夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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29話「続、帰り道」

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 森から顔を出したのは、赤い帽子をかぶり鋭い歯をだしながら、斧を片手に持つレッドキャップだった。

「やはり、あやつらか!」

「あれが、レッドキャップ」

 ゲームなどで見るレッドキャップなどとは比にならない不気味さをかもしながら、彼らは森から出てきた。
 数は5体。

「気をつけろ、あやつらは狩りをするときは少人数でわかれて行なう!」

「つまりあれとは別に、まだいるってことか!」

 ニケは、レッドキャップから目を離さずに後ろにいるミーチェに答えた。
 レッドキャップは、まるで編隊を組むかのように並んでいる。

「先手必勝ッッッ!!!」

 ニケが走り出す。
 右手から魔線を引きながら!

「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の咆哮!」

 川の水を蹴りながら、レッドキャップに一目散に向かう。
 先頭のレッドキャップが叫んだ。
 何を叫んでいるかはわからない。
 左手の刀を右下に添え、レッドキャップが近づいたところで切り上げる
 刀身は、レッドキャップの左腰から入り右肩へと抜け、その身体を両断する。
 斧を振り上げ、ニケに突進してくるレッドキャップ。
 そこにシロの咆哮が走る。
 飛び上がった拍子に吹き飛ばされるレッドキャップ、後方の木に打ち付けられ血を吐き出し動かなくなった。

「さんきゅーシロッッ!!!」

 感謝をしている暇はなかった。
 レッドキャップたちも、連携を取りながらこちらに向かってくる。
 1体がニケの腹部へ斧を振るう。
 カンッ!っと甲高い金属音と共に、ニケが後方へと押される。
 そこへ左右から同時にレッドキャップが襲い掛かる。

「くっそ!」

 ニケは、バックステップ中に雷電の咆哮を発動。
 衝撃と共にレッドキャップは吹き飛ばれされた。
 同じくニケも、後方に吹き飛ばされ川へ転がった。
 ニケが、転がると同時にミーチェは詠唱に入った。

「″水よ、我が元へ来たれ。その姿を霧にして敵を切り刻め″!ミストカット!」

 ニケの目の前に魔方陣が展開される。
 魔方陣は大きくなり、やがて霧を噴き出し始めた。
 霧は勢いよく吹き抜ける。
 レッドキャップたちに細い斬撃を無数に食らわす。
 うめき声と共に、レッドキャップたちがいっせいに血を噴き出す。
 言葉でたとえるなら。『血だるま』とでも言うのだろうか。
 身体全体から血を噴き出し、その場へと崩れ落ちた。
 ニケは、シロの咆哮で飛んでいったレッドキャップの元へと歩み寄った。
 まだ息はあるようだ。

「悪く思うなよ」

 ニケは、レッドキャップの首元へと刀を突き刺した。
 ビクビクと痙攣をしながら、刺し口から血があふれ出る。
 刀を引き抜くと、血が噴き出た。

「ニケ、先を急ぐぞ。すぐに別のレッドキャップが、来るやもしれん」

「わかった。いくよ、シロ」

 川を渡りながら、シロを呼ぶニケ。
 だが、シロは森を見たままだだ。

「ん?何かいるのか?」

「どうした。先を急ぐぞ」

 疑問に思い、声を掛けるニケ。
 それを無視しながら森を見つめるシロ。
 ミーチェが、こちらに戻ってきた。

「どうかしたのか?」

「シロが、森を見たまま動かないんだ」

「まだなにかおるのか?」

「いや、俺には何も感じられない」

 少しすると、シロはこちらへと駆け寄ってきた。

「ふむ。なにもないなら先を急ごう」

「わかった。ほら、シロ行くよ」

 シロの頭を撫で歩き出すニケ。
 ミーチェは、不安に思いつつも歩き出した。
 川辺を行く二人を見つめる視線が、一斉に消えた。

「師匠。魔法のバックとかってある?」

「魔法のバッグ?どんなものだ」

「異次元に収納する感じのやつ。いっぱい持ち運べれる感じ」

「ふむ、魔編みの鞄のことか」

「魔編みの鞄?」

 そういうと、ニケは先を行くミーチェの横へと並んだ。

「魔法使いが、編んだ鞄のことだ。中に入れたものは、術者以外取り出せない代物だが」

「なにそれすげー!」

 興味を示すニケに、ミーチェは呆れながら言った。

「だが、魔編みの鞄はそこそこ高価なのだ」

「そんなに高いのか?」

「うむ。値段で言うと20ゴールドくらいだ」

 1ゴールド日本円で1万円だ。

「20万……」

 通貨を思い出し、値段が高いことを自覚するニケ。

「まぁ。お主は私の弟子だ。ひとつくらい、やらんこともないぞ?」

「ほんと!?やったぜ!さすが師匠!」

 もらえるとわかると、大はしゃぎするニケ。
 結界の境目が見え始めた。

「やっと帰ってきたって感じだな!」

 木の家を見ながらニケは腕を組んでいた。
 その横で、大きなあくびをするシロ。
 ミーチェは、呆れた顔をしながら家へと向かっていくのであった。
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