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91話「修行の最終日と近接魔法戦闘と」
しおりを挟む鍛錬が始まって、既に6日が経った。
見ている者たちの興奮は最高潮に達し、日に日に足を運ぶ人数が増えていく。
そして、宵が深くなり日を跨ぐ。
最終日の7日目。
闘技場の観客席はかなりの人数で埋もれ、座れない者は通路に立っていた。
溢れ返る観客の中、ニケとミーチェが中央に姿を現す。
響き渡る歓声。
湧き上がる熱気。
呆れながら周りを見渡すミーチェ。
「よくもまぁ、こんなに集まったものだ」
「見てて楽しいのかな?」
「楽しいのだろう。私たちには関係ないことだがな」
そして見合う。
いつもならすぐにでも始まるのだが、今日はなかなか始まらずに互いに向かい合っている。
そして、見ている者たちは疑問に思いながらも期待の眼差しを向ける。
だが、始まらず。
暫くして、ニケが駆け出した。
ミーチェは瞬時に大鎌を呼び寄せた。
いつものことながらニケの駆ける足は速く、目で追える者は少ない。
気がつけばミーチェに肉薄し、華麗な回避劇を繰り返しながら興奮するたたかいを見せてくれる。
しかし、今日は違った。
「綴ろう!
″我、稲妻、雷と共にある者。
汝の力を我の物とし。
我を稲妻と化し、共に駆けよ″
ライトニングステップ!」
呪文に魔力が帯び、魔方陣が展開される。
その一瞬の詠唱に、見ている者たちから感嘆が溢れ始める。
「お、おい。あいつ魔法を使ってるぞ」
「あれじゃね? 今噂の黒髪の綴り手ってやつ」
「男で魔法が使えるのか、こりゃぁ楽しみだわ!」
それぞれが感嘆し、そして興味を示す。
「魔法だって成長したんだからなッ!」
ニケの掛け声と共に魔法が発動し、稲妻と化し会場を駆ける。
一筋の稲妻となったニケ。
刹那、肉薄したニケがミーチェの腹部目掛け拳を振り上げた。
ミーチェの身体が文字通りくの字に折れ曲がる。その光景を見るだけでも、ニケの振るう拳の威力が高いことは一目瞭然である。
反応の遅れたミーチェは、そのまま体勢を立て直そうとし、怒りに肩を震わせながらニケを睨みつけた。
だが、既にニケの姿はなく、気がつけば真後ろを取られ、繰り出された回し蹴りを背中に受ける。
「っぐ……ッ!」
「流石にやりすぎ……?」
前のめりに地を舐めるミーチェ。
唖然としながらも、ニケはすぐさま詠唱を始めた。
「綴ろう!
″我、稲妻を司る物。
撃ち抜け、汝が誇る稲妻で!″」
文字に魔力が帯び始める頃、ミーチェは体勢を整え、ニケ目掛けて大鎌を振るい始めた。
ニケは驚きながらも、流し、跳び、距離を置く。
「ライトニング!」
その言葉に、魔方陣が背後に展開される。
展開される魔法陣を睨みながら、ミーチェは駆け出す。
振り下ろされる大鎌。
それらを流し、放たれる稲妻で牽制するニケ。
魔法を組み込んだ近接戦。見ている者たちは唖然とし、ただ眺めていることしかできなかった。
本来の魔法使いのたたかいかたとは、180度違う戦闘が目の前で起きているからである。
繰り出される稲妻。
払われる大鎌。
弾かれた稲妻が、壁に当たり大きな音を立てて消失する。
同時に、刃を押さえ込んだニケが、力任せにミーチェを投げる。
「魔法があるだけでこれほどまでに……」
「ニケさんのたたかい方は、もともと魔法があってこそですからね」
下で繰り広げられている戦闘を、アシュリーと王は椅子に座りながら眺めていた。
王は興味津々の様子で、時々席を立ち上がりながら感嘆してすらいた。
「そういえばお主。ニケと共に旅をしてきたのであろう?
あやつが魔物とたたかうと、どんな感じなのだ?」
「そうですね……ひとり先に突っ込んでたたかってる感じですね」
アシュリーは少し笑いながら話していた。
それを見るや、王は満足した様子で席に座る。
「そうかそうか。いつもあんな感じであったのか」
「はい」
「ん? 決着がついたようじゃな」
王が見る先に、腕を押さえながら大鎌で身体を支えるミーチェの姿があった。
どうやらニケが魔法を使えば、魔法を使わないミーチェに勝てるようだ。
「はぁ……はぁ、魔法があると桁違いだなお主は」
「へへ、俺だってやるときはやる男なのさ!」
「私が魔法を使ってないからだろう?」
「うっ……それは否定しない」
「今日はこれくらいにするか、私はもう身体中痛い……」
ミーチェが終わると言うと、会場から歓声と拍手の嵐が降り注ぐのだった。
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