夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

文字の大きさ
47 / 93

46話「再び、あの地へ」

しおりを挟む

 暖かく心地よい風が吹いている場所に、ニケは立っていた。

「俺は、死んだのか?」

 周りを見渡すが、ミーチェ、アシュリー、シロの姿はない。
 見えるのは、広々とした大地、青、赤、黄色さまざまな花々。
 空は夕焼けのように赤く、無数の島々が浮いてるのが見える。
 ニケの正面には、かなり太く雲よりも高い木があった。

「お久しぶりですね」

 ニケの背後から、声がした。ニケは振り返った。
 そこには、神官のようなオレンジ色のローブを羽織っていて、大きな杖を持つ金髪の女性がいた。

「久しぶりっと言っても、この間ぶりなんですがね」

 右手を口に当て、小さく笑う女性。

「私は、女神アテナと申します」

 右手を腹部に添え、お辞儀をするアテナ。
 そんなアテナにニケは問いかけた。

「ごめん、なにがなんだか……」

 頭を掻きながらニケは、アテナを見ていた。

「無理もないですね。転生のときの記憶はもうないのですから」

「記憶がない?」

 確かに気がついたらっとニケは、つぶやきながら眉を寄せた。
 アテナは、ニケの横に立つと大きな木を眺めながら話を進めた。

「あなたがここにいるのは、一時的に瀕死状態になったからです」

「確かに、戦闘で怪我をしてそれから……」

「私が、ここに呼び出したのもありますけどね」

 アテナは、小さく微笑んだ。

「記憶がないのは、アナタが望んだこと。転生するときの、力に関しての記憶になります」

「力に関する記憶?」

「不思議に思わなかったのですか?女性にしか魔法が使えないのに、なぜ自分に使えるのかっと」

 アテナは、ニケの方へ振り返りながら問いかけた。
 最初は驚いていたニケだったが、警戒するのをやめたようだ。

「師匠に言われたときは、残念に思ったさ。だけど、俺が黒髪って理由で納得してた」

 こぶしで頭をやさしく叩くニケ。
 アテナは、少し呆れたかのような顔をしていた。

「あ、あまり気にしてないのなら、それはそれでよかったです」

 アテナは、再度大きな木を眺めながらつぶやいた。

「あなたには、竜と同等の力があります。それに対して私は、5つの枷をつけました」

「5つの枷?」

 ニケの力は、5つの枷によって封印されていたらしい。
 少し下を見てから、アテナは話を切り出した。

「今までの活躍、活動、成果をここから見てました」

 ニケも、丘の上から下を眺めた。そこには無数の水たまりがあった。
 どの水たまりにも人々が映っていた。
 どうやら、この水たまりからニケを見ていたようだ。

「あなたは、誰かを助けるために駆けていましたね」

 アテナは、顎に手をあて少し考え込んでいた。

「枷をひとつ外しましょうか?」

「力をくれるってことか?」

「そうです。ですが、何かを得るには何かを失います。それでも構わないと言うのなら、あなたの枷をひとつ外しましょう」

 そう言うと、アテナは手を差し伸べた。
 その手には鍵のようなものが握られていた。

「何かを失う覚悟が、あなたにはありますか?」

 どうやらニケは、試されているようだ。

「新しく手に入れる力に、おぼれずに使命の為に使えますか?」

「使命?」

 それも初耳だっとニケは、小さくつぶやいていた。

「何かを失っても、俺は俺だ。それに、今のままじゃトレントにアシュリーがやられちゃう」

 ニケは、手を握り締めた。
 顔を上げアテナを見る、ニケの目は決意に溢れていた。

「その使命のことは、次に来たときに聞くよ」

「わかりました。では、枷を外す事にするのですね」

「あぁ。俺は俺だから、心配しないでいいぞ!」

 頭を上で手を組みながら、笑顔を見せるニケに対してアテナは嬉しそうに微笑んだ。

「では、枷を外します。あなたに、神のご加護を!」

 アテナの手の中にある、鍵のようなものが光を帯びだした。
 同時に、ニケの身体が光に包まれ始めた。
 心地よい光たちに包まれながら、ニケの身体は宙に浮き始めた。

「この世界のことを、よろしくおねがいします」

 アテナは、小さく手を振りながらニケを見送るのであった。
 見送るアテナに、ニケはピースをしながら言った。

「任せてくれって!」

 ニケを包む光が、次第に強くなっていく。
 光がはじけた瞬間、そこはトレントのいる川辺だった……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界異話 天使降臨

yahimoti
ファンタジー
空から天使が降って来た。 落ちたんだよ。転生かと思ったらいきなりゲームの世界「ロストヒストリーワールド」の設定をもとにしたような剣と魔法の世界にね。 それも面白がってちょっとだけ設定してみたキャラメイクのせいで天使族って。こんなのどうすんの?なんの目的もなければ何をしていいかわからないまま、巻き込まれるままにストーリーは進んでいく。

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

処理中です...