9 / 93
8話「明日へ向けての準備」
しおりを挟む夜の風が吹き抜けていく。
魔法の灯りを元にニケは、『雷魔法の書』を読んでいた。
明日は、村長の依頼で魔物退治へ行くのだ。
数が多いと、ミーチェは言っていた。
なら、範囲魔法のひとつくらい覚えておきたい。
ミーチェの力になりたい。
今のニケには、その気持ちが大きかった。
異世界に来て、1日目が終わりを迎えようとしていた。
「明日は、朝早くからでるんだっけ?」
昼間と違い、夜は時間がわからない。
書物に、目を通す。
呪文の種類は、ばらばらに記載されておりどれがどれだか...。
ふと、目にした呪文があった。
第一位階魔法範囲攻撃系列『雷電の咆哮』
この呪文なら使えるかなと、ニケは左手を構えた。
ふとした疑問、人差し指のみじゃないと魔線は出せないのか...。
ニケは、自分の手を見ながら考えた。
学校で教わることには、順序がある。
数学で習うのは、計算式だ。
どこかで間違えれば、答えは合わない。
それは、魔法に置き換えても言えることだ。
呪文の一字一句に、属性、効果、範囲、対象の意味を成すスペルがある。
スペルを間違えると、威力が下がったり、範囲が狭くなったり、対象が変わったりする。
魔道書に目を通すとわかるように、第一位階魔法から第三位階魔法との違いは、スペルの多さ。
基本的に第一位階魔法は短いが、第三位階魔法になると文字数が大幅に変わる。
例えば、『ライト』の魔法は、「″光よ我に灯りを″」と言う感じに短いが。
雷魔法第三位階魔法、『ツインライトニング』あたりになると長すぎて頭が痛い。
ツインライトニングの呪文は、″双方の雷電よ、力を我が手に。我は雷の力を求めるもの。雷電の名の下、敵を焼き尽くせ″という感じにすごく長い。とりあえず長い。
ミーチェの言っていた、人間が使える最大の位階魔法は第七位階。
想像するだけでも、長そうだ。
位階序列が高い魔法ほど、必要なスペルが増えていく。
魔法は、奥が深すぎる...。
第一位階魔法が足し算なら、第三位階魔法は分数に入ってレベルだ。
そして、第七位階魔法となると、それはもう因数分解レベル...。
正直頭が痛い...。
とりあえずピックアップした、雷魔法を覚えて明日に備えなければ...。
その前に、やってみたいことがあった。
ニケは、左手を構えた。
意識を人差し指から、中指へ...。
俺の理論があってれば...。
意識を集中させた。
すると、中指からの魔線が引けた。
「やった、成功したぞ!」
あとは、人差し指と中指で同時に魔線が引ければ...。
改めて、ニケは構えた。
人差し指と中指に意識を...!
だが、ニケの思っていた通りには事は進まなかった。
「やっぱ、だめかぁ...」
これが、成功していれば、理論上二重での直筆詠唱が可能になるのに...。
「なんとしても、習得したいものだ」
今夜は、この辺でやめておこう。
「時間は、たくさんある。焦らず、ゆっくりやればいいさ」
そういえば、さっきやろうとしていた呪文...普通に忘れていた。
「えーっと、どこだっけ」
雷魔法の書を開き、先ほど見つけた範囲魔法を探すニケ。
どこだったかな...。
少しして、先ほどの見つけた呪文のページにたどり着いた。
ニケは左手を構えた。
「えっと、″雷電よ、我に力を、音共に敵を弾け″雷電の咆哮!」
魔方陣が展開され、魔法が発動した。
魔方陣から放たれたのは、薄い膜のようなものだった。
膜は扇状に広がった、膜の後を追いかけるように稲妻が走った。
「ん、ん~...衝撃波のようなものかな?」
威力はあまりないようだった。
明日、使う場面があるようなら、使ってみよう。
そういってニケは、家の中へ入って行った。
明日は、怪我などなければいいのだけれど...。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる