22 / 93
21話「広場での戦闘」
しおりを挟むもうすぐ広場が見えるだろうところには、アンデット達が群れを成していた。
来るときに起きていた、北口の火事は収まったようだ。
「マジかよ。おい姉さんこりゃまずいぜ…」
「そんなものわかっておる。私達がやらねばならないことだ、覚悟を決めろ!レイン」
「そんなもの、協会の連中といるときからしてるぜ」
「師匠。これは流石に正面突破は厳しいんじゃないかな」
「そうだな、ここで数を減らさなければ包囲されて終わりだ」
数はおそらく、70を軽く越えているだろう。
この村の人口は、150人前後。
焼死体の数が多いのは、北口のみのはず。
「アンデットの数が少ない気がする」
「姉さん、そりゃどういうことだ?」
「焼死体と首のない死体は、来るときそんなになかった。それを考えても数が少ないのだ」
「北口と、広場しか俺は見てないけど、焼死体は北口のみしかなかったぜ」
「俺が殺したのは皆、首がないはずだ…。まさか、こんなことになるとはな……」
流石に、罪悪感が大きいのだろう。
レインは、申し訳なさそうにアンデットたちを見ている。
「今は、悔やんでいる暇はない。レイン、お主が犯したことは許されないだろう。ならば、奪った命の分いろんな人を救って見せろ。それがお主の罪滅ぼしだ」
「わかってる。だから俺は、あのウィッチを倒す!」
レインは斧を構えなおした。
「ニケ、魔法で前方にいるアンデットの数を減らすぞ」
「わかった」
「レイン、数が減ったらこちらに流れてくるだろうから、広場に入り北口方向を頼む。私は南口を、ニケとシロはウィッチの元へ!」
「あいよ!」
「了解!」
ニケは、左手の小太刀を地面に突き刺すと左手を構えた。
双線をだし、詠唱の準備にかかる。
ミーチェも、詠唱を始めた。
「綴る!″我、光の力を求めるもの。射抜け、その光と共に″ライトニードリング!」
「″水よ、その脅威を持って敵を薙ぎ払え、その大きな力を持って敵を一掃せよ″!ウォータースパイラル!」
ニケは、二つの魔方陣を左右の手に展開させた。
魔法が発動し、複数の光の矢が前方にいるアンデット達に放たれた。
5、6体は倒れただろう。
だがそれでも足りない。
すると、ミーチェの魔法が発動した。
ニケの倒したアンデットの骸あたりに魔方陣が展開された。
魔方陣が光を増し、水が流れ出す。
流れ出した水は徐々に渦を巻き始めた。
やがて、高さ15mはあろう渦巻きの柱が出来上がった。
「薙ぎ払えッ!」
ミーチェの言葉と共に、渦巻きの柱は前進を始めた。
ゆっくり、アンデットたちを巻き込みながら。
巻き込まれたアンデットはしばらくすると、すごい速さで吹き飛ばされていた。
広場のあちらこちらへ、壁に打ち付けられるもの、地面に頭から突き落とされるもの。
集団に突っ込んで、ボーリングのようになぎ倒していくもの。
「師匠すげぇ……」
「見惚れている場合ではない!いくぞ!」
ミーチェは、ニケに注意するとすぐさま詠唱の準備に入った。
「うおおおおおおおおおおッッッ!!!」
先陣を切ったのは、レインだった。
レインは、広場に入ってすぐ北口に向け走りこむ。
斧を横から薙ぎ払い、アンデットたちを薙ぎ倒していく。
首を叩き落されるもの、腹部から斧をくらい、上半身がもげるもの、下からの振り上げにより切り上げられるもの。
「うっひょぉ、レイン兄すげぇ。俺の負けてられないぜ!いくぞ、シロ!」
ニケは、小太刀を抜き取り広場へと走り始めた。
そのあとに続くシロ。
「くらえええええええええッッ!!!!」
走りこみと同時に、右足を軸に両足を地面に着け時計回りをしながら刃を立てた!
回転するニケの斬撃をくらい、腹部に深い傷を負うもの、手を切り落とされるもの。
後ろに続くシロは、吹雪の障壁を展開させた。
高く飛び、爪で脳天から叩きつけられるもの、足を噛まれ振り投げられるもの、喉を噛み千切られるもの。
シロの身体は、返り血により徐々に赤く染まっていく。
「″大いなる闇の炎よ、我が呼びかけに応え、その熱を持って敵を焼き殺し、灼熱の地獄と化せよ″!ヘルフレイム!」
ミーチェは、南口手前に向けて魔法を放つ。
大きな魔方陣が展開された。
今までに見たことがないくらい大きい、直径10mはあるだろう。
魔方陣が光を帯び始め、魔法が発動する。
第5位階闇魔法『ヘルフレイム』――闇属性範囲魔法の中でももっとも威力のある魔法だ。
魔方陣の中心から、蒼い炎が噴出す!
魔方陣の中にいたアンデットたちは、蒼い炎に呑まれそのまま倒れていった。
「師匠やべぇ……」
ニケは、ミーチェの魔法の強大さに気づく。
「俺も早くあんな風になりたいぜッッ!!!」
左手の小太刀をアンデットに向けて投げる。
小太刀は、アンデットの頭に刺さると光となり消えた。
ニケは、右手の刀でアンデットを切り刻みながら直筆詠唱を繰り出す。
「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の咆哮!」
左手を銃のように構え、二重の魔方陣を展開する。
「吹き飛ばせぇぇぇぇッッッ!!!!!」
中央から迫り来るアンデットたちに向け、魔方陣を同時発動させる。
二発の魔法が放たれると同時に、アンデットたちは勢いよく吹き飛ばされる。
焦げにおいがあたりに立ち込める。
その隙間を縫ってシロが走り出す!
アンデットを前に、足を踏ん張り大きく息を吸うと
今まで聞いたことがない咆哮を上げた!
アンデットたちは、咆哮が放つ衝撃に耐えようと踏ん張っている。
「シロ……?」
今までにない咆哮を放つシロに、すこし不安を感じるニケだった……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる