夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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22話「第3の魔線」

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 シロの放つ咆哮に、耐えれず吹き飛んでいくアンデット。
 次々と薙ぎ倒されるアンデットを横目に、ウィッチが動き出した。

「ニケ!シロの咆哮は、ホワイトウルフのものではない。それよりウィッチの元へいくのだ!」

「師匠。あとで詳しく教えてくれよなッ!」

 ニケは、刀を両手で握りなおすとウィッチ目掛けて走りだした。
 行く手を阻もうとするアンデットたち。

「どっけぇぇぇぇッッ!!!!」

 ニケは、正面から突っ込んで行く!
 正面のアンデットに対し、全力で刀を振り上げる!
 刀身は、アンデットの股から入り右肩へと抜ける。
 振り上げた刀を、反時計回りに身体を回しながら振るう。
 近づいてきていたアンデットたちの上半身を薙ぎ払う!
 血、内臓、腕や手が飛び散る……。
 だが止まらない、止まれない。

「お前ら多すぎなんだよッ!!!」

 ニケは、必死に刀を振りウィッチの元を目指す。
 シロは、咆哮をやめるとすぐにこちらへと走ってきた。

「シロ、もう一回あの咆哮出せるか?」

 シロは小さく咆えると、その場で大きく息を吸った。
 広場の奥にいたアンデットたちが一斉に押し寄せてきた。
 シロは咆哮を放つ。
 先ほどよりも強力だ!
 咆哮は吹雪のようにも見える。

「はぁ、はぁ……ニケ坊!早くしやがれッ!」

 北口の敵を薙ぎ倒しながらレインが叫ぶ。
 息を切らしながらも、アンデットを叩き潰す。
 数は……先ほどの半分くらいだろう。
 だが、長期戦になるとこれ以上はまずい。
 ミーチェは、範囲攻撃をやめ別の詠唱に入っていた。

「″漆黒の闇に命ず。汝、我との契約の元。その姿を見せたまえ″!我が元に来たれ!ギルティーサイス!」

 魔方陣が展開され、その手には2mはあろう大鎌が握られていた。

「まったく、梃子摺らせてくれるものよッ!」

 大鎌を振り上げ、南口に向けて走るミーチェ。
 立ちはだかるアンデットたちを薙ぎ払い、切り裂き、首を刎ねる。
 その姿は、まさしく『死神』そのものだった。

「師匠、こえぇ……」

 シロの咆哮が止む。
 群れを成していたアンデットたちの真ん中に、綺麗に道ができていた。
 だが、思っていた以上にウィッチは高いとこに浮遊していた。

「あれは、流石に高すぎるだろ……」

 だが、ひとつの策が浮かびあがる。
 その策とは……。
 ニケは、これしかないと呟くとウィッチ目掛けて走り出す!
 左手から双線を出しながら。
 双線は、ニケの後を追うように伸びている。

「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の咆哮!」

 魔方陣が、左手に二重に展開される。
 ウィッチまで、あと少しのところでニケは左手を地面に着ける。

「高みの見物は……終わりだッッッ!!!!」

 魔法が発動する。
 すると、ニケは宙に吹き飛ばされた。
 時計回りに回転し、ウィッチ目掛けて落ちていく。
 驚いたウィッチは、詠唱を始めたようだ。
 回転する視界の中で、ウィッチの魔線がチラチラ見える!
 タイミングを計りつつ、ウィッチへの落下速度は上がっていく。

「ここだッッ!!!」

 左手を銃のように構え、ウィッチの目の前で魔法を発動させる。
 詠唱中のウィッチは避けることができず、雷電の咆哮を真正面から食らう。
 吹き飛ばされ、壁に打ち付けられるウィッチ。
 ニケは、魔法を発動したときの反動で反対方向に落下した。

「ぐはッ……!!」

 身を強く打ちつけ、転がる先はアンデットの群れの中だ。

「ニケェェェェッッ!!!」

 ミーチェは、それをみると広場の中央目指して走り出す。

「くっそ、ニケ坊しくじったか!」

 同じくレインも、広場の中央へと走り出す。
 それを見ながら、ニケの下へと走りだすシロ。

「来るなッ!」

 起き上がりながら、ニケは叫んだ。

「今きたら……囲まれて……終わる!それだけは……それだけは、だめだぜ。俺は……大丈夫だからそっちを頼むよ……」

 頭から流血しながら、ニケは二人に呼びかける。

「だが!そのままでは、お主が危ないであろう!」

「こんなところで、変な意地張ってんじゃねぇぞニケ坊!」

 泣きそうな叫ぶ声を上げるミーチェ。
 苛立ちを覚えながらも叫ぶレイン。

「へへ……なら、やってやるさ。見てろ!これが俺の魔法だ!」

 ニケは、両手を大きく開く。

「まさか……お主の魔力は、残り少ない!馬鹿な真似はよせッ!!」

 ミーチェは敵を薙ぎ払いながら、こちらにやってくる。

「師匠。あんたは、こんなところで死んだらいけない。レイン兄も!これから人を救うんだろ!なら、俺はここで死んでもかまわない!二人を守れるなら!最後に、二人の力になれるなら!」

 シロがニケの下にたどり着く。
 シロは障壁を呼び出し、アンデットたちに突っ込んで行く。

「ありがとう、シロ」

「ニケ!何をするかわからんが、へんなことだけは考えるんじゃないぞ!」

「わかってるよ、師匠ッ!」

 左手から双線、右手から魔線が引かれる。

「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の咆哮!」

「『多重詠唱』……」

「くっそ、どきやがれアンデット共ッ!」

 ニケの成したことに言葉を失うミーチェ。
 一方ニケの下へと行こうと、アンデットを薙ぎ払うレイン。
 ウィッチは、起き上がろうとするが電撃が身体を走り、思うように身体が動かないようだ。

「くらえぇぇぇぇッッッ!!!

 左右に展開された魔方陣が展開され、魔法を放った……。
 
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