20 / 81
出会いの章『異世界アヴァロンヘイム』
20 不死鳥の騎士
しおりを挟む
一瞬、幽霊でも見ているのかと思った。
確かに彼はあの戦いで亡くなったはずなのだ。
しかし、扉を強く開け放ち、この場の全員にしっかり見えている幽霊がいるだろうか?
いやいない。
ならば、彼は紛れもなく生きている彼自身なのだろう。
「良かった……生きていたんですね」
彼が誰なのかはよく知らない。
だがそれでも、生きていてくれた。それだけで本当にうれしかった。
やはり、目の前で人が死ぬのは辛いのだ。それは人並外れたステータスを持つこの体をもってしても変わらないようだった。
「ええ、直前で辛うじて逃げ出せました。改めて感謝いたします。君のおかげで、魔王を……仇を討ち取ることが出来ました」
「仇……と言うことは、貴方も故郷を魔王に?」
「……」
彼は急に黙りこみ、その後コクリと頷いた。
しまった、流石に直球で聞き過ぎたか。もう少しオブラートに包むとか遠回しに聞くとかあっただろう……!
「だがこれで、魔王ルーンオメガは明確にこの世を去りました。封印などでは無く、確実な死を与えたのです。これで……私の目的は終わった」
魔王を倒したと言うのに、彼はどこか悲しそうだった。
例え故郷の仇を取った所で、それで故郷が戻って来る訳では無いんだから当然か。
復讐の後に残るのは虚無感のみとは、まさにこういったものなのかもしれない……。
……待て。彼は今、封印って言っていたのか?
となるとやはりネワオンのストーリーとは微妙に違う結果になっている。
ストーリーボスとしての魔王ルーンオメガはプレイヤーによって討ち取られ、完全に消失していた。
しかしこの世界ではあくまで封印されていただけで、それが今になって復活したと言う事なのか。
「……」
そのことを彼に聞こうにも、そんな雰囲気では無かった。
結局その後は諸々の報告を行ったり、アーロンやエルトリア王国からの謝礼を貰ったりして、自由に動ける時間なんてものは無かったから結局わからずじまいだった。
そして気付けば数日が経っていた。
「んぁ~……」
目が覚めた俺はいつものように宿の窓を開ける。
窓から見える王国の光景は相変わらずどこか忙しないものだったが、それでも彼らを守れたのならあの戦いにはきっと意味があったのだと思える。
「あっ……!!」
と、その時だった。
突如として思い出したのだ。彼のあの鎧に描かれていた不死鳥のペイントをどこで見たのかを。
「そうか、ロードマップだ……!」
ネワオンは年末に今後のバージョンアップやイベントに関わる情報をロードマップとして公式サイトに掲載していた。
そしてその中にあったのだ。あの不死鳥のペイントが。
正確にはあのペイントの描かれた装備を纏うキャラクターだが。
あれは本来、夏の大型アプデで実装されるはずだった「魔導騎士フェニックス」と呼ばれていたもののはずだ。
そのキャラの装備自体は彼とは少し違う見た目だが、あのペイントやどこか機械っぽいデザインは同じものだった。
だが、わかるのはそれだけ。なにしろ結局それらが実装される前に、ご存じの通りネワオンがサ終してしまったのだ。
その詳細について、一般プレイヤーである俺が知るはずが無かった。
あぁ……そうか。そういうことだったんだな。
どうりで見覚えはあるけどゲーム内に見当たらない訳だ……。
そんな時、扉をコンコンと叩く音と共に声が聞こえてきた。
「今、いいでしょうか」
どうやら件の彼が俺の部屋を訪ねてきたようだった。
「はい、構いませんよ」
そう言いながら俺はベッドを降りて扉を開けた。
「突然の、それも朝早くの訪問を謝罪します。……それでも、今言わなければならないと思ったのです」
「……私に何か大事な用があるんですね」
「ええ。ステラ、君がよければなのですが……私とパーティを組んではもらえないでしょうか」
……重苦しい雰囲気で何を言うかと思えば、冒険者としてのパーティのお誘いだった。
「……?」
あまりに突然のことにしばらくの間、俺の思考は霧散していたようだ。
「……やはり無理……でしょうか?」
「あぁっ、いえ、少し驚いていただけですから! えっと、パーティのお誘いですよね。私でよければ是非」
彼の事はまだよく知らない。
だが、共に魔王と戦った時に強く感じた。彼は決して悪い人では無いのだと。
それに彼の事を知って行けば、この世界とゲームの差異について、そして空白の500年についても知ることが出来るかもしれない。
断る意味は俺には無かった。
「これからよろしくお願いしますね。えっと……」
「ルキ……いえ、ルーシオ。それが私の名です。こちらこそ、これからよろしく頼みます」
「はい、ルーシオさん。改めて、これからよろしくお願いしますね」
こうして俺はルーシオと冒険者パーティを組むこととなった。
正式なパーティ契約は初めてだが、なんだか彼となら上手くやっていけそうな気がした。
確かに彼はあの戦いで亡くなったはずなのだ。
しかし、扉を強く開け放ち、この場の全員にしっかり見えている幽霊がいるだろうか?
いやいない。
ならば、彼は紛れもなく生きている彼自身なのだろう。
「良かった……生きていたんですね」
彼が誰なのかはよく知らない。
だがそれでも、生きていてくれた。それだけで本当にうれしかった。
やはり、目の前で人が死ぬのは辛いのだ。それは人並外れたステータスを持つこの体をもってしても変わらないようだった。
「ええ、直前で辛うじて逃げ出せました。改めて感謝いたします。君のおかげで、魔王を……仇を討ち取ることが出来ました」
「仇……と言うことは、貴方も故郷を魔王に?」
「……」
彼は急に黙りこみ、その後コクリと頷いた。
しまった、流石に直球で聞き過ぎたか。もう少しオブラートに包むとか遠回しに聞くとかあっただろう……!
「だがこれで、魔王ルーンオメガは明確にこの世を去りました。封印などでは無く、確実な死を与えたのです。これで……私の目的は終わった」
魔王を倒したと言うのに、彼はどこか悲しそうだった。
例え故郷の仇を取った所で、それで故郷が戻って来る訳では無いんだから当然か。
復讐の後に残るのは虚無感のみとは、まさにこういったものなのかもしれない……。
……待て。彼は今、封印って言っていたのか?
となるとやはりネワオンのストーリーとは微妙に違う結果になっている。
ストーリーボスとしての魔王ルーンオメガはプレイヤーによって討ち取られ、完全に消失していた。
しかしこの世界ではあくまで封印されていただけで、それが今になって復活したと言う事なのか。
「……」
そのことを彼に聞こうにも、そんな雰囲気では無かった。
結局その後は諸々の報告を行ったり、アーロンやエルトリア王国からの謝礼を貰ったりして、自由に動ける時間なんてものは無かったから結局わからずじまいだった。
そして気付けば数日が経っていた。
「んぁ~……」
目が覚めた俺はいつものように宿の窓を開ける。
窓から見える王国の光景は相変わらずどこか忙しないものだったが、それでも彼らを守れたのならあの戦いにはきっと意味があったのだと思える。
「あっ……!!」
と、その時だった。
突如として思い出したのだ。彼のあの鎧に描かれていた不死鳥のペイントをどこで見たのかを。
「そうか、ロードマップだ……!」
ネワオンは年末に今後のバージョンアップやイベントに関わる情報をロードマップとして公式サイトに掲載していた。
そしてその中にあったのだ。あの不死鳥のペイントが。
正確にはあのペイントの描かれた装備を纏うキャラクターだが。
あれは本来、夏の大型アプデで実装されるはずだった「魔導騎士フェニックス」と呼ばれていたもののはずだ。
そのキャラの装備自体は彼とは少し違う見た目だが、あのペイントやどこか機械っぽいデザインは同じものだった。
だが、わかるのはそれだけ。なにしろ結局それらが実装される前に、ご存じの通りネワオンがサ終してしまったのだ。
その詳細について、一般プレイヤーである俺が知るはずが無かった。
あぁ……そうか。そういうことだったんだな。
どうりで見覚えはあるけどゲーム内に見当たらない訳だ……。
そんな時、扉をコンコンと叩く音と共に声が聞こえてきた。
「今、いいでしょうか」
どうやら件の彼が俺の部屋を訪ねてきたようだった。
「はい、構いませんよ」
そう言いながら俺はベッドを降りて扉を開けた。
「突然の、それも朝早くの訪問を謝罪します。……それでも、今言わなければならないと思ったのです」
「……私に何か大事な用があるんですね」
「ええ。ステラ、君がよければなのですが……私とパーティを組んではもらえないでしょうか」
……重苦しい雰囲気で何を言うかと思えば、冒険者としてのパーティのお誘いだった。
「……?」
あまりに突然のことにしばらくの間、俺の思考は霧散していたようだ。
「……やはり無理……でしょうか?」
「あぁっ、いえ、少し驚いていただけですから! えっと、パーティのお誘いですよね。私でよければ是非」
彼の事はまだよく知らない。
だが、共に魔王と戦った時に強く感じた。彼は決して悪い人では無いのだと。
それに彼の事を知って行けば、この世界とゲームの差異について、そして空白の500年についても知ることが出来るかもしれない。
断る意味は俺には無かった。
「これからよろしくお願いしますね。えっと……」
「ルキ……いえ、ルーシオ。それが私の名です。こちらこそ、これからよろしく頼みます」
「はい、ルーシオさん。改めて、これからよろしくお願いしますね」
こうして俺はルーシオと冒険者パーティを組むこととなった。
正式なパーティ契約は初めてだが、なんだか彼となら上手くやっていけそうな気がした。
91
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる