MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。

遠野紫

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終章『アヴァロンヘイムと悪魔の軍勢』

81 エピローグ

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 悪魔の軍勢との決戦から一日が過ぎた。

 大罪の力を持つ上級悪魔及び、原初の魔王の力を会得したルシファーは完全にこの世界から消え去り、世界には再び平和が訪れることとなったのだが……。
 正直なところ、人間側の被害も決して軽いものでは無いのが事実のようだった。

 王国の国境を超える前に俺たちが奴らを排除することに成功したから、王国内の被害はほぼゼロに等しい。
 しかしアヴァロンヘイムの木から王国までの道中にあった村々はほぼ全滅。
 ざっと千人以上もの人間が悪魔の腹の中に消えてしまったのである。

 当然それだけの大規模な侵攻ともなれば、魔物への影響も大きい。
 それまではその村々に滞在していた傭兵や冒険者が定期的に討伐していた魔物も、討伐されなくなればあっという間にその数を増やして縄張りを拡大させるだろう。

 そうすれば当然王国への影響も無視できないものになる。
 しかし不幸中の幸いと言うべきか、これに関してはある程度対策が出来そうだった。
 と言うのも、いつの間にか聖女が王国専属の国家魔術師としての地位を確立していたのだ。

 どうしてそうなったのかと言えば、単純に代々聖女を継いでいるシルドミレニア家が魔物への特効を持つ聖なる存在だからだった。
 魔を払う聖なる魔法……それを聖女は受け継いでいた。そして聖女としての高い魔法の腕もあり、その実力はレベル換算でざっと200以上はあるだろう。
 そう、あの聖女はそんじょそこらの魔物では太刀打ちできない程の実力者だった訳である。 

 だがよく考えてみれば当然のことだろう。
 いくら護衛が守ってくれたとは言え、あの悪魔だらけの聖王都の中でルキオラたちと出会うまで彼女は一人で彷徨っていたのだ。
 弱いはずが無いのはもはや当然とすら言えた。

 また、聖女は悪魔から聖王都の民を救えなかったことを後悔しているらしく、その無念を少しでも晴らすために……そして王国の民を守るため、魔物と戦うことを自ら進んで選んだのだという。
 強い。あまりにも精神が強すぎた。だからこそ、聖女としてあれだけ崇められていたのだろうな。

 ……とまあ、決戦後の王国周辺の動向はこんなものだった。
 そんな中、俺たちはどうなのか。

 まず一番状況が深刻だったメイデンだが……彼女自身が言っていた通り、彼女の目は今では完全に元通りになっている。
 いやぁこう見ると吸血鬼って本当に凄いな。ポーションも無しにあそこまで奇麗に元通りになるのか。それもこんなにすぐに。

 一方で俺の無くなった腕も、断面にポーションをぶっかけたら元に戻った。
 ブレイブポーションもそうだったが、本当にポーションが優秀過ぎる。
 ポーションが無ければ不味かった状況もそれなりにあるし、本当に感謝しないといけないな。

 なお、腕を失った状態で王国に戻ったらルキオラにまたポカポカと叩かれてしまった。
 それもあってか、俺を見た瞬間の彼女の顔を今でも鮮明に思い出してしまう。
 無事に帰ってきたことに安心しつつも、肩から先が無くなっていることに気付いた瞬間に彼女が見せた絶望の表情。
 彼女のあの顔はもう二度と見たくはないし、させたくもなかった。

 で、そのルキオラが今どうしているかと言うと……。

「ステラ……もう絶対に、無茶しちゃだめだからね?」

 常にべったりと俺にくっついていて、事あるごとに無茶しないでと言って来る「無茶しないでbot」と化していた。
 まあそれだけ俺を心配してくれているってのは素直に嬉しいんだけども……。

「ルキオラ……」

「うん? どうしたのステラ?」

「流石に……近くないか?」

 どこに行くにしても彼女があまりにもべったりと密着し過ぎているために、俺とルキオラの関係性が変な形で王国中に噂されているのだ。
 このままでは彼女と俺がそう言った関係だということになってしまう。

「……ステラは、嫌?」

 悲しそうな顔でそう言って来るルキオラ。
 あぁぁぁ……そんな顔と声でそう言われたら否定なんか出来る訳無い。

「嫌じゃない。むしろ……」

 むしろ好きだ……と言いそうになったが直前で思いとどまった。
 ルキオラは凄まじい美少女だ。だからこそ距離感をしっかり維持しないと不味い。

 何しろ俺は一応は成人男性……のはずだ。
 ステラの記憶が混ざり合った今となっては少々扱いに困るところではあるが、遥か年下の彼女をそう言った目で見ること自体が駄目であることに変わりは無い。

 と、彼女に会ってからずっと自身に言い聞かせてきたものの……それも限界が近いのかもしれない。
 だんだんルキオラからのアプローチが強くなっていた所で、今回のこれなのだ。
 もはや逃げ道など無いに等しかった。

「あら、お熱いわね」

 そんな時に一番来てほしくない少女も現れてしまう。

「げっ、メイデンか」

 そう、メイデンだ。

「げっ……とは失礼ね。それとも、私はお邪魔だったかしら?」

「そう言うつもりじゃないんだが……体の方はもう大丈夫なのか?」

「ええ、おかげさまでね」

 吸血鬼の再生能力が高いのは彼女自身が証明しているが、それでもやはり心配なものは心配なのだ。
 特にあれだけ派手に負傷した以上、気になるのも仕方のないことだろう。

 ただ彼女の言葉通り、もう本当に問題は無さそうだった。
 ゆらゆらと揺れながら既に全快していることをその小さな身体全体で表現してくるのだ。これを元気と言わずに何と言うのか。

 ……なんだかこうしていると、年相応な少女と言った感じで可愛いところもあるな。
 と思ったが最後、メイデンの作り出す雰囲気に飲みこまれることとなる。気を付けないと全てが終わりだ。

「ふふっ、良いのよ? もう少し近くで見ても」

「いや良い。これ以上は厄介事が増えそうだからな」

 以前に彼女のスカートの中を見てしまったこともあり、変な気分になってしまうようなことは極力避けたかった。

「そう言えば、あの時は随分と派手にやったじゃない? ねえ、ルキオラ?」

「ふぇっ……!?」

 自分に矛先が向くと思っていなかったのか、ルキオラは素っ頓狂な声を上げて驚くのだった。

「アスモデウスに魅了されたステラを取り戻すために、兜を外して熱いキスを……」

「ま、待ってメイデンそれは……えっと、魅了を解かないといけないから仕方なく……」

「あぁ……うん、あの時は助かったよルキオラ」

 ここは無難に流しておくに限る。
 下手なことを言えばそれこそメイデンの思うつぼだろう。

「あら? 貴方もまた、まんざらでもないんじゃないかしら」

 しかしそんな簡単な逃げを放置する程、メイデンは甘くは無かった。

「……」

「黙秘は肯定とみなすわね」

「流石に横暴が過ぎるんじゃないのか!?」

 全く油断も隙も無い……でも、逆に考えてみれば彼女なりに俺とルキオラのキューピットになろうとしてくれて……いや、無いか。
 結局これも彼女自身が楽しいからってことでやってるだけだろうきっと。

「ステラさん、こんな所にいたんですね!」

 と、俺たちがわちゃわちゃやっているとアーロンが慌てた様子で走って来た。
 ……この流れを俺は知っている。もう何度も経験したあれだ。

「すみません、あんな戦いがあった翌日だと言うのに……でも緊急事態なんです!」

「……一応、聞かせてもらっても?」

「まず、アヴァロンヘイムの木から大量の魔物が出てきているとの報告がありまして……以前ステラさんが討伐した狼王ボルグに加えて氷魔石のドゥーリン、雷雲竜ショウセンまで出てきたらしくてですね」

 ものの見事に全て見知ったネームドボスだった。
 それがこのタイミングで急にアヴァロンヘイムの木から出てきたってのはまあ……十中八九、悪魔たち絡みだろうなぁ。

「それに続いて、聖王都の近くのとある村で異常なポーションを量産しているとの情報もあるんです。なんでも盗賊の少年が持っていたポーションを元にして複製した、高い効果の代わりにとてつもない副作用を生み出すという恐ろしいものがその村を中心にして蔓延しているのだとか。このままでは正規のポーションにまで影響が出かねないので早急に対処をしないとならなくてですね……」

 あぁ……多分、あの時の盗まれたポーションだよなぁ……。
 この世界だと製法が確立されていないから、強引に似せて作ったものの副作用がとんでもないものになってしまったと……。

「どうするのステラ。私たちじゃないと手に負え無さそうな案件だけれど」

「あたしはステラの判断なら、どこまでも付いて行くよ。だから護衛は任せてね」

 ルキオラは何だか重いことを言っていた気もするが、どうやら俺たちが出ないといけない案件なのは間違いなさそうだな。
 くそっ、悪魔の奴らめ。魔王の時と同じように余計な物を残していきやがって……いやポーションは俺のせいだけども。

「はぁ……それじゃあアーロンさん、クエストの契約をお願いします」

「あっ、ありがとうございます!! そうと決まれば早速、組合に行きましょう!」

 そう言うとアーロンは意気揚々と歩き始めた。
 せっかく魔王騒ぎが収まったのに、どうやらまたしばらくの間忙しくなりそうだ。

「……まあそう言う事だからさ。二人共、またしばらく頼むよ」

「任せて、ステラ。何としてでも君のことはあたしが守るからね」

「ふふっ、ルキオラがこれだけやる気なら私の出番は無いかもしれないわね」

「二人共……ありがとう」

 いつも通りの二人の返事。
 あれだけの戦いをした後だからこそ、そんな何気ないものが凄く大事に思えた。

「それじゃあ、行こうか」

 俺のその言葉を皮切りに、俺たち三人はアーロンの後を追って歩き始めた。
 どうやら俺たちの冒険はまだまだ終わりそうには無さそうだ。
 けど、俺たち三人ならどんなクエストだって問題ない。
 
 何てったって、俺たちは最高で最強の冒険者パーティなんだからな。

【MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。】 完
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