夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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27話「夢を語る者と旅立ち」

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 夜が、明けようとしていた。

 アォォォォォォォォンッッッ!!!!!

 シロが、遠吠えをしていた。
 シロの遠吠えでニケが、目を覚ました。

「ん~。身体がバッキバキだぜ……」

 背伸びをして、首を左右に振るニケ。
 ミーチェは、まだ寝ているようだ。

「昨日は忙しかったからな、起こさないでおこう」

 そう言いながらニケは、裏口へと向かった。
 裏口の扉を開け、シロを呼ぶ。

「おいで、シロ」

 指輪に呼びかけると、村の方向からシロが走ってきた。
 ニケのもとへ来ると、身体をスリスリしてきた。

「はは、おはよう。シロ」

 ニケは、シロをわしゃわしゃと撫で回した。
 すこししてニケは立ち上がった。

「朝飯、探しいこっか。おいで、シロ」

 向かうは村、昨日は災難なことに村人は全滅。
 いまさら家捜ししても、何も言われないだろう。
 家の正面へ向かおうとすると、朝日が昇り始めた。

「朝は気持ちいな」

 まぶしそうに手で朝日を隠しながら、ニケはつぶやいた。
 家の正面から、村へ続く丘の道を下る。 
 小さな路地を入り、ゆっくりと進む。

「昨日はいろんなことがあったな、初めて依頼を達成したと思ったら村はこの様。俺は、冒険者になっていろんなところに冒険するのが夢だったんだ」

 共に歩くシロに、夢を語るニケ。
 路地を抜け、そのまま露天市にでた。
 左手に、冒険者ギルドがある。

「一目だけでも……見ていこうかな」

 冒険者ギルドは二階立ての木造だ。
 村の家事が北口だけでよかったと、そう思うニケ。
 玄関先は2、3段くらいの階段を上り大きな扉が待ち受ける。
 扉を寂しい目をしながらなでるニケを、慰めるかのように寄り添うシロ。

「入ろうかっ」

 シロに小さく微笑みかけ、扉を開けた。
 内装は酒屋のようだった。
 右奥に掲示板のようなものがあり、机が5つほどあり、各机に椅子が5、6個置いてある。
 机などの置くには、カウンターがあり、その多くにお酒などが並んでいた。
 部屋の左奥には階段があり、二階はここからでは良く見えなかった。

「ここは、食事を取るところだったのかな?」

 カウンターの置くに厨房が見える。
 ニケは、中に入ると掲示板のもとへ向かった。
 依頼書だ、遠出の護衛から村周辺の魔物討伐などいろんなものが貼ってある。

「俺も、ここで仕事したかったな。一緒に冒険する仲間とさ、野宿とかして、火を囲んでみんなで同じ鍋の飯食ってさ」

 夢にまで見たギルドにいるのに、なぜか涙がでてきた。

「俺……この村で、師匠と……楽しく過ごしたかった……」

 うつむき、歯を食いしばりながら涙が1つ2つと床に落ちる。

「過ぎたものは仕方がない。今更、どうこういっても仕方がないことだ」

 入り口の扉に背を預け、腕を組みながらミーチェが話しかけてきた。

「師匠……」

「この村はもう、人は寄り付かぬだろう。そうなれば、私も生活ができなくなる」

 確かに、森に住まうミーチェの生活日常品をそろえる手段がなくなった。
 だが、ニケにはミーチェの言うことが上手く理解できないようだった。

「それは、どういうことだ?」

「だーかーらー!私はあの家を出て、旅に出るといっておるのだ!」

「た、旅?師匠が?俺はどうなるんだ?」

 はぁっとため息をつきながら、ミーチェは中に入ってきた。
 ニケの目の前まで来ると、ミーチェは身を乗り出しながら言った。

「可愛い弟子を見捨てていくと思ったか、馬鹿者め!」

 そういいながら、ニケの頬に手を添えた。

「お主は、魔法を学びたいのであろう?」

「あぁ。もうこの村みたいなことがないように、それを阻止できるような力が欲しい」

「ならば、共に来い。私が魔法を教えてやる、得意属性だけだがな」

 それを聞くと、やっと理解したかのように目を輝かせるニケ。

「ありがとう。師匠!」

 そういいながらニケは、ミーチェに抱きついた。

「だ、抱きつくな馬鹿者!」

 ニケの腕の中で、暴れるミーチェ。
 ニケは、すぐさまミーチェを解放した。

「まったく、喜ぶのはいいが。まずは、身支度だ」

 そう言いながら、出口へと向かっていくミーチェ。
 その後に続くニケと、シロ。
 こうして、旅立つことになった一同だった……。
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