19 / 39
第一章 アルカとミラ
19 黒龍の少女ミラ
しおりを挟む
どういう訳か、ミラは前世の私の名前である「里奈」と言う名を知っている。
そしてそんな私に会いに来たとすら言った。
これは……どう考えても異常事態だよ。
「どうかしたのかしら?」
困惑していた私の顔を覗き込みながらミラはそう言って来る。
ああ、近い。可愛い。尊い。
バシバシの長いまつ毛にミステリアスなジト目が最高にキュート。
……けど、今はそんなことを考えている場合じゃないね。
「私の名前、誰にも言っていないはずなのに……どうして知ってるの?」
事と次第によっては決戦も辞さない。
って程では無いにしても、このまま放置できないのは事実。
せめて何かしらの情報は欲しい。
「簡単な事よ。私は未来を見通す魔眼を持っているの。自由に使うことは出来ないけれど、たまに未来が見えるのよね」
未来を見通す魔眼?
それが本当なら確かに私の事を知っていてもおかしくは……って、それってつまり?
「私、未来でミラと一緒にいるってことなの?」
もしそうなら戦死エンドから逃れるうえで物凄くありがたい情報だよ。
「そうみたいね。詳しくは私もわからないけれど、貴方と一緒に冒険者をしている未来が見えたのよ」
「へ、へ~……」
まだ半信半疑ではあるものの、彼女が嘘を言っているようにも思えなかった。
彼女が黒龍であること自体は紛れもない事実だし、私の名前を知っている理由もそれなら辻褄があう。
何より、そうあってくれた方が私としても嬉しい。
高難易度ダンジョンを超える必要が無くなったのは大きいよ。
「だからね。私は貴方と一緒に暮らすことにしたわ」
「そっかぁ、私と……ふぇっ?」
突然のことに、再び素っ頓狂な声が漏れ出てしまった。
いや、誰でもそうなるよ!
いきなり一緒に暮らす宣言は流石に驚きもするって!
「な、なにゆえ私と!?」
「貴方に興味があるの。ねえ、駄目かしら……」
ミラはミステリアスな笑みを浮かべたまま、まっすぐな瞳で見つめてくる。
深淵に吸い込まれそうな程に澄んだ瞳でそうされると何も言い返せない。
しいて言うのならば、顔が良い。ただその一言のみ。
「うぐっ……駄目、じゃない……」
「決まりね。里奈……いえ、アルカと言った方がいいかしら。うふふ、これからよろしく」
拒否なんて出来るはずもなく、あれよあれよと言う間に話は進んでしまった。
もちろん私としてもミラと一緒にいられることに問題はない……どころか、むしろ願っても無い幸運ではある。
けど、流石に話がとんとん拍子で進み過ぎて驚いているよ。
ミラに出会うだけでも難しいのに、なんか最初から既に向こうからこっち側に矢印が向いているんだけど?
「おーい、大丈夫か二人共」
「エルドさん……!」
魔獣がいなくなった事を確認したのか、エルドが馬車と共にやってきた。
「エルドさんこそ大丈夫でしたか? すみません急に飛び出しちゃって」
「ああ、こっちは何ともない。それよりも彼女はどうだ。怪我とかは……」
「うふふ、私は大丈夫よ。こう見えても冒険者なの」
そう言いながらミラは冒険者としての登録証をエルドに見せている。
あれ? 彼女って一応超高難易度ダンジョンの先に隠居しているはずだったよね……?
なんか随分と人間の世界に順応してない?
「そうだったのか。まあなんにせよ、無事のようで何よりだ。それにしても一人でこの辺りをうろついているなんて珍しいな。どこかに向かう途中だったのか?」
「そうね、王都に用があるの」
それどころか王都にすら行くらしい。
なんかこう、黒龍のイメージが崩れて行くんだけど。
「王都か。私たちも王都に向かう途中なんだ。せっかくなら乗って行くか? 護衛として……ではあるがな」
「それならありがたく同行させてもらおうかしら」
「そうか、なら後ろに乗ってくれ」
エルドのその言葉を聞いたミラが馬車の荷台に乗り込んでいる。
気付けばいつの間にかミラも護衛として同行することになっていた。
いや私としてもそれで構わないんだけど、あまりにもテンポがね……良すぎるからね。
「ほら、貴方も」
「あ、ありがとう……」
ミラに促されるまま馬車に乗り込む。
その際、差し出された彼女の手を取って荷台へと上がった訳だけど……その時の温かく柔らかい手の平の感触を、私は一生忘れることは無いだろう。
ああ、美少女の柔らかおててに感謝を。
そしてそんな私に会いに来たとすら言った。
これは……どう考えても異常事態だよ。
「どうかしたのかしら?」
困惑していた私の顔を覗き込みながらミラはそう言って来る。
ああ、近い。可愛い。尊い。
バシバシの長いまつ毛にミステリアスなジト目が最高にキュート。
……けど、今はそんなことを考えている場合じゃないね。
「私の名前、誰にも言っていないはずなのに……どうして知ってるの?」
事と次第によっては決戦も辞さない。
って程では無いにしても、このまま放置できないのは事実。
せめて何かしらの情報は欲しい。
「簡単な事よ。私は未来を見通す魔眼を持っているの。自由に使うことは出来ないけれど、たまに未来が見えるのよね」
未来を見通す魔眼?
それが本当なら確かに私の事を知っていてもおかしくは……って、それってつまり?
「私、未来でミラと一緒にいるってことなの?」
もしそうなら戦死エンドから逃れるうえで物凄くありがたい情報だよ。
「そうみたいね。詳しくは私もわからないけれど、貴方と一緒に冒険者をしている未来が見えたのよ」
「へ、へ~……」
まだ半信半疑ではあるものの、彼女が嘘を言っているようにも思えなかった。
彼女が黒龍であること自体は紛れもない事実だし、私の名前を知っている理由もそれなら辻褄があう。
何より、そうあってくれた方が私としても嬉しい。
高難易度ダンジョンを超える必要が無くなったのは大きいよ。
「だからね。私は貴方と一緒に暮らすことにしたわ」
「そっかぁ、私と……ふぇっ?」
突然のことに、再び素っ頓狂な声が漏れ出てしまった。
いや、誰でもそうなるよ!
いきなり一緒に暮らす宣言は流石に驚きもするって!
「な、なにゆえ私と!?」
「貴方に興味があるの。ねえ、駄目かしら……」
ミラはミステリアスな笑みを浮かべたまま、まっすぐな瞳で見つめてくる。
深淵に吸い込まれそうな程に澄んだ瞳でそうされると何も言い返せない。
しいて言うのならば、顔が良い。ただその一言のみ。
「うぐっ……駄目、じゃない……」
「決まりね。里奈……いえ、アルカと言った方がいいかしら。うふふ、これからよろしく」
拒否なんて出来るはずもなく、あれよあれよと言う間に話は進んでしまった。
もちろん私としてもミラと一緒にいられることに問題はない……どころか、むしろ願っても無い幸運ではある。
けど、流石に話がとんとん拍子で進み過ぎて驚いているよ。
ミラに出会うだけでも難しいのに、なんか最初から既に向こうからこっち側に矢印が向いているんだけど?
「おーい、大丈夫か二人共」
「エルドさん……!」
魔獣がいなくなった事を確認したのか、エルドが馬車と共にやってきた。
「エルドさんこそ大丈夫でしたか? すみません急に飛び出しちゃって」
「ああ、こっちは何ともない。それよりも彼女はどうだ。怪我とかは……」
「うふふ、私は大丈夫よ。こう見えても冒険者なの」
そう言いながらミラは冒険者としての登録証をエルドに見せている。
あれ? 彼女って一応超高難易度ダンジョンの先に隠居しているはずだったよね……?
なんか随分と人間の世界に順応してない?
「そうだったのか。まあなんにせよ、無事のようで何よりだ。それにしても一人でこの辺りをうろついているなんて珍しいな。どこかに向かう途中だったのか?」
「そうね、王都に用があるの」
それどころか王都にすら行くらしい。
なんかこう、黒龍のイメージが崩れて行くんだけど。
「王都か。私たちも王都に向かう途中なんだ。せっかくなら乗って行くか? 護衛として……ではあるがな」
「それならありがたく同行させてもらおうかしら」
「そうか、なら後ろに乗ってくれ」
エルドのその言葉を聞いたミラが馬車の荷台に乗り込んでいる。
気付けばいつの間にかミラも護衛として同行することになっていた。
いや私としてもそれで構わないんだけど、あまりにもテンポがね……良すぎるからね。
「ほら、貴方も」
「あ、ありがとう……」
ミラに促されるまま馬車に乗り込む。
その際、差し出された彼女の手を取って荷台へと上がった訳だけど……その時の温かく柔らかい手の平の感触を、私は一生忘れることは無いだろう。
ああ、美少女の柔らかおててに感謝を。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる