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57話「防衛戦 開始」
しおりを挟む「シロ、アシュリーと一緒に向こう側を頼む」
ニケは、シロにアシュリーと一緒にいるように命じた。
シロは、小さく咆えるとアシュリーのもとへと駆けていった。
前衛が武器を構えたことによりアンデットが来たことがわかると、中衛の冒険者達は弓を構えた。
それを確認すると、ミーチェは後衛の魔法使い達に掛け声をかけた。
「皆、詠唱準備!狙うは、森の入り口!」
魔法使い達は、杖を構えたり、魔道書を開いたりして詠唱を始めた。
さまざまな、魔方陣が展開され一斉に放たれる。
ミーチェは、遠距離魔法を覚えていないため詠唱ができなかった。
万が一のために、待機しているっといった感じだ。
中衛が矢を放った。
無数に飛び始める矢は、森に目掛けて降り注いだ。
一方、魔方陣から放たれた魔法は森の入り口へで発動していた。
炎が燃え上がる中、光の矢やかまいたち、水の刃、土の塊などが降り注ぐ。
「入り口は後衛が引き受けてくれる!俺達は、目の前に敵に集中するぞ!」
ルトの言葉に、冒険者達が駆け出す。
アンデットたちは手ぶらのようで、取っ付きに掛かってきた。
「このやろぉぉぉぉッッ!!!」
盾持ちの片手剣の青年が、盾で受け流しつつ剣を振り上げる。
剣を振り下ろそうとすると、横からアンデットによる体当たりを食らった。
「っは!?」
気づいたときには遅かった、青年は囲まれていた。
「一人で先に突っ込むなよなッ!!!」
ニケが、アンデットたちを切り裂きながら囲まれている青年のもとへ駆けつける。
「大丈夫か?」
互いに背中を預けながら、声をかけるニケ。
「助けにきてくれたのか……?」
冷や汗を垂らしながら、青年はニケに問いかける。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろッ!!!」
刀と小太刀を左腰に添えるように構えると、ニケは駆け出す。
前方に取り巻くアンデット目掛けて、二刀を思い切り薙ぎ払う。
そのまま、時計回りに周りながら再度薙ぎ払う。
アンデットたちはよろけながらも、その斬撃を食らっていた。
「なかなかやるなッ!!!」
青年も攻撃に移ったようだ。
盾を正面に構え、剣を後ろに構えると目の前のアンデットに突進していった。
アンデットがよろけたところで剣を薙ぎ払う。
アンデットの胸部に刃が入る、肉をえぐりながら剣は反対側へと抜けていく。
すかさず寄ってくるアンデットの喉に向け剣を突く。
喉を突かれたアンデットは、動かなくなりうなだれた。
「重たいんだよッ!!!」
青年は、勢いよく剣を引き抜いた。
「数が多すぎる……ッ!!!」
囲まれている状態では、周りの確認もできない。
そんななか、ニケが刀を捨てた。
「長期戦になるけど、ここでなにもできなかったら意味ないからなッ!!!」
それを見た青年は、声を張り上げた。
「なぜ剣を捨てた!すぐに拾うんだ!」
ニケのもとへと青年が、駆け出そうと振り返ったときだった。
「綴ろう……」
ニケは、両手から双線を引き始めた。
「ッな!?」
それを見た青年は声を失った。
それでも身体は動いていた、アンデットから繰り出される噛み付きや、勢いよく振り下ろされる腕を受け流していた。
「″我、火を志すもの、汝、その火の力を敵にぶつけよ″」
「″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″」
覚えたばかりの炎魔法ファイヤーボール、雷電の咆哮の多重詠唱。
両手にそれぞれの魔方陣が展開された。
「数多すぎ!一気に吹っ飛べッ!!!」
左右の手を、アンデットたちに目掛けて構える。
魔法が発動した、右手の魔方陣から二つの火の玉が現れた。
大きさは、ニケの顔と同じくらいだろうか。
左手の魔方陣から、雷電の咆哮が同時に2発放たれる。
その衝撃波に乗るかのように、火の玉は勢いよく放たれた。
前方にいたアンデットに火の玉が接触すると同時に、接触した部位に火が燃え移る。
すぐに衝撃波がアンデットに襲い掛かる。
アンデットは、燃えながらアンデットたちの中心へと吹き飛ばされていった。
燃えたアンデットに触れた、アンデットに火が燃え移り小さな火事になっていた。
「まだまだだよッ!!!」
カチン……
脳裏の数字が『1』から『2』に上がる。
ニケは、左手に魔力を流し込むと同時に地面に左手を押し付けた。
「な、何をするつもりだ!」
ニケが魔法を使えることに驚きながら、青年はニケの背中に触れるかの距離まで接近していた。
青年は、後方にいるアンデットに構えながらニケに問いかけた。
「おい!きいているのか!」
その声がニケの耳に届く瞬間に、ニケの足元から光の輪が出現した。
光の輪は、ニケと青年を中心に半径5mほどに広がった。
「足元に注意して!」
ニケは、青年に注意を促すと同時に左手を離した。
左手が、地面から離れると同時にニケと青年の足元以外の光を帯びた部分に無数の剣が練成された。
地面から突き上げるかのように、両刃の剣が練成されアンデットたちは無数に突き出す剣に無残に散っていった。
「い、今のは一体……」
ニケと青年を囲んでいたアンデットたちは、地に伏して動かなくなっていた。
それを漠然と眺めながら、青年はつぶやいていた。
「話は後でッ!!」
ニケは、そういうと両手に双線を引きながら駆け出した。
「綴ろう……」
魔線は基本的に緑色を帯びた白色のはずだが、ニケが引いている双線は赤色に変化していた。
「″我、光の力を求めるもの。射抜け、その光と共に″ライトニードル!」
後ろに手を垂らすようにして駆けるニケの両手に、4つの魔方陣が展開された。
目の前には、苦戦を強いられているだろう冒険者が剣をアンデットによる攻撃で、剣を落としたところだった。
「伏せろぉぉぉぉぉッッッ!!!」
ニケは、そう叫ぶと左手を前にかざした。
ひとつの魔方陣から魔法が発動、無数の光の矢が剣を落とした冒険者に襲い掛かるアンデットに浴びせられた。
腹部、頭部に光の矢が命中してアンデットは崩れ落ちた。
「すぐに剣を拾うんだ!」
冒険者を背中に、アンデットたちと対峙するニケ。
冒険者は、震える声で返事をすると剣を拾い上げた。
ニケは、それを確認すると正面にいるアンデットの群れに目掛け両手を構えた。
「蹴散らせぇぇぇぇッッッ!!!!」
3つの魔方陣から、魔法が発動した。
無数に放たれる光の矢は、いつもより早い速度で放たれた。
貫通性能も向上しているようで、1、2体を貫通して矢は突き刺さると消えていった。
「魔法の威力が、いつもと違う……」
今はそれどころじゃないと、ニケは顔を横に振った。
「あ、ありがとう!」
後ろから声が聞こえた、冒険者が立ち上がる剣を構えながらニケに声をかけたようだ。
「早く終わらせちゃおう!」
ニケは、そういうと冒険者に微笑みかけた。
「そうだね。頑張らなきゃ!」
冒険者は、士気を取り戻りた様子でアンデットにきりかかっていった。
ニケは、周りを見渡しアシュリーを見つけた。
アシュリーは、ご自慢の大剣を思い切り振り回していた。
2、3体を同時に叩ききり、襲い掛かってきたアンデットを下から大剣を切り上げながら遠くへと吹っ飛ばしていた。
「アシュリーこえぇ……」
ニケは、その腕力に驚きながらつぶやいていた。
そんなアシュリーを眺めながらも、ニケは双線を引きながら駆け出した。
「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の咆哮!」
両手に4つの魔方陣を展開しながら、ニケはアンデットの群れへと突っ込んで行く。
アンデットの懐まで接近すると、左手の魔方陣からまず1発。
衝撃波により付近にいたアンデットは吹き飛ぶ。
すかざす身体をひねり、右手を構えもう1発。
吹っ飛ぶアンデットに追い討ちをかけるかのように、再度衝撃波が襲い掛かる。
バチバチバチ……ッ!!!
薄い緑色の雷電が周囲のアンデットに走る。
雷電は1、2体のアンデットを感電させると消えていった。
ニケを囲うかのように、両側からアンデットが押し寄せる。
ニケは、両手を迫り来るアンデット向けて構える。
「お前ら多すぎッッ!!!」
両手の魔方陣から、魔法が発動。
迫り来るアンデットたち目掛けて、衝撃波が放たれた。
吹き飛ぶアンデットから、雷電は感電を巻き起こす。
感電したアンデットは、焦げくさいにおいを漂わせながら崩れ落ちていった。
それを見ながら、ニケは目に意識を集中させる。
視界に見える世界が、徐々に遅くなっていく。
世界がゆっくりと流れ始める中で、ニケは両手から双線を引いた。
「綴ろう!」
その一言に、魔線は色を変えた。
薄緑色を帯びた白色の魔線が、赤い魔線へと変わっていった。
どうやら、先ほどからニケが引いている赤い魔線は威力、性能を向上させているようだ。
脳裏に浮かぶ、数字と関係でもあるのだろうか。
「″我、火を志すもの、汝、その火の力を敵にぶつけよ″ファイヤーボール!」
両手から魔方陣が展開された。
ニケは、すぐさま魔法を発動させる。
魔方陣から火の玉が現れる。
火の玉は先ほどとは形が違い、先端がとがっていた。
ゆっくりと動いていく火の玉を眺めながら、ニケは双線を引き始める。
「綴ろう!″我、光の力を求めるもの。射抜け、その光と共に″ライトニードル!」
すぐさま展開された魔方陣、ニケはすぐさま魔法を発動させた。
無数の光の矢が、ゆっくりとアンデットたち目掛けて飛んでいく。
世界が速度を戻し始めた。
速度が戻ると、火の玉と無数の光の矢がアンデットたちに目掛けて襲い掛かる。
光の矢が刺さると同時に、身体を貫く。すぐに、火の玉が追い討ちをかける。
前方にいたアンデットは、身体を燃やしながらニケのもとへと歩み寄る。
だが、身体が火に覆われニケのもとへたどり着くことすらできなかった。
「はぁ……はぁ……少し魔力使いすぎたかな……」
汗を額に滲ませ、膝をつく。
それを見るや、シロが駆け寄ってきた……!
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