固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです

遠野紫

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46 グレートカルノライザー、再び異世界に爆誕!

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「カルノン……?」

 咲は闘技場上空をふよふよと浮遊しているカルノンを見ながらそう呟く。
 だがそんなはずは無いのだ。
 カルノンはアルタリア王国に置いてきてしまった訳であり、今ここにいるはずが無いのだ。

「もしかして偽物……それか幻覚?」

 新手による脅威、もしくは窮地に陥った自身の脳が見せる幻覚なのでは無いかと咲は思っていた。

「なんだ、あれは……」

 一方で魔獣王もカルノンの事など全く知らないと言った様子で上空を見ていた。

「あの反応……少なくともアイツの仲間による偽物とかではない……か」

 その様子を見た咲はあのカルノンが魔獣王側の作戦による何かなのでは無いかという可能性を脳内から消すのだった。

「私だけに見えている幻覚って訳でも無いし、それなら……ねえカルノンこっち来て!」

「おっ? なんだなんだおいらの出番か!?」

 咲はカルノンを呼ぶ。
 するとカルノンもそんな咲の元へと下りて行くのだった。

「詳しい話は後でするから、今はアレよろしくね!」

「よくわからないけど任されたぞ!」

『カルノセイバー!!』

 カルノンは咲のその一言から瞬時に目的を読み取り、その姿をカルノセイバーへと変えた。
 なんだかんだそれなりの時間を共に過ごし、共にドラゴラゴンと戦って来たのだ。彼女とカルノンの関係はそれこそ以心伝心と言ってもいいようなものであった。

「むっ? 今度は剣になっただと?」

 そんなカルノンを見て魔獣王は再び驚きの表情を浮かべる。
 これまで感情を表に出さなかった彼がその表情を大きく変えてしまう程に、カルノンが剣へと姿を変えたのは異質なことであったのだ。

「行くよ、カルノン」

 咲はカルノセイバーをベルトに装着し、ボタンを押した。
 その瞬間彼女の周りに青白い粒子が舞い始め、それらは瞬く間に恐竜を模したアーマーとなり彼女を包み込むのだった。

『古代の力! 偉大な力! グレートカルノライザー!』

 今、この瞬間、再び異世界にグレートカルノライザーが爆誕したのである。

「大きく姿を変える鎧の戦士……もしやお前は『変身』スキルの保持者なのか?」

 魔獣王はグレートカルノライザーへと変身した咲を見るやいなやそう尋ねた。
 しかしその様子はどこか不自然であった。外れスキルである変身を妙に恐れているように見えるのだ。

「それがどうかした? 外れスキルなんて、あなたにはどうでも良いことでしょう?」

「ああ、確かにお前の言う通り変身スキルというのは紛れもなく外れスキルと言っていい物だ。……だがそれは、かつて初代魔龍神王様を討ち取ったとされる英雄の持っていたものを模倣して生まれた『変身(偽)』の話」

「変身(偽)……?」

 魔獣王の口から出てきたそのスキル名を咲は呟いていた。
 なにしろ彼女が自身に鑑定を行った時には変身スキルに(偽)などと言う物は付いていなかったのだ。
 彼の言葉に疑問を抱くのも当然であった。

「模倣に失敗した贋作ごときではスライムやそこらの低級の魔物に姿を変えることしかできん。だが、変身は……あの忌々しくも最強と言わざるを得ない伝説の英雄が所持していたとされるスキル……! それが、『変身』なのだ……!」

 魔獣王は徐々にその表情を怒りで染め上げ、同時にその声も彼が憤っていることがわかるものになっていった。
 それはまるで実際にその伝説の英雄とやらを見たことがあるかのようである。

 ……否、「見たことがあるかのよう」ではない。実際に彼はその戦いを見ていたのだ。
 彼は魔獣王。最強の獣にして全ての獣の王である。
 ゆえに、ありとあらゆる獣としての特性を持つ彼の寿命は、それ相応に凄まじく長いものとなっていた。

 対して、伝説として語られる初代魔龍神王と英雄の戦いはたかだが数百年程前に起こったものである。
 そのため当時も彼は魔将として魔龍神王に仕えていたのだった。
 
 そう言う事もあり、彼は伝説の当事者なのである。

「忘れもしない。あの英雄の圧倒的な力を……魔龍神王様がなすすべなく討ち取られるあの悪夢のような光景を……! もし、お前があの憎き英雄と同じ力を持っているのだとすれば、我はここで刺し違えてでも絶対にお前を葬らなければならん。もう二度と仕えるべき魔龍神王様を失わないために……!!」

 そう言うと魔獣王は拘束していたレイナを解放し、全身に力を込め始めた。
 するとただでさえ筋骨隆々と言った彼の肉体がさらにそのサイズを大きく、強化させていく。

「グゥッッ……オォォォッッ!!」

 唸り声と共に彼の下半身からは蛇の尻尾に加えてサソリの尻尾と蛸の触手が生え、背中には猛禽類のような勇ましい羽が生えていた。
 さらには上半身に追加で二対の腕が生え、太く強靭な腕が六本となるのだった。
 そして最後に頭部に一際巨大なサイの角を生やし、彼は戦闘態勢に入った。

「はぁ……はぁ……。我の本気を……見せてやろう」

 魔獣王はそう言った瞬間、強く地面を蹴って咲へと肉薄した。
 だがその攻撃は彼女には当たらない。

「まぐれで避けたようだが、次はそうはいかない」

 再び魔獣王は咲に向かって飛び掛かる。
 しかし二度目のその攻撃もまた、彼女には一切掠りもしないのだった。

「何故だ……何故だ何故だ何故だァァ!! 我の戦闘能力は五大魔将の中でも魔龍王の次に高い! そして我も魔龍王もあの頃に比べ遥かに強くなっているのだ! いくら変身スキルの持ち主と言えど、一切攻撃が届かないなどあるはずがない……!!」

「悪いけど、私はその魔龍王を一撃で倒してるの」

「……なんだと?」

 魔龍王は咲のその言葉を聞き、一瞬思考を停止させた。
 そうもなるだろう。なにしろ純粋なスペックでは五大魔将最強とされる魔龍王が、たったの一撃で葬られたと言うのだ。

「そうか……魔龍王を討ち取ったと言う戦士はお前だったのか。ならば、我の読みは間違っていなかったと言う訳だな。やはりここでお前を討たねばならん」

 魔獣王は冷静さを取り戻したと同時に再び咲との距離を縮め始めた。
 その速度は前の二回を遥かに凌駕しており、正真正銘彼の本気の動きであったことがうかがえる。
 
「やっぱり、遅いや」

 しかしそれでもなお、グレートカルノライザーへと変身した咲には遅く見えていた。

『カルノセイバー!! グレートスラッシュ!!』

 咲はカルノセイバーのレバーを握って必殺技を発動させ、魔獣王の首を一刀両断する。
 その洗練された一撃は、もはや痛みすら与えずに彼の首を地面に転がらせていた。

「む、無念……。ああ、魔龍神王様……どうか、ご無事で……」

 首を斬られた魔獣王は最後にそう言い、数秒後に息絶えたのだった。
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