夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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1話「少年と魔女」

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「ん…ん~…」

 なんだろう…少し寒い…。
 あれ?リビングで寝てたはずなんだけど…。

「え…ここ、どこ…」

 少年は、目を覚ました。
 今どこで何が起きたのかもわからず。

「ここは…外?なのか…?」

 周りは生い茂る草木に囲まれていた。
 少年は、身を起こすとすぐに異変に気付く。

「森!?俺もしかして捨てられた!?」

 異世界へ転生する時の記憶は、女神アテナによって綺麗に消された後だった。
 少年が願った事でありそれを知ることはできない。

「おいおい…まじかよ…」

 身体を木に押し付けながら周りを見渡した。

「これちょっとやばいんじゃね?」

 かすかに聞こえる風の音。
 木々が揺れて、不気味な雰囲気が少年を襲う。

「嘘だろ!なぁ…誰かいないのか!!」

 正気を失った少年は、叫ぶ。

「くっそ…俺どうしたらいいんだよ…」

 そう言いながら空を見上げる少年。

「え…月って2個もあるっけ…あれ…?」

 やっと自分の置かれた状況がわかり始めた少年。
 見上げた空は、見慣れぬ星空。

「も、もしかして…異世界とか?」

 少年は、ため息まじりに発した。

「な、なわけないよな…異世界なんて絶対ありえない、俺があんなに行きたがっても行けなかったところに目覚めたらいるなんてありえないんだ!!!」

 木を思いっきり殴った。
 木は、バキバキという音ともに倒れてしまった。

「もろい木だなおい…ははは…」

 とにかくこの森をでないと、少年はそう思い足を進める。

「なんでこんなに身体が重いんだ…?」

 転生したばかりで、少年の身体はなかなかいうことを聞かない。

「疲れてるのかな俺…」

 足を進める少年。
 もうどれくらい歩いただろうか、暗闇の中を歩くに連れ時間がどれくらい経ったのか、気になり始めた。
 少しずつだが、灯りのようなものが見えてきた。
 暗闇の中を照らす一つの灯りが…。

「人でもいるのか…?」

 こんな森に?まさかっと、笑いながらも灯りの元へ向かう少年。
 灯りが近ずくにつれて、広い場所に出たことがわかった。

「大きな木の…家?なのか?」

 重い身体を引きずりながらも、大きな木の家に近づく少年。

「そこで止まれ!!!」

 突然声をかけられて、振り向く少年。

「た、助かったぁ、やっと人に会えた…!」

 そこに立っていたのは、長髪で金色の髪をした女性だった。
 身長は低め、顔は暗くてよく見えない。

「結界を越えて中に入ってきたとは恐れ入るが、貴様は何者だ!」

「け、結界?なんの話をしてるんだ!」

「質問に答えぬのならこの場で消し去るぞ!」

 女性が手をこちらに向けると、同時に光が集まり始めた。

「おいおい…まさか魔法とか使うんじゃ…」

「魔法以外に何がある!早く質問に答えんか!」

「わかったわかったって!俺が起きた時にはもうこの森の中だったんだよ!!どうすればいいかわからなくて灯りが見えたからこっちに向かってきただけだ!」

 少年は、手を挙げ膝をついた。

「ふん、そのような言い分に耳を貸すと?」

「答えろって、言ったことに答えただけだ!これ以上、説明のしようがない!!」

 女性の手から、魔法陣のようなものが展開され始めた。

「ま…魔法陣!?やっぱここは異世界なのか!?」
「異世界?何を言っている?」

 女性は、手を下ろした。
 どうやら俺のいうことに、耳を傾けてくれるらしい。

「お、俺は家のリビングで寝てたはずなんだ!なのに、起きたら森の中で…身体も重いし親に捨てられたと思って、あの森をさまよってたんだ!」

 少年は、大声で叫びながら女性の後ろの森を指差した。

「ふむ、親に捨てられたのは災難だったな」

 まるで他人事のように、言いやがって…
 いや、まぁ他人だけどさ…

「それで異世界とはどう言うことだ?」

 女性が、こちらに近づいてくる。

「俺がいた世界では、月が1つなはずなんだ!だけど見てみろ!こっちでは2つもある!」

「月は元々2つであろう?」

「あと俺がいた世界では、魔法なんてなかった!魔法は、空想で作り上げられた本の世界でしか存在してなかったんだ!」

「魔法がない…?」

 魔法がないことに疑問を持ったらしく、こちらに向かってくる女性。
 このままの体勢でいることが辛くなった少年は、腰を地べたにつけた。

「どう言うことだ?魔法がないとは」
「そのまんまの意味だよ。俺の世界には、魔法なんてものは存在しなかった」

 女性は、最初警戒していたようだが警戒心が薄れたのか、目の前まで来てちょこんと座った。

「魔法がない世界…そのような世界で人は、どうやって生きていたんだ?」

「また専門的なこと聞いてくるね、そうだなぁ機械とかが発展して物流とか、国同士の交流とかが盛んだね」

「機械?機械とはなんだ?」

「機械って言うのは、なんて言えばいいのかな…時計とかって、歯車で回って時を刻むだろ?」

「詳しくはわからぬが、歯車で動いてるのは知っておる」

「その内部構造が進化して、色んなものが出来たんだ、それが機械…って言えばいいのかな?」

 正直異世界の人に機械とは、なんだと聞かれるとは思わなかったのでぱっと答えることができなかった。

「なるほど…それと魔法がないのと、どんな関係があるのだ?」

「機械が発展したことにより、農家は農作物の収穫量が増えたり、保存食を作れるようになったり、水を綺麗にしたりして、飲食には困らない世界だったよ」

「なるほど…でもなぜ魔法がないのかが、一番の疑問ではあるが…」

「それについては俺から、言えることはないかなぁ。ただ本とか物語の世界では、魔法は存在してたよ」

「そうなのか」

「さっきの魔法陣は、魔法だろ?」

「そうだ」

 女性は、誇らしげそうに頷いた。

「そこで、お願いがあるんだけどさ」

「お願い…?」

「俺に、魔法を教えてくれ!」

 こんな真っ暗な森の中で、一人で住んでるなんてきっとすごい魔法使いに違いない。
 なら弟子入りして、教えてもらってから旅に出ても損はないだろう。

「は…はははは」

 女性は、腹を抱えて笑いだした。

「な…何がおかしいんだよ。魔法とか、かっけーじゃん!俺、使えるようになりたいんだ」

「お主、あっちの世界では魔法がないと言ったな?」

「あぁ、言ったさ。だから憧れてたんだ魔法に、現実にないものが、今目の前にあった…だから俺は使いたいと思ったんだ…それなのに笑うなんて酷くないか?」

「酷いもなにもこっちの世界では女性しか魔法が使えないのだぞ?」

「えっ…?」

 おいおい、ここまできてそりゃないぜ…。
 半分諦めかけてた時、女性は口を開いた。

「お主…黒髪か?」

「ん?染めてもないしこれは地毛だぞ?それがどうしたんだ??」

「いや、こちらの世界では黒髪は、異能者のみがなる髪の色でな、ごく稀に錬金術や召喚術を使える者がいると聞く。だが、魔法が使える者がいた事例はない」

「異能者…俺のいた世界だと、皆同じ黒髪だったぞ?」

「異能者の国…にいたと言うことか?」

「んー超能力とかそう言うのは、あったけど皆が皆そう言うの使えてたわけじゃないんだ。ごく稀にニュースとか記事に載ってたくらいで…」

「ふむ、もしかしたらこちらの世界では何か使えるかもしれんな、少し待っていろ」

 そう言うと女性は、木の家の中に入って行ってしまった。

「はぁ…魔法も使えないファンタジーな世界ってどうよ…」

 少年は、落ち込みながら2つの月を眺めながらため息をついた…。


 女性が家に入ってから、どれくらいが経っただろう、かれこえ10分ほどは待たされている。
 すると女性が、家から色んなものを腕に抱えながら出てきた。
 それは丸まった紙やら、水晶やら結晶だった。

「お主に、素質があるか試してやろう」

「ま、まじか!」

「まずこの水晶を持ってみろ、これは魔力に反応する水晶で、魔力がない場合はなにも変化が起きない。魔力がある場合は赤、黄色、緑、青、白の順番に色が変わっていく。一番弱いのが赤だ。そして最も強いのが白」

 女性は、そう説明をすると水晶をこちらに渡してきた。
 少年は、右手を差し出し、その上にちょこんと水晶を渡された。

「これを、どうすれば?」

「まず水晶に意識を集中させるのだ、次に身体の中を流れる魔力を水晶に注ぎ込むのだ」
「どうやるんだよそれ…」


 興味はあるが、いざやるとなるとやり方がわからない。
 まず現実世界で、魔力なんてものを感じたことすらないのだ。
 だが少年は、ここに来るまで血液とはまた違う脈を感じていた。

「こ…こうやるのか?」

 少年は、目をつぶり水晶に意識を集中させ始めた…

「こ…これは…!?」

 女性が、驚いた声を出したので少年は目を開けた
 そこにあったのは、白色に輝く水晶だった…

「お主、かなりの魔力を持っておる…もしかしたら魔法が使えるやもしれん」

「ほ、本当か!?」

 嬉しさのあまり、気持ちの高ぶりを抑えれない少年。
 すると、水晶が砕け散ってしまった...。
 見ていた女性は、口を押さえ驚きを隠せないようだ。
 少年は、壊してしまった事に対して謝罪をしようとした

「わ、わざとじゃないんだ!なんか勝手に砕けて…」

「いいやそれは良いのだ、それより水晶が壊れるほどの魔力とは…お主は一体何者なんだ?」

「え?俺は、特に何者でもない、普通に産まれてのんびり生きてきただけで、特に凄いところとかないはずなんだけど…」

「これほどの魔力があって、魔法を知らないとは…」

女性は黙り込んだまま何か考え事をしているようだ。

「そ、そういえばさ自己紹介…まだだったよね…?」

「そうだな、お主が私を殺しにきた刺客でないことはわかったが、まぁいいだろう、私はこの森に住まう者。名をミーチェ・クリスタと言う、ミーチェと呼んでくれ、お主の名は?」

「俺は…」

 ここは異世界だ、現実世界の名前はもう必要ないな…。

「俺は、ニケ・スワムポール。ニケが名で、スワムポールが家名だ。まぁこっちでは、そう名乗ろうと思う」

「そうか、それではニケよ、他に精霊術、召喚術、錬金術の素質があるかどうか見たいのだが、大丈夫か?」

「あぁ、お願いするよ」

 ミーチェは、次に丸まった紙を渡してきた。

「これは?」

「この紙には、召喚術に必要な魔法陣が書かれている、広げて地面に置いてみるがよい」

 言われた通りに広げて、地面に置いてみた。
 薄暗くてわかりにくいが、魔法陣らしき円が描かれている。

「これは契約の陣、召喚術に必要な契約獣を呼び出すものだ」

「ってことは…今から俺が、呼び出して契約すればそいつは、俺の契約獣ってこと?」

「そうだ、まぁできるかどうかはわからぬが、やってみると良い、もし呼び出せたのなら契約がしたいと一言言えば、向こうがお主の素質を見抜き契約するかしないか、応えるはずだ」

 まずどうやって、呼び出せば…っと不安と緊張がニケを襲う。
 出てきたやつが、やばいやつだったらどうしよう…などと考え込んでいると。

「いいか?契約の陣に手を添えてこう唱えるのだ…“汝、我が召喚に応じて姿を見せよ”っと」

「わかった…やってみる」

 震えまじりに承認し、契約の陣に手を添えるニケ。

「いくぜ…”汝、我が召喚に応じて姿を見せよ”!」

 光を発しながらまわり始めた魔法陣…。

 しばらくすると魔法陣が浮き始めた。

「来るぞ、心しておけ!」

「ど、どんなやつが来るんだ!」

「それは召喚した者によって違う!」

「怖いやつだけは、やめてくれよ…?」

 やがて魔法陣は、ゆっくりと落ち始めた。
 そして姿を現したのは、純白の毛皮を纏う獣だった。

「ホワイトウルフ!?また珍しいものを…」

「ホワイトウルフ?ウルフってことは俺食われるのか!?」

「落ち着け馬鹿者、召喚に応じたのだ。気を損ねなければ何もしてこない」

 ホワイトウルフは、ゆっくりと目を開けこちらを睨んだ。

「な…なんだよ睨むなよ…」

「私を呼び出したのは、お前か?っと聞いておるのだ」

「ウルフ語わかるの…?」

「いや、そう感じるだけだ」

「確信持てること言ってくれそこ…」

 ホワイトウルフは、小さく吠えた。

「ほ、吠えるなって…俺は、お前と契約を交わしたい!俺と、契約してくれないか?」

 震えまじりに、なんとか言えたと胸をなでおろした。
 ホワイトウルフは、ニケに近ずくと腰をつけ顔を近づけてきた。

「どうやらお主の魔力を知りたいらしい」

 ミーチェは、そう言った。

「魔力?なんで、魔力を知りたがるんだ?」

「召喚獣は、魔力で身体を生成する、そのために必要な魔力があるか、確かめるためだ」

「そういうことね、んで、どうすればいいんだ?」

「さっき水晶にやったのと同じように、ホワイトウルフの頭の手を乗せ、意識を集中させれば良い」

「わかった、さっきと同じ感じだな」

 ニケは、右手をホワイトウルフの頭に添えると意識を集中させた…。

「さっき水晶壊しちまったからなぁ…あんま強くやると、なんかあとあと怖いわ…」

 するとウルフは吠え、1、2歩下がると伏せた。

「どうやら、契約を交わせる相手と判断されたようだな」

「え、まじで!ど、どうするんだここから!」

「私が言うことを繰り返せ、“汝、我を主人と認めることをここに契約せよ“」

「”汝、我を主人と認めることをここに契約せよ“」

 言われたことを繰り返すと、ホワイトウルフの足元に白い魔法陣が展開された。

「“我が名はニケ・スワムポール”っと言えば契約は完了だ」

「“我が名はニケ・スワムポール”!」

 ホワイトウルフの足元の魔法陣が展開され、ホワイトウルフを包み始めた。
 光が消えたと思ったら、そこには指輪が落ちていた。

「この指輪は契約の証、さっきのホワイトウルフの主人である証だ、つけておくが良い」
「今のが…契約…」

 ニケは、嬉しそうに笑った。

「なんだよ…はははは…緊張しすぎてもう無理かと思ったわ、はははは」

「たまげたな、まさか召喚術まで使えるとは」

 ミーチェが、驚くのも無理もない…

 女性のみが魔法を使える世界で、魔力を持ち合わせ、召喚術を使えるのだから。

「なんかもう…疲れちゃったわ」

「誰でも皆、最初はそう言うものだよ」

「なぁミーチェさんよ、俺を弟子にするって話返事を聞いてないぜ?」

「そうだな、男で魔法使いなのは気に食わんがいいだろう、私の弟子にしてやる」

「ほ、本当か!?やったぁぁぁ!」

「だが魔法の鍛錬は、きついから覚悟しておくようにな」

「わかってるって、魔法が使えるなら俺、頑張るよ」

 ミーチェから指輪を受け取り、指にはめるニケ

「これって、どうやって召喚するんだ?」

「指輪に意識を集中させて、呼び出せば良い、掛け声は人それぞれなのでな。自分がいいと思った掛け声で呼べばいいのさ」

「掛け声か…ホワイトウルフ!君に決めた!」

 …なんの反応もない。

「これではダメか…ポ◯モンじゃねぇか!」

「何を一人で言って、一人で突っ込んでおるのだ…」

「いや、気にしないでくれ…」

 ネタが滑った事に恥ずかしさを覚えながらも、気を取り直して再挑戦することにした。

「サモン!ホワイトウルフ!」

 指輪が光り始め、魔法陣が展開された。
 魔法陣の中から、ホワイトウルフが元気そうに尻尾を振りながら出てきた。

「さっきと態度違いすぎじゃない?これ…」

「それが主人に対しての態度なのだろう」

「そうなのか…まるで犬だな、可愛いヤツめ」

 そう言いながらニケは、ホワイトウルフを撫で始めた
 ホワイトウルフは、嬉しそうにしていた。

「さてと、契約と召喚も無事に済んだことだ、あと精霊術と錬金術があるがどうする?」

「んー精霊術は今度でいいや、錬金術を試させてくれ」

「わかった、ではこの手袋を左手にはめてくれ」

「手袋?なんで手袋なんだよ」

「錬金術は、特殊な素材でできた籠手が必要なんだ、今回は練習用の魔法が編み込まれた手袋を使うわけだ」

「そう言うことか…」

 左手に手袋をはめ、手をグーパーしていると

「どうした?サイズが合わなかったか?」

「いや、ちょうどいいくらいだよ」

「そうか、ではまず手袋をしている手に意識を集中させるんだ」

 左手に意識を集中させるのか、魔法って案外集中力必要なんだなと思った。
 左手に意識を集中させ始めると、魔力を帯びて左手が光り始めた。

 「そうだ、いい感じだ。次に左手と右手を合わせて、錬成したいものを浮かべながら離すのだ」

 錬成したいもの…。

 簡単なものの方が、いい気がする…。

「こうかな?」

 ニケが、左手をゆっくり離し始めるとそこには、石の棒が錬成されていた。

「おー石を連想したのに棒ができちまった」

 笑いながらその棒を握るニケ。

「それでも上出来だ、本来錬金術とは、その場にないものを生成する術なのだ。才能がないものがやると、なにも錬金できず魔力を失うだけなのだ」

「なんか、イメージと違うけどそんな感じなのか」

「錬金術で、壁を作ったりすることもできる。鉄を連想すれば、剣も生成する者もおる」

「やっぱ、イメージが重要なのか」

 ニケは、石の棒でホワイトウルフをぺちぺちしていた。

「まぁこんなところだな、今日はもう遅い。そろそろ寝るとしようか」

「明日から世話になります師匠!」

「まさか、初めての弟子が男とはなぁ」

 ミーチェは、笑いながらニケと共に木の家に入って行った。
 家の中は本や、草、瓶などいろんなものがあった。
 内装は木でできていた、やっぱ自分のいた現実世界とは異なっていて、新鮮なものを感じた。
 通路を抜け、突き当たりにある大きな扉まで来た。
 扉を開けながらミーチェは、言った。

「ここの部屋を、自由に使うが良い」

 そこはベットと机、タンスしかない部屋だったが、今のニケには充分だった。

「ありがとう、おいで、ウルフ」

「ホワイトウルフの事が、気に入ったのだな」

「こいつ可愛いからね」

「だが召喚獣は、死ぬか魔力が尽きると指輪に戻ってしまうからな。そうしたら、再度呼び出すのに時間がかかる。あまり用もない時に出していて、いざという時に出せないのでは、意味がないぞ?」

「わかった、寝る前には帰ってもらうよ」

 そう言いながら、ベットに飛び込むニケ。

「朝は早いから、寝坊しないようにな」

 ミーチェは、そう言うと部屋を出て行った。

「おいでウルフ、そうじゃんウルフだとなんかピンとこないからなぁ、名前決めてあげないと」

 ニケに撫でられながら、ホワイトウルフは嬉しそうに尻尾を振っている。

「んーなんて名前がいいかな」

 にしてもこいつ、意外とでかいな…。

「シロ…毛皮が白いからしろ!」

 しろは、ワンと吠えた。

「ウルフって本当は犬なんじゃないのか…?」

 という疑問を抱きながら、どうやったらしろを戻せるのか…。

「ありがとう、シロ、君は役目を終えた、指輪に戻っていいぞ」

 そう言うとシロの身体は光に包まれ指輪に戻っていった。

「おぉ、こんな感じか!さてと朝早いらしいしそろそろ寝ないとなぁ」

 今日異世界に来て、魔法使いに弟子入りして。

 なんか、夢に近づけた気がする…。

 明日から、どんな日々が始まるのだろう。
 これが夢でなければ、いいのだけど。

「さて、寝よ…」

 暗闇の中、いろんなこともあったけど夢に近づけたことに対しての嬉しさが今は、気持ちを満たしてくれる。

 ニケは眠りへと落ちていった…。
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