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51話「コルック村」
しおりを挟む日が傾き始めてから少しして、馬車は森を抜けた。
「もうすぐ、コルックが見えるはずだ」
ミーチェは、前を向いたまま後ろの二人に声をかけた。
シロを枕にして、召喚術の書を読むニケと、大剣の手入れをしているアシュリー。
アシュリーの大剣は、刀身の部分が赤黒いちょっと不気味な大剣だった。
持ち手の装飾に宝石でも使われてるのだろうか、赤い透き通った石が使われていた。
長さは、持ち手含め180cmほどだろうか。
ニケよりも少し大きいくらいだ。
大剣を鞘に戻すと、アシュリーはミーチェの横へ移動した。
召喚術の書を読むニケ。
開いているページは、召喚獣の身体能力向上につながることから召喚獣と主人の友好関係についてだった。
「シロはいるも傍にいるから大丈夫かな」
そういいながら、シロの尻尾を撫でるニケ。
シロは、顔を上げるとニケの頬を舐めた。
「こらシロ、くすぐったいって」
ニケは、笑いながら顔を逸らした。
するとシロは、いつもの通り馬車の後ろを眺め始めた。
召喚術の書をしまうと、ニケは火属性魔法の書を出した。
「そろそろ、こっちもつかいたいからな」
火属性魔法の書を開いたときに、違和感を覚えた。
本に呼ばれるような感触。まるで導かれるような感触に、ニケは首を傾げた。
勝手にページをめくる手。しばらくしてから、とあるページを開くと手は止まった。
文字が浮かび上がるようにして見えるそのページに、ニケは目を疑った。
そこには日本語で記された1行があったのだ。
――″これを読んだ者。遠い東の火山、炎竜に告げよ。『ミズキ』は死んだと″――
ニケは、疑問に思った。自分よりも前に、この世界に転生した人がいたのかっと。
「師匠。この書に、こっちとは違う文字あるんだけど」
そういってニケは、炎魔法の書をミーチェに見せた。
「ん?違う文字?」
ミーチェは、見せられたページを見た。
「どこにもないじゃないか」
ミーチェがそういうと、ニケは驚きながらもう一度そのページを見返した。
確かにそこには、日本語で文字が記されている。
だが、ミーチェには見えなかったようだ。
「どういうことだ……」
シロの傍に戻ると、ニケは悩ましげに眉を寄せた。
何度見返しても、日本語以外なにものでもない。
「考えても仕方ないか、このはるか東の火山ってところに行けばわかるのか?」
ニケは、シロに声をかけるがシロはあくびをしていて聞いていないようだった。
ため息をつくと、シロを枕にするニケ。
悩んだ末今はまだ解決しないだろうと、再度ページをめくり始めた。
『ファイヤーボール』――第一位階火属性魔法。小さな火の玉を敵に飛ばす。
「えーっと、呪文はっと″我、火を志すもの、汝、その火の力を敵にぶつけよ″で合ってるのかな?」
更にページをめくるが、第2位階魔法が多くなかなか見つけれないので諦めたニケだった。
馬車に揺られながら、眠気に襲われたニケは眠りへと墜ちていった。
「ミーチェさん、ニケさん寝ちゃってますね」
「寝顔だけは可愛いのだがな」
ミーチェとアシュリーは、呑気そうに寝るニケを見ながら話をしていた。
「あと、どれくらいですかね」
「もうすぐだろう、村に着いたら宿屋で寝たいものだ」
ミーチェは、あくびをしながら呟いた。
あくびをするミーチェを見ながら、釣られたかのようにアシュリーもあくびをしていた。
一同を乗せた馬車が、草原の中を行く。
途中、橋であった青年達に会った。
ミーチェは、乗っていくか?と聞くが彼らはそれを断った。
「では、先に村長のもとへ行くとしよう」
「はい。また村で会いましょう」
銀髪の青年は一礼した。
それを見ながらミーチェは、馬を走らせた。
「まぁ。そこまで大きくない馬車だからな、気を使ったのだろう」
前を見ながら、ミーチェはアシュリーへ話しかけた。
「そうですね、たぶんいい人です」
「たぶんって、あははは」
どうやら、ミーチェのツボに入ったらしくしばらくミーチェは笑っていた。
しばらくして、村の入り口が見え始めた。
丸太でできた壁に覆われた、砦のような村が。
入り口に近づくと、鎧を着た二人組みに声をかけられた。
「そこで止まれ。ユッケルから来たのか?」
馬車に近づくと、槍を持った男に問いかけられた。
「そうだ、村でいろいろあってな。それを報告しに、村長のもとへ行きたい」
それを聞くと、もう一人の男に何かを告げる男。
「わかった、村長には私から伝えておこう。私の名は、ルト・レベス」
「私は、ミーチェ・クリスタ。こちらはアシュリーだ」
ミーチェは、自分の名を名乗るとアシュリーの名も言った。
「ミーチェ・クリスタ……あの西の魔女さんか?」
やはりその肩書きは有名なのだろうか、ルトは少し珍しそうにミーチェを見ていた。
「うむ、そうだが何か問題でも?」
「ここ最近、協会の連中が村に出入りしてるんだ。気をつけることだ」
「ご忠告に感謝するよ」
そういうと、ミーチェは馬を走らせた。
村の中は、住宅が多くその奥に馬車がたくさん止められていた。
開いているところに、馬車を停めるとミーチェはアシュリーに残るように告げおくの小屋へと向かっていった。
馬車が、止まったことに気が付いて目が覚めたニケ。
シロも起きた様子で、あくびをしていた。
「あれ、師匠は?」
身体を起こしながら、アシュリーに問いかけた。
「ミーチェさんなら、たぶん受付に」
「受付?」
寝起きで、頭が回っていない様子のニケ。
「はい、村に着いたので馬車と馬を預ける受付かと」
「あれ、もう着いたの」
外を見ると、人が行き来しているのが見えた。
「村だ……シロ、村だぞ!」
大はしゃぎするニケと、興味がなさそうにあくびをするシロ。
それみながら、微笑むアシュリーだった。
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