夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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24話「戦闘での別れ」

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 レインがアンデットの間を駆け抜ける、その後ろをミーチェが続く。

「じゃまだああああああああッッッ!!!!」

 アンデットの首を刎ねながら、前へ進むレイン。

「レイン、あまり無茶をするな!囲まれるぞ!」

 慌てて、ミーチェが注意を促す。

「わかってるぜ、だけどあの炎の柱が動き出したらこっちも終わりだ」

「最優先は、詠唱者の排除っか」

 考えを改め、レインと共に広場中央にむけて走り出すミーチェ。
 その光景を壁に寄りかかりながら、ニケは見ていた。

「二人とも、待っててくれ……綴る!″我、水の癒しを求めるもの。汝、我が願いを聞き届け、我に癒しを与えよ”ミストヒール!」

 魔力が少ないため、双線が出せないニケ。
 二重ではない第一位階回復魔法は、回復に時間がかかる。
 魔力が残り少ないため、魔法自体も効果をあまり発揮できない。
 つまり、治癒能力の低い状態で時間を掛け徐々に回復するしかないのだ。

「どうして、こんなときに……ッ!!!」

 歯を食いしばりながら、前方の光景に目をやるニケ。
 ミーチェとレインは、またたくまにアンデットを薙ぎ倒していく。

「ダメだ……身体が重い……」

 軽い眩暈と共に、ひざを着いてしまうニケ。
 シロは、心配そうに鳴いている。

「ごめんな、シロ。ご自慢の毛皮汚させちまって……」

 そういいながら、ニケはシロの頭を撫でた。

「くっそ、多すぎる!また増えてねぇか?」

「確かに、増えている。嫌な予感だする、気をつけろレイン!」

 ミーチェは、レインの方向に振り返った。
 ウィッチが、浮き始めていた。

「まずい!レイン離れろ!」

「ッ!?」

 レインも気がついたらしく、後退を開始した。
 ウィッチが、浮遊をはじめると同時に、炎の柱がこちら目掛けて迫ってきた。
 レインの目が大きく見開かれる。

「レイィィィィィンッッ!!!」

 ミーチェの叫び声が、広場に響いた。
 レインが、炎の柱に呑まれたのだ。

「ぐ、あああああああああああッッッ!!!!!」

 ミーチェは、どうすることもできなかった。
 魔法に呑まれた者は、救い出すことができないのだ。
 そう、呑まれてしまったレインは、もう……。

「う、うそだろ……。レイン兄……レイン兄ぃぃぃぃぃッッッ!!!!」

 呑まれる瞬間を目の当たりにしたニケは、泣きじゃくることしかできなかった。

「なんで……なんでだよッ!」

 左手を、地面に叩きつけながら涙を流すニケ。
 それみていたシロが、走り出す。
 炎の柱の下へ、一目散に。

「シロ……?なにをどこへ行くんだ!シロ!」

 突然走るだす相棒に、呼びかけるニケ。
 だが、シロは振り向かない。
 まるで何かを悟ったかのように、真っ直ぐただ真っ直ぐ走っていく。
 炎の柱の前で、シロは足を踏ん張って息を吸い込んだ。

「シロッ!?ここでなにをしている!ニケはどうしたッ!!」

 突然、シロが前線に出てきたことに驚くミーチェ。
 だが今はそれどころではない、レインを助ける策を考えなくては。
 炎の柱を睨むミーチェを横目に、シロは咆哮を放った。

「お主、やはりフェンリルかッ!?」

 シロの放つ咆哮に心当たりがあるように、ミーチェはつぶやいた。
 シロの放った咆哮が、炎の柱を吹き飛ばす。
 だが、手遅れのようだった。
 レインの身体は黒く焦げ、顔などは形を成していなかった。

「レイン……すまない、私が未熟なせいで……魔法を熟知しても、人ひとりも救えないのか私は……」

 ミーチェは、悔しそうにうつむいたままその場に膝をついた。

「レイン兄……嘘だよな、嘘だって言ってくれッ!!!」

 広場中央に向け、叫ぶニケ。

「ニケ!瞑想をしておけ!レインの仇は私が討つ!」

 大鎌を持ち上げながら、ニケに指示をするミーチェ。 

「頼むぜ……師匠……」

 嗚咽を我慢しながらも、ニケはつぶやいた。
 瞑想の構えに入る。
 ミーチェは、大鎌を振り回しながらアンデットたちを薙ぎ払い、ウィッチの元を目指す。

「数が多すぎる。シロ、手を貸してくれないか」

 後ろにいるシロに、手伝いを求めるミーチェ。
 シロは、小さく咆えると障壁を展開しミーチェの傍へとやってきた。

「では、参るとするかシロ」

 目の前には10体ほどのアンデット、その後ろにはウィッチが詠唱を始めている。

「時間がない…ッ!!」

 すぐさま詠唱の構えに入るミーチェ。

「″水よ我が元へ来たれ、その力を持って敵を打ち倒せ″ウォーターハンマー!」

 ウィッチの頭上に魔方陣が展開され、魔法が発動する。
 水の塊が、ウィッチ目掛けて勢いよく落下する。
 水の塊の重い衝撃を受けたウィッチは、仰向けに地面に叩きつけられた。

「シロ、行け!」

 ミーチェが合図すると共に、シロが走り出す。
 ミーチェは目の前にいる、アンデットたちにたいして大鎌を薙ぎ払った。

「よし、瞑想はこんなもんだろう。レイン兄……今敵取るからな」

 頭からの出血は止まっていた、右手も元に戻っているがまだ動かしづらい。

「まだ動くだけマシか……」

 そういうと、ニケは両手で魔線を引きながら駆け出した……。
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