MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。

遠野紫

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出会いの章『異世界アヴァロンヘイム』

20 不死鳥の騎士

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 一瞬、幽霊でも見ているのかと思った。
 確かに彼はあの戦いで亡くなったはずなのだ。

 しかし、扉を強く開け放ち、この場の全員にしっかり見えている幽霊がいるだろうか? 
 いやいない。
 ならば、彼は紛れもなく生きている彼自身なのだろう。

「良かった……生きていたんですね」

 彼が誰なのかはよく知らない。
 だがそれでも、生きていてくれた。それだけで本当にうれしかった。
 やはり、目の前で人が死ぬのは辛いのだ。それは人並外れたステータスを持つこの体をもってしても変わらないようだった。

「ええ、直前で辛うじて逃げ出せました。改めて感謝いたします。君のおかげで、魔王を……仇を討ち取ることが出来ました」

「仇……と言うことは、貴方も故郷を魔王に?」

「……」

 彼は急に黙りこみ、その後コクリと頷いた。
 しまった、流石に直球で聞き過ぎたか。もう少しオブラートに包むとか遠回しに聞くとかあっただろう……!

「だがこれで、魔王ルーンオメガは明確にこの世を去りました。封印などでは無く、確実な死を与えたのです。これで……私の目的は終わった」

 魔王を倒したと言うのに、彼はどこか悲しそうだった。
 例え故郷の仇を取った所で、それで故郷が戻って来る訳では無いんだから当然か。
 復讐の後に残るのは虚無感のみとは、まさにこういったものなのかもしれない……。

 ……待て。彼は今、封印って言っていたのか?
 となるとやはりネワオンのストーリーとは微妙に違う結果になっている。
 ストーリーボスとしての魔王ルーンオメガはプレイヤーによって討ち取られ、完全に消失していた。
 しかしこの世界ではあくまで封印されていただけで、それが今になって復活したと言う事なのか。

「……」

 そのことを彼に聞こうにも、そんな雰囲気では無かった。
 結局その後は諸々の報告を行ったり、アーロンやエルトリア王国からの謝礼を貰ったりして、自由に動ける時間なんてものは無かったから結局わからずじまいだった。

 そして気付けば数日が経っていた。

「んぁ~……」

 目が覚めた俺はいつものように宿の窓を開ける。
 窓から見える王国の光景は相変わらずどこか忙しないものだったが、それでも彼らを守れたのならあの戦いにはきっと意味があったのだと思える。

「あっ……!!」

 と、その時だった。
 突如として思い出したのだ。彼のあの鎧に描かれていた不死鳥のペイントをどこで見たのかを。

「そうか、ロードマップだ……!」

 ネワオンは年末に今後のバージョンアップやイベントに関わる情報をロードマップとして公式サイトに掲載していた。
 そしてその中にあったのだ。あの不死鳥のペイントが。
 正確にはあのペイントの描かれた装備を纏うキャラクターだが。

 あれは本来、夏の大型アプデで実装されるはずだった「魔導騎士フェニックス」と呼ばれていたもののはずだ。
 そのキャラの装備自体は彼とは少し違う見た目だが、あのペイントやどこか機械っぽいデザインは同じものだった。
 
 だが、わかるのはそれだけ。なにしろ結局それらが実装される前に、ご存じの通りネワオンがサ終してしまったのだ。
 その詳細について、一般プレイヤーである俺が知るはずが無かった。

 あぁ……そうか。そういうことだったんだな。
 どうりで見覚えはあるけどゲーム内に見当たらない訳だ……。
 
 そんな時、扉をコンコンと叩く音と共に声が聞こえてきた。

「今、いいでしょうか」

 どうやら件の彼が俺の部屋を訪ねてきたようだった。

「はい、構いませんよ」

 そう言いながら俺はベッドを降りて扉を開けた。

「突然の、それも朝早くの訪問を謝罪します。……それでも、今言わなければならないと思ったのです」

「……私に何か大事な用があるんですね」

「ええ。ステラ、君がよければなのですが……私とパーティを組んではもらえないでしょうか」

 ……重苦しい雰囲気で何を言うかと思えば、冒険者としてのパーティのお誘いだった。

「……?」

 あまりに突然のことにしばらくの間、俺の思考は霧散していたようだ。

「……やはり無理……でしょうか?」

「あぁっ、いえ、少し驚いていただけですから! えっと、パーティのお誘いですよね。私でよければ是非」

 彼の事はまだよく知らない。
 だが、共に魔王と戦った時に強く感じた。彼は決して悪い人では無いのだと。
 それに彼の事を知って行けば、この世界とゲームの差異について、そして空白の500年についても知ることが出来るかもしれない。
 断る意味は俺には無かった。

「これからよろしくお願いしますね。えっと……」

「ルキ……いえ、ルーシオ。それが私の名です。こちらこそ、これからよろしく頼みます」

「はい、ルーシオさん。改めて、これからよろしくお願いしますね」

 こうして俺はルーシオと冒険者パーティを組むこととなった。
 正式なパーティ契約は初めてだが、なんだか彼となら上手くやっていけそうな気がした。
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