夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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48話「新たな能力」

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ニケは、ミーチェ、アシュリーを見ながらつぶやいた。

「俺がやる」

 その言葉に、ミーチェが反論した。

「その身体で何ができる!まだ、回復もろくにしてないのだぞ!」

 自分の身体を見ながら、ニケは答えた。

「傷ならもう治ってるよ?」

 そういいながら服をめくる。
 さきほどえぐられたはずの傷口が、なにもなかったかのようになくなっていた。

「私が、回復魔法をかけたからだ。まだ内側の怪我は治ってないはずだ」

 そう言いながら、ミーチェは歯を食いしばっていた。

「ミ、ミーチェさん……。ニケさん、無茶はダメですよ!」

「無茶してないんだけどなぁ」

 言い合っている間に、トレントが近くまで寄ってきていた。

「話は後で聞くよ」

 そういうと、ニケは駆け出した。
 駆けながら『右手』から双線を引いていた。

「あやつ、いつの間に……」

 驚くミーチェ。

「ニケさんって、直筆魔法しか使えないんですか?」

 驚くミーチェを横目に、アシュリーはミーチェに問いかけた。

「直筆魔法しか、まだ教えておらぬ」

「直筆魔法は、詠唱が遅いことが欠点ですが……ニケさん、大丈夫でしょうか」

「なにかしら策でもあるのだろう」

 トレント目掛けて駆けるニケの背中を、寂しそうに見つめるミーチェ。

「もしもの場合は、私が囮になりますから」

 そういいながら、動かない右手を見つめるアシュリー。

「そうならないことを祈ろう」

 二人は、ニケの背中を見ていることしかできなかった。
 トレントは、それなりの人数がいないと討伐できない魔物。
 足手まといになってしまっては、逆に仲間に迷惑をかけてしまう。
 そのため、負傷したアシュリーと対人魔法に特化したミーチェは、ただただ見ていることしかできなかった。

 ――ニケは、駆けながら詠唱、練成を成した。
 左手に魔力を送り込み、大剣を練成。
 右手の双線で、魔法の詠唱に入る。

「頭の中に、数字が見えるんだよなぁ……」

 そうつぶやきながら、双線を引いた。

「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の咆哮!」

 右手に、魔方陣が展開された。
 トレントの懐に近づくと、枝による連撃が繰り出された。

「またそれかよッ!」

 ニケは、目に意識を集める。
 周囲の速度が遅くなり始める。
 どうやら任意での発動が、可能になったようだ。
 トレントの枝が、ゆっくりと更にゆっくりとなっていく。
 ゆっくりと動く枝をかわしながら、トレントの正面へと突っ込む。
 トレントの顔に右手を当てる。

「さっきはどうもッ!」

 魔法が発動、二発の電撃を宿した衝撃波がゆっくりと放たれる。

「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の大咆哮!」

 即座に双線を引き始める、右手に大きな魔方陣が展開された。

「これでどうだッ!!!」

 右手を再度顔に当てると同時に、魔法が発動した。
 時間が速度を戻し始めた。
 どうやら時間制限があるようだ。
 速度が戻り始めると同時に、衝撃波の反動により弾き飛ばされる。

「っく……!!!」

 後方に飛ばされながら、視線にトレントを捉える。
 先ほどまでニケがいたところに、無数の枝が降り注いだ。
 トレントは、顔面に亀裂が入っていた。先ほどの魔法が、ダメージを与えたらしい。

「まだまだぁ!」

 再度、駆け出したときだった。

 カチンッ!

 時計の動く音が、聞こえた。

「な、なんだ!?」

 周りを見渡すが、トレント、ミーチェ、アシュリー、シロ以外なにもない。
 時計などつけていないため、その音はおかしい。
 ふと、脳裏に浮かぶ数字が横切った。
 目を瞑るニケ、瞼の裏には『2』の数字が刻まれてた。

「数字の2?」

 疑問に思いながらも、再度駆け出した。
 先ほどよりも、速い速度で駆け出したことにニケは気がついた。

「足が速くなってる……!!」

 そのまま足を止めることなく、再度トレントに接近する。
 無数の枝が降り注ぐのをニケは、裸眼で捉えていた。
 大剣を思い切り振り回し、その枝ひとつひとつを叩き切っていく。
 懐に近づくと、トレントは幹を振り回した。
 残り1本の太い幹。それすらも、ニケは叩き切った。

「これで、終わりだぁぁぁぁぁッッ!!!」

 幹を切り落としたときに振り下ろした大剣を、身体を時計回りに捻りながら振り回す。
 まず一発、トレントの顔面に斬撃を食らわした。
 そのままもう一回転。
 下から上に振り上げるように、トレントの顔面に目掛け大剣を切りつけた。
 トレントの顔には、クロス状に斬撃が入っていた。トレントの顔が砕け始めると同時に、その大きな身体が重心を失ったかのように揺れ始めた。

「ニケ!逃げろ!」

 後ろから、ミーチェの声が聞こえた。
 すぐさま踵を返すと、ニケは駆け出した。
 ミーチェのもとへの短距離全力疾走。
 距離にして40mほどを、ニケは2、3秒で駆け抜けた。

「な……」

 その速さに、ミーチェは声を失った。
 アシュリーは、何が起きたかわからずにただ呆然としていた。

「ん?どうかしたの?」

 自分が、何をしたのかもわかっていないニケ。
 ミーチェは、呆れた顔をしながら言った。

「やはり、お主と一緒におると退屈しなさそうだな」

 そう言うと、ミーチェは小さく笑った。
 遠くで見ていたシロが、こちらへと駆け寄ってきた。
 それを撫でるニケをみながら、ミーチェはアシュリーに声をかけた。

「さて、安全を確保したことだ。馬車に戻ろうか」

「そ、そうですね!」

 話しかけられて、意識が戻ったアシュリーだった。
 ミーチェが歩き出すと、アシュリーとニケ、シロがその後に続いた。
 太陽が、もうすぐ真上に来そうな時間に、馬車へと戻り始める一同……。
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