夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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80話「昼下がりの目覚めと噂話と商人と」

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 昼過ぎ、ニケが目を覚ました。
 もふもふとした感触。
 純白の毛皮がニケの枕元に広がっている。

「ん……ん? シロ!?」

 突然の事に、ニケは飛び上がった。
 枕元のもふもふはシロの毛皮。
 呼び出してもないシロがここにいいるはずがない。
 だが、ニケの目の前にいるのはシロだった。
 
「な、なぁニケ。そいつ召喚獣だよな?」

「え? あぁ、カラス起きてたのか。こいつはシロ、俺の相棒さ」

「相棒?そのホワイトウルフがか?」

「そうそう。一番最初に契約したんだよ」

 ニケはそういうと、シロのお腹をさする。
 気持ちよさそうに寝るシロは、尻尾をぶんぶんと振り始める。それほどまでに嬉しいのか。
 敵ではないとわかると、カラスはベットに座り込んだ。
 そもそもなぜシロがいるのか。っとニケは思った。
 通常、召喚獣は主の呼びかけに応じて、召喚されるものだ。
 シロは呼び出してもないのに、ニケの枕元にいる。なにか原因があるはずだが、今のニケには理解するほど知識がなかった。
 ともあれ、久しぶりに見る相棒の顔。
 ニケは嬉しそうに撫でている。
 ガリィもあとで日の光に浴びさせてあげよう。ニケはそう考えていた。
 少ししてから、ハトとフクロウが目を覚ました。
 
「さてと、昼食でも食べにいくか」

「それはいいんだけど……このわんちゃんなに?」
 
 興味深そうに、ハトがシロの尻尾を触っていた。
 シロは不機嫌なのか、顔を上げて尻尾をみていた。
 すこししてニケに助けて欲しそうな目で訴えかけた。

「ハト、シロ尻尾触られるの嫌だって」

「あら、ごめんねシロちゃん」

 そう言って、ハトはシロの尻尾を触るのを辞めた。
 目を擦りながらフクロウが扉へと向かっていく。
 シロを撫でるニケに、カラスが行くぞっと一言残して出て行った。
 
「ねぇねぇ、シロちゃんってフェンリル?」

「お。よくわかったね!」

「だって、ホワイトウルフって目が黒いもん。でもシロちゃんは黄色でしょ?伝承で読んだことあるんだ」

 胸を張るハト。
 ニケは、ハトの話すシロの伝承を聞きながら部屋を出て行った。
 シロは雪山の神獣っということは、以前ミーチェから教授されている。
 伝承に記されている事はミーチェの言ったこととほぼ同じ内容。
 結局、ニケはシロの事を知ることができないでいる。
 外に出たカラスとフクロウ。
 行きかう商人達が、黒髪を見るや集まり始めた。

「いったいなんだ……?」

「王都で黒髪の少年を探している人がいてな、頼まれたんだ」

「頼まれた?」

「あぁ。黒髪を見つけたら伝言を伝えてくれって」

「その探してる人ってどんな人?」

 カラスが商人に絡まれているところに、ニケがやってきた。
 ニケは話の内容が気になったようだ。

「小柄で金髪の壌ちゃんだよ。付き添いにフードを被った女の子を連れてた」

「オラも話掛けられただ」

「俺もそうよ」

「もしかして、にいちゃんがそうなのか?」

「あぁ、その人は俺の師匠だ……」

 王都にミーチェ達は先に着きニケを探していたようだ。
 そのことにニケの気持ちが高ぶる。
 はやく王都に行かなきゃ。っと。

「師匠?それはどういった人なんだ?」

 考えているところに、カラスが会話に加わってきた。
 どうやらニケの師匠、っと言うことに興味を湧かせたようだ。
 
「んーたしか、『西の魔女』って言ってたよ」

「「「西の魔女ッ!?」」」

 その場に集まっていた商人達と、カラスが驚きながら顔を見合わせた。 
 やっぱりすごい人なのか師匠。っと、ニケは呑気に考えていた。
 商人達がざわめきはじめた。
 何の話をしているのだろうか。

「あのお方が弟子を……」

「だが男だぞ、魔法が使えるわけがない」

「王都に行く途中面白い話を聞いたぞ。黒髪の綴り手が現れたとか」

「黒髪の綴り手?」

「あぁ、現代魔法の一個手前。直筆詠唱による同時詠唱をこなすそうだ」

 その話に、商人以外の旅人達が混ざり始めた。
 場は騒がしくなっていく。
 落ち着くと同時に、一斉にニケに視線が集まった。
 無言の圧力。
 半信半疑の目。
 なかには好奇の目をする者までいる。
 ニケは袖をめくると右手で双線を引いて見せた。
 場は騒然とし、その手から引く線をただ呆然と眺めている。

「あ、あの話は本当だったんだ。君がユッケルの協会のやつらを倒して、コルックの防衛の際に助力したとは……」

「あはは、師匠達とたたかっただけだよ」

「それでも協会相手に立ち向かうのは勇気がいるだよ!」

 ニケの謙遜な態度に、周りが褒め始めた。
 一斉に話が広がる。
 話を聞いた者は近くにいた者に。そして村から村へと広がっていく。
 ひとりの商人が名乗りを上げた。

「わしは、ガメリ・レンディー! 少年、師匠に会いたいのだろう?」

「ガメリさん、それはどういうことだ?」

「いや、わしも西の魔女様に頼まれた身。できれば助力したいと思ってな」

 どうやらニケを馬車に乗せてくれるようだ。
 ガメリ・レンディー。
 彼の知名度は高い。
 なぜ高いのか。それは、彼の商人としての腕がいいのもある。
 だが、一番大きいのは、王都の商人ギルドのギルド長と言うことだ。
 王都に本拠地を構える商人ギルドは、人数、品数、どれをとっても帝国で敵う商人はいない。
 王都の商人ギルドに入れば稼げる。
 いつしか人々はそういい始め、商人ギルドは人数を増やしていった。

「これから王都に戻ろうと思っててな」

「それは、ニケを乗せていくっと言うことですか?」

「そうだ、西の魔女様の弟子と旅ができるなんて光栄だからな! がっははははは!」

「でもいいのか? ガメリさん。俺、黒髪だぜ?」

「そんなの関係ないさ。遠慮はするな、困ったときはお互い様。だろ?」

「ニケ、先に王都に向かうなら行って構わないよ?」

「カラス……そうだな。俺、先に行くよ。また王都で会おう、カラス、ハト、フクロウ」

 ニケは足元に来たシロを撫でながら、3人に手を振った。
 笑顔で振り返すハト。
 小さく微笑むフクロウ。
 またな。っとカラスが言った。

「ガメリさん、馬車に乗せてくれないか?」

「お安い御用さ! すぐに出るから先に乗っていてくれ、あの馬車だ」

 ミーチェと乗っていた馬車とはまた違う、大きな馬車だ。
 荷物を載せる事を考えて作られたのだろう。
 商人達が道を譲るなか、ニケは何度も振り向き手を振ったのだった……
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