかみに血管が浮き出る。
今にもローラに殴りかかりそうな勢いだ。

「そういえば、会合に来てる方って、そのヴォルヴエッジ家のご令嬢?」

「そうみたいね。私もよくは知らないけど、めっちゃくちゃ怖い人だって聞いたことあるわ」

「へー」

クロードがその話を聞いて少し思考した。
そしてすぐに口を開く。

「確かラズゥ家、スペルシオ家、ヴォルヴエッジ家は三大貴族だったな」

「ええ。そうよ。この町にはラズゥ家とスペルシオ家。王都にヴォルヴエッジ家がある」

「ヴォルヴエッジ家の令嬢は、なぜ、わざわざこの町まで?」

「さぁ?あたしは知らないわ。家出の身だしね」

他の町の貴族がわざわざ、足を運ぶというのは稀なことだった。
あるとする可能性としては婚約だろうかとクロードは考えたが、どちらも女性である以上それは無い。

そうこうしていると、ようやく執事長が客間のドアを開けた。

リリアンがヴォルヴエッジ家の令嬢との会合を終えたらしい。

4人はリリアンが待つ応接間へと移動する。
移動する際、廊下で1人の背の高い女性とすれ違った。

その女性は女学校の制服を着用していた。
グレーの上着、赤いネクタイ、短めのスカートとブラウンのブーツ。
何よりもその透き通るほどの"白い肌"とそれに負けないほどの銀色の長髪の美しさは、誰の目をも奪うほどだ。

顔立ちも美人であったが、その眼光は鋭く、すれ違い様、ガイ達を睨んだ。

そして背後から、いきなり執事長を呼び止めた。

「ねぇ?その汚い格好の連中はなに?」

一瞬、ガイたちは戸惑った。
振り向くと、その女性は凄まじい圧を放っていた。
殺気に近いなにか……その正体はガイにはわからなかった。

「メリル様……この方々はリリアンお嬢様の命の恩人でして……」

「命の恩人?ああ。例の大失態の件ね」

「は、はぁ……」

メリルと呼ばれた銀髪の女性は嘲笑うがのような表情を浮かべる。

「いくら命の恩人だからって、汚い平民を屋敷に入れるなんてね。やっぱりラズゥ家はたかが知れてるわ」

「……」

執事長が悲しげに俯く。
メリルの言葉に何も言い返せなかった。
だが、この中で1人だけ、その言葉に我慢ができず、口を開いた者がいた。

「お前、黙って聞いてりゃ何様だ!」

そう言い放ったのはガイだった。

「何?あなた?」

「や、やめなさいガイ!相手はヴォルヴエッジ家!三大貴族の一位なのよ!」

「それがどうした!!リリアンは一緒に戦った仲だ。あいつを馬鹿にするやつは俺が許さねぇ」

「へー。平民の分際で私とやろうっていうの?」   

メリルは笑みを浮かべるが、その目は全く笑ってはいない。

「そこまでだ」

このやり取りを制止するかの如く、応接間の方から声がした。
ゆっくり歩いてくる声の主はリリアン・ラズゥだった。

「メリル、いい加減にしろ」

「あなた、こんな連中と関わるなんてやめなさい。屋敷がけがれるわ」

「どんな者と関わろうが私の勝手だろう。それに君に噛みついた、この少年の波動数値は、あなたを凌駕しているわ」

「は?」

メリルは困惑した。
舐め回すようにガイを見ると、すぐに眉を顰める。

「冗談でしょ?」

「私が冗談を言ったことがあるか?」

その真剣な眼差しにメリルはため息をついて振り返る。
屋敷の入り口へと向かって歩き始めた。

「まぁ、なんでもいいわ。でも忠告しておく。そんな人間と関わるのはやめときなさい。必ず後悔するから」

ただそれだけ捨て台詞を吐くと、メリルは屋敷を後にした。

「なんだよ、あの女」

「あんたね!貴族相手にあの態度はマズイわよ!殺されたいの!?」

「すまん……腹が立った」

ローラの必死の表情で、ことの重大さを理解した。
そんなガイにリリアンが近づく。
気のせいか少し顔が赤らんだ様子だ。

「ありがとう。ガイ」

「いや、別に、どうってことねぇよ」

「お茶にしましょう。長旅だったから疲れたでしょう」

そう言ってリリアンが先導し、応接間に通された4人。
そして彼らは久しぶりに心安らぐ時間を過ごすのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

愛鶴ソウ
ファンタジー
十二の公爵によって統制された大陸の内、どの公爵にも統治されていない『東の地』 そこにある小さな村『リブ村』 そしてそこで暮らす少年剣士『クロト』。 ある日リブ村が一級魔物『ミノタウロス』によって壊滅させられる。 なんとか助かったクロトは力を付け、仲間と出会い世界の闇に立ち向かっていく。 ミノタウロス襲撃の裏に潜む影 最弱属性魔剣士の雷鳴が今、轟く ※この作品は小説サイト『ノベルバ』、及び『小説家になろう』にも投稿しており、既に完結しています。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

処理中です...