夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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81話「馬車とギルド長の過去と星空と」

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 ニケが馬車に乗り込むと、ガメリが御者席へと座ってきた。
 
「そういえば名前を聞いてなかったな」

「俺はニケ・スワムポール。ニケって呼んでくれ」

「ふむ。では、ニケ。昼食は食べたのか?」

「あ、忘れてた」

 ニケは、王都に向かうことしか頭になく、空腹のことなんて忘れていた。
 それならっとガメリは布袋を渡した。
 受け取った布袋の中にはパンや干し肉が入っていた。
 
「食べるがいい」

「いいの?」

「腹が減っていたら、いざと言うときに動けないからな」

「旅は道連れって言うじゃん?」

「途中で死ぬのはご免だ。がっははははは」

 ニケはパン1つと、干し肉を2切れ食べることにした。
 まともに食事をしたのはいつだろうか。っと思いながら。
 馬車が動くと同時に、集まっていた人達は散らばっていった―――



 ―――遠く消えていく馬車。
 カラス達は見送りを終えると、昼食を買うために出店を回っていた。

「ニケちゃん行かせてよかったの?」

「まぁ俺達には任務があるからな。ニケを巻き込むわけにもいかないし」

「そうだけどさ。んーまた王都で会えるよね」

「会えるだろ」

「だね」

 傍でフクロウが頷いていた。
 カラスは、そうだなっと言うと出店に並ぶのだった―――



 ―――日が沈み始めた頃。
 ニケを乗せたガメリの馬車は、野営など構わずに走っていた。
 街道を行く商人と思える人達が、すれ違うときに手を上げたりしていた。
 どうやら挨拶をしているようだ。
 手を上げ返すガメリを横目に見ながら、ニケは横になった。
 シロを枕にし、ふと思い出す村の言葉。
 『伝言を伝えてくれ』その言葉が、頭をよぎったのだ。

「そういえばガメリさん、師匠の言ってた伝言って?」

「あぁ、そういえば言ってなかったな。
 西の魔女様が、王宮で待つっと伝えてくれと言っておった」

「王宮……」

「そう考え込む必要はないだろう。
 招かれているようなものだ、門番に言えば通してくれるだろう」

「そうだね。早く師匠に会いたいよ……」

「あと2日くらいで王都に着く。それまでの辛抱だ!」

 元気付けているのか、ガメリは拳を振り上げていた。
 ニケは、その様子を見ながら笑っていた。
 喋っていて飽きない会話。
 時々思い出すミーチェの事。
 アシュリーは元気だろうか。っとニケは考えていた。
 睡魔に身を預け、眠りへとおちていった。
 そんなニケの寝顔を見ながら、ガメリは呟いた。

「わしの息子が生きていたら同じ位の歳頃か……」

 ふとニケを見ていたガメリが、昔を思い出していた―――

 

 ―――ガメリには一人息子がいた。
 息子とは衝突してばっかりの毎日。
 あるとき、息子が冒険者になると言い出した。
 もちろんガメリは反対した。商人の息子なのになぜ商人にならないのかっと。
 若い冒険心を理解できないガメリには、息子の気持ちはわからなかった。
 息子が13歳になった時、冒険者ギルドに加入したと自慢げに話をしているのを見たガメリ。
 頭に血が上り、「出て行け」とまで言ってしまったのが、今では後悔してもしきれないのである。
 そして半年が過ぎた頃。
 息子はカッパーからブロンズに昇格した。
 友人達と3人のパーティーで活動していたのだが。
 ある日、討伐依頼で王都周辺の森に出かけたときだ。
 ウルフの群れに囲まれ、友人を庇ったという。

「助けようとしたんだ……だけどこれしか……取り返せなかった……」

 友人の一人が家の前にきて、涙を流しながらガメリにドックタグを渡してきた。
 息子の冒険者としての証である。
 その血塗られたドックタグは、今でもガメリの首元に掛けられている―――

 

 ―――無愛想な顔をしながら、星空を眺めているガメリ。
 星達はガメリの気持ちなど知らず、明るく振舞っていた。
 暗闇の中でも、月夜でわかる開けた場所。
 ガメリは馬車を停めると野営の支度を始めた―――



 ―――焚き火を熾し、ガメリは毛布を羽織っていた。
 ふと、馬車の中から物音がした。
 ニケが起きて馬車から降りてくる。

「起こしてくれれば焚き火とか手伝ったのに」

 眠い目を擦りながら、シロと一緒に焚き火へと近づいてくる。

「悪いと思ってな。それより若羊のスープ飲むか?」

「ちょうどお腹空いてたんだ! ありがとう!」

 皿に注がれたスープを受け取るニケ。
 美味しそうにスープを飲む姿を見ながら、ガメリは微笑んでいるのだった。
 焚き火の傍でシロが横になった。

「召喚術も使えるってのは聞いたことないな」

「ん? どういうこと?」

「魔法ってのは、どれかを習得しちまったら他の魔法は習得できないんだ」

「召喚術とか錬金術ってこと?」

「そうだ。なのにお前さんは魔法と召喚術を使っている。不思議だ」

「気がついたら使えてたんだ。最初師匠に適正がどうとかで調べてもらって――」

 ニケはミーチェと会った日の事。
 それからどうして王都を目指したのかを話した。
 少し考え込んだガメリ。

「そうか、協会が……」

「あぁ。それで師匠と王都を目指してたんだ」

「どうして西の魔女と呼ばれているか知っているのか?」

「いや、王からもらった肩書きとしか聞いてない」

「ふむ。では教えてやろう、なぜ西の魔女と呼ばれているのか――」

 ガメリから聞いた話だと、東西南北に分けて4人の魔女がいるという。
 魔女に選ばれるのは、協会狩りに貢献した力ある魔法使いだとか。
 そして魔女の役割は、地方の監視、協会への対処が主流らしい。
 魔女が王都に向かうときは、近辺の村が襲われた時、もしくは協会の出現が確認された場合。
 ミーチェが王都を目指したのは両方の理由からきていた。
 魔女は、王への報告を済ますと、今度は王都の防衛に入るそうだ。
 これは、協会が村を襲い続け王都に向かってきた場合への対処とされている。
 報告を受けた王は、各地の魔女を召集。
 そして協会のいる地方への軍隊の派遣。
 それでも王都へと来た場合は、東西南北の魔女による総力戦となる。

「師匠ってやっぱすごい人だったんだな……」

「協会狩りとして知らない者はいないだろう」

「なるほどなぁ。てことは王都に着いたら、しばらく王都で過ごすってことかな」

「そうなるだろうな」

「それはそれで楽しみかも」
 
 ニケはシロを枕にしながら星空を見上げた。
 満天の星達。
 時々吹き抜ける風に、木々が踊ってみせた。
 
「明日も早い。わしはそろそろ寝るとするかな」

「わかった。おやすみガメリさん」

「うむ。おやすみ」

 そういうと、ガメリは横になった。
 再び来る睡魔。
 ニケはそっと目を閉じるのだった……
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