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エターナル・マザー編

盗賊

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研究都市イース・ガルダン


昼頃にはクロード、メイアは町の中央にいた。
町の中心部は広場になっており東西南北と道が分かれる。
真ん中には円形状の大きなオブジェと噴水が設置してあった。
ここが指定してあった待ち合わせ場所だったのだ。

数日ぶりにクロードに会ったメイア。
学校で学んだことや、逆に浮かび上がった疑問など話しておきたかったがメイアはそれをしなかった。

「学校は楽しかったかい?」

「はい、とても!」

「そうか。それはよかった」

会話はこれだけ。
クロードは特に詮索することはなく、メイアもこれ以上何も話さなかった。

そこにようやくガイがやってきた。
目を擦り、あくびをしている。
髪は全く整っておらず寝ぐせがついていた。

「よう。なんか久しぶりな気がするな」

「ガイ……まさか今まで寝てたんじゃないでしょうね?」

「い、いや」

呆れ顔のメイアは目が泳ぐガイを見て確信した。
そのやり取りを見ていたクロードが笑みを溢して口を開く。

「闘技大会で体にダメージが残っているのだろう。少しだけだが結果は聞いてる。残念だったね」

「ああ。まぁ、なんとか決勝まではいけたけどな」

「決勝の相手は相当強かったのだろう?」

「ありゃ、化け物だよ。あんなのに誰も勝てないだろ」

「ほう。それは見てみたかったな」

急遽の予定として実際はクロードがチームに入るはずだった。
しかしサンシェルマの事件が起こったことによってそれが叶わず、クロードはガイたちの戦いを一切見ることができなかったのだ。

「相手はワイルド・ナインだったんだ」

「なんだと……どんなやつだった?」

「赤髪の男だよ。炎で"狼"とか"鳥"とか作り出してた」

「まさかゾルア・ガウスか」

「え?」

「六大英雄の中で二番目に強いと言われた男だ。そうか……そういうことか」

「どういうことなんだよ」

「リア・ケイブスで会ったセリーナという盗賊がいただろう。彼女が言っていた"黒い兎"といういう言葉……それはブラックラビットという動物のことで、ゾルア・ガウスの異名でもある」

「そういえば、赤髪の男は仲間から"ボス"って言われてた気がした……まさか"盗賊団のボス"って意味だったのか?」

「だろうな」

「なんで盗賊団が闘技大会に出るんだ?」

「狙いは闘技大会の賞品だろう」

ガイは思い出していた。
今回の闘技大会の賞品は六大英雄が使ったとされる武具、ロイヤル・フォースだ。

「闘技大会から時間はあまり経っていないから遠くには行っていないとは思うが……探すのは困難か」

「ヤツを探す?」

「ああ。ゾルア・ガウスが六大英雄の中の裏切り者の可能性は十分にあった。君も間近で見たと思うが、"あの性格"だからね」

クロードが言うように赤髪の男ゾルア・ガウスは狂気じみた性格が印象的だった。
波動のスキルも凶悪で、試合中では無かったが死人は出ている。
誰を焼き殺そうが何も感じていない様子だった。

「その盗賊団自体が生存しているであろう"魔王"と通じているのなら見過ごせない」

「確かに……そうだな」

「とにかく町の入り口まで行こうか。門番に情報を聞けば行き先の目星くらいはつけられるだろう」

クロードがそう言うとガイとメイアは頷く。
ようやくここでクロードとメイアはローラがいないことに気づいた。

「そういえばローラさんはどうしたの?」

「まだ寝てるんじゃないか?もう少ししたら来ると思うけど……」

クロードがため息混じりに口を開く。

「あまり悠長なことを言ってる場合ではないと思う。迎えに行ってきたらいい」

「え……俺が?」

「君が行くのが一番いいと思うけどね」

「なんでだよ」

「宿の場所を把握してるのは君しかいないだろ。僕とメイアは先に門の方へ向かうよ」

こうしてガイはクロードとメイアと別れた。

結局、ガイは来た道を戻ることになった。
なぜローラが待ち合わせに遅刻したのかはわからないが、これでは腹の虫が収まらない。
ガイは宿の方へ歩きながらローラに対する苛立ちをどう言葉にしたらいいのか考えていた。

そこであることを思い出す。

「エリザに別れの挨拶でもしてるのかな」

エリザヴェートはゾルアとの戦闘で負った大怪我によって数ヶ月間は動けない状態とのこと。
かろうじて目を覚ました時に話したが、回復したら後を追うと言っていた。
ちょっと暗い性格だが悪い奴ではなく、ローラとも仲がよくなっていた。
長話にでもなっているのか……そんなことが頭をよぎる。

様々な思考をする中、宿の前に到着したガイ。
同時に宿から出てくる者がいた。

見慣れた青髪。
……ではあったが、その髪の主はローラでは無かった。

「な、なんで、お前がここにいるんだ?」

「ああ、君か。これはまたタイミングが悪いね」

それはガイが闘技大会で戦った相手。
赤髪の男の仲間であるレイという青年だった。
つまり、この男は盗賊団の一員ということ。

ガイはすぐさま左腰のダガーのグリップを握る。
相手との距離は数メートルしかない。
ワンステップで斬りかかれる距離だ。

「その様子だと、私の正体に気づいたと見える」

「お前……盗賊だったのか!!」

「やはり君もセリーナと面識があったか。だが今は君と相手をしている暇はない」

「なんだと!?」

するとレイの背後からもう1人姿を現した。
それは入り口のドアを屈まなければ出られないほどの大男だった。
ボサボサの緑色の長髪に黒い修道服を着た男だ。
肩には気を失っているであろうローラが力なく抱えられていた。

「ローラ!!お前ら!!」

「すまないね。こうするしか彼女を生かす方法が無いのさ」

「てめぇ!!」

ガイは体勢を低くして地面を踏み締める。
そして踏み出そうとした瞬間のことだ。
レイが大男にすぐに指示を出した。

「シグルス、彼を退けるんだ」

「……」

シグルスと呼ばれた大男は無言で手を広げガイの方へとかざす。
構わず地面を蹴ったガイはシグルスへと向かった。

凶風きょふう……」

そうボソりと呟いた瞬間、ガイを中心として天まで伸びるほどの竜巻が起こる。
さらにシグルスが広げた手を握りしめると竜巻は一気に縮んでガイを飲み込む。

「がはぁ!!」

ガイの体は螺旋を描いて数十メートル飛ばされて地面に倒れた。

「ロ、ローラをどうするつもりだ……?」

「君は確かガイと言ったね。悪いことは言わない、彼女のことは忘れるんだ」

レイが放った言葉、それだけ聞き終るとガイは、その場で気を失った。
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