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46話「再び、あの地へ」
しおりを挟む暖かく心地よい風が吹いている場所に、ニケは立っていた。
「俺は、死んだのか?」
周りを見渡すが、ミーチェ、アシュリー、シロの姿はない。
見えるのは、広々とした大地、青、赤、黄色さまざまな花々。
空は夕焼けのように赤く、無数の島々が浮いてるのが見える。
ニケの正面には、かなり太く雲よりも高い木があった。
「お久しぶりですね」
ニケの背後から、声がした。ニケは振り返った。
そこには、神官のようなオレンジ色のローブを羽織っていて、大きな杖を持つ金髪の女性がいた。
「久しぶりっと言っても、この間ぶりなんですがね」
右手を口に当て、小さく笑う女性。
「私は、女神アテナと申します」
右手を腹部に添え、お辞儀をするアテナ。
そんなアテナにニケは問いかけた。
「ごめん、なにがなんだか……」
頭を掻きながらニケは、アテナを見ていた。
「無理もないですね。転生のときの記憶はもうないのですから」
「記憶がない?」
確かに気がついたらっとニケは、つぶやきながら眉を寄せた。
アテナは、ニケの横に立つと大きな木を眺めながら話を進めた。
「あなたがここにいるのは、一時的に瀕死状態になったからです」
「確かに、戦闘で怪我をしてそれから……」
「私が、ここに呼び出したのもありますけどね」
アテナは、小さく微笑んだ。
「記憶がないのは、アナタが望んだこと。転生するときの、力に関しての記憶になります」
「力に関する記憶?」
「不思議に思わなかったのですか?女性にしか魔法が使えないのに、なぜ自分に使えるのかっと」
アテナは、ニケの方へ振り返りながら問いかけた。
最初は驚いていたニケだったが、警戒するのをやめたようだ。
「師匠に言われたときは、残念に思ったさ。だけど、俺が黒髪って理由で納得してた」
こぶしで頭をやさしく叩くニケ。
アテナは、少し呆れたかのような顔をしていた。
「あ、あまり気にしてないのなら、それはそれでよかったです」
アテナは、再度大きな木を眺めながらつぶやいた。
「あなたには、竜と同等の力があります。それに対して私は、5つの枷をつけました」
「5つの枷?」
ニケの力は、5つの枷によって封印されていたらしい。
少し下を見てから、アテナは話を切り出した。
「今までの活躍、活動、成果をここから見てました」
ニケも、丘の上から下を眺めた。そこには無数の水たまりがあった。
どの水たまりにも人々が映っていた。
どうやら、この水たまりからニケを見ていたようだ。
「あなたは、誰かを助けるために駆けていましたね」
アテナは、顎に手をあて少し考え込んでいた。
「枷をひとつ外しましょうか?」
「力をくれるってことか?」
「そうです。ですが、何かを得るには何かを失います。それでも構わないと言うのなら、あなたの枷をひとつ外しましょう」
そう言うと、アテナは手を差し伸べた。
その手には鍵のようなものが握られていた。
「何かを失う覚悟が、あなたにはありますか?」
どうやらニケは、試されているようだ。
「新しく手に入れる力に、おぼれずに使命の為に使えますか?」
「使命?」
それも初耳だっとニケは、小さくつぶやいていた。
「何かを失っても、俺は俺だ。それに、今のままじゃトレントにアシュリーがやられちゃう」
ニケは、手を握り締めた。
顔を上げアテナを見る、ニケの目は決意に溢れていた。
「その使命のことは、次に来たときに聞くよ」
「わかりました。では、枷を外す事にするのですね」
「あぁ。俺は俺だから、心配しないでいいぞ!」
頭を上で手を組みながら、笑顔を見せるニケに対してアテナは嬉しそうに微笑んだ。
「では、枷を外します。あなたに、神のご加護を!」
アテナの手の中にある、鍵のようなものが光を帯びだした。
同時に、ニケの身体が光に包まれ始めた。
心地よい光たちに包まれながら、ニケの身体は宙に浮き始めた。
「この世界のことを、よろしくおねがいします」
アテナは、小さく手を振りながらニケを見送るのであった。
見送るアテナに、ニケはピースをしながら言った。
「任せてくれって!」
ニケを包む光が、次第に強くなっていく。
光がはじけた瞬間、そこはトレントのいる川辺だった……。
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