固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです

遠野紫

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23 冒険者ギルド

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 朝食を終えた二人は部屋に戻ると今後の事を話し合うのだった。

「さて、これからどうしようか。お金もあまり無いから、じきに宿屋にもいられなくなるし……」

 訓練中に入手した魔石はそれぞれ個々人の物として扱われていたため、それを換金しておいた二人はまだいくらかの所持金を持っていた。
 しかしそれが無くなるのも時間の問題であり、数日もすれば二人は一文無しになってしまうだろう。

 ここフェーレニアからアルタリアまでどれだけあるかわからない以上、とにもかくにも生活や移動用のお金を稼ぐことは二人にとって急務だった。
 
「私たちができることと言えば……」

 咲の脳裏に思い浮かぶのは街を歩く冒険者だった。
 外れ勇者としていつ王城を追放されるかもわからなかった咲は、そうなった場合どうやって生きて行くかを考えてはいたのだ。
 その中で出会ったのが冒険者であり、自分ならそれでなんとかなるとも思っていた。

「私の力なら……多分、冒険者になるのが手っ取り早いかな」

「でもそれって危険なんじゃ」

「勇者として召喚された時点で危険も何もないし」

「……それもそうだね」

 冒険者になると言った咲を止めようとした桜だったが、結局咲に丸め込まれてしまう。

「それじゃ早速行って来る」

「えっ、どこに?」

「冒険者ギルド。確かそこに行けば冒険者として登録できるはず」

「……待って」

 部屋を出ようとした咲を桜が止めた。

「でもどちらにしろお金は稼がないと……」

「ううん、違うの。……私も冒険者になる」

「桜を危険には晒したくないしそれは……」

 桜を冒険者にはさせたくない。そう言おうとした咲の口を桜は手でふさいだ。

「危険なのは咲ちゃんも同じでしょ? 私は、咲ちゃんだけが危険な目にあうのを……許せない。だから一緒に冒険者になるし、何かあったら私の力で何としてでも咲ちゃんを助ける」

「桜……」

 桜の目は覚悟を持った人間のそれであり、咲がどう言ってもその意思を曲げることは無いだろう。
 それを理解した咲はそれ以上は何も言わず、共に冒険者ギルドへ行くことにしたのだった。



 冒険者ギルドへとたどり着いた二人は一度深呼吸をして心の準備をしてから中へと入った。
 
「これが冒険者ギルド……!」

 そこは大量の冒険者で溢れており、これでもかと言う程に活気づいていた。
 剣を担いだ者もいれば弓を担いだ者もいる。中には高級そうなフルプレートで身を固めた者やこれまた高そうなローブと杖を装備した者もいた。
 多種多様な装備を纏う冒険者が織りなす光景を見た二人は、改めてここは異世界なんだと実感するのだった。

「とりあえず登録はあそこに行けばできるのかな?」

 咲と桜はギルドの奥にある受付らしき場所へと向かう。

「すみません、新規で登録をしたいんですけど……」

「ちょっと! 私が見習いランクってどういうことよ!」

 受付嬢に登録の事を聞こうとした咲の声は、突然叫んだ一人の少女によって奇麗にかき消されてしまった。

「私はこれでもゴブリンを一人で討伐したことがあるのよ! 見習いなんてとっくに過ぎてるわよ!」

「で、ですが登録したばかりは見習いランクから始めるのが規則ですので……」

 どうやらその少女は自身の冒険者ランクが見習いから始まることに不満を持っているようだった。
 事実、彼女の纏う装備は下位冒険者の中でも中の下と言ったレベルのものであり、その立ち振る舞いからもとっくに何度も魔物の討伐を行っているのだろうこともうかがえた。

 しかしそんな彼女であっても、冒険者としての規則で登録後は見習いから始めなければいけない。例外を作ってしまえばそこからずるずると規則が乱れて行くものである。

「わかったわよ。それじゃあ結果を出せばいいのね!」

 少女はそう言うと依頼書が張り出されている掲示板へと向かう。
 そしてそこから一枚の依頼書を取り外すとそれを受付嬢へと見せた。

「ホブゴブリンの討伐……ですか? 申し訳ありませんが、この依頼は下位冒険者以上でなければ受けられないのです」

「実力は足りているから大丈夫よ」

「そうは言いましても……あぁ、待ってください!」

 受付嬢の制止を無視して少女はギルドから飛び出していく。

「はぁ……またマスターに怒られちゃいますぅ……」

「あの、なんだか大変そうですね?」

「えっ、あ、すみません何のご用件でしょうか!?」

 受付嬢は咲の事が見えていなかったのか独り言をつぶやいていた。
 そんな時にいきなり声をかけられてしまったものだからさぞ驚いたことだろう。
 その証拠にその声と表情からはハチャメチャに動揺していることが見て取れる。

「冒険者登録を行いたいんですけど」

「新規のご登録ですね。少々お待ちください」

 そう言うと受付嬢は奥の部屋へ行き、少ししてから石板を持ってきたのだった。
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