夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

文字の大きさ
59 / 93

58話「防衛戦 更なる敵の出現」

しおりを挟む

「シロ、アシュリーは大丈夫そうなのか……?」

 立ち上がりながら、ニケはアシュリーを見た。
 アシュリーは、大剣をぶん回しながらアンデットを切り裂きながら、ニケに微笑みかけた。

「こ、こえぇ……」

 行なっている行動と表情が違いすぎた。
 ニケのもとに、すぐさま冒険者たちがやってきた。

「大丈夫か?俺達が、引きとめるから少し休んでろ」

 先ほどの青年のようだ、今度は仲間と行動しているようでニケは、そっと胸をなでおろした。

「ありがとう、ここは任せるよ」

 そういうと、シロと一緒にニケは中衛のガリィのもとまで戻っていった。
 ガリィのところまで、アンデットは来てないようだ。

「ガリィ、少し休ませてもらうよ」

 ニケは、座るとガリィの花弁に背を預けて瞑想を行ない始めた。
 目を閉じて背中に意識を集中させはじめると、脳裏の数字が『2』から『1』に戻った。
 魔法による爆音と、冒険者達の掛け声から叫び声、雄叫びなどが飛び交っているのが聞こえる。
 音に意識を集中させると、後方から複数の足音が聞こえニケは目を開けた。
 後方で待機していた、魔法使いたちが前線へと出てきたのだ。
 遠距離による攻撃ができないものや、回復魔法を得意とする者たちだろうか。
 その先頭には、ミーチェがいた。

「中衛と連携して、前衛の援護を!」

 指示を出しながら、前衛の方へと歩いてくる。
 ニケが、ガリィのと隣で休んでるのを知らなかったようで、目が合うとミーチェがニケのもとに歩み寄ってきた。

「魔力切れか?」

「あぁ、全部なくなる前に瞑想しにここに」

 ニケは、ガリィの花弁を2、3回叩いた。
 ミーチェは、それを見ると無理はするなよっと言い残すと前衛のいる最前線へと歩いていった。

「それは、師匠もだろ」

 ニケは、再度目を閉じた。
 背中に魔力が集まり始める、膨らみ始めると同時に違和感を覚えた。
 魔力の増幅量が、いつもより多い気がしたのだ。

「魔力が増えたのかな?ゲームでも、レベル上がると上がるからなぁ」

 それから、しばらく瞑想を続けた。
 遠くから聞こえる爆発音が、ミーチェの魔法だとわかるとニケは笑っていた。

「また、派手に吹っ飛ばしてるのかな」

 目をあけると、戦況はかなり変わっていた。
 中衛が前にでて、前衛の隙間から漏れたアンデットを処理していた。
 前衛の数が少ない……嫌な予感がニケの中に渦巻いた。
 魔法使い達によるライトの魔法により、現状が把握しやすくなった。
 前衛が3人で固まりながら、大きな『なにか』とたたかっている。
 大きさで言うと3mほどだろう、ガリィほどの高さだ。
 筋肉質で緑の皮膚、アシュリーの大剣と同じくらいの大きさの剣を振るっている。
 森の木々が押し倒され、地響きが聞こえる。
 小さな地震ともいえよう地響きが、徐々に近くなってくる。
 森の入り口に、大きな虎のようなものが姿を現した。
 毛並みは黒、足は……ヤギ……?尻尾は先端に顔があり、尻尾だけ皮膚が違った。
 そこらへんから声があがる。

「オークのアンデットは無視だ!キメラだ!キメラがでたぞぉぉぉ!!!」

「退け!退くんだ!」

 混乱のなか、ルトが退却の合図を出した。
 懐から紙に包まれた、野球ボールくらいの大きさの球をルトは地面にたたきつけた。
 叩きつけられた球は、光を帯び始めやがて赤い光を出すと消えていった。
 きっと退却の合図用に作られた、即席魔法による第一位階光魔法のフラッシュだろう。
 冒険者達が、一斉に村目掛けて走り出す。
 その後ろをアンデット、オーク、キメラが追いかけ始める。

「このままだと村に連れ帰るんじゃ……!?」

 ニケは、即座に左手に魔力を流しこんだ。
 大剣を練成、片手で持つと脳裏に意識を向ける。
 カチン。脳裏の数字が『1』から『2』に上がる。

「まだだ、もう一回……もう一回上がってくれ……ッ!!!」

 意識を向けながら、歯を食いしばる。
 全身の魔力が、すごい勢いで身体中を駆け巡るのを感じる。

 ……カチン。

「きた……っ!」

 脳裏の数字が『2』から『3』へと上がる。
 同時に、呪文だろうか文字が脳裏に綴られ始める。

『汝、文字の神との契約を求めるか……?』

「文字の神……?」

 冒険者達が、応戦をしながら避難をしているなかで。
 ニケは、一人その場に立っていた。

「ニケ。一回体制を立て直すぞ!」

 ミーチェが駆け寄ってきた。
 だが、ニケにその声は届いていないようだ。

「おい!反応しろ、どうしたのだ!」

 肩を揺するが、ニケは目を開けない。
 シロが吠え出す、同時にガリィがニケを守るために移動を始める。
 ニケの正面に、ガリィは移動するとその大きな花弁を開いた。
 超音波にもよくにた咆哮をあげる。

 ……………ッッッ!!!!!!!

 聞き取ることは不可能であろう咆哮。
 そんなことがおきているとも知らず、ニケはいまだ脳裏の文字と会話をしていた。

『文字の神、リーディア様が、汝と契約をしたいと申しておる』

「それはどういうことだ」

『そのままの意味だ』

 ニケは、考え込んだ。

「力を貸してくれるってことか?」

『そういうことだ』

「わかった、契約をしよう」

 その言葉に、ニケの足元に大規模な魔方陣が展開された。
 ミーチェは驚き、腰を抜かしていた。
 逃げ行く冒険者達は、立ち止まり囲まれているニケたちの方向を見た。

「お、おい、あれって……?」

「わからん、何かが起きてるみたいだ」

「誰かー!西の魔女様を知らないかー!」

 唖然と見つめる冒険者達に、ミーチェの居場所を聞くルト。

「どこにもいない?……っま、まさか、あの光の中心に……ッ!?」

「私、行ってきます!」

 一緒になって避難したアシュリーが、大剣を片手に駆け出した。

「お、おい譲ちゃん!」

 ルトが停めに入るが、間に合わなかった。
 ものすごい勢いで、アシュリーは駆けていった……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...