夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

文字の大きさ
63 / 93

62話防衛戦 誤解から始まった戦闘に終止符を」

しおりを挟む
両手から双線を引きながら、ニケは駆け出した。

「 ″我、火を志すもの、汝、その火の力を敵にぶつけよ″ファイヤーボール!」

 文字の精霊達が、綴られた呪文に重なり始めた。
 だが、先ほどより数が少ない。呪文は6層ではなく、4層だった。
 それでも、気にしている暇はなかった。すぐさまキメラが、こちらへと駆け出した。
 正面衝突は避けれないようだ。

「くらえぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!」

 魔方陣を展開、左右に2つずつ魔方陣が展開された。
 1つの魔方陣に対して、3つ追加の魔方陣が重なった。
 右手を前に、右側の2つを同時に放つ。
 キメラは、放たれた火の玉を左右に避けながら迫ってきた。
 ニケとの距離が縮まる。

「っく!」

 ニケは、急いで右側へと跳んだ。
 左肩から着地し、転がりながら態勢を直しキメラを視界に捉える。だが遅かった。
 キメラは、獲物を追い詰めると同時に右前足にを振りかぶった。

「……ッ!?」

 ニケの頭の中に、緊張と別にひとつの文字が浮かんだ。
 『死』、その文字が頭に浮かぶと、身体は言う事を聞かなかった。
 ただただ、振り下ろされる手を見ていることしかできなかった。
 ニケは、身を守るように両手を頭につけた。
 だが、正面からくるはずだった衝撃は来なかった。
 変わりに、横から何か太いものに押された。
 押された瞬間、視線を横に向ける。そこに居たのはガリィだった。

「ガリィッ!」

 ニケを押した触手が、キメラの爪によって裂かれた。
 緑色の体液を垂らしながら、裂かれた触手の先端が宙を舞う。
 ニケは、身体を捻り背中で受身を取りながら、地面に叩きつけられた。
 すぐに起き上がらないとと思いニケは、上半身を起こした。
 見えるのはキメラ……ではなく、シロの尻尾だった。

「ニケ、無事か!」

 ミーチェが、ガリィの上から飛び降りるとニケのもとへと駆けてくる。

「師匠!今きたらだめだ!」

 ニケは、急いで立ち上がりミーチェを静止しようとした。
 だがミーチェは、それを無視してこちらへと駆けてくる。
 冷や汗が、ニケの額に流れた。このままでは、キメラの攻撃範囲内にミーチェが来てしまう。
 そんな焦りと、危機感を抱きながらニケは、キメラに目線をやった。
 キメラは、動かずにシロと睨み合っていた。

「……っえ?」

 何が起きているのか、ニケには把握できなかった。
 シロとキメラが、ガウガウワンワンと咆え始めた。

「大丈夫か?」

 そんな光景を呆然と眺めていると、ミーチェが覗き込むように声を掛けてきた。

「あ、あぁ。大丈夫だけど……どうなってるの、これ」

 ニケは、指を指しながら隣に来たミーチェに答えた。
 シロがワンと咆えるたびに、キメラがガウっと答える。

「どうやら、キメラは死霊術とは関係ない様子でな」

 困った顔をしながら、ミーチェは右手で頭を掻いていた。
 ニケは、周りを見渡した。
 ルト含む、冒険者たちはアンデットを倒し終えたようで、負傷した者に肩を貸しながら村へと引き返していた。

『なるほどぉ~』

 ニケが、村へ引き返すルトを眺めていると、ニケの目線上に文字が綴られた。

『なんか、キメラ君はオークたちに寝床を荒らされちゃったみたい』

「は?どういうこと?」

 シロと咆え合うキメラに、ニケは目線を移しながらリーディアに問いかけた。
 ミーチェにもリーディアの綴る文字は見えているようだ。

「ほう、この文字を綴っているのが文字の神とな」

 文字を眺めながら、ミーチェが呟いた。

『そうだよ~。っと、今は向こうの話をしよっか』

 シロが大きく咆えだした、するとキメラは腰を下ろした。
 どうやら、たたかう意思はないようだ。
 腰を下ろしたキメラに、シロが近づいていく。

「シロ大丈夫なのか?」

 そういうと、ニケは構えた。
 すぐに魔法を放てるように、左手をキメラに向ける。
 すると、シロがこちらを向いて咆えた。
 攻撃をするなとでも言いたいのだろうか。
 シロに咆えられたニケは、困惑した結果左手を下ろした。
 下ろすと同時に、手を払い魔方陣を消し去った。

『んー、氷帝様には頭が上がらないみたいだねぇ』

「氷帝?それってシロのことか?」

『うん、ニケちゃんすごいよねぇ。氷帝と契約して、私と契約するんだもん』

 リーディアの綴る文字に、ニケが訳もわからない様子だった。
 そのやりとりを見ながら、ミーチェが話し出した。

「ニケ。お前が、今まで契約した召喚獣と精霊は、最も危険な植物と神話上でしか存在しないとされる神獣、あと神の類なのだぞ?」

 馬鹿を見る目でミーチェは、ニケに言った。
 それを聞くなりニケは、なるほどっと左手を右手の拳で叩いた。
 頭を抱えながら、ミーチェはやっぱ馬鹿だっと呟いていた。

『話終わったみたいだよ?』

 その文字を読み終えると、シロがこちらへと駆けて来た。
 キメラは、背を向けると森へと戻っていった。
 尻尾をぶんぶんと大振りに振りながら、ニケの足元に擦り寄ってくる。

「んで、一体どういうことなんだ?誰か説明してくれ……」

 そう言いながらしゃがみこむと、シロを撫でるニケ。

『んー、今の話を整理すると。寝床を荒らされて、アンデットを呼び出した元凶がいると思って、キメラ君はついてきたみたい』

「確かに。アンデットが、森から出てきて森の入り口からキメラが来たな」

『それで、人間とアンデットがたたかってたから困惑しちゃって、立ち止まってたところにニケちゃんが襲い掛かってきたと』

「原因、俺みたいじゃんそれ!」

 ニケは、シロを撫でるのをやめ勢いよく立ち上がった。

「ま、まぁ。私が、ニケに行けと言ったんだがな……」

 引きつった苦笑いを浮かべながら、ミーチェは目を背けた。

「し、師匠……?」

 ニケは、ミーチェに手を向けると怒りに肩を震わせた。

「頑張った俺の努力は、なんだったんだぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 両手で拳を作ると、ニケは日が昇り始めた空へと叫ぶのだった。
 無事に、アンデットから村を守りきったニケ、ミーチェ、シロ、ガリィ、そして新しく契約したリーディア。ニケは、ガリィをネックレスに戻すと村へと歩き出した。
 その横をシロが尻尾を振りながら、ご機嫌に歩いていた。
 そんなニケの背中を見ながら、ミーチェは呟くのだ。

「ここ数日で、成長したな」
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界異話 天使降臨

yahimoti
ファンタジー
空から天使が降って来た。 落ちたんだよ。転生かと思ったらいきなりゲームの世界「ロストヒストリーワールド」の設定をもとにしたような剣と魔法の世界にね。 それも面白がってちょっとだけ設定してみたキャラメイクのせいで天使族って。こんなのどうすんの?なんの目的もなければ何をしていいかわからないまま、巻き込まれるままにストーリーは進んでいく。

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

処理中です...