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3話「再び森へ」
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右手を前に、人差し指を伸ばし意識を集中させるニケ。
「んー、師匠みたいに魔線がでてこないや...」
シロは、相変わらず暇そうに寝そべっていた。
師匠が家に入ってから、かれこれ1、2時間は経っている。
時間で言えば、8時ごろなのだろうか。
時計もなく、携帯もないニケにとって、時間を知る術は太陽の位置による、感覚しかなかった。
「太陽が、真上に来る前あたりに切り上げるかな」
少し、身体が重くなった気がした。
「魔線が引けてないのに。魔力は、消費してるのか?」
ふと、気がついた。
魔線を出せてもいないのに、魔力が減っているのはおかしい。
なら、なぜ魔力は減っているのか。
「別のところに、意識がいってるって、ことなのかな」
気がついたら、注意してやらないとな。
思っていた以上に、慣れてないものを頑張るのは難しい。
だけど、最初はみんな歩く道なのだからと。
何事にも順序はある、最初のうちにサボると、あとあと後悔することだってある。
なら、最初からやる気をだして取り組んで、基礎を固めたほうがいい
「一回、『瞑想』しておいたほうがいいかもしれない」
ニケは、瞑想の構えに入る。
まだ慣れてはいないが、構えさえ覚えてしまえば、あとは自然と身体が動く。
「ふぅ...背中に、意識を集中...」
背中に意識を向けると、身体全体に行き渡っていた魔力が、背中1点に集まり始める。
この感覚を、指に行き渡らせることができれば、簡単なのだが。
しばらくすると、魔力が大きくなるのを感じた。
さっき、瞑想したときより時間をかけてみたらどうなるのか、と疑問に思い長めに瞑想することにしてみた。
...そろそろいいかな?
時間にして、約10分程度だろう。
背中に最初より、大きいものを感じ瞑想を終えたニケ。
「さてと、魔線の習得頑張らないと」
その目は、やる気に満ちていた。
しばらくして、指先に違和感を感じ始めた。
「ん?なんか指先で物に触れてるような感触が...」
この感触は、どうなのだろうか。
すると、指先から光のようなものが見え始める。
「あ、できたかもしれない!」
ふと、指を動かした瞬間それは消えてしまった。
「意識がそれたから、消えちゃったのかな?今の感覚を思い出して、再挑戦かな」
ニケは、嬉しそうに構えた。
一度、覚えた感覚はすぐに使えるものだ。
指先に意識するというより、指先で物を触ってる感覚のほうが、発動できるのかもしれない。
「早く、魔線引けるようになりたいなぁ」
すると、さっきと同じように指先が光り始めた。
このまま、維持して横に動かしても消えなかったら、習得できたということかな?
ニケは、手を横に動かし始めた。
すると、動かす前のところから動かした所まで、白い光の線が引けていた。
「お、お、できたんじゃない!?これ!」
初めてできた魔線に、感動しながらも手を左右に動かしたり。
上下に動かして遊ぶ、ニケ。
「反対でも、練習しておいたほうがいいのかな?」
ニケは、左利きなので右手で魔線が引けても、上手く文字をかけない。
左手を上げ、人差し指で物を触れる感覚を連想した。
すると、左手では最初から魔線が引けたのだ。
両手で魔線を引いて遊んでると、ミーチェが戻ってきた。
「お主は、習得が早いのう」
「さっき、できるようになったんだ。左手と、右手、両方ともできるようになったんだぜ」
「基本、自分の利き手でしかできないものなんだが...。これも、異能の才能なのかもしれないな」
こちらに、近づいてくるミーチェ。
「俺が、すげぇってことだろ!」
「まだ、初歩の初歩ですごいとか、そういうのはないだろ」
ミーチェは、笑いながら言った。
「たしかに、そうだけどさ」
「まぁ、魔線が書けて嬉しいのはわかるが、それが最初にできて当然なのだ」
もうすこし、褒めてくれてもいいんじゃないかなぁ。
と、ニケは、思いながらため息をついた。
「もう、そろそろお昼になるころだ。森へ、山菜を採りにいくぞ」
「了解。なにか、持っていくものとかってあるの?」
「あー。そうだな、玄関にかごがあったはずだ。それと、これを着けておくがよい」
そう言って渡してきたのは、昨夜錬金術が使えるかどうか試したときに使った、手袋だった。
「これを、お主にやろう。練習用だが、錬金術を使うのになんの問題もない」
「え、いいのか?」
「別に、構わぬ。私自身、錬金術は使わないのでな。持っていても、しょうがないのだ」
受け取った手袋を、左手につけてニケは、シロについてくるよう命じ。
玄関のかごを、取りに行った。
「シロ、かご持てる?」
ニケは、シロにかごを咥えて持つように命じた。
シロは、咥えてご機嫌そうにミーチェの元へ歩いていった。
「師匠、シロのこと気に入っているのか?」
「ん?まぁ、それもあるが。もともと、『ホワイトウルフ』という魔物は、ここより北の『オルカナ地方』という雪山に、生息しているのだ」
ミーチェは、かごを持ってきたシロを撫でているところだった。
「ちなみに、今俺がいるところは、なんて所なんだ?」
「ここか?ここは、『ダクス地方』だ」
『オルカナ地方』――山が多く村などは、盆地にあるという。1年中寒く、雪が溶けることのない所だ。
『ダスク地方』――緑が多く、森や山などの自然が豊かな土地だそうだ。と後ほどミーチェが、教えてくれた。
「島国の西側って、考えておけばよい」
「島国?ほかに国が、あるってことか?」
「あぁ。ここは、『ビスク帝国』領土の西側だ。北側には、オルカナがあるが南、東側は、統一されていて『ガリム地方』と呼ばれる。その中心部に、王都があるのだ」
聞いていても、地図がないのでさっぱりだ。
あとで世、界地図でも探してみるかな。
「まぁ、そんなところだ。さてと、そろそろ森へ入るとしよう」
「あいよ、いくぞシロ」
のっそりと起き上がり、あくびをしながらかごを咥えてついてくるシロ。
ふと、錬金術の『籠手』を渡されたことに疑問を感じた。
「なぁ師匠、なんでこのタイミングで、『籠手』を俺に渡したんだ?」
「ここの、開けた土地があるだろ?ここは、結界で魔物や普通の人が来れないようになっているんだ」
「あぁ。それで、昨夜結界を越えてきたのか~とかそんな感じの話を、していたのか」
昨夜、消されそうになったのを思い出し、鳥肌が立った。
ゆっくりと、森の中へ入っていくミーチェのあとに、続きニケと、シロも森の中へと入って行った。
「ここから、先は魔物の群生地だ。気をつけないと、殺されるぞ」
「入って早々、いやになる話だな」
「まぁ。魔物は、強い魔力を持つものには襲いかからない習性があるからな」
そう、目の前にいるのは、どれくらいすごいかわからないが...たぶん、すごい魔法使いなのだ。
「今、失礼なこと考えてたであろう?」
ミーチェが、不気味な笑顔とともに振り返ってきた。
「い、いやだなぁ。師匠は、すごい魔法使いだーって思っただけさ、あはは」
「ならば、良いのだがな」
「そういえば、山菜ってどういうのを採るんだ?」
山菜、といわれても大まかにいわれてもわからない。
まず、現実世界と異なった植物しかないため、現実世界での知識は、役に立たない。
唯一、わかることはきのこはきのこって、ことだけだった。
「そうだな、基本的に疲労回復の薬草ときのこだが。まぁ、お昼だけだからそこまでとる必要はない、採って帰ってすぐお昼にしよう」
「薬草って、食べれるのか?」
「基本的に、食べれるものが多い。ポーションや、解毒薬などにも、用いられるが。昔は、薬草自体を食べて、効果を得ていたのだ」
薬草だけでは、効果は薄いってことなのかな。
やっぱ、異世界にはポーションとかあるんだなぁ。
改めて言おう、流石ファンタジー。
「森の中って、結構暗いんだな」
「木々が多いからな、この辺は。もう少し、奥へ行けば草原に出るはずだ」
もう、少し歩くってことか。
シロの上に、乗れれば楽だろうなぁ。
「そういえば、そのホワイトウルフなんだがな」
「ん?『シロ』がそうかしたか?」
「『シロ』、と名付けたのか?」
「あぁ、毛皮が白いから『シロ』」
可愛い名だなと、ミーチェは、言いながらも前へ進んでいく。
「それで、シロがどうかしたのか?」
「あぁ、そのことなんだが、シロはだな、まだ子供だ」
「え、これでまだ子供なのか!?」
驚きながらニケは、シロを見た。
充分大きいぞ...。
「本来、ホワイトウルフと言う魔物の子供は、1、2mほどなのだ」
「それだと。シロは、まだこれから成長していくって、ことなのか?」
「大人になると、3~5mほどになるぞ」
今の状態でも、大きいのにここからそんなにでかくなるのかよ...。
話をしながら歩いていると、森を抜け草原に出た。
「ここで、薬草などが採れるのだ」
「って、言われてもどれが薬草なのか、わからないんだよな」
「その辺に、三つ葉の草があったらそれは薬草だ。ほかにも、ぎざぎざした葉のものは毒消し草」
足元をみるが、それらしき薬草などは見当たらなかった。
また、気が遠くなりそうだな...。
「この辺には、あまり生えてないぞ?」
「そうなのか?なら、どこに生えてるの」
「あそこに、木が見えるだろ。あの木は、『魔想樹』――と言う木で、魔力を宿す木なのだ」
かすかに光っているように、見える木が草原の中に1本だけ生えていた。
見上げるほど、大きな木の根元には自分たちが、今いるところと違う草花が生えていた。
「薬草などは、魔力で成長すると言われている」
「魔力で、成長するのか?」
魔力って、意外と万能なんだなと、思った。
確かに、魔力で成長したものなら、疲労を回復させたり、傷を癒したりできるのかもしれない。
「とりあえず、あの木の元まで行くぞ」
そういうとミーチェは、先に歩いて行ってしまった。
ニケと、シロもその後に続いた。
「足元を、見てみろ」
そう、言いながら師匠は足元の草花を指差した。
「これが、さっき言ってた薬草だ。それと、向こうが毒消し草」
確かに、さっき言ってた特徴と一致する。
「これを、採ればいいのか?」
「そうだ、だが採りすぎてはいけないのだ。必要な量だけ、採らなければ自然のバランスが崩れてしまう」
「採りすぎて、なくなると困るもんな」
ミーチェは、そういうと薬草を3、4枚だけとってかごに入れた。
「あとは、山菜を取って帰るだけだ。向こう側に、倒れた木があるだろ?倒れてる木などには、きのこが生えるから覚えておくことだ」
「きのこって、言っても毒きのことかすぐわかるのか?」
「毒キノコの場合は、胞子や触った感触で大体わかる物が多い」
触ってわかるって、それはそれですごいものだな。
話をしながら、倒れた木の元へと行くとたくさんのきのこが生えていた。
大きいものから、小さいもの、色も紫のものや、灰色のものどれも危なさそうに見える。
「私は、きのこの名前などはわからぬが。これと、これは食べれるやつだ」
そういいながら、茶色いきのこと、小さい灰色のきのこを指差した。
そういえば、今朝のスープに入ってた、きのこと同じ気がする
「この、小さいきのこは今朝食べただろう。これは、歯ごたえがあってなかなか美味しいのだ」
「スープ自体の味、は薄かったけどな」
「それは、仕方がない。調味料などが、もうないのだ。そろそろ村へ、買い出しに行かねばな」
そう言いながらミーチェは、きのこを採りかごに入れた。
「そういえば、近くに村なんてあるのか?見渡す限り、森なんだが」
「家の近くに、川があってな。上に行けば、小さい湖がある。下に行けば、村へいけるのだ」
「川があるのか、水浴びでもしにあとで、行こうかな」
昨夜は、お風呂にも入れなかったからなぁ、流石に汗を流したいものだ。
「川へ、行くのは自由だが結界の外、だということを忘れるでないぞ?」
「川にも、魔物がいるってことか?」
「川の中には、あまりおらぬが。川岸などに、魔物がいるときがある」
そういいながらミーチェは、勢いよく振り返った。
「何か、くるぞ」
いきなりのことで俺は、なにをしたらいいかわからなかった。
シロは、ミーチェと同じ方向を見ながら、構えて唸っていた。
ミーチェの、向く方向をみると森から、1匹の魔物が出てきた...!
「群れでないだけマシか。あいつは、ゴブリンだ。亜人種で、人と同じ集落を作り生活している。森の番人、みたいなやつらだ」
「あれが...ゴブリン...」
ゲームなどで知ってる、ゴブリンとは程遠い不気味な姿だった。
猫背で、皮膚は緑色、腰に毛皮のようなものを巻いている。
大きさで言うと、人とあまり大差がないように見えた。
「ニケよ、あやつと戦ってみるか?」
突然のことに、返事が遅れた。
「俺が、あいつと...!?」
「そうだ、これからお主が一人で山菜など採りにくる日があるだろう。そのためにも、今から慣れておく必要があるであろう」
「あんなやつと...たたかうのか」
異世界に来て、はじめての戦闘だ...。
そう思うだけで、足が震えははじめた。
「私、が後ろから援護してやるから。好きに戦ってみるがよい」
「そんな簡単に、言わないでもらいたいね...!」
イメージを構築させ、左手に意識を。
左手が光を放ったところで。右手と合わせる。
イメージだ、イメージするんだ。
素材の硬さ、触り心地、長さ。
...いまだ!
「ほう、錬金術をもう使えるようになっておるのか。学習能力だけは、驚くものがあるのう」
ミーチェが声をかけるが、集中している、ニケの耳には届かなかった。
ニケが、手を離し始める
徐々に離れていく手と手の間には、刃渡り50cmほどの小太刀が練成されていた。
練成された小太刀を、手に取るニケ
「それは、見慣れぬ剣だな。片刃の剣とは」
「これは、俺がいた国の伝統的な刀、っていう武器さ」
「刀...」
興味があるようで、小太刀のじっと見るミーチェ。
だが、そんな暇はなかった。
「くるぞ!」
ミーチェが言うと同時に、ゴブリンがこちらに向かって走ってくる。
棍棒のようなものを振り上げながら、真っ先にこちらへ向かってきていた。
「シロ、周りこんで足止めを頼む!」
シロは、小さく咆え、右から回り込んだ。
「師匠、後衛任せますよ」
「あぁ、任せろ」
そういうとニケは、左から回り込むように走り出した。
「あやつ、なかなか足が速いのだな。シロと同じくらいだ」
ニケの身体能力に、驚きながらも呪文を詠唱し始めるミーチェ。
「っくそ、近くで見ると不気味すぎるだろこいつは」
ゴブリンは、挟まれたことに気がつきこちらと、シロの両方ほうを警戒しているようだ。
「″水よ我が元へ来たれ、その力を持って敵を打ち倒せ″、ウォーターハンマー!」
ミーチェの掛け声と共に、ゴブリンの上に大きな水の塊が生成された。
ある程度水の塊が大きくなったと思ったら、勢いよくゴブリンの頭上めがけて落下した。
「ッ...!」
落下してきた水の衝撃を受け、ゴブリンがひるんだ。
「いまだ、シロ!」
ニケの掛け声と共に、シロがゴブリンに向かって爪を立てた!
小太刀を後ろに構え、すかさずニケは走り始める。
「くらえぇぇぇぇぇッ!!!」
勢いよく振り上げた小太刀が、ゴブリンのお腹から入り背中へと抜ける。
「グ...ッ!?」
反対側から、シロの爪がゴブリンの腕を裂いた。
これならいける...!!!
ちょっとした油断は...隙を生んだ。
「ウガァァァァァッッッ!!!!」
ゴブリンは、持っていた棍棒を、ニケに向けて振り上げてきた!
このままでは、あたる...。
そう思いニケは、小太刀を横に構えた。
カン!と甲高い音と主に、棍棒を受け止めるニケ
「っく...重い一撃だぜ...」
棍棒を受け止めた衝撃は、なかなか重いものだった。
すかさずシロが、棍棒を持つ右腕に噛み付いた。
「ッウ...ガアアアアアアッ!?」
ゴブリンは、シロを離そうと左手でシロを殴る。
殴られて、頭部から血が出るシロ...。
だが...シロは、息を荒くしながらも噛み付いたまま離そうとしない...!!!
「おいおい、忘れられちゃぁ困るぜ」
力が緩んだ棍棒を受け流し、喉元にめがけて小太刀を突いた。
刃が刺さる感触...そのままニケは、小太刀を横に薙ぎ払った。
血しぶきがあがった...。
「ン...グフ...」
喉を切られたゴブリン、首からは大量の血が吹き出ている。
首を押さえながらも、体制を立て直そうとするゴブリンに、シロが追い討ちをかける。
シロは、大きく腕を上げ勢いよく振り下ろした、ゴブリンの背中に深い爪あとが入る。
膝をつくゴブリンに対し、ニケは、小太刀を振り上げる。
「終わりだッ!!!」
脳天から、胸元にかけて刃が入った。
力なくして垂れる腕...。
ゴブリンは、前かがみに崩れ去った。
「はぁ、はぁ...終わったのか?」
「上出来だな」
後ろから、かごを持ったミーチェが寄ってくる。
「戦闘に不慣れかと思ったが、なかなか動けるではないか。だが、怪我をしては身が持たぬぞ」
そういいながらミーチェは、懐から赤い液体の入ったビンを渡してきた。
「これは?」
「治癒のポーションだ。シロに、使ってやるといい」
「飲ませればいいのか?」
「そうだ」
「わかった、シロおいで」
ニケが呼ぶと、シロは、のっそりと近づいてきた。
「シロ、これを飲みな、傷か癒えるそうだ」
ビンのふたを開け、シロに飲ませるニケを見ながら、ミーチェは言った。
「召還獣は、一度戻してから時間が経てば回復するが。お主は、常時出してるようだからな。回復は、こまめにしてやらねばならぬ」
「確か、俺の使える水属性魔法で、『回復系統』のものがあるんだよな?」
「たしかにあるが、それがどうしたのだ?」
「それって、召還獣とかにも効果あるのか?」
ふとした疑問、ゲームなどでは回復魔法などを使ってペットや召還獣を回復したり、『肉体強化魔法』や、『エンチャント』(属性付与)ができたから気になっていたのだ。
「回復魔法は、対象がいればなんにでも効果がある。まぁ、不死者にとってはダメージしか入らぬがな」
やっぱ、ゲームと同じだ。
なんでゲームの設定が異世界と同じなのか、疑問を抱いた。
まぁ、それは今後わかることだろう。
「俺、後衛向きの魔法を覚えたいんだが」
「今さっき、お主の動きを見て私は、前衛のほうがいいと思ったのだがな?」
「『即席の連携』を、とっただけだろ?」
特に意味もなくシロに、指示を出して挟み撃ちにしただけだ。
そんなので動きがどうのって、言われてもピンと来ない。
「お主は、攻撃魔法と剣術を極めれば強くはなれるだろう。だが逆に、後衛向きの回復魔法、防御魔法などでは、お主の立ち回りに合わないと思うぞ?」
「いや、錬金術が使えるんだ。いろんな武器とか、練成できるようになりたいし...召還術も使えるから、ひとりでもシロがいてくれる。だけど,、万が一ポーションがない状況になったら、シロを回復させたりするのは困難だと俺は、考えたんだ。だから、回復魔法が使えれれば前衛と、後衛を入れ替えてたたかえるだろう?」
「お主なりに、考えた答えなのだな。それなら、才能をもてあまさずに戦えるからよいではないのか?」
ミーチェは、どうやら承認してくれたようだ。
まぁ、ゲームやってたころからプリーストなどの後衛回復職が、好きだったからっていう理由もあるけど...。
「さてと、家に戻るとしようか」
「俺もう、腹減ったぜ」
歩き出すミーチェに、続くニケと、シロ。
シロの傷は、ふさがったようだが血が残っている...。
傷は、癒えても血は元には戻らないようだ...今後重要になりそうだから覚えておこう。
草原を後にして、森へ再び入る。
来たときと違って、アドレナリンのせいか?妙にうきうきとした気分。
...もうすぐ森を抜けるだろうというところで、ミーチェが立ち止まった。
「来客か...?」
姿勢を低くして、家のほうを伺うミーチェ。
ニケも、同じように姿勢を低くして家のほうを伺う。
そこには、戦士風の者と魔法使いのような服装をした5人組がいた。
「あやつらは...村の『冒険者』か?」
『冒険者』、という言葉にすこし憧れを覚えていたニケは、その5人組をじっとみつめるのだった...。
「んー、師匠みたいに魔線がでてこないや...」
シロは、相変わらず暇そうに寝そべっていた。
師匠が家に入ってから、かれこれ1、2時間は経っている。
時間で言えば、8時ごろなのだろうか。
時計もなく、携帯もないニケにとって、時間を知る術は太陽の位置による、感覚しかなかった。
「太陽が、真上に来る前あたりに切り上げるかな」
少し、身体が重くなった気がした。
「魔線が引けてないのに。魔力は、消費してるのか?」
ふと、気がついた。
魔線を出せてもいないのに、魔力が減っているのはおかしい。
なら、なぜ魔力は減っているのか。
「別のところに、意識がいってるって、ことなのかな」
気がついたら、注意してやらないとな。
思っていた以上に、慣れてないものを頑張るのは難しい。
だけど、最初はみんな歩く道なのだからと。
何事にも順序はある、最初のうちにサボると、あとあと後悔することだってある。
なら、最初からやる気をだして取り組んで、基礎を固めたほうがいい
「一回、『瞑想』しておいたほうがいいかもしれない」
ニケは、瞑想の構えに入る。
まだ慣れてはいないが、構えさえ覚えてしまえば、あとは自然と身体が動く。
「ふぅ...背中に、意識を集中...」
背中に意識を向けると、身体全体に行き渡っていた魔力が、背中1点に集まり始める。
この感覚を、指に行き渡らせることができれば、簡単なのだが。
しばらくすると、魔力が大きくなるのを感じた。
さっき、瞑想したときより時間をかけてみたらどうなるのか、と疑問に思い長めに瞑想することにしてみた。
...そろそろいいかな?
時間にして、約10分程度だろう。
背中に最初より、大きいものを感じ瞑想を終えたニケ。
「さてと、魔線の習得頑張らないと」
その目は、やる気に満ちていた。
しばらくして、指先に違和感を感じ始めた。
「ん?なんか指先で物に触れてるような感触が...」
この感触は、どうなのだろうか。
すると、指先から光のようなものが見え始める。
「あ、できたかもしれない!」
ふと、指を動かした瞬間それは消えてしまった。
「意識がそれたから、消えちゃったのかな?今の感覚を思い出して、再挑戦かな」
ニケは、嬉しそうに構えた。
一度、覚えた感覚はすぐに使えるものだ。
指先に意識するというより、指先で物を触ってる感覚のほうが、発動できるのかもしれない。
「早く、魔線引けるようになりたいなぁ」
すると、さっきと同じように指先が光り始めた。
このまま、維持して横に動かしても消えなかったら、習得できたということかな?
ニケは、手を横に動かし始めた。
すると、動かす前のところから動かした所まで、白い光の線が引けていた。
「お、お、できたんじゃない!?これ!」
初めてできた魔線に、感動しながらも手を左右に動かしたり。
上下に動かして遊ぶ、ニケ。
「反対でも、練習しておいたほうがいいのかな?」
ニケは、左利きなので右手で魔線が引けても、上手く文字をかけない。
左手を上げ、人差し指で物を触れる感覚を連想した。
すると、左手では最初から魔線が引けたのだ。
両手で魔線を引いて遊んでると、ミーチェが戻ってきた。
「お主は、習得が早いのう」
「さっき、できるようになったんだ。左手と、右手、両方ともできるようになったんだぜ」
「基本、自分の利き手でしかできないものなんだが...。これも、異能の才能なのかもしれないな」
こちらに、近づいてくるミーチェ。
「俺が、すげぇってことだろ!」
「まだ、初歩の初歩ですごいとか、そういうのはないだろ」
ミーチェは、笑いながら言った。
「たしかに、そうだけどさ」
「まぁ、魔線が書けて嬉しいのはわかるが、それが最初にできて当然なのだ」
もうすこし、褒めてくれてもいいんじゃないかなぁ。
と、ニケは、思いながらため息をついた。
「もう、そろそろお昼になるころだ。森へ、山菜を採りにいくぞ」
「了解。なにか、持っていくものとかってあるの?」
「あー。そうだな、玄関にかごがあったはずだ。それと、これを着けておくがよい」
そう言って渡してきたのは、昨夜錬金術が使えるかどうか試したときに使った、手袋だった。
「これを、お主にやろう。練習用だが、錬金術を使うのになんの問題もない」
「え、いいのか?」
「別に、構わぬ。私自身、錬金術は使わないのでな。持っていても、しょうがないのだ」
受け取った手袋を、左手につけてニケは、シロについてくるよう命じ。
玄関のかごを、取りに行った。
「シロ、かご持てる?」
ニケは、シロにかごを咥えて持つように命じた。
シロは、咥えてご機嫌そうにミーチェの元へ歩いていった。
「師匠、シロのこと気に入っているのか?」
「ん?まぁ、それもあるが。もともと、『ホワイトウルフ』という魔物は、ここより北の『オルカナ地方』という雪山に、生息しているのだ」
ミーチェは、かごを持ってきたシロを撫でているところだった。
「ちなみに、今俺がいるところは、なんて所なんだ?」
「ここか?ここは、『ダクス地方』だ」
『オルカナ地方』――山が多く村などは、盆地にあるという。1年中寒く、雪が溶けることのない所だ。
『ダスク地方』――緑が多く、森や山などの自然が豊かな土地だそうだ。と後ほどミーチェが、教えてくれた。
「島国の西側って、考えておけばよい」
「島国?ほかに国が、あるってことか?」
「あぁ。ここは、『ビスク帝国』領土の西側だ。北側には、オルカナがあるが南、東側は、統一されていて『ガリム地方』と呼ばれる。その中心部に、王都があるのだ」
聞いていても、地図がないのでさっぱりだ。
あとで世、界地図でも探してみるかな。
「まぁ、そんなところだ。さてと、そろそろ森へ入るとしよう」
「あいよ、いくぞシロ」
のっそりと起き上がり、あくびをしながらかごを咥えてついてくるシロ。
ふと、錬金術の『籠手』を渡されたことに疑問を感じた。
「なぁ師匠、なんでこのタイミングで、『籠手』を俺に渡したんだ?」
「ここの、開けた土地があるだろ?ここは、結界で魔物や普通の人が来れないようになっているんだ」
「あぁ。それで、昨夜結界を越えてきたのか~とかそんな感じの話を、していたのか」
昨夜、消されそうになったのを思い出し、鳥肌が立った。
ゆっくりと、森の中へ入っていくミーチェのあとに、続きニケと、シロも森の中へと入って行った。
「ここから、先は魔物の群生地だ。気をつけないと、殺されるぞ」
「入って早々、いやになる話だな」
「まぁ。魔物は、強い魔力を持つものには襲いかからない習性があるからな」
そう、目の前にいるのは、どれくらいすごいかわからないが...たぶん、すごい魔法使いなのだ。
「今、失礼なこと考えてたであろう?」
ミーチェが、不気味な笑顔とともに振り返ってきた。
「い、いやだなぁ。師匠は、すごい魔法使いだーって思っただけさ、あはは」
「ならば、良いのだがな」
「そういえば、山菜ってどういうのを採るんだ?」
山菜、といわれても大まかにいわれてもわからない。
まず、現実世界と異なった植物しかないため、現実世界での知識は、役に立たない。
唯一、わかることはきのこはきのこって、ことだけだった。
「そうだな、基本的に疲労回復の薬草ときのこだが。まぁ、お昼だけだからそこまでとる必要はない、採って帰ってすぐお昼にしよう」
「薬草って、食べれるのか?」
「基本的に、食べれるものが多い。ポーションや、解毒薬などにも、用いられるが。昔は、薬草自体を食べて、効果を得ていたのだ」
薬草だけでは、効果は薄いってことなのかな。
やっぱ、異世界にはポーションとかあるんだなぁ。
改めて言おう、流石ファンタジー。
「森の中って、結構暗いんだな」
「木々が多いからな、この辺は。もう少し、奥へ行けば草原に出るはずだ」
もう、少し歩くってことか。
シロの上に、乗れれば楽だろうなぁ。
「そういえば、そのホワイトウルフなんだがな」
「ん?『シロ』がそうかしたか?」
「『シロ』、と名付けたのか?」
「あぁ、毛皮が白いから『シロ』」
可愛い名だなと、ミーチェは、言いながらも前へ進んでいく。
「それで、シロがどうかしたのか?」
「あぁ、そのことなんだが、シロはだな、まだ子供だ」
「え、これでまだ子供なのか!?」
驚きながらニケは、シロを見た。
充分大きいぞ...。
「本来、ホワイトウルフと言う魔物の子供は、1、2mほどなのだ」
「それだと。シロは、まだこれから成長していくって、ことなのか?」
「大人になると、3~5mほどになるぞ」
今の状態でも、大きいのにここからそんなにでかくなるのかよ...。
話をしながら歩いていると、森を抜け草原に出た。
「ここで、薬草などが採れるのだ」
「って、言われてもどれが薬草なのか、わからないんだよな」
「その辺に、三つ葉の草があったらそれは薬草だ。ほかにも、ぎざぎざした葉のものは毒消し草」
足元をみるが、それらしき薬草などは見当たらなかった。
また、気が遠くなりそうだな...。
「この辺には、あまり生えてないぞ?」
「そうなのか?なら、どこに生えてるの」
「あそこに、木が見えるだろ。あの木は、『魔想樹』――と言う木で、魔力を宿す木なのだ」
かすかに光っているように、見える木が草原の中に1本だけ生えていた。
見上げるほど、大きな木の根元には自分たちが、今いるところと違う草花が生えていた。
「薬草などは、魔力で成長すると言われている」
「魔力で、成長するのか?」
魔力って、意外と万能なんだなと、思った。
確かに、魔力で成長したものなら、疲労を回復させたり、傷を癒したりできるのかもしれない。
「とりあえず、あの木の元まで行くぞ」
そういうとミーチェは、先に歩いて行ってしまった。
ニケと、シロもその後に続いた。
「足元を、見てみろ」
そう、言いながら師匠は足元の草花を指差した。
「これが、さっき言ってた薬草だ。それと、向こうが毒消し草」
確かに、さっき言ってた特徴と一致する。
「これを、採ればいいのか?」
「そうだ、だが採りすぎてはいけないのだ。必要な量だけ、採らなければ自然のバランスが崩れてしまう」
「採りすぎて、なくなると困るもんな」
ミーチェは、そういうと薬草を3、4枚だけとってかごに入れた。
「あとは、山菜を取って帰るだけだ。向こう側に、倒れた木があるだろ?倒れてる木などには、きのこが生えるから覚えておくことだ」
「きのこって、言っても毒きのことかすぐわかるのか?」
「毒キノコの場合は、胞子や触った感触で大体わかる物が多い」
触ってわかるって、それはそれですごいものだな。
話をしながら、倒れた木の元へと行くとたくさんのきのこが生えていた。
大きいものから、小さいもの、色も紫のものや、灰色のものどれも危なさそうに見える。
「私は、きのこの名前などはわからぬが。これと、これは食べれるやつだ」
そういいながら、茶色いきのこと、小さい灰色のきのこを指差した。
そういえば、今朝のスープに入ってた、きのこと同じ気がする
「この、小さいきのこは今朝食べただろう。これは、歯ごたえがあってなかなか美味しいのだ」
「スープ自体の味、は薄かったけどな」
「それは、仕方がない。調味料などが、もうないのだ。そろそろ村へ、買い出しに行かねばな」
そう言いながらミーチェは、きのこを採りかごに入れた。
「そういえば、近くに村なんてあるのか?見渡す限り、森なんだが」
「家の近くに、川があってな。上に行けば、小さい湖がある。下に行けば、村へいけるのだ」
「川があるのか、水浴びでもしにあとで、行こうかな」
昨夜は、お風呂にも入れなかったからなぁ、流石に汗を流したいものだ。
「川へ、行くのは自由だが結界の外、だということを忘れるでないぞ?」
「川にも、魔物がいるってことか?」
「川の中には、あまりおらぬが。川岸などに、魔物がいるときがある」
そういいながらミーチェは、勢いよく振り返った。
「何か、くるぞ」
いきなりのことで俺は、なにをしたらいいかわからなかった。
シロは、ミーチェと同じ方向を見ながら、構えて唸っていた。
ミーチェの、向く方向をみると森から、1匹の魔物が出てきた...!
「群れでないだけマシか。あいつは、ゴブリンだ。亜人種で、人と同じ集落を作り生活している。森の番人、みたいなやつらだ」
「あれが...ゴブリン...」
ゲームなどで知ってる、ゴブリンとは程遠い不気味な姿だった。
猫背で、皮膚は緑色、腰に毛皮のようなものを巻いている。
大きさで言うと、人とあまり大差がないように見えた。
「ニケよ、あやつと戦ってみるか?」
突然のことに、返事が遅れた。
「俺が、あいつと...!?」
「そうだ、これからお主が一人で山菜など採りにくる日があるだろう。そのためにも、今から慣れておく必要があるであろう」
「あんなやつと...たたかうのか」
異世界に来て、はじめての戦闘だ...。
そう思うだけで、足が震えははじめた。
「私、が後ろから援護してやるから。好きに戦ってみるがよい」
「そんな簡単に、言わないでもらいたいね...!」
イメージを構築させ、左手に意識を。
左手が光を放ったところで。右手と合わせる。
イメージだ、イメージするんだ。
素材の硬さ、触り心地、長さ。
...いまだ!
「ほう、錬金術をもう使えるようになっておるのか。学習能力だけは、驚くものがあるのう」
ミーチェが声をかけるが、集中している、ニケの耳には届かなかった。
ニケが、手を離し始める
徐々に離れていく手と手の間には、刃渡り50cmほどの小太刀が練成されていた。
練成された小太刀を、手に取るニケ
「それは、見慣れぬ剣だな。片刃の剣とは」
「これは、俺がいた国の伝統的な刀、っていう武器さ」
「刀...」
興味があるようで、小太刀のじっと見るミーチェ。
だが、そんな暇はなかった。
「くるぞ!」
ミーチェが言うと同時に、ゴブリンがこちらに向かって走ってくる。
棍棒のようなものを振り上げながら、真っ先にこちらへ向かってきていた。
「シロ、周りこんで足止めを頼む!」
シロは、小さく咆え、右から回り込んだ。
「師匠、後衛任せますよ」
「あぁ、任せろ」
そういうとニケは、左から回り込むように走り出した。
「あやつ、なかなか足が速いのだな。シロと同じくらいだ」
ニケの身体能力に、驚きながらも呪文を詠唱し始めるミーチェ。
「っくそ、近くで見ると不気味すぎるだろこいつは」
ゴブリンは、挟まれたことに気がつきこちらと、シロの両方ほうを警戒しているようだ。
「″水よ我が元へ来たれ、その力を持って敵を打ち倒せ″、ウォーターハンマー!」
ミーチェの掛け声と共に、ゴブリンの上に大きな水の塊が生成された。
ある程度水の塊が大きくなったと思ったら、勢いよくゴブリンの頭上めがけて落下した。
「ッ...!」
落下してきた水の衝撃を受け、ゴブリンがひるんだ。
「いまだ、シロ!」
ニケの掛け声と共に、シロがゴブリンに向かって爪を立てた!
小太刀を後ろに構え、すかさずニケは走り始める。
「くらえぇぇぇぇぇッ!!!」
勢いよく振り上げた小太刀が、ゴブリンのお腹から入り背中へと抜ける。
「グ...ッ!?」
反対側から、シロの爪がゴブリンの腕を裂いた。
これならいける...!!!
ちょっとした油断は...隙を生んだ。
「ウガァァァァァッッッ!!!!」
ゴブリンは、持っていた棍棒を、ニケに向けて振り上げてきた!
このままでは、あたる...。
そう思いニケは、小太刀を横に構えた。
カン!と甲高い音と主に、棍棒を受け止めるニケ
「っく...重い一撃だぜ...」
棍棒を受け止めた衝撃は、なかなか重いものだった。
すかさずシロが、棍棒を持つ右腕に噛み付いた。
「ッウ...ガアアアアアアッ!?」
ゴブリンは、シロを離そうと左手でシロを殴る。
殴られて、頭部から血が出るシロ...。
だが...シロは、息を荒くしながらも噛み付いたまま離そうとしない...!!!
「おいおい、忘れられちゃぁ困るぜ」
力が緩んだ棍棒を受け流し、喉元にめがけて小太刀を突いた。
刃が刺さる感触...そのままニケは、小太刀を横に薙ぎ払った。
血しぶきがあがった...。
「ン...グフ...」
喉を切られたゴブリン、首からは大量の血が吹き出ている。
首を押さえながらも、体制を立て直そうとするゴブリンに、シロが追い討ちをかける。
シロは、大きく腕を上げ勢いよく振り下ろした、ゴブリンの背中に深い爪あとが入る。
膝をつくゴブリンに対し、ニケは、小太刀を振り上げる。
「終わりだッ!!!」
脳天から、胸元にかけて刃が入った。
力なくして垂れる腕...。
ゴブリンは、前かがみに崩れ去った。
「はぁ、はぁ...終わったのか?」
「上出来だな」
後ろから、かごを持ったミーチェが寄ってくる。
「戦闘に不慣れかと思ったが、なかなか動けるではないか。だが、怪我をしては身が持たぬぞ」
そういいながらミーチェは、懐から赤い液体の入ったビンを渡してきた。
「これは?」
「治癒のポーションだ。シロに、使ってやるといい」
「飲ませればいいのか?」
「そうだ」
「わかった、シロおいで」
ニケが呼ぶと、シロは、のっそりと近づいてきた。
「シロ、これを飲みな、傷か癒えるそうだ」
ビンのふたを開け、シロに飲ませるニケを見ながら、ミーチェは言った。
「召還獣は、一度戻してから時間が経てば回復するが。お主は、常時出してるようだからな。回復は、こまめにしてやらねばならぬ」
「確か、俺の使える水属性魔法で、『回復系統』のものがあるんだよな?」
「たしかにあるが、それがどうしたのだ?」
「それって、召還獣とかにも効果あるのか?」
ふとした疑問、ゲームなどでは回復魔法などを使ってペットや召還獣を回復したり、『肉体強化魔法』や、『エンチャント』(属性付与)ができたから気になっていたのだ。
「回復魔法は、対象がいればなんにでも効果がある。まぁ、不死者にとってはダメージしか入らぬがな」
やっぱ、ゲームと同じだ。
なんでゲームの設定が異世界と同じなのか、疑問を抱いた。
まぁ、それは今後わかることだろう。
「俺、後衛向きの魔法を覚えたいんだが」
「今さっき、お主の動きを見て私は、前衛のほうがいいと思ったのだがな?」
「『即席の連携』を、とっただけだろ?」
特に意味もなくシロに、指示を出して挟み撃ちにしただけだ。
そんなので動きがどうのって、言われてもピンと来ない。
「お主は、攻撃魔法と剣術を極めれば強くはなれるだろう。だが逆に、後衛向きの回復魔法、防御魔法などでは、お主の立ち回りに合わないと思うぞ?」
「いや、錬金術が使えるんだ。いろんな武器とか、練成できるようになりたいし...召還術も使えるから、ひとりでもシロがいてくれる。だけど,、万が一ポーションがない状況になったら、シロを回復させたりするのは困難だと俺は、考えたんだ。だから、回復魔法が使えれれば前衛と、後衛を入れ替えてたたかえるだろう?」
「お主なりに、考えた答えなのだな。それなら、才能をもてあまさずに戦えるからよいではないのか?」
ミーチェは、どうやら承認してくれたようだ。
まぁ、ゲームやってたころからプリーストなどの後衛回復職が、好きだったからっていう理由もあるけど...。
「さてと、家に戻るとしようか」
「俺もう、腹減ったぜ」
歩き出すミーチェに、続くニケと、シロ。
シロの傷は、ふさがったようだが血が残っている...。
傷は、癒えても血は元には戻らないようだ...今後重要になりそうだから覚えておこう。
草原を後にして、森へ再び入る。
来たときと違って、アドレナリンのせいか?妙にうきうきとした気分。
...もうすぐ森を抜けるだろうというところで、ミーチェが立ち止まった。
「来客か...?」
姿勢を低くして、家のほうを伺うミーチェ。
ニケも、同じように姿勢を低くして家のほうを伺う。
そこには、戦士風の者と魔法使いのような服装をした5人組がいた。
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『冒険者』、という言葉にすこし憧れを覚えていたニケは、その5人組をじっとみつめるのだった...。
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