最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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大迷宮ニクス・ヘル編

成長

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 西の遺跡


 メイアとフィオナは新たな部屋に入った。
 そこは長方形、奥に長い部屋で、とても薄暗かった。
 明かりとなるのはメイアが灯している小さい炎だけ。

 2人は部屋に入った瞬間、扉が閉まり閉じ込められる。
 ここまではいつも通りだったが、今回は少し違った。

 数百メートル先には、もう既に真っ黒で重厚な鎧を着た魔物が立っていたのだ。
 その鎧の魔物は首が無く、瘴気が湯気のように首から上がる。

 ちょうど大剣を振り上げ、地面にいる人影に叩きつけようとしていた。

「フィオナさん!!」

 メイアが叫ぶと、冷静なフィオナはコツンと地面を杖で叩く。
 黒い鎧の魔物の大剣は振り下ろされ、地面を簡単に破壊してクレーターを作る。

「が……」

 人影は一瞬でメイアの前に転移していた。

 仰向けに倒れるのは傷だらけの男性冒険者。
 この冒険者には見覚えがあった。
 スキンヘッドの大柄の男だ。

「あなたは最初の町で出会った……」

「お、お前は……逃げろ……駆け出しのガキじゃ無理だ……殺されるぞ」

 息は荒いが、かろうじて意識はあった。
 フィオナは一呼吸おいて、口を開く。

「ワシがこいつを見ている。お主は奴を」

「はい」

 フィオナの言葉に驚くスキンヘッドの男。
 構わず、メイアは落ち着いて黒い鎧の魔物に向かって静かに歩く。

「無理だと言っているだろ!!レベル7はある!!」

「"ブラックアーマー"だろ?確かにレベル7で強力な魔物だが、メイアだけで十分じゃよ」

「なんだと……駆け出しのガキなんだぞ……」

「見ていればわかるさ」

 そう言ってフィオナはニヤリと笑う。
 スキンヘッドの冒険者は首だけを傾けてメイアの方を見た。
 どこから見ても、まだ、そう年齢もいかない少女だ。
 それがレベル7の魔物と1人で戦うというのはあり得ないことだった。


 黒い鎧の魔物・ブラックアーマーは大剣を斜め下に構えると一気にダッシュし、メイアとの距離を詰める。
 大剣は地面を擦り火花を上げた。

 遠距離型の波動使いなら、すぐに回避行動をとらなければならない展開だが、今のメイアは違った。

 お互いの距離が数メートル、完全にブラックアーマーの武器である大剣の間合いに入る。

「炎の刃を……」

 メイアが杖を掲げるとブラックアーマーのハイスピードの横の斬撃に合わせて、地面から"炎の剣"が突き上がる。
 それはブラックアーマーの大剣を弾くだけでなく、天井まで伸びて突き刺さるほどの長さだった。

 ブラックアーマーはバンザイする形で仰反る。

「炎の彗星すいせい……」

 メイアの周囲、空気中に細かい赤い粒子が発生する。
 それが一瞬で杖の前に集まると小さい炎の球が作られる。

 さらにその球は縮小し綺麗な赤い玉になる。
 メイアは杖を勢いよく横に振ると、炎の玉は高速で飛び、ブラックアーマーの胸に直撃した。

 ズドン!!という轟音が部屋中に響き渡り熱波が広がった。
 同時にブラックアーマーは凄まじいスピードで後方へ吹き飛ばされ壁に大の字で激突する。

「炎の巨星!!」

 杖を持たぬ方の手をかざしてメイアが叫ぶと炎の粒子は一点に集まり巨大な球になる。
 そして一気に杖を前に突き出すと、その球は撃ち出された。

 地面を抉りながら高速で進む巨大な炎の球はブラックアーマーに直撃すると大きな火炎で、その真っ黒な体を包み込んだ。

 悶え苦しむブラックアーマーだったが、炎の中で徐々に体が崩れていき、最後には灰となって消えてしまった。

 レベル7の魔物をたった1人で瞬時に処理してしまったメイアに、倒れているスキンヘッドの冒険者は唖然としていた。

 ……一方、フィオナは笑みをこぼす。
 メイアが2人の元へ戻ると、今の戦闘に納得がいっていないような顔をしていた。

「もう少し、早く"炎の刃"は発生させれてました……私の判断が遅かったです……」

「まぁ上出来じゃろう。近接型の敵との戦い方は大体完成に近いと言ってもいい」

「ありがとうございます」

 その会話を聞いていたスキンヘッドの冒険者は言葉が無かった。
 メイアは数ヶ月前にカレアの町に来た駆け出し冒険者だ。
 それが、たった1人でレベル7の魔物を倒せるまで成長していたことがあり得ないと思ったのだ。

「な、なんなんだ……俺は夢でも見てるのか……」

「ある意味そうかもしれんな。お前、パーティはどうした?」

「あ、ああ、最初の部屋でバラバラにされちまったんだよ……それから仲間とは会えてない」

「私と一緒ですね。兄を見ませんでしたか?」

「兄?ああ、あの赤髪のガキか。いや、見てないな」

「そう……ですか」

 メイアはため息をついた。
 ここに入って数日は経つが仲間達と合流できる気配が全くなかった。

「とにかく次の部屋に行くしかあるまい」

「はい……」

「俺たちは……ここから出られるのか?」

「わかりません……ですが、もしかしたらクロードさんがなんとかしてくれるかもしれません」

「クロードって……あの黒髪のか……だといいがな」

 スキンヘッドの冒険者が体を起こし、足を震わせながらも立ち上がった。
 同時に部屋の扉が開くと、その光景を見た全員が顔を見合わせる。

「俺が一緒でも大丈夫か?」

「ええ。仲間は多い方がいいと思いますから」

「メイアがそう言うならワシは構わん」

 3人は扉を潜った。
 メイアが炎を灯して明かりにすると、また細い道が続いていることがわかる。

 かなりの距離を進んだあたりで、今までに見たことのないくらい広い場所に出た。
 薄暗い中にも青白く発光するような壁、正面には巨大な門と扉があった。

 スキンヘッドは息を呑む。
 メイアも力強く両手で杖を握った。

「まさか……これは」

「ワシらはようやく目的地に到着したかもしれぬ」

「それって……」

「この迷宮のあるじの部屋じゃろうな」

 冷静なフィオナは笑みをこぼす。
 それは人間達が勝手に決めた"レベル"という概念に縛られていない高位の魔物。

 魔王直属の最強クラスの魔物の部屋だった。
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