MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。

遠野紫

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第三章『ステラ・グリーンローズ』

46 ハンガーウォルフの現状

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 ひとまずケラルトには俺とメイデンが召喚された勇者であると言う事を伝えた。
 とは言え流石にプレイヤーであることは隠している。これに関しては言ったところであまり意味が無いと言うか、そもそも信じてはくれないだろう。

「勇者……ね。うん、わかったわ」

「随分と簡単に信じてくれるんですね?」

 正直、召喚された勇者ってのもプレイヤーと同じくらいに与太な気はする。
 なのに彼女はすんなりと信じてくれたのだった。

「あれだけの常識外れな強さを持っているんだもの。そうでもないと納得できないわ。……でもそれ以上に、貴方のような存在がいつか現れると言う事がグリーンローズ家には代々伝えられていたのよ」

 この世界においてグリーンローズ家はエルフの王家のようだ。
 であれば何かしらそう言った伝承のようなものが残っていてもおかしくはないのかもしれない。

「でもまさか、あのステラ・グリーンローズと同じ名前を持つ勇者が召喚されるだなんて……ねえ、本当に貴方はあのステラではないのよね?」

「……少なくとも俺は貴方の知るステラでは無いと思います」

 完全に同姓同名の別エルフと考えた方が良いだろう。
 俺は確かに日本の一般平凡サラリーマンだったはずなんだ。
 そんな異世界の王家とか言われてもな……。

「そう……」

 俺の返答を聞いたケラルトは少し残念そうな表情を浮かべていた。

「まあ、それなら仕方ないわね。あっでも確か、同名のエルフが現れた時は代々伝えられているはずの宝石を渡せって伝承に……。ねえ貴方、今回の一件が終わったら私と一緒に来てくれるかしら」

 断る……訳にもいかないか。
 まあそれで何も無ければ彼女にとっても踏ん切りがつくだろうしな。

「ええ、構いませんよ」

「決まりね。それじゃあまずはハンガーウォルフをどうにかして、同胞たちを助けないと!」

 その後、ケラルトは少し席を外すと言って部屋を出た。
 そして数分が経ち、戻ってきた彼女はいくつかの紙を持っていた。

「それは?」

「近い内に行われると思われる、大規模なエルフ狩りについての情報よ」

 エルフ狩りって……大分物騒だな。

「エルフが攫われるって言う噂がこの都市には回り過ぎていて、もうほとんどエルフがいないの。だから別の所でエルフ狩りを行うことにしたようなのよね」

「それが、この森と言う訳ですか。ですが……」

 ケラルトが持ってきた紙を見ていたルキオラがそう言う。
 だが何か気がかりがあるかのような口ぶりだった。

「ルキオラ、何か気になることでもあるのか?」

「ええ、この森は多くのエルフが暮らしていることで有名なのですが、そこで大規模な誘拐などを行えばいくら何でも痕跡が残り過ぎる……正直なところ、これほどまでに用意周到に事を起こしてきた組織がここでこのような雑な策に出るとは考えられないのです」

「そう、そうなのよ。一言で言えば、ハンガーウォルフにしては今回のエルフ狩りはあまりにも杜撰過ぎるの。それに、隠密特化の諜報部隊を送り込んでいるとは言え、これほどの情報が得られているのもよく考えればおかしいわ」

 そうか……今まで徹底的に情報を隠し、痕跡を消し、国すらも欺いてきた奴らにしては信じられないくらいに大胆過ぎる訳だ。
 そして情報の扱いも雑で、外部に漏れだしてしまっている。明らかに異常事態と言えるだろう。

「それほどまでに追い込まれている……と言う可能性もあるけれどね」

「メイデン? それってどういう……」

「シンプルな話よ。メイン商品であるエルフの数が減ったとしても、その収益によって一度上げてしまった生活レベルは簡単には下げられないし、これだけの規模の組織だと管理維持にも莫大な資金が必要になるのは当然よね」

 それは確かにそうだ。
 でもそれだけでこんなに切羽詰まった状況になるだろうか?
 それこそ金なら盗賊としての活動を行えばいい訳で。こんだけ大きい組織なら盗みや略奪だけでも十分な資金を集められるはずだ。

「それに新しいエルフが欲しいと言う顧客だって増える一方でしょうね」

「どうしてそう思うんだ? エルフの寿命なら大抵の場合は持ち主よりは長生きするだろうし、この世界において奴隷は資産であり重要な労働力のはずだ。下手に殺すような真似は……」

「ふふっ、貴方はピュアなのね。確かに何事も無ければそうでしょう。でも皆が皆、購入したエルフと一生を添い遂げる訳では無いはずなのよ。飽きれば捨てるし、一時の感情で殺してしまうことだってあるかもしれないわ。この世界の住人は日本のように良識がある人たちばかりではないのだから」

「それも、そうか……」

 考えてもいないことだった。いや、考えたくないからこそ認識しないようにしていたのか。
 この世界の奴隷は持ち主の所有物であり資産。だからこそ命に関わるような酷い扱いをしない事が多い……と言うのはあくまで通常のルートで購入した奴隷の話だった。 

 裏ルートで、それも見た目が良いと言う理由でエルフをそう言った目的に使うために富豪や貴族が購入しているんだ。
 そんな奴隷の扱いなんて、正直想像したくもなかった。

「それに彼らの商売相手は権力者がほとんどなのでしょう? やろうと思えばハンガーウォルフに関する情報を国へと提供することだって出来る……そんな切り札を持っている者たちが彼らの尻に火をつけているのではないかしら」

「確かにそうね……。それなら今回のエルフ狩りが切羽詰まった結果の苦肉の策と言う可能性も充分ありえるわ」

「そう言っても、これもただの推測でしかないのだけれどね」

 メイデンは予防線を張るようにそう言う。

「……確かに罠である可能性もあるけど、それでもこのエルフ狩りが彼らにとって何かしらの意味を持っているのは確かのはずよ。だからこそ、私たちは彼らを迎え撃つ必要がある。……改めて尋ねるわね。危険な戦いになるかもしれないけど、それでも私たちに協力してくれるかしら」

 ケラルトは真剣な顔で俺たちの方を見る。
 何としてでも同胞を救うのだと、そう言う覚悟を感じた。
 そして恐らく、俺たちが協力しなくとも彼女たちはハンガーウォルフと戦うのだろう。
 
 そして、そうであれば間違いなく……彼女たちは全滅する。
 あの虚像のクレアと同等かそれ以上の奴らが幹部にはゴロゴロいると考えて良いだろう。
 そしてこれが切羽詰まった末の作戦であると言うのなら、当然そう言った面々も出てくるはず。

 それだけの要素がある以上、このまま彼女たちを見過ごせるわけが無かった。
 それに乗り掛かった舟が何とやらだ。そもそもここまで聞いた時点で放っておけるはずが無いんだよな。

「今更何を言うんですかケラルトさん。最初からそのつもりでしたよ」

「私も構わないわ。さっきの彼みたいな強者とも戦えそうだもの」

「私も力を貸しましょう。元より彼らの壊滅のために私たちはここへ来たのですから」

 どうやらそう考えていたのは俺だけでは無かったようで、メイデンとルキオラも彼女に協力することを選んでいた。

「本当にありがとう……! 貴方たちがいれば心強いわ!」

 とまあ、こうして俺たち三人は彼女たちと共にハンガーウォルフによるエルフ狩りを止めることになったのだった。
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