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61話「防衛戦 少年と猛獣」
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辺り一面に、文字が浮かぶ空間をミーチェ含む冒険者一同は不思議そうに眺めていた。
「こ、この光は……?」
冒険者の中から、声があがった。
はじめてみるものに、どう対応すればいいのかわからない者もいれば、文字に触れようとする者もいた。
「これも魔法なのか?」
ルトは、周りを見渡すと文字に囲まれたニケを見つけた。
冒険者たちに声をかけ、急いでニケのもとへと駆けつける。
「おい、これはなんなんだ?」
ニケの肩に手を置き、ルトは問いかけた。
対するニケは、目の前に浮かぶ文字に目を通しながらルトに振り返った。
ニケの周りに浮かぶ、文字の精霊がルトの周りを一周すると空へと消えていった。
「文字の精霊達をここに呼び出した」
その一言に対して、ルトは首を傾げながら周りを見渡した。
文字は一向に減るどころか、増える一方だ。
ルトの後に続いてニケのもとへとやってきた冒険者たちは、前方でたたかうミーチェを横目にルトに指示を仰いだ。
「ルトさん、俺達もたたかったほうがいいんじゃ……」
「今むやみに前にでたら、魔法の効果範囲内にはいっちまう……」
前方では、爆音と共にガリィとミーチェとの連携による戦闘が繰り広げられている。
近づくアンデットを、ガリィが触手で掴み遠くへと投げる。
投げ飛ばされたアンデットに対して、魔法を叩き込むミーチェ。
数は着実に減っているようにも見えた。
だが、森から出てくるアンデットは時間が経つと共に数を増しているようにも感じる。
「ニケ!準備はいいか!」
「あぁ、いつでもいけるぜ!」
「キメラを頼む!他のものは、ニケの後に続いてオークの処理を!」
振り返りながら、ミーチェはニケと近くにいた冒険者に声を張り上げながら指示を出した。
「ここは私とこやつで受け持つ!早く行くんだ!」
「だってさ、んじゃ行きますかね」
ニケが駆け出す、その後ろをルトが続きながら掛け声をあげた。
「いくぞお前らぁぁぁ!!!!」
その声に反応するように、冒険者たちが武器を手に声を張り上げながらついていく。
「頼んだぞ……ニケ」
暴れまわるガリィの傍を駆け抜けたニケの背中を、ミーチェは心配そうな目線を送りながら呟いたのだった。
「俺が道を切り開くから、後は頼むよ!」
「き、切り開くってこの数をどうするつもりだ!」
「まぁなんとかなるでしょ」
ニケは、文字の精霊を引き連れながら両手から双線を引き始めた。
薄い緑色の魔線が、徐々に赤へと染まり始める。
「綴れ綴れ、我と共に!」
その言葉を起点に、文字の精霊達が腕へと巻きつき始める。
「″我、火を志すもの、汝、その火の力を敵にぶつけよ″ファイヤーボール!」
ニケが、直筆詠唱による4つの呪文を綴ると、綴られた文字を真似するかのように文字の精霊達が呪文に重なり始めた。
2層からなる双線の呪文が、3層、4層と増えていく。
5層、6層と重なると呪文は光の板とでも言おうか、幅がかなり厚くなっていた。
驚きながら呪文を発動させるニケ。
魔方陣が4つ展開されると、続け様に6つ、8つと増えていく。
合計24の魔方陣を同時に展開した。
魔方陣は最初の4つの魔方陣を中心に、5つずつにわかれた。
ニケの左右に、6層の魔方陣が4つ展開されたのだ。
『おぉ、文字の精霊たちが楽しんでる。私も混ざりたいなぁ』
「リーディアが混ざったらだめでしょ」
そういいながらニケは、魔方陣から魔法を発動させる。
4つ同時に、6連発のファイヤーボールを前方のアンデット目掛けて放った。
前から順番に、炎に巻かれながら崩れ落ちていくアンデットの群れに、ニケは再度詠唱をするのだった。
「綴ろう!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の大咆哮!」
再度綴られた呪文に、文字の精霊達が再び重なり始める。
またしても6層にまで重なる文字の精霊達。ニケは、それを確認すると魔方陣を展開した。
腕輪のように左右の手首に魔方陣が展開される、そこに重なるように5層の魔方陣が追加された。
「ルトさん、先行くよッ!!!」
ニケが、全力疾走を始めた。
ルトと冒険者を置いてアンデットの群れへと突っ込んで行く。
アンデットの手前で足を踏ん張り、速度を殺しながら停止すると同時に右手の魔方陣を一発発動させた。
パァァァァァァンッッ!!!!
甲高い皮膚を打ち付ける音と共に、アンデットたちが吹き飛ぶ。
バチバチバチ……!!!
吹き飛ばされたアンデットを縫うかのように、雷電が走る。
すぐさま、右足で前方へのステップ。身体を捻り左手を前に突き出すと同時に、左手の魔方陣から魔法を発動させた。
パァァァァァァンッッ!!!
雷電を走らせながら吹き飛ぶアンデット、その隙間からキメラが見えた。
でかい図体、下半身がヤギであり尻尾はどうやら蛇のようだ。
魔法による衝撃に耐えながら、ニケは両手を両側に向ける。両手から同時に魔法を放った。
1発……2発と、連発する。
ある程度のアンデットは片付いたようだ、その代わり焦げくさいにおいが辺りに漂い始めた。
「す、すごいな……」
遅れてきたルトが、倒れこみ動かなくなった焦げたアンデットを見ながらつぶやいていた。
その後ろからきた、冒険者たちもその光景をみながら驚きを隠せない様子だ。
「俺達は、俺達のやることをやるぞ!」
10人ほどの冒険者たちに声をかけ、オーク目指してルトは駆け出した。
ルトに続く冒険者を見ながら、ニケはキメラへと歩みを進めた。
近づくにつれ、その大きさを再認識した。
トラックほどの大きさだろうか。正面はまさに猛獣。
尻尾の蛇がいる限り、回り込むのは厳しいだろう。
ニケに目線を向けるキメラ。互いにぶつかり合う目線には、火花が散って見えてもおかしくない。
鋭い目で睨まれるが、ニケは立ち止まらなかった。
15mほどの距離まで近づくと、ニケは立ち止まった。
「よぉ、猛獣」
ニケの一言に、キメラが咆哮を上げる。
グルルルル、ガァゥッ!!!!
咆哮だけで、ニケの服がなびいた。
そんなことお構いなしに、ニケは駆け出した。
一目散に懐へ、右手を押し付け顎目掛けて魔法を放とうとした。
だが、風を切る音と共にキメラが右前足で薙ぎ払おうとしてきた。
すかさず目に意識を向けた。
視界から見える世界が、徐々に遅くなっていく。
薙ぎ払うために近づいてい来る右前足を、少し下がって避ける。
前足の先端には、鋭く尖った爪が見えた。
目の前を掠める右前足を、下から殴るようにして右手を添える。
パァァァァァァァンッッ!!!!
ゆっくり放たれる魔法、キメラの右前足はゆっくりと上へと弾かれた。
弾かれたことにより、キメラは右肩から地面目掛けた倒れこみ始めた。
ニケは、ゆっくりと倒れはじめるキメラの顔面へと左パンチを繰り出す。キメラの右頬に触れると同時に、魔法を発動。
パァァァァァァァンッッ!!!
キメラの顔面が、ゆっくりと歪んでいく。やがてもとに戻り始めるが、口から血を流し始めた。
着実にダメージは入っているようだ。
やがて、世界が速度を戻し始めた。
ドシンッ!という音と共に、キメラが倒れこんだ。
魔法を放った箇所から、雷電が走るがキメラには通用してないようだ。
すかさす、左右に残る2つずつの魔方陣をすべてはなった。
パァァァァァァァンッッ!!!
何度も顔目掛けて放ったためか、キメラは起き上がろうとするがふらついていた。
起き上がらせまいと、ニケが左手に魔力を送り込む。
即座に刀を練成し、前足目掛けて駆け出す。
左から回り込むようにして、前足に切りかかろうとする。
そこに尻尾の蛇が入り込んだ。前足を守るかのように立ちはだかる蛇に対し、ニケは刀を振るった。
ひらりひらりと、何度もかわされる。
「ちょこまかと動くなぁぁぁぁッ!!!」
一気に踏み込み、左上から振り下ろす。だがそれさえも蛇はかわして見せた。
刀を振り上げようとした瞬間、本能が叫んだ。避けろと。
即座に後方へのステップをする。先ほどまでニケが、いたところにキメラの顔があった。
どうやら噛み砕こうとしたようだ。
「あ、あぶなねぇ……」
右手で冷や汗を拭うと、ニケは深呼吸をした。
左半身を前に、刀を突きつけるとニケは、右手で双線を引き始めた
「綴ろう!″光よ我が元へ来たれ″フラッシュ!」
文字の精霊が、呪文へと重なり始める。
右手に、12個の魔方陣が展開された。
ニケは、足を踏ん張ると同時に力強く地を蹴った。地を削ぎながら駆け出した。
「見切られるなら、目をつぶしてしまえばいいッッ!!!」
正面から接近してくるニケに、キメラは大きく口を開け咆哮をあげようとした。
ニケは、飛び跳ねると同時に右手の魔法を発動させた。
パァンという甲高い音と共に、まぶしい光が放たれた。光を直視したキメラは、目を瞑り唸り始めた。
「もらったぁッ!」
背中へと飛び乗り、蛇目掛け魔法を放つ。
だが、蛇には効かないようだ。
少し目を瞑ってから、口を大きく開けもの凄い速さで噛み付きにきた。
ニケは、身体を右に捻り左手を前に、半身の構えをとった。
「くっそ、効かないんじゃ意味ないじゃん……」
蛇は、体温で敵の位置を察知すると聞いたことがある。
「変温動物なんだっけ?」
どうやらなにかを思いついたらしい。
ニケは、右手に展開される魔方陣を振り払い魔方陣を消し去った。
お構いなしに攻撃を繰り出してくる蛇。
しゃがんだり、刀で受け流すニケ。
キメラが、再び動き出した。どうやら、目潰しの効果が切れたようだ。
「うわわ、いきなり暴れるなよ!」
刀をキメラの背中に突き刺し、暴れ始めたキメラの上で踏ん張る。
それでも蛇は攻撃をやめなかった。踏ん張るニケ目掛け、大きく口を開けた。
「あーもうッ!」
ニケは、刀を捨てキメラの背中から飛び降りた。
流石に3mほどある巨体から飛び降りたのだ、ニケはバランスを崩し前へと転がった。
すぐさま、キメラがニケ目掛け左前足を振り上げた。
咄嗟にニケは、横へと転がった。
転がるニケを追うように、キメラが前足を交互に振り下ろし始めた。
「こ、殺されるぅぅぅぅッッ!!!」
必死に転がるニケ。
キメラが交差した前足を戻す時に起き上がり、距離を置いた。
「はぁ、はぁ……ふぅ」
息を整える、再び睨み合う両者。
周りでは、冒険者の掛け声と共に魔法による爆発音が響き渡っていた。
ニケは、両手から双線を引いた。
「綴ろう……」
「こ、この光は……?」
冒険者の中から、声があがった。
はじめてみるものに、どう対応すればいいのかわからない者もいれば、文字に触れようとする者もいた。
「これも魔法なのか?」
ルトは、周りを見渡すと文字に囲まれたニケを見つけた。
冒険者たちに声をかけ、急いでニケのもとへと駆けつける。
「おい、これはなんなんだ?」
ニケの肩に手を置き、ルトは問いかけた。
対するニケは、目の前に浮かぶ文字に目を通しながらルトに振り返った。
ニケの周りに浮かぶ、文字の精霊がルトの周りを一周すると空へと消えていった。
「文字の精霊達をここに呼び出した」
その一言に対して、ルトは首を傾げながら周りを見渡した。
文字は一向に減るどころか、増える一方だ。
ルトの後に続いてニケのもとへとやってきた冒険者たちは、前方でたたかうミーチェを横目にルトに指示を仰いだ。
「ルトさん、俺達もたたかったほうがいいんじゃ……」
「今むやみに前にでたら、魔法の効果範囲内にはいっちまう……」
前方では、爆音と共にガリィとミーチェとの連携による戦闘が繰り広げられている。
近づくアンデットを、ガリィが触手で掴み遠くへと投げる。
投げ飛ばされたアンデットに対して、魔法を叩き込むミーチェ。
数は着実に減っているようにも見えた。
だが、森から出てくるアンデットは時間が経つと共に数を増しているようにも感じる。
「ニケ!準備はいいか!」
「あぁ、いつでもいけるぜ!」
「キメラを頼む!他のものは、ニケの後に続いてオークの処理を!」
振り返りながら、ミーチェはニケと近くにいた冒険者に声を張り上げながら指示を出した。
「ここは私とこやつで受け持つ!早く行くんだ!」
「だってさ、んじゃ行きますかね」
ニケが駆け出す、その後ろをルトが続きながら掛け声をあげた。
「いくぞお前らぁぁぁ!!!!」
その声に反応するように、冒険者たちが武器を手に声を張り上げながらついていく。
「頼んだぞ……ニケ」
暴れまわるガリィの傍を駆け抜けたニケの背中を、ミーチェは心配そうな目線を送りながら呟いたのだった。
「俺が道を切り開くから、後は頼むよ!」
「き、切り開くってこの数をどうするつもりだ!」
「まぁなんとかなるでしょ」
ニケは、文字の精霊を引き連れながら両手から双線を引き始めた。
薄い緑色の魔線が、徐々に赤へと染まり始める。
「綴れ綴れ、我と共に!」
その言葉を起点に、文字の精霊達が腕へと巻きつき始める。
「″我、火を志すもの、汝、その火の力を敵にぶつけよ″ファイヤーボール!」
ニケが、直筆詠唱による4つの呪文を綴ると、綴られた文字を真似するかのように文字の精霊達が呪文に重なり始めた。
2層からなる双線の呪文が、3層、4層と増えていく。
5層、6層と重なると呪文は光の板とでも言おうか、幅がかなり厚くなっていた。
驚きながら呪文を発動させるニケ。
魔方陣が4つ展開されると、続け様に6つ、8つと増えていく。
合計24の魔方陣を同時に展開した。
魔方陣は最初の4つの魔方陣を中心に、5つずつにわかれた。
ニケの左右に、6層の魔方陣が4つ展開されたのだ。
『おぉ、文字の精霊たちが楽しんでる。私も混ざりたいなぁ』
「リーディアが混ざったらだめでしょ」
そういいながらニケは、魔方陣から魔法を発動させる。
4つ同時に、6連発のファイヤーボールを前方のアンデット目掛けて放った。
前から順番に、炎に巻かれながら崩れ落ちていくアンデットの群れに、ニケは再度詠唱をするのだった。
「綴ろう!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の大咆哮!」
再度綴られた呪文に、文字の精霊達が再び重なり始める。
またしても6層にまで重なる文字の精霊達。ニケは、それを確認すると魔方陣を展開した。
腕輪のように左右の手首に魔方陣が展開される、そこに重なるように5層の魔方陣が追加された。
「ルトさん、先行くよッ!!!」
ニケが、全力疾走を始めた。
ルトと冒険者を置いてアンデットの群れへと突っ込んで行く。
アンデットの手前で足を踏ん張り、速度を殺しながら停止すると同時に右手の魔方陣を一発発動させた。
パァァァァァァンッッ!!!!
甲高い皮膚を打ち付ける音と共に、アンデットたちが吹き飛ぶ。
バチバチバチ……!!!
吹き飛ばされたアンデットを縫うかのように、雷電が走る。
すぐさま、右足で前方へのステップ。身体を捻り左手を前に突き出すと同時に、左手の魔方陣から魔法を発動させた。
パァァァァァァンッッ!!!
雷電を走らせながら吹き飛ぶアンデット、その隙間からキメラが見えた。
でかい図体、下半身がヤギであり尻尾はどうやら蛇のようだ。
魔法による衝撃に耐えながら、ニケは両手を両側に向ける。両手から同時に魔法を放った。
1発……2発と、連発する。
ある程度のアンデットは片付いたようだ、その代わり焦げくさいにおいが辺りに漂い始めた。
「す、すごいな……」
遅れてきたルトが、倒れこみ動かなくなった焦げたアンデットを見ながらつぶやいていた。
その後ろからきた、冒険者たちもその光景をみながら驚きを隠せない様子だ。
「俺達は、俺達のやることをやるぞ!」
10人ほどの冒険者たちに声をかけ、オーク目指してルトは駆け出した。
ルトに続く冒険者を見ながら、ニケはキメラへと歩みを進めた。
近づくにつれ、その大きさを再認識した。
トラックほどの大きさだろうか。正面はまさに猛獣。
尻尾の蛇がいる限り、回り込むのは厳しいだろう。
ニケに目線を向けるキメラ。互いにぶつかり合う目線には、火花が散って見えてもおかしくない。
鋭い目で睨まれるが、ニケは立ち止まらなかった。
15mほどの距離まで近づくと、ニケは立ち止まった。
「よぉ、猛獣」
ニケの一言に、キメラが咆哮を上げる。
グルルルル、ガァゥッ!!!!
咆哮だけで、ニケの服がなびいた。
そんなことお構いなしに、ニケは駆け出した。
一目散に懐へ、右手を押し付け顎目掛けて魔法を放とうとした。
だが、風を切る音と共にキメラが右前足で薙ぎ払おうとしてきた。
すかさず目に意識を向けた。
視界から見える世界が、徐々に遅くなっていく。
薙ぎ払うために近づいてい来る右前足を、少し下がって避ける。
前足の先端には、鋭く尖った爪が見えた。
目の前を掠める右前足を、下から殴るようにして右手を添える。
パァァァァァァァンッッ!!!!
ゆっくり放たれる魔法、キメラの右前足はゆっくりと上へと弾かれた。
弾かれたことにより、キメラは右肩から地面目掛けた倒れこみ始めた。
ニケは、ゆっくりと倒れはじめるキメラの顔面へと左パンチを繰り出す。キメラの右頬に触れると同時に、魔法を発動。
パァァァァァァァンッッ!!!
キメラの顔面が、ゆっくりと歪んでいく。やがてもとに戻り始めるが、口から血を流し始めた。
着実にダメージは入っているようだ。
やがて、世界が速度を戻し始めた。
ドシンッ!という音と共に、キメラが倒れこんだ。
魔法を放った箇所から、雷電が走るがキメラには通用してないようだ。
すかさす、左右に残る2つずつの魔方陣をすべてはなった。
パァァァァァァァンッッ!!!
何度も顔目掛けて放ったためか、キメラは起き上がろうとするがふらついていた。
起き上がらせまいと、ニケが左手に魔力を送り込む。
即座に刀を練成し、前足目掛けて駆け出す。
左から回り込むようにして、前足に切りかかろうとする。
そこに尻尾の蛇が入り込んだ。前足を守るかのように立ちはだかる蛇に対し、ニケは刀を振るった。
ひらりひらりと、何度もかわされる。
「ちょこまかと動くなぁぁぁぁッ!!!」
一気に踏み込み、左上から振り下ろす。だがそれさえも蛇はかわして見せた。
刀を振り上げようとした瞬間、本能が叫んだ。避けろと。
即座に後方へのステップをする。先ほどまでニケが、いたところにキメラの顔があった。
どうやら噛み砕こうとしたようだ。
「あ、あぶなねぇ……」
右手で冷や汗を拭うと、ニケは深呼吸をした。
左半身を前に、刀を突きつけるとニケは、右手で双線を引き始めた
「綴ろう!″光よ我が元へ来たれ″フラッシュ!」
文字の精霊が、呪文へと重なり始める。
右手に、12個の魔方陣が展開された。
ニケは、足を踏ん張ると同時に力強く地を蹴った。地を削ぎながら駆け出した。
「見切られるなら、目をつぶしてしまえばいいッッ!!!」
正面から接近してくるニケに、キメラは大きく口を開け咆哮をあげようとした。
ニケは、飛び跳ねると同時に右手の魔法を発動させた。
パァンという甲高い音と共に、まぶしい光が放たれた。光を直視したキメラは、目を瞑り唸り始めた。
「もらったぁッ!」
背中へと飛び乗り、蛇目掛け魔法を放つ。
だが、蛇には効かないようだ。
少し目を瞑ってから、口を大きく開けもの凄い速さで噛み付きにきた。
ニケは、身体を右に捻り左手を前に、半身の構えをとった。
「くっそ、効かないんじゃ意味ないじゃん……」
蛇は、体温で敵の位置を察知すると聞いたことがある。
「変温動物なんだっけ?」
どうやらなにかを思いついたらしい。
ニケは、右手に展開される魔方陣を振り払い魔方陣を消し去った。
お構いなしに攻撃を繰り出してくる蛇。
しゃがんだり、刀で受け流すニケ。
キメラが、再び動き出した。どうやら、目潰しの効果が切れたようだ。
「うわわ、いきなり暴れるなよ!」
刀をキメラの背中に突き刺し、暴れ始めたキメラの上で踏ん張る。
それでも蛇は攻撃をやめなかった。踏ん張るニケ目掛け、大きく口を開けた。
「あーもうッ!」
ニケは、刀を捨てキメラの背中から飛び降りた。
流石に3mほどある巨体から飛び降りたのだ、ニケはバランスを崩し前へと転がった。
すぐさま、キメラがニケ目掛け左前足を振り上げた。
咄嗟にニケは、横へと転がった。
転がるニケを追うように、キメラが前足を交互に振り下ろし始めた。
「こ、殺されるぅぅぅぅッッ!!!」
必死に転がるニケ。
キメラが交差した前足を戻す時に起き上がり、距離を置いた。
「はぁ、はぁ……ふぅ」
息を整える、再び睨み合う両者。
周りでは、冒険者の掛け声と共に魔法による爆発音が響き渡っていた。
ニケは、両手から双線を引いた。
「綴ろう……」
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