夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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25話「敵討ち」

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 「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の咆哮!」

 左手の双線で、雷電の咆哮を詠唱。

 「″我、光の力を求めるもの。射抜け、その光と共に″ライトニードル!」

 右手の魔線でライトニードルを詠唱。
 ニケは走り際に、別々の直筆詠唱を繰り出した。

 「道を開けろぉぉぉぉッッッ!!!」

 左手を前に雷電の咆哮をまず一発、ミーチェの元へいこうと集まっていたアンデットたちを吹き飛ばす。
 続いて、右手のライトニードルを放つ。
 アンデットたちに、無数の風穴が開く。
 だが、数が多すぎる。
 残りの雷電の咆哮を発動。
 アンデットを吹き飛ばしつつ、ミーチェのもとを目指すニケ。

「数が多すぎるッ!」

 先ほどから、倒しても倒しても奥から湧く一方だ。
 ニケは、左手に魔力を集中する。
 刀身180cmはあろう太刀を練成した。

「どけどけどけぇぇぇぇッッッ!!!!!」

 太刀を薙ぎ払い、振り上げ叩きつける。
 アンデットたちは上半身を切断され、両断され、頭から胸元へと刀身が刺さる。
 太刀を抜き、再度走り出す。
 ミーチェのもとまであと少しだ。 

「流石に、こりゃつらいぜ……」

 息切れをしながらも、身体は動く。

 ミーチェは、大鎌を薙ぎ払いアンデットたちの首を刈っていた。
 シロは、ウィッチのもとへ辿り着きたいあたりをしていた。

「ニケ!もう大丈夫なのか?」

 ミーチェのもとへ駆けてきたニケに、ミーチェは声を掛ける。

「あぁ。レイン兄……」

 足元に転がる焼死体。
 レインは、もういない……。
 それを見つめるニケ。
 歯を食いしばっているのをミーチェは、ただただ見ているしかなかった。

「すまない、ニケ。レインを守ってやれんかった」

「師匠。今は、そんなこと言ってる場合じゃないだろ?確かにつらいさ、だけど俺らが今ウィッチを倒さないとレイン兄の死は……無駄になっちまう」

「そうだな、はやいとこ片付けて墓くらいは立ててやらねばな」

 大鎌を握りなおすミーチェと、太刀を構えなおすニケ。

「師匠。後ろ頼むぜ。俺は、シロと合流してウィッチを倒す!」

「わかった。気をつけてな」

 そういうとミーチェは、大鎌を構え迫り来るアンデットたちに向け大振りに振りかかった。

「ここから先には、行かせんぞッッ!!!」

 大鎌が風を切る。
 アンデットたちは上半身をえぐられ、内臓、血を撒き散らしながら崩れ去っていく。

「まだだ!」

 振りきった、大鎌を半時計周りながら再度薙ぎ払う。
 その場に崩れ去るアンデットを横目に、ニケを見つけるミーチェ。

「頼んだぞ、ニケ」

 不安な気持ちを押し殺し、目の前のアンデットたちを食い止めることに集中した。

 ニケは、シロのもとへと駆け出す。
 距離はあまりないが、アンデットたちが行く手を遮る。

「はぁ。お前らと、遊んでる暇はないんだッ!!!」

 太刀を振り回しながらも、前へと進んでいく。
 シロが見え始めた、シロはウィッチの足に噛み付き浮遊するのを阻止していた。

「ナイスだ!シロ!」

 一目散に駆け出す。
 狙うはウィッチの首!

「うおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

 太刀を大きく振り上げる!

「レイン兄の敵だあああああッッ!!!」

 ウィッチの首目掛けて、太刀を全力で振り下ろす。
 骨の砕ける音と共に、血を噴き出しながら宙を舞うウィッチの首。
 ウィッチの首を切り落とすと同時に、アンデットたちが泥のように地面に消えていった。
 すぐにミーチェが、こちらへと駆け寄ってくる。

「やったな、ニケ」

「あぁ。敵は取ったよレイン兄……」

 ニケは、申し訳なさそうにレインの遺体へと語りかけた。
 レインの遺体を持ち上げるニケ。

「師匠。レイン兄さ、村長の家の丘のところに埋めてあげていいかな」

「そうだな。村の中よりは、落ち着いた見晴らしのいいところのほうがいいだろう」

「わかった。行くよ、シロ」

 シロは、レインの遺体のにおいを嗅ぎながらくぅ~んと鳴いていた。
 レインを助けれなかったことに、悔いているのだろうか。
 広場を出て行く一同。
 無言のまま露店市を抜け、路地を通り丘へとやってきた。

「レイン兄、短い間だったけど楽しかったぜ」

「協会から、足を洗った直後にこれは災難であったな」

 二人は、もう動かないレインに語りかけた。
 ニケは、錬金術でスコップを練成し、穴を掘り始めた。
 ある程度、穴が掘れたところでレインを中へと入れた。
 シロは、どこかへ走って行った。

「俺があの時、魔力切れを起こしてなかったら……」

 いざ埋めるとなると、流石に涙がこぼれた。
 目の前に横たわっているレインは、もう動かない。

「ニケ、自分を憎むでないぞ。お主は、まだ未熟だ。つらいことがあったなら、それを乗り越えれるように修行すればよい。私も、レインを守れなかったことは悔いても悔やみきれん……」

 レインの遺体を見ながら、涙をこぼすニケに慰めの言葉を掛けるミーチェ。
 泣いてからどれくらい経っただろう。
 少なくとも10分は経っていた。

「ニケ。そろそろ、レインを埋めるぞ?」

「……わかった」

 埋葬しようとしたとき、シロがレインの斧を咥えてきた。

「シロ、それを取りに行っておったのか」

 シロから、レインの斧を受け取るミーチェ。
 斧をレインの胸元へと置くと、土を掛け始めた。

「ありがとう、レイン兄……」

 夕焼けが影を伸ばす丘の上で。
 一人の男が埋葬された……。
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