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21 カルノライザーvsブラッド
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アドルフは傷口を抑えながらその場に崩れ落ちる。
そんな彼の姿をブラッドはとても楽しそうに眺めていた。
「ははっ、まさか僕と対等に戦えているとでも思っていたのかい? 手加減していたに決まっているじゃないかぁ!」
「どうしてそんなことを……!」
「どうして……だって? そんなの決まっているだろう。勝てるかもしれないと思わせてから蹂躙した方が、良い顔を見せてくれるし良い声で鳴いてくれるだろう?」
「……クソッ、正気じゃねえ」
「いいね、そう言う顔を待っていた」
ブラッドはアドルフの苦痛にゆがむ表情を見て不快な笑みを浮かべた。
「二人共、さっさと逃げろ! 何が何でも俺がコイツを食い止めておいてやる……!」
「でもそれじゃあアドルフさんが!」
「俺の事は気にするな……どちらにしろ、この傷じゃもう助からん」
アドルフは霞む目で桜を見ながらそう言った。
彼の負った傷は深く、出血量も尋常じゃないものだった。
恐らく今から回復のポーションなどを使った所でもう間に合わないだろう。
「ふむ、今ここで君を殺してしまってもいいが……もう死にかけだしなぁ。どうせなら若い少女が斬り刻まれている所を見てもらいたいし、先に彼女たちの方を殺しちゃおっかなぁ」
「なっ!? 待て……彼女らには手を出すな!」
「君、初対面なんでしょ? そこまでして彼女たちを守る必要も無いだろうに」
「例え初対面だろうが、女子供を守るってのが男の役目なんだぜ……!!」
そう言うとアドルフは出血多量によって震える足を抑え、無理やりにでも立ち上がったのだった。
「あーはいはい。そういうカッコいいの嫌いなんだよね僕。はぁ、気が変わったよ……先に君を殺すことにする」
「くっ……!」
歪む視界で何とかブラッドを追おうとするアドルフ。
しかしそんな状態でブラッドの素早い動きに対応できるはずもなく、とどめの一撃を許してしまう。
「もらった……!! ……ぁ?」
そこで確かにブラッドはアドルフを屠るための一撃を放った。
だがそれは空を斬ることになる。
「大丈夫?」
「じょ、嬢ちゃん……?」
アドルフは何が起こったのか理解できずにいた。
ブラッドがとどめの一撃を入れるよりも前に咲に抱え上げられていたのだ。
「私たちのために戦ってくれてありがとうございますアドルフさん。……なんとなくでヒーローしてた私と違って、貴方は正真正銘のヒーローでした。おかげでアイツの手の内もだいたいわかったし、これで桜のことも心配せずに戦える……なので、ここからは私に任せてください」
アドルフをそっと下ろすと、咲はベルトを呼びだしながらブラッドに向かって歩いていった。
「へー……君、やっぱりただの外れ勇者じゃないでしょ。僕に匹敵するその速さ……恐らく上級敏捷の持ち主だね? ま、どうしてそれを偽っているのかはわからないけどさ」
「残念だけど違う……私の持つ能力は変身。敏捷スキルは持っていない」
「変身……? じゃあ門番の言っていた通りだっていうのか? いや、そんなはずないでしょ。だってあの速さをスキルも無しに出せるなんてありえないんだからさぁ」
ブラッドは咲が見え透いたハッタリを言っていると思っていた。
そうでも無ければ辻褄が合わないのだ。
だが何を言っても一切表情を崩さない咲を見て、ブラッドは徐々に追い込まれるのだった。
「あ、ありえない……変身なんてのはそこらのスライムだとかに姿を変えられるだけの最弱スキルのはずなんだ……!」
「そうらしいね。でも、私は違う」
そう言うと咲はベルトのボタンを押す。
するといつも通りの掛け声と共に青白い粒子が舞い、恐竜を模したアーマーが彼女の体を包んだ。
「な、なんなんだよその姿は……!」
「カルノライザー……って言っても、この世界では通じないか」
「カルノライザー? は、ははっ……そんなのただ姿を変えただけじゃないか! 結局最弱スキルであることに変わりは無いんだよ!!」
ブラッドは変身を終え、カルノライザーの姿になった咲に向かって飛び掛かる。
「よっと」
それを咲は最小限の動きで容易く避けた。
「ば、馬鹿な……僕の動きを見切っている……? いや、そんなはずは無い。きっと偶然に決まっている!」
もう一度攻撃を行うブラッドだったが、何度やっても結果は同じだった。
この世界においては相当速いその攻撃も、咲にとっては果てしなく遅く感じるものだったのだ。
どれだけ攻撃をしても咲には決して届かない。そのレベルで二人には絶対的な差があった。
「何故だ、どうして当たらない……! クソッ当たりさえすればこんな奴……!」
「当ててみれば?」
「……なんだと?」
咲はブラッドに向かって煽るようにそう言った後、両手を広げて無防備な姿を晒した。
「ば、馬鹿にしやがって……後悔するぞ!!」
そんな無防備に立ち尽くす咲に向かってブラッドは全力でナイフを振り下ろした。
しかし……。
ガキィンッ……!!
「……は?」
彼の振り下ろした真紅のナイフは咲のアーマーに当たるやいなや奇麗に折れてしまったのだった。
「嘘だ……ありえない……。だってこれは、スカーレットタートルの甲羅で作られているんだぞ……!!」
彼の言うスカーレットタートルとは真紅の甲羅に身を包む亀のような姿をした魔物である。
上位冒険者が複数人揃ってようやく討伐出来るくらいのその魔物からは凄まじい強度を持つ甲羅が手に入り、それを加工して作られたのが彼の持つ真紅のナイフだった。
その凄まじい強度を誇るナイフが、たった今ぽっきりと折れてしまったのだ。
……彼の心と共に。
「ありえない、ありえないありえないありえないぃぃぃッ!!」
目の前の状況が読み込めないブラッドはただただ叫び続ける。
自分はいつだって勝利する側であり、敗北はあり得ない。そうやって今まで生きてきた彼にとって、どう足掻いても勝てないだろう存在と言うのはとてつもないストレスとなっていたのだ。
「うあぁ゛ぁ゛ぁっ、ぁ゛ぁ゛ぁ!!」
そしていつしかブラッドは自暴自棄になり、咲に向かって無我夢中で走り始めていた。
「……カルノキック」
「ぐぁっ」
しかしそんな無茶苦茶な攻撃が咲に通るはずもなく、腹に強烈な一発をもらったブラッドは気絶してしまうのだった。
「はぁ、これで終わりね」
「なあ……二人は一体何者なんだ……?」
変身を解除した咲の元にアドルフが歩いてくる。
ブラッドに付けられた傷は完全に回復しており、すっかり戦う前の状態へと戻っていた。
桜が回復魔法で治したのだ。彼女の持つ超級治癒はアドルフのような瀕死の怪我すらも瞬時に治してしまう程のものだった。
「嬢ちゃんのとんでもない戦闘力もそうだが、こっちの嬢ちゃんもあんな傷を奇麗に治しちまった」
「えっと、それは……」
咲は言葉に詰まる。
桜の治癒能力に関してならともかく、自身の変身については理解してもらえないと思っていた。
「ああ、そうか。ま、言いたくねえってんなら無理して言わなくてもいいさ」
「え……?」
そんな中、思ってもいなかったアドルフのその言葉に咲は驚いた。
「きっと何か訳ありなんだろ? なら無理やり聞くのも野暮ってもんだぜ」
「……ありがとうございます!」
結局アドルフはそれ以上は二人の能力についての質問をすることは無く、二人を宿屋へと案内した後、気絶しているブラッドを兵士へと引き渡したのだった。
そんな彼の姿をブラッドはとても楽しそうに眺めていた。
「ははっ、まさか僕と対等に戦えているとでも思っていたのかい? 手加減していたに決まっているじゃないかぁ!」
「どうしてそんなことを……!」
「どうして……だって? そんなの決まっているだろう。勝てるかもしれないと思わせてから蹂躙した方が、良い顔を見せてくれるし良い声で鳴いてくれるだろう?」
「……クソッ、正気じゃねえ」
「いいね、そう言う顔を待っていた」
ブラッドはアドルフの苦痛にゆがむ表情を見て不快な笑みを浮かべた。
「二人共、さっさと逃げろ! 何が何でも俺がコイツを食い止めておいてやる……!」
「でもそれじゃあアドルフさんが!」
「俺の事は気にするな……どちらにしろ、この傷じゃもう助からん」
アドルフは霞む目で桜を見ながらそう言った。
彼の負った傷は深く、出血量も尋常じゃないものだった。
恐らく今から回復のポーションなどを使った所でもう間に合わないだろう。
「ふむ、今ここで君を殺してしまってもいいが……もう死にかけだしなぁ。どうせなら若い少女が斬り刻まれている所を見てもらいたいし、先に彼女たちの方を殺しちゃおっかなぁ」
「なっ!? 待て……彼女らには手を出すな!」
「君、初対面なんでしょ? そこまでして彼女たちを守る必要も無いだろうに」
「例え初対面だろうが、女子供を守るってのが男の役目なんだぜ……!!」
そう言うとアドルフは出血多量によって震える足を抑え、無理やりにでも立ち上がったのだった。
「あーはいはい。そういうカッコいいの嫌いなんだよね僕。はぁ、気が変わったよ……先に君を殺すことにする」
「くっ……!」
歪む視界で何とかブラッドを追おうとするアドルフ。
しかしそんな状態でブラッドの素早い動きに対応できるはずもなく、とどめの一撃を許してしまう。
「もらった……!! ……ぁ?」
そこで確かにブラッドはアドルフを屠るための一撃を放った。
だがそれは空を斬ることになる。
「大丈夫?」
「じょ、嬢ちゃん……?」
アドルフは何が起こったのか理解できずにいた。
ブラッドがとどめの一撃を入れるよりも前に咲に抱え上げられていたのだ。
「私たちのために戦ってくれてありがとうございますアドルフさん。……なんとなくでヒーローしてた私と違って、貴方は正真正銘のヒーローでした。おかげでアイツの手の内もだいたいわかったし、これで桜のことも心配せずに戦える……なので、ここからは私に任せてください」
アドルフをそっと下ろすと、咲はベルトを呼びだしながらブラッドに向かって歩いていった。
「へー……君、やっぱりただの外れ勇者じゃないでしょ。僕に匹敵するその速さ……恐らく上級敏捷の持ち主だね? ま、どうしてそれを偽っているのかはわからないけどさ」
「残念だけど違う……私の持つ能力は変身。敏捷スキルは持っていない」
「変身……? じゃあ門番の言っていた通りだっていうのか? いや、そんなはずないでしょ。だってあの速さをスキルも無しに出せるなんてありえないんだからさぁ」
ブラッドは咲が見え透いたハッタリを言っていると思っていた。
そうでも無ければ辻褄が合わないのだ。
だが何を言っても一切表情を崩さない咲を見て、ブラッドは徐々に追い込まれるのだった。
「あ、ありえない……変身なんてのはそこらのスライムだとかに姿を変えられるだけの最弱スキルのはずなんだ……!」
「そうらしいね。でも、私は違う」
そう言うと咲はベルトのボタンを押す。
するといつも通りの掛け声と共に青白い粒子が舞い、恐竜を模したアーマーが彼女の体を包んだ。
「な、なんなんだよその姿は……!」
「カルノライザー……って言っても、この世界では通じないか」
「カルノライザー? は、ははっ……そんなのただ姿を変えただけじゃないか! 結局最弱スキルであることに変わりは無いんだよ!!」
ブラッドは変身を終え、カルノライザーの姿になった咲に向かって飛び掛かる。
「よっと」
それを咲は最小限の動きで容易く避けた。
「ば、馬鹿な……僕の動きを見切っている……? いや、そんなはずは無い。きっと偶然に決まっている!」
もう一度攻撃を行うブラッドだったが、何度やっても結果は同じだった。
この世界においては相当速いその攻撃も、咲にとっては果てしなく遅く感じるものだったのだ。
どれだけ攻撃をしても咲には決して届かない。そのレベルで二人には絶対的な差があった。
「何故だ、どうして当たらない……! クソッ当たりさえすればこんな奴……!」
「当ててみれば?」
「……なんだと?」
咲はブラッドに向かって煽るようにそう言った後、両手を広げて無防備な姿を晒した。
「ば、馬鹿にしやがって……後悔するぞ!!」
そんな無防備に立ち尽くす咲に向かってブラッドは全力でナイフを振り下ろした。
しかし……。
ガキィンッ……!!
「……は?」
彼の振り下ろした真紅のナイフは咲のアーマーに当たるやいなや奇麗に折れてしまったのだった。
「嘘だ……ありえない……。だってこれは、スカーレットタートルの甲羅で作られているんだぞ……!!」
彼の言うスカーレットタートルとは真紅の甲羅に身を包む亀のような姿をした魔物である。
上位冒険者が複数人揃ってようやく討伐出来るくらいのその魔物からは凄まじい強度を持つ甲羅が手に入り、それを加工して作られたのが彼の持つ真紅のナイフだった。
その凄まじい強度を誇るナイフが、たった今ぽっきりと折れてしまったのだ。
……彼の心と共に。
「ありえない、ありえないありえないありえないぃぃぃッ!!」
目の前の状況が読み込めないブラッドはただただ叫び続ける。
自分はいつだって勝利する側であり、敗北はあり得ない。そうやって今まで生きてきた彼にとって、どう足掻いても勝てないだろう存在と言うのはとてつもないストレスとなっていたのだ。
「うあぁ゛ぁ゛ぁっ、ぁ゛ぁ゛ぁ!!」
そしていつしかブラッドは自暴自棄になり、咲に向かって無我夢中で走り始めていた。
「……カルノキック」
「ぐぁっ」
しかしそんな無茶苦茶な攻撃が咲に通るはずもなく、腹に強烈な一発をもらったブラッドは気絶してしまうのだった。
「はぁ、これで終わりね」
「なあ……二人は一体何者なんだ……?」
変身を解除した咲の元にアドルフが歩いてくる。
ブラッドに付けられた傷は完全に回復しており、すっかり戦う前の状態へと戻っていた。
桜が回復魔法で治したのだ。彼女の持つ超級治癒はアドルフのような瀕死の怪我すらも瞬時に治してしまう程のものだった。
「嬢ちゃんのとんでもない戦闘力もそうだが、こっちの嬢ちゃんもあんな傷を奇麗に治しちまった」
「えっと、それは……」
咲は言葉に詰まる。
桜の治癒能力に関してならともかく、自身の変身については理解してもらえないと思っていた。
「ああ、そうか。ま、言いたくねえってんなら無理して言わなくてもいいさ」
「え……?」
そんな中、思ってもいなかったアドルフのその言葉に咲は驚いた。
「きっと何か訳ありなんだろ? なら無理やり聞くのも野暮ってもんだぜ」
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