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66 自分に出来ること
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魔霊王が現れるよりも少し前のこと。
屋敷で金銀姉妹と咲の帰りを待っていた桜はこのまま何もしないでいることに耐えられず、自分にも出来ることを探して外に飛び出していた。
「正門へ行けばきっと何か……!」
街の奥へと逃げる人に逆らうように桜は正門を目指して走り続ける。
「これって……」
彼女が正門へと辿りつくと、そこにはワイバーンとの戦いで負傷した冒険者や騎士たちが寝かされているのだった。
「なあ、皆そこにいるんだよな……?」
「ああ! ここにいるから大丈夫だ! ……だから、安心して寝ていろ」
戦いの中で両目を失ってしまい真っ暗闇に囚われた冒険者は、そばにいるパーティメンバーにひたすら声をかけ続けていた。
そうしなければ正気を失ってしまいそうだったのだ。
「あ゛ぁ゛ぁっ! いやだ、来るなァァ!!」
「落ち着いて! もうあなたを傷つける者はいないから!」
右腕と左足を失い、その痛みと苦しみでパニック状態になっている騎士を恋人と思われる女性がなだめる。
こうなってしまえばもう心身共に戦場に復帰することは不可能だろう。
「酷い……こんなの酷すぎるよ……」
そんなあまりに凄惨な光景を目にした桜はただ呆然と立ち尽くしていた。
だがすぐに我に返り、負傷者の方へと駆け寄っていく。
「おい、回復のポーションはまだなのか!?」
「それがもう残っていないのです……!」
負傷者の数があまりにも多すぎるために回復のポーションは既に底をついており、完全に回復魔法の使い手を待つ状態となっていた。
さらには欠損などの重傷を抑えるには最低でも上位回復魔法が必要であり、使用できる者は高位の神官くらいしかいない。
そのため彼らがやってくる前に手遅れとなる場合がほとんどであった。
「クソッ、せめて上位回復魔法の使い手がいれば……」
「あの……その方、私に回復させてはもらえませんか?」
「君が……? それは助かるが、この負傷だと最低でも中位回復魔法が必要になる。失礼だが、君に使えるとは思えない……」
そんな時に突然やってきた少女が中位回復魔法を使えるとは到底思えないため、男は切羽詰まった状況と言うことも合わせて桜に強く言ってしまう。
中位回復魔法はそれなりに実力のある魔術師や神官がやっとのことで習得できるものであり、普通は彼女のような年端も行かぬ少女が使えるようなものでは無いのだ。
しかし桜は怖気づくこと無く続ける。
「私は上位回復魔法が使えます。ですからどうか任せてください」
「本当なのか……!? だがしかし……いや、頼む。彼を救ってやってくれ!」
桜の真剣な眼差しと、この状況で嘘はつかないだろうと言う判断から、男は彼女に治療をお願いするのだった。
「では……ホーリーヒール!」
桜が回復魔法を発動させた瞬間、彼女の頭上に神々しい光の球が出現した。
そしてそこから放たれる光が負傷者の傷を次々に癒していく。
「あ、あれ……? 前に使った時よりも大きい……?」
光の球の大きさとその効果範囲が思いのほか広かったため、魔法を発動させた桜自身も驚いていた。
知らず知らずの内に彼女の保有魔力量が増えていたため、以前にホーリーヒールを使用した時よりもその効果が大きくなっていたのだ。
残念ながら欠損部位を完全に治すことは今の桜には出来なかったものの、命の危機があった者たちは皆十分過ぎる程に回復している。
彼女の魔法によりさっきまでの凄惨な光景が無くなったのは事実だった。
「す、凄いじゃないか君! 君のおかげで彼は助かった。一体どんなお礼をすればいいか……」
「いえいえそんなお礼なんて……! 私はただ自分に出来る事をしないとと思っただけですから……!」
「これだけの治療を行ったうえで礼も求めないだなんて……もしや君は天使様か何かなのだろうか」
「ふえっ!? っていつの間に!?」
気付けば桜の周りには動けるようになった負傷者やその親族及びパーティメンバーが集まっていた。
「ああ、いと慈悲深き天使様……我らをお救いくださったのですね」
「いえ、あの、私は天使ではなくて……」
ホーリーヒールによって照らされた桜の姿は良い感じに神々しさを纏っており、彼女を天使だと信じて疑わない者もいた。
そんな時である。
「おい、空を見ろ!!」
騎士のその声によってその場にいた全員が一斉に空を見上げた。
「なに、これ……」
それまでは雲一つなかった夜空が一瞬にして雷雲に覆われたのだ。
そう、魔霊王が出現したのである。
「咲ちゃん……!」
それはただの直感でしか無かったのかもしれない。
だが桜は確かに咲に危機が迫っていると本能で感じ取っていた。
「行かないと……!」
「おい君! 外は危ないぞ!!」
駆け出す桜を一人の冒険者が止めようとする。しかし彼女もまた勇者としての補正を持っているのだ。
その身体能力は上位冒険者にも匹敵する程であり、下位冒険者である彼程度が追いつけるはずも無かった。
「お願い、咲ちゃん……どうか無事でいて」
正門から出た咲はワイバーンの死体や動けなくなったゾンビワイバーンを避けながら、咲の元へと走り続けるのだった。
屋敷で金銀姉妹と咲の帰りを待っていた桜はこのまま何もしないでいることに耐えられず、自分にも出来ることを探して外に飛び出していた。
「正門へ行けばきっと何か……!」
街の奥へと逃げる人に逆らうように桜は正門を目指して走り続ける。
「これって……」
彼女が正門へと辿りつくと、そこにはワイバーンとの戦いで負傷した冒険者や騎士たちが寝かされているのだった。
「なあ、皆そこにいるんだよな……?」
「ああ! ここにいるから大丈夫だ! ……だから、安心して寝ていろ」
戦いの中で両目を失ってしまい真っ暗闇に囚われた冒険者は、そばにいるパーティメンバーにひたすら声をかけ続けていた。
そうしなければ正気を失ってしまいそうだったのだ。
「あ゛ぁ゛ぁっ! いやだ、来るなァァ!!」
「落ち着いて! もうあなたを傷つける者はいないから!」
右腕と左足を失い、その痛みと苦しみでパニック状態になっている騎士を恋人と思われる女性がなだめる。
こうなってしまえばもう心身共に戦場に復帰することは不可能だろう。
「酷い……こんなの酷すぎるよ……」
そんなあまりに凄惨な光景を目にした桜はただ呆然と立ち尽くしていた。
だがすぐに我に返り、負傷者の方へと駆け寄っていく。
「おい、回復のポーションはまだなのか!?」
「それがもう残っていないのです……!」
負傷者の数があまりにも多すぎるために回復のポーションは既に底をついており、完全に回復魔法の使い手を待つ状態となっていた。
さらには欠損などの重傷を抑えるには最低でも上位回復魔法が必要であり、使用できる者は高位の神官くらいしかいない。
そのため彼らがやってくる前に手遅れとなる場合がほとんどであった。
「クソッ、せめて上位回復魔法の使い手がいれば……」
「あの……その方、私に回復させてはもらえませんか?」
「君が……? それは助かるが、この負傷だと最低でも中位回復魔法が必要になる。失礼だが、君に使えるとは思えない……」
そんな時に突然やってきた少女が中位回復魔法を使えるとは到底思えないため、男は切羽詰まった状況と言うことも合わせて桜に強く言ってしまう。
中位回復魔法はそれなりに実力のある魔術師や神官がやっとのことで習得できるものであり、普通は彼女のような年端も行かぬ少女が使えるようなものでは無いのだ。
しかし桜は怖気づくこと無く続ける。
「私は上位回復魔法が使えます。ですからどうか任せてください」
「本当なのか……!? だがしかし……いや、頼む。彼を救ってやってくれ!」
桜の真剣な眼差しと、この状況で嘘はつかないだろうと言う判断から、男は彼女に治療をお願いするのだった。
「では……ホーリーヒール!」
桜が回復魔法を発動させた瞬間、彼女の頭上に神々しい光の球が出現した。
そしてそこから放たれる光が負傷者の傷を次々に癒していく。
「あ、あれ……? 前に使った時よりも大きい……?」
光の球の大きさとその効果範囲が思いのほか広かったため、魔法を発動させた桜自身も驚いていた。
知らず知らずの内に彼女の保有魔力量が増えていたため、以前にホーリーヒールを使用した時よりもその効果が大きくなっていたのだ。
残念ながら欠損部位を完全に治すことは今の桜には出来なかったものの、命の危機があった者たちは皆十分過ぎる程に回復している。
彼女の魔法によりさっきまでの凄惨な光景が無くなったのは事実だった。
「す、凄いじゃないか君! 君のおかげで彼は助かった。一体どんなお礼をすればいいか……」
「いえいえそんなお礼なんて……! 私はただ自分に出来る事をしないとと思っただけですから……!」
「これだけの治療を行ったうえで礼も求めないだなんて……もしや君は天使様か何かなのだろうか」
「ふえっ!? っていつの間に!?」
気付けば桜の周りには動けるようになった負傷者やその親族及びパーティメンバーが集まっていた。
「ああ、いと慈悲深き天使様……我らをお救いくださったのですね」
「いえ、あの、私は天使ではなくて……」
ホーリーヒールによって照らされた桜の姿は良い感じに神々しさを纏っており、彼女を天使だと信じて疑わない者もいた。
そんな時である。
「おい、空を見ろ!!」
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それまでは雲一つなかった夜空が一瞬にして雷雲に覆われたのだ。
そう、魔霊王が出現したのである。
「咲ちゃん……!」
それはただの直感でしか無かったのかもしれない。
だが桜は確かに咲に危機が迫っていると本能で感じ取っていた。
「行かないと……!」
「おい君! 外は危ないぞ!!」
駆け出す桜を一人の冒険者が止めようとする。しかし彼女もまた勇者としての補正を持っているのだ。
その身体能力は上位冒険者にも匹敵する程であり、下位冒険者である彼程度が追いつけるはずも無かった。
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