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12 第十二話
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「夜伽って……お前男だろう?」
「知らないのか? 魔族は基本的には両性具有だ。故に心配は無い」
「……なっ!? お前何やって……!」
ディアスはただでさえ露出の少ない服をめくりあげ、俺に見せて来た。……下着の上に、無いはずの影が有った。
いやそれは良い。いや良くは無い。
クソッ駄目だ心が乱れている。
「どうした? 余の体に興味があるのか」
ディアスがにやにやと笑いながら顔を近づけてくる。
やめてくれ。ダンジョン内は薄暗いし命の危機があったから気付かなかったが、よく見ると中々可愛い顔をしているんだ。
このままではよくない扉を開いてしまう。
「そうだな。余は肉付きの良い方では無いが、服装なら自由に変えられるぞ。どうだ?」
「っ!?」
ディアスはそう言って何らかの魔法を発動させた。
顔を上げて確認してみると彼はフリフリのワンピース姿となっていた。
この状態だと少女にしか見えない。と言うより、元々中性的な顔であるために服装によって大きく変わって見えるのだろう。
だが良くない。良くないんだ。
俺は咄嗟に目を反らしてしまった。
「それとも貴様は少年の姿の方が好みか?」
再び彼女を見るとディアスは少年らしさの溢れる見た目へと変わっていた。
先ほどまでの少女らしかった彼女がそのような格好をしている。それを想像すると心の中が乱される。
これは駄目だ刺激が強すぎる。
「もうやめてくれ……俺が俺でなくなってしまう気がする……」
「そうか。もっと弄んでやろうと思っていたのだがな……まあ良い。まだ出会ってばかりなのだからな」
ディアスはそう言って部屋から出て行った。
出会ってばかり……それはつまり、時間を置いたらまたやってくるという事か?
……精神を強くしなければ駄目そうだ。魔族に手を出すなどあっては……あっては……。
気付けば翌日になっていた。どうやらあのまま寝てしまったようだ。
ベッドが変に乱れていることも無いし、跡なども無い。きっとあの後何も無かった。
そう思おう。そう信じよう。
着替えを済ませて朝食を食べた後、ギルドへ向かう。
朝一で緊急の依頼などが無いかを確認するのが俺の日課となっているのだ。
専属冒険者としての生活もようやく板についてきたって所だな。
と、そんないつもの朝を迎えようとしていた俺のところにメアリーがやって来たのだった。
「また凄い魔力反応が現れたと思ったら……今度は魔族と契約するなんてな」
どうやら彼女はディアスの魔力を感知し、もしかしてと思って俺の所を訪ねたという事らしい。
「その、色々とあってですね……」
「まあいいさ。君がおかしいのは今に始まったことでは無いからね。それより魔法について教えてくれると言うのはまだなのかい?」
彼女はそう言って威圧と共に催促をして来た。まるで「もう逃がさないぞ」と言っているかのように。
何かと理由を付けて逃れてきたが、もう限界だろう。
と言うか、魔力の反応よりもこちらの方が本命だったのではないだろうか。
「……わかりました」
「そうか、助かるよ。それでは早速行こうじゃ無いか」
メアリーに手を引っ張られ連れていかれる。
下手に拒否できる空気では無い。
そのまましばらく連れられて、以前彼女に出会った街の外れまでたどり着いた。
「さて、何を教えて貰おうかな」
「俺に教えられるものはそう無いとは思いますけどね」
「まあそう言うな。ふむそうだな……。まずは魔力量について教えて……いや調べさせてもらおうか」
「えっ……何を……」
彼女は俺の手を握り、何かを唱え始めた。
「こうして互いの魔力を流して調和させると、色々とわかるものが有るんだ。おお、これは思っていた以上だな。だが、これほどの、魔力量を一体どうやって……?」
「その、話して良いのかもわからないですし、信じて貰えるとも思えないんですが……」
……俺は彼女に全てを話す決意を固めた。
「知らないのか? 魔族は基本的には両性具有だ。故に心配は無い」
「……なっ!? お前何やって……!」
ディアスはただでさえ露出の少ない服をめくりあげ、俺に見せて来た。……下着の上に、無いはずの影が有った。
いやそれは良い。いや良くは無い。
クソッ駄目だ心が乱れている。
「どうした? 余の体に興味があるのか」
ディアスがにやにやと笑いながら顔を近づけてくる。
やめてくれ。ダンジョン内は薄暗いし命の危機があったから気付かなかったが、よく見ると中々可愛い顔をしているんだ。
このままではよくない扉を開いてしまう。
「そうだな。余は肉付きの良い方では無いが、服装なら自由に変えられるぞ。どうだ?」
「っ!?」
ディアスはそう言って何らかの魔法を発動させた。
顔を上げて確認してみると彼はフリフリのワンピース姿となっていた。
この状態だと少女にしか見えない。と言うより、元々中性的な顔であるために服装によって大きく変わって見えるのだろう。
だが良くない。良くないんだ。
俺は咄嗟に目を反らしてしまった。
「それとも貴様は少年の姿の方が好みか?」
再び彼女を見るとディアスは少年らしさの溢れる見た目へと変わっていた。
先ほどまでの少女らしかった彼女がそのような格好をしている。それを想像すると心の中が乱される。
これは駄目だ刺激が強すぎる。
「もうやめてくれ……俺が俺でなくなってしまう気がする……」
「そうか。もっと弄んでやろうと思っていたのだがな……まあ良い。まだ出会ってばかりなのだからな」
ディアスはそう言って部屋から出て行った。
出会ってばかり……それはつまり、時間を置いたらまたやってくるという事か?
……精神を強くしなければ駄目そうだ。魔族に手を出すなどあっては……あっては……。
気付けば翌日になっていた。どうやらあのまま寝てしまったようだ。
ベッドが変に乱れていることも無いし、跡なども無い。きっとあの後何も無かった。
そう思おう。そう信じよう。
着替えを済ませて朝食を食べた後、ギルドへ向かう。
朝一で緊急の依頼などが無いかを確認するのが俺の日課となっているのだ。
専属冒険者としての生活もようやく板についてきたって所だな。
と、そんないつもの朝を迎えようとしていた俺のところにメアリーがやって来たのだった。
「また凄い魔力反応が現れたと思ったら……今度は魔族と契約するなんてな」
どうやら彼女はディアスの魔力を感知し、もしかしてと思って俺の所を訪ねたという事らしい。
「その、色々とあってですね……」
「まあいいさ。君がおかしいのは今に始まったことでは無いからね。それより魔法について教えてくれると言うのはまだなのかい?」
彼女はそう言って威圧と共に催促をして来た。まるで「もう逃がさないぞ」と言っているかのように。
何かと理由を付けて逃れてきたが、もう限界だろう。
と言うか、魔力の反応よりもこちらの方が本命だったのではないだろうか。
「……わかりました」
「そうか、助かるよ。それでは早速行こうじゃ無いか」
メアリーに手を引っ張られ連れていかれる。
下手に拒否できる空気では無い。
そのまましばらく連れられて、以前彼女に出会った街の外れまでたどり着いた。
「さて、何を教えて貰おうかな」
「俺に教えられるものはそう無いとは思いますけどね」
「まあそう言うな。ふむそうだな……。まずは魔力量について教えて……いや調べさせてもらおうか」
「えっ……何を……」
彼女は俺の手を握り、何かを唱え始めた。
「こうして互いの魔力を流して調和させると、色々とわかるものが有るんだ。おお、これは思っていた以上だな。だが、これほどの、魔力量を一体どうやって……?」
「その、話して良いのかもわからないですし、信じて貰えるとも思えないんですが……」
……俺は彼女に全てを話す決意を固めた。
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