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後悔Side大貴
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1年前、無理やりにでも彼女を抱いていていたら、何か変わっていただろうか。
あの日から、何度も自分に問いかけ続けてきた。
今、胸の中にいる天音さんの甘い香りに、体が熱くなる。この、柔らかな天音さんの体の温度を思い出す度、恋しくて、切なくて、発狂しそうになった。
彼女が挑発してくるたび、滅茶苦茶に犯してしまいたい欲望を押さえつけてきた。けれど、今思う。それを押さえつける必要なんてあったのだろうか、と。
嫌われたくなかった。他の男のことを思っていても、僕の傍にいて欲しかった。
もし、僕のこの中途半端な臆病が、彼女を逃がしたのだとしたら。僕は。
「ぁ…っ……」
口づけの合間に息を継ぐ声が扇情的で、もうどうしようもないほど愛おしい。苦しげに、もうやめて、と震える彼女の唇をかまわず僕は侵食する。嫌がる彼女を組み敷く、その嗜虐的な味は僕を夢中にさせた。
あの頃は得られなかった悦び。体のしんが熱を持ち始める。
「っ……ん…ぁ……」
「可愛い…ですよ…」
体を支えられなくなって、くたりと膝から崩れ落ちそうになる彼女の腰を支える。
「―――じゃあ、行きましょうか。」
「どこに…」
力なく、僕の腕にすがりながら、彼女が問うた。
「1年前の続きができるところ、かな。」
「待って……」
傷ついたように、眉を寄せる彼女に、また胸が痛んだ。
あの時、僕は彼女に逃げ道を作ってあげた。でも、今の僕にそんな余裕なんてない。だって、今君を逃がしてあげたら、僕には二度とチャンスはこない。そう思うのに、本当、ずるいよ、天音さん。
「…………そんな顔、されたら。僕は、どうしたらいい?」
「大貴、くん……」
懐かしい呼び名に、息が詰まる。
未練を断ち切るように僕は彼女の体を離した。
「―――僕の部屋に、来て。場所、変わってないから。いつでもいい。」
彼女が力なくうなだれた。
「1年前のこと、聞きたいんだ。もし、少しでも罪悪感があるなら、だけど。」
ずるい言い方。我ながらそう思う。
天音さんの息が落ち着くのを待つ。
「とりあえず、駅まで送るよ。」
涙目になる彼女に荷物を返し、僕はその手を引いた。
***
―――やってしまった…。
僕は頭を抱えた。何故、あんな風に短慮に彼女を責めることしかできなかったのだろう。
1年も前のことだ、と自分で言っておきながら、実際はどこまでも僕は執念深いやつらしい。彼女が携帯を気にする仕草、どこか「彼」を思わせる言葉に、過去を刺激されて、どうしようもなくなった。
あの頃は耐えられたそれが、1年彼女と離れた期間が空いたことで歯止めがきかなくなったのだろう。もう、彼氏でもなんでもないくせに。
どうしようもない自己嫌悪で胸がいっぱいになる。
彼女を大切に想っていた。
遠慮がちな優しさが愛おしくて。努力家で、だけど、そんな姿を見せたがらない、いつも張り詰めた顔をしている彼女を、笑わせたいって。
だから、1年前、彼女の気持ちが向くまで辛抱強く待った。
だけど。
そんなの、大嘘だ。
本音はもっと汚くてドロドロしてる。あの瞬間、僕の心の中にあったのは、彼女を無理やりにでも自分の方を向かせたいという欲望だった。最低だ。
あれから、彼女からまだ連絡は来ていなかった。当然だ。もう、恐らくこのままこないのではないか、という諦めさえある。
音を立てて携帯が振動した。
期待せずにちらりと横目で、携帯に目を移すと、望んでいた文字が並んでいて、僕は慌てて携帯を開いた。
『今週末、そちらへ伺いたいと思います。ご都合いかがでしょうか。』
あの日から、何度も自分に問いかけ続けてきた。
今、胸の中にいる天音さんの甘い香りに、体が熱くなる。この、柔らかな天音さんの体の温度を思い出す度、恋しくて、切なくて、発狂しそうになった。
彼女が挑発してくるたび、滅茶苦茶に犯してしまいたい欲望を押さえつけてきた。けれど、今思う。それを押さえつける必要なんてあったのだろうか、と。
嫌われたくなかった。他の男のことを思っていても、僕の傍にいて欲しかった。
もし、僕のこの中途半端な臆病が、彼女を逃がしたのだとしたら。僕は。
「ぁ…っ……」
口づけの合間に息を継ぐ声が扇情的で、もうどうしようもないほど愛おしい。苦しげに、もうやめて、と震える彼女の唇をかまわず僕は侵食する。嫌がる彼女を組み敷く、その嗜虐的な味は僕を夢中にさせた。
あの頃は得られなかった悦び。体のしんが熱を持ち始める。
「っ……ん…ぁ……」
「可愛い…ですよ…」
体を支えられなくなって、くたりと膝から崩れ落ちそうになる彼女の腰を支える。
「―――じゃあ、行きましょうか。」
「どこに…」
力なく、僕の腕にすがりながら、彼女が問うた。
「1年前の続きができるところ、かな。」
「待って……」
傷ついたように、眉を寄せる彼女に、また胸が痛んだ。
あの時、僕は彼女に逃げ道を作ってあげた。でも、今の僕にそんな余裕なんてない。だって、今君を逃がしてあげたら、僕には二度とチャンスはこない。そう思うのに、本当、ずるいよ、天音さん。
「…………そんな顔、されたら。僕は、どうしたらいい?」
「大貴、くん……」
懐かしい呼び名に、息が詰まる。
未練を断ち切るように僕は彼女の体を離した。
「―――僕の部屋に、来て。場所、変わってないから。いつでもいい。」
彼女が力なくうなだれた。
「1年前のこと、聞きたいんだ。もし、少しでも罪悪感があるなら、だけど。」
ずるい言い方。我ながらそう思う。
天音さんの息が落ち着くのを待つ。
「とりあえず、駅まで送るよ。」
涙目になる彼女に荷物を返し、僕はその手を引いた。
***
―――やってしまった…。
僕は頭を抱えた。何故、あんな風に短慮に彼女を責めることしかできなかったのだろう。
1年も前のことだ、と自分で言っておきながら、実際はどこまでも僕は執念深いやつらしい。彼女が携帯を気にする仕草、どこか「彼」を思わせる言葉に、過去を刺激されて、どうしようもなくなった。
あの頃は耐えられたそれが、1年彼女と離れた期間が空いたことで歯止めがきかなくなったのだろう。もう、彼氏でもなんでもないくせに。
どうしようもない自己嫌悪で胸がいっぱいになる。
彼女を大切に想っていた。
遠慮がちな優しさが愛おしくて。努力家で、だけど、そんな姿を見せたがらない、いつも張り詰めた顔をしている彼女を、笑わせたいって。
だから、1年前、彼女の気持ちが向くまで辛抱強く待った。
だけど。
そんなの、大嘘だ。
本音はもっと汚くてドロドロしてる。あの瞬間、僕の心の中にあったのは、彼女を無理やりにでも自分の方を向かせたいという欲望だった。最低だ。
あれから、彼女からまだ連絡は来ていなかった。当然だ。もう、恐らくこのままこないのではないか、という諦めさえある。
音を立てて携帯が振動した。
期待せずにちらりと横目で、携帯に目を移すと、望んでいた文字が並んでいて、僕は慌てて携帯を開いた。
『今週末、そちらへ伺いたいと思います。ご都合いかがでしょうか。』
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