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64 魔霊王襲来
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完全に再生を終えたゾンビワイバーンはジワジワと二人への距離を詰めて行く。
「それじゃあどれだけ攻撃しても無駄ってこと……?」
流石の咲も彼らが欠損部位まで治せてしまうのは想定外だったようで、いよいよ不味い状況なのではと思い始めた彼女は額から冷や汗を垂らしていた。
「いえ、そんなはずはありません……!」
一方でソリスには何か策があるようだった。
「いくら再生できると言えど、それには膨大なエネルギーを必要とするはず。であれば、確実に限界はある……!」
そう言うとソリスは剣を構え直す。
要は持久戦であった。
「なら、それ以上は治せないくらいに攻撃し続ければいいって事ですね!」
それでも咲は彼女の言葉に勇気づけられたらしく、改めて剣を構え直してソリスに背中を預ける形でゾンビワイバーンを相手取った。
それからと言う物、傍から見れば地獄と言うしかないような光景が繰り広げられたのだった。
ゾンビワイバーンが再生をする度に、咲とソリスがすぐさま斬り落とすのだ。
その結果、少しずつ、着実に、血しぶきと肉塊が辺りに広がっていく。
そしてついには立っているゾンビワイバーンの数が減り始めた。
「見てください咲さん!」
ソリスは地面に転がって呻いているゾンビワイバーンを見るなりそれを咲と共有する。
「再生……してない!」
「ええ、どうやら再生できる回数の限界を超えたようですね」
「よーし、それならもうひと踏ん張り!」
一見して不死身に思えたゾンビワイバーンも限界を超えてしまえばただの肉塊だった。
そして、その事実は二人に希望を与えた。
このまま攻撃し続ければ倒すことは出来なくとも無力化は出来る訳であり、そうなれば後は光属性魔法の使い手に任せればよいのだ。
「これで、終わり!!」
咲はそう叫びながら最後の一体を斬り倒す
こうして二人は無事にゾンビワイバーンの群れを無力化することに成功したのである。
と、それで終われば良かったのだが……事はそう簡単な話では無かった。
「ッ!? 咲さん、上です!」
空の異変に気付いたソリスは叫ぶ。
全てのゾンビワイバーンを無力化したその瞬間、それまでは雲一つなかった夜空があっという間に真っ黒な雲に覆われてしまったのだ。
「何だろうあれ……人?」
そして咲は遥か上空に浮かぶ人影のようなものを発見していた。
「いや、違う……あれは人の気配じゃない」
纏う気配の異質さから、咲はそれが人ならざる者だと言うことに気付いたようだ。
その後、雷雲の中で轟く雷の光がその姿を浮かび上がらせた。
黒い靄を放ちながら浮遊するそれはおおよそ生気を感じさせない動きをしており、長いローブの隙間から見える顔は実体の無い半透明な骸骨であった。
その異様な姿と纏っている重苦しいオーラは言うなれば『死』の概念そのものと言っても問題が無い程に濃密で凶悪だった。
死が形を纏って動いている……そんな常識外れな存在を前にしたソリスは一言も発することが出来ず、同時に一歩も動くことが出来ずにいた。
「ソリスさん! ……ソリスさん!!」
「……ハッ!? す、すみません助かりました」
そんなソリスだが、咲が自分の名を叫んでいることに気付き我に返るのだった。
「しかし、あれは一体何なのでしょうか……。あの姿を少し見ただけで体が震えて仕方が無い……」
「私の持っている情報が正しければの話なんですけど……あれは恐らく魔霊王だと思います」
やや歯切れの悪さがある一方で、咲は内心確信をもってそう言っていた。
と言うのも、あの時ゼルに渡された巻物には魔霊王の姿と特徴が描かれており、それが今彼女らの目の前にいる存在と一致していたのだ。
「魔霊王……? まさか、あの五大魔将の……!?」
多くの魔物を前にしても冷静さを失わず、ワイバーンの大群を目にしても落ち着きを保っていたソリスが五大魔将の名を聞いた途端にこれでもかと言う程の声量で驚いていた。
それだけ五大魔将と言う存在は超位冒険者にとっても別格の存在であったのだ。
むしろ彼女ら超位冒険者が圧倒的な実力者であるからこそ、五大魔将の力が誇張でも無ければおとぎ話のそれでも無いことに気付いてしまっていた。
そんなソリスの前に魔霊王が降りてくる。
「……ッ!?」
彼の放つ威圧感に負けてしまったソリスは手に力が入らなくなり、あろうことか剣を落としてしまった。
「……ああ、可哀そうなワイバーンたち。せっかく不死となったのに、これではあまりにも不憫でならない」
だが魔霊王が隙だらけのソリスを攻撃することはなく、彼は地面に転がっているゾンビワイバーンを見ながらそう言うのみだった。
半透明な骸骨の姿であるため表情はわからないものの、その声には確かに慈悲が込められている。
それが見た目との乖離を生み、とてつもない不気味さを感じさせていた。
「その口ぶり、あなたがゾンビワイバーンを生み出したってことで良いんだね」
「ふむ、『生み出した』と言うのは……少々、語弊がありますな。何しろゾンビワイバーンは既に死んでいる訳であり、生み出すと言う表現は適していないのでね。しいて言うのなら、『変えた』と言うべきでしょうな」
「……それはつまり、あなたがアイツらを変えたってことで良いんだよね」
「その通り、彼らは皆、愛い奴でした。それに私と彼らは固い絆で結ばれていて、共に過ごす中でいくつもの思い出が出来上がっていった……と言っても、出会ったのはつい数時間前なのだがね」
咲の質問に対して妙な返しをする魔霊王。
そんな彼に咲は言いようのない不気味さを感じていた。
絶妙に話が通じているのかいないのかわからないその様子が、彼の異質さや不気味さを際立てていたのである。
「はぁ……もういいや。どうせ敵なんでしょ。さっさと戦って決着付けようか」
こんな相手と対話でどうにか出来る訳が無いと思った咲はカルノセイバーを強く握ると同時にそれを魔霊王へと向けた。
「おお、血気盛んなのは何よりですな。元よりこちらもそのつもりだったのでね。とても都合がいい」
咲のその宣戦布告を受け入れた魔霊王は纏っている黒いオーラの量を増やしながら再び上空へと浮かび上がって行った。
「……咲さん、私も戦います」
目の前に魔霊王がいたことによる恐怖で一歩も動けなかったソリスだが、やっとのことで恐怖心を克服したようで、剣を拾い直すと同時にそう言って戦う意思を見せた。
こうして、二人と魔霊王の戦いが今始まるのであった。
「それじゃあどれだけ攻撃しても無駄ってこと……?」
流石の咲も彼らが欠損部位まで治せてしまうのは想定外だったようで、いよいよ不味い状況なのではと思い始めた彼女は額から冷や汗を垂らしていた。
「いえ、そんなはずはありません……!」
一方でソリスには何か策があるようだった。
「いくら再生できると言えど、それには膨大なエネルギーを必要とするはず。であれば、確実に限界はある……!」
そう言うとソリスは剣を構え直す。
要は持久戦であった。
「なら、それ以上は治せないくらいに攻撃し続ければいいって事ですね!」
それでも咲は彼女の言葉に勇気づけられたらしく、改めて剣を構え直してソリスに背中を預ける形でゾンビワイバーンを相手取った。
それからと言う物、傍から見れば地獄と言うしかないような光景が繰り広げられたのだった。
ゾンビワイバーンが再生をする度に、咲とソリスがすぐさま斬り落とすのだ。
その結果、少しずつ、着実に、血しぶきと肉塊が辺りに広がっていく。
そしてついには立っているゾンビワイバーンの数が減り始めた。
「見てください咲さん!」
ソリスは地面に転がって呻いているゾンビワイバーンを見るなりそれを咲と共有する。
「再生……してない!」
「ええ、どうやら再生できる回数の限界を超えたようですね」
「よーし、それならもうひと踏ん張り!」
一見して不死身に思えたゾンビワイバーンも限界を超えてしまえばただの肉塊だった。
そして、その事実は二人に希望を与えた。
このまま攻撃し続ければ倒すことは出来なくとも無力化は出来る訳であり、そうなれば後は光属性魔法の使い手に任せればよいのだ。
「これで、終わり!!」
咲はそう叫びながら最後の一体を斬り倒す
こうして二人は無事にゾンビワイバーンの群れを無力化することに成功したのである。
と、それで終われば良かったのだが……事はそう簡単な話では無かった。
「ッ!? 咲さん、上です!」
空の異変に気付いたソリスは叫ぶ。
全てのゾンビワイバーンを無力化したその瞬間、それまでは雲一つなかった夜空があっという間に真っ黒な雲に覆われてしまったのだ。
「何だろうあれ……人?」
そして咲は遥か上空に浮かぶ人影のようなものを発見していた。
「いや、違う……あれは人の気配じゃない」
纏う気配の異質さから、咲はそれが人ならざる者だと言うことに気付いたようだ。
その後、雷雲の中で轟く雷の光がその姿を浮かび上がらせた。
黒い靄を放ちながら浮遊するそれはおおよそ生気を感じさせない動きをしており、長いローブの隙間から見える顔は実体の無い半透明な骸骨であった。
その異様な姿と纏っている重苦しいオーラは言うなれば『死』の概念そのものと言っても問題が無い程に濃密で凶悪だった。
死が形を纏って動いている……そんな常識外れな存在を前にしたソリスは一言も発することが出来ず、同時に一歩も動くことが出来ずにいた。
「ソリスさん! ……ソリスさん!!」
「……ハッ!? す、すみません助かりました」
そんなソリスだが、咲が自分の名を叫んでいることに気付き我に返るのだった。
「しかし、あれは一体何なのでしょうか……。あの姿を少し見ただけで体が震えて仕方が無い……」
「私の持っている情報が正しければの話なんですけど……あれは恐らく魔霊王だと思います」
やや歯切れの悪さがある一方で、咲は内心確信をもってそう言っていた。
と言うのも、あの時ゼルに渡された巻物には魔霊王の姿と特徴が描かれており、それが今彼女らの目の前にいる存在と一致していたのだ。
「魔霊王……? まさか、あの五大魔将の……!?」
多くの魔物を前にしても冷静さを失わず、ワイバーンの大群を目にしても落ち着きを保っていたソリスが五大魔将の名を聞いた途端にこれでもかと言う程の声量で驚いていた。
それだけ五大魔将と言う存在は超位冒険者にとっても別格の存在であったのだ。
むしろ彼女ら超位冒険者が圧倒的な実力者であるからこそ、五大魔将の力が誇張でも無ければおとぎ話のそれでも無いことに気付いてしまっていた。
そんなソリスの前に魔霊王が降りてくる。
「……ッ!?」
彼の放つ威圧感に負けてしまったソリスは手に力が入らなくなり、あろうことか剣を落としてしまった。
「……ああ、可哀そうなワイバーンたち。せっかく不死となったのに、これではあまりにも不憫でならない」
だが魔霊王が隙だらけのソリスを攻撃することはなく、彼は地面に転がっているゾンビワイバーンを見ながらそう言うのみだった。
半透明な骸骨の姿であるため表情はわからないものの、その声には確かに慈悲が込められている。
それが見た目との乖離を生み、とてつもない不気味さを感じさせていた。
「その口ぶり、あなたがゾンビワイバーンを生み出したってことで良いんだね」
「ふむ、『生み出した』と言うのは……少々、語弊がありますな。何しろゾンビワイバーンは既に死んでいる訳であり、生み出すと言う表現は適していないのでね。しいて言うのなら、『変えた』と言うべきでしょうな」
「……それはつまり、あなたがアイツらを変えたってことで良いんだよね」
「その通り、彼らは皆、愛い奴でした。それに私と彼らは固い絆で結ばれていて、共に過ごす中でいくつもの思い出が出来上がっていった……と言っても、出会ったのはつい数時間前なのだがね」
咲の質問に対して妙な返しをする魔霊王。
そんな彼に咲は言いようのない不気味さを感じていた。
絶妙に話が通じているのかいないのかわからないその様子が、彼の異質さや不気味さを際立てていたのである。
「はぁ……もういいや。どうせ敵なんでしょ。さっさと戦って決着付けようか」
こんな相手と対話でどうにか出来る訳が無いと思った咲はカルノセイバーを強く握ると同時にそれを魔霊王へと向けた。
「おお、血気盛んなのは何よりですな。元よりこちらもそのつもりだったのでね。とても都合がいい」
咲のその宣戦布告を受け入れた魔霊王は纏っている黒いオーラの量を増やしながら再び上空へと浮かび上がって行った。
「……咲さん、私も戦います」
目の前に魔霊王がいたことによる恐怖で一歩も動けなかったソリスだが、やっとのことで恐怖心を克服したようで、剣を拾い直すと同時にそう言って戦う意思を見せた。
こうして、二人と魔霊王の戦いが今始まるのであった。
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