夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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59話「防衛戦 途中経過」

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「ミーチェさん!」

 ニケの肩を揺らしていたミーチェのもとに、アシュリーが駆け寄ってきた。
 ニケは、いまだ頭の中で話をしていてそとの声は聞こえてない様子。
 そんななか、アンデット、アンデット化したオーク、キメラは、広大すぎる魔方陣に警戒心を抱いたのか、沈黙していた。
 ガリィが先陣を切った。
 4本の大きな触手で自ら身体を移動させる。
 4速歩行による移動、重たい身体を支えてるため歩いたところの土はへこんでいた。
 シロもその後に続く、主を守るためたたかうのだ。
 敵意をむき出し、大きく口を開け牙をむき出すシロの姿は見るものに恐怖を植えつけるものだった。

「ガリィ……シロまでもか」

 先陣を切っていくシロとガリィを見ながら、ミーチェはニケの肩から手を離した。

「なにかしら起きているのだろう?ニケ……」

 そういうと、ミーチェは詠唱を始めた。

「″漆黒の闇に命ず。汝、我との契約の元。その姿を見せたまえ″!我が元に来たれ!ギルティーサイス!」

 詠唱を終えると、黒き光と共に2mほどの大鎌が現れる。
 ミーチェは、それを両手で握ると何かを決意したような目で目の前の光景を睨む。

「弟子一人守れないようじゃ、師匠失格だからなッッ!!!」

 ミーチェは、駆け出す。
 シロと、ガリィの後を追って。

「ミーチェさん……ニケさん、早く戻ってきてくださいね!」

 目を瞑り棒立ちをするニケに、アシュリーは声を掛けるとミーチェを追いかけた。
 そんなことが起きてるのも知らず、ニケは文字の神リーディアと話をしていた。

『やぁ、君がニケちゃんだね』

 やわらかい感じで話掛けてくる文字に、ニケは驚いていた。

「本当に神なのか?」

『まぁ、一応神だね。どちらかと言えば精霊に近い』

 文字は綴られ続ける、真っ黒な世界にニケと文字のみが存在していた。

『私は、もともと文字の精霊だったんだ。人間達が文字を魔力で綴るようになってから、私は神という立場に置かれ拝められた』

 ニケは、黙々と文字を読み取っていた。
 遠い昔、人々は魔法という物を知った。
 最初は、地面に書く直筆詠唱から始まった。文字の精霊はその魔力により生まれた。
 時代は進み、直筆詠唱が魔線によるものとなった。
 魔力が多くなり、文字の精霊たちの統率が取れなくなった。
 より大きい魔力を得た文字の精霊が、小さい魔力を得た精霊を飲み込みやがて魔物となり、世に混乱をもたらしたからだ。
 魔物になった文字の精霊は自我を忘れ、人々を襲い始めた。
 そこで生まれたのが、文字の神『リーディア』だった。
 彼女が、文字の神としてこの世界に君臨した時には、魔物は魔族と進化し人間と対立をしていたそうだ。
 これ以上、魔物が増えるのを恐れ人間達は、リーディアを拝めはじめた。
 リーディアは、人間達の声に応えようと文字の精霊達を統率することにした。
 統率に成功した頃には、リーディアの存在は忘れられ始めた頃だった。
 魔法は次の時代へと進み、直筆詠唱から口頭による呪文詠唱へと変わっていったからだ。
 文字の精霊は数を減らしていった。
 それにより魔物は数を減らした、それが原因だった。

『君を除き、今世紀文字を綴ったのは数人さ……』

 そういえばと、ニケは思い出した。
 ミーチェと家を出るとき、ミーチェが直筆詠唱による結界を書いていたことを。

『そう、君の師匠さ。君の師匠以外、試しに魔線を引くもの呪文を綴るが成功しないものがいたさ』

 ニケは、その文字を見るたびに忘れられることに対しての、寂しさを感じとっていた。
 自分自身だったら……っと感情移入しながらも文字を読む。

『だが、君は違った。文字を綴り、たたかっていった』

 直筆詠唱しか教わっていないのもあるが、ニケの場合はさまざまな異能、アテナから与えられた力による力があり、ニケの使う直筆詠唱は本来のものではなくまた違うものだった。

『もう忘れられた神である私は、消え行くのを待つ日々だった』

 綴られる文字ひとつひとつが、徐々に乱れ始める。
 寂しい思いと、消えたくない思いがリーディアの綴る文字から読み取れる……。

『だから、せめて……神として、綴ることを止めないででいてくれる君と居たいと思うんだ……』

「それで、契約ということか」

 ニケは、リーディアに対して同情しかできなかった。

『正直なところ、私は消えてもいい。今の人間達には魔物を倒す術が有る』

「消えていいわけないじゃん」

 ニケの一言に、綴られていた文字が止まった。

「あんたがいなくなったら、文字の精霊が悲しむだろ?」

 ニケは、頭の上で腕を組みながら笑った。

「俺が綴ってやるから、文字の精霊はいなくならないし、リーディアもいなくなる理由もないぜ」

 その言葉に、嘘はなかった。
 ニケは、綴ることが嫌いではない。それしか教わってないという理由以前に、ニケは綴るのが好きだった。

「この世界にきて、初めて知った魔法なんだ。俺の中じゃ一番かっけぇ魔法なんだ」

 腕を組むのをやめ、うつむきながらニケは言った。

「だからさ、俺は綴るのを止めない。これが俺の魔法なんだ」

 にっこりと笑うニケに、文字は再び綴られた。

『君は、変わった奴だな。呪文詠唱のほうが早くて威力があるのに、直筆詠唱を選ぶのか?」

「俺の魔法は、俺が選ぶんだ。極めればなんだって強くなる」

『そうか、そうかそうか。私は嬉しいぞ』

 ニケは、すこし恥ずかしそうに頭を掻いていた。

「そんなに喜んでもらえるなんてな」

 恥ずかしそうに頬を赤くしながら、ニケは目を瞑った。

「だからさ、俺が綴るから心配しなくていい。その代わり契約するんだ、俺に力を分けてくれ」

 目を開けると、ニケの目つきはやわらかいものではなく覚悟を決めた目つきに変わっていた。

『力を望むのかい?』

「あぁ。とびっきり強いので頼む」

 ニケの一言に、文字は再度綴られなくなった。
 ニケは、綴られるのを待っていた。

『わかった、私の力でよければ文字の精霊のため、君自身のために使ってくれ』

「任せとけって!」

 そういうと、ニケは笑いながら右手を握り親指を立てた。

『契約は、向こうで展開されている魔方陣に向けて行なってね』

 リーディアは、そう綴ると気配を消した。
 同時に、ニケの意識は現実世界へと引き戻される。
 意識が戻り始めると、視界がしばらく歪み、やがてもと通りになった。

 ――ニケが、目覚めるまでの間。
 ガリィを先頭に左にシロ、右にアシュリー。
 そして、ガリィの上にミーチェという謎の隊列が、アンデットとアンデット化したオーク、キメラ目掛けて駆けていた。

「″闇よ、我が元へ来たれ、その力を持って魂を宿し、敵を討ち滅ぼせ!″ネクロソウル!」

 ミーチェが、詠唱を行なった。
 魔方陣が展開され、魔法が発動5つの青い火の玉がミーチェの周りを飛び始める。
 ガリィが、身体を持ち上げるのをやめ4本の触手を同時に伸ばしながら花弁で滑った。
 伸ばされた触手により、アンデットたちを薙ぎ払いながら進む。
 シロが、追い討ちをかけるように氷の咆哮を放つ。
 辺り一体が温度を急激に下がった。
 シロの放つ咆哮が、アンデットを中心に吹き飛ばし凍らせ始める。
 だが、長くと続かなかった。
 滑るガリィを横目に、アシュリーはアンデット化したオークと対峙していた。

「オークまでアンデットに……」

 呟いてる暇はない、目の前にいる3体のオークがミーチェ目掛けて剣を振るう。
 大剣を鞘から引き抜くと同時に、刀身に手を添え剣を受け流す。
 オークは、図体がでかく固まって攻撃すると互いが邪魔になるようだ。
 肩と肩がぶつかり、剣が逸れて振るい降ろされる。
 実際、アシュリーが受け流したのはひとつだ。
 そのまま、身体を回しながら大剣を振るう。
 大剣は、オークの右足の肉をえぐった。どうやら骨までは届かなかったらしい。
 振り切り際に右手を離す、そのまま大剣を振るい身体を回す。
 オークの足が見えたところで、両手で握りもう一度振るう。
 今度は硬いものにあたったようで、大剣が少し弾かれていた。
 それを気にも留めず、思い切り振り切った。
 足の肉をえぐられ、骨を砕かれたオークはバランスを崩し前かがみに倒れこんだ。
 アシュリーは、急いで避けると振り下ろされる剣を受け止めた。

「っく……やっぱ重いですね……ッ!!!」

 受け止めながら、アシュリーは歯を食いしばった。
 アンデットの身体でも、流石に無理なものは無理のようだ。
 身体のいたるところから軋む音が聞こえる。
 このままでもまずいと、アシュリーは剣を受け流した。

「やっぱ一人じゃ厳しいです……」

 アシュリーは、距離を置くため駆け出した。
 ガリィのもとには、多くのアンデットたちが群がっていた。
 触手による、薙ぎ払いでも吹き飛ぶがすぐに群がってくるようだ。

「このままじゃ、厳しいな」

 大鎌を構えながらミーチェは、ガリィを見ながら呟いた。
 周囲を見ながら、ミーチェは詠唱を始めた。 

「″闇の力よ。我、力を求める者なり。汝、その力を持って、敵と共に爆ぜろ!″ネクロボム」

 押し寄せるアンデットの中心部に、魔方陣が展開された。
 魔方陣から魔法が発動、小さな蒼い火の玉が現れた。
 小さな火の玉は、更に小さくなりはじめた。
 ある程度小さくなると、火の玉は爆発を巻き起こした。

 ドォォォォォォォォォンッッッ!!!

 爆発と同時に、周りにいたアンデットは吹き飛んだ。
 手足などが飛び散るなか、紫色の煙が立ち上がる。
 煙が流されると、そこには大きな穴ができていた。
 周りには、手足から服や顔、指などが飛び散っているのが見て取れる。

「これでもまだおるのか……」

 ミーチェは、魔法により吹き飛ばした場所を見ながら今だ集まってくるアンデットを見ながら呟いた。
 後方から、大きな魔力を感じとり振り向くとニケが目を開けているのが見えた。

「やっと目を開けよったか」

 ミーチェは、ガリィの上でひざをつくとガリィの花弁を撫でながら言った。

「ガリィ、ご主人が動き始めたぞ」

 その言葉に、ガリィは再度身体を持ち上げ始めた……。
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