偽りの黄金少女

遠野紫

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3章 王都襲撃 03

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「ファイアボール!!」


 戦闘を開始した直後、超特大の火球が飛んできた。
 多分さっきドラブロに向けて撃って来たやつと同じだ。

 ファイアボールと言えばよくあるファンタジー作品だと低級魔法的な立ち位置だよな。
 いわゆるメラ的なね。

 けどここでは違うようだ。
 明らかにデカすぎる。

 まさにあれだ。
 今のはメラではない、メラゾーマだ。


「ふむ、やはり良い威力をしている。それに精度も高い」

「呆れた……なんでそんな簡単に避けられるのよ……! 私、これでも一応王国最強の魔術師なのよ?」
 
「フッ、この程度であれば見てからでも避けられるわ。威力と精度は申し分ないが、いかんせん速度が遅すぎるのでな」

「そう……分かったわ。それなら、これでどう!!」
 

 再びリリアの杖が光った。
 かと思えば、今度は無数の魔法陣が辺り一面に展開される。

 ……完全に囲まれてしまった。
 おいおい、これはまさか……全方位攻撃か?


「ほう、良い判断だ。避けられてしまうのならば、そもそも避ける場所のない密度で攻撃を放てばよいのだからな」

「その通りよ。降参するならちょっとは手加減してあげるけど、どうする?」

「無論、このままでいい。撃ってみせよ」

「あっそう……。それじゃあ、丸焦げになりなさい!! ライトニングレーザー!!」


 俺を取り囲んでいる無数の魔法陣が一斉に光り輝き、その直後に極太レーザーが放たれた。
 なんてこった。永夜抄4面でももう少し易しいぞ。

 とは言えメリアちゃんにとってこの程度は序の口に過ぎない。
 錬成の真骨頂は防御にこそ発揮される。


「ふぅ、流石にやったわよね」


 あ……リリアさん、それフラグっすよ。


「……え?」

「ふむ、ただでさえ凄まじい威力の魔法をこうも連発するとは。魔力量も相当なものを持っているようだな」
 
「な、なんで無傷なのよ……!」 

 
 リリアは目に見えて動揺している。
 それもそうだろう。
 あれだけの攻撃を受けてなお、メリアちゃんには傷一つ付いていないんだからな。

 攻撃を受ける瞬間、メリアちゃんは地面からドーム状の金属壁を出現させて自らを覆った。
 凄まじい威力を持つと言うリリアの魔法も、メリアちゃんお手製の対魔力マシマシ頑強壁には勝てなかったわけだ。

 うおぉぉぉ!!
 メリアちゃん最強!メリアちゃん最強!メリアちゃん最強!
 

「うそ……でしょ? 今の、私の本気だったのよ……?」

「だろうな。ゆえに、良い一撃だったと言っておく。このオレが認めるのだ。誇るがいい」

「う、うぅ……。もうだめ、おしまいよ……」


 あ、泣きながら崩れ落ちてしまった。
 新惑星ベジータで伝説の超サイヤ人を前に自分の無力さを痛感してしまったベジータみたいに。
 
 なんか申し訳ないことをした気分だな。
 いや実際申し訳ないと言うか、大人気ないことをしているんだけども。


「リリア!! 大丈夫か!?」

  
 大斧を背負った少女がリリアの元へと駆け寄って行く。

 騎士隊でもないみたいだし、もしかしてあの子が雷撃持ちのカインだろうか?
 もう一人の戦士系が持っているスキルは防壁らしいし、少なくとも得物は大斧ではないはずだ。


「うん……。けど、私じゃアイツには絶対勝てない。多分、あなたでも。だから……」
 
「このまま惨めに逃げ帰れって? それほどまでに、アイツは強いって? でも、ごめん。リリアを負かした相手を、私は放置なんてできないから」

「待って、カイン! アレとは戦っちゃだめ……! もしも貴方がいなくなったら私……!!」

「だとしても……だよ。私が、君の代わりにアイツを討つ」

「カイン……!!」


 おぉ、何と言う輝かしき友情だ。
 いやもはや両者の間には友情以上の感情すらあるのかもしれない。
 ここにキマシタワーを建てよう。

 ……って、待て待て!
 まるで悪役みたいな扱いじゃないか俺!?
 確かに言動とか悪役っぽいけどさ。 

 メリアちゃん、一応は災厄から人類を救う救世主なんだよ?
 英雄のはずなんだよ……? 


「メリアと言ったな。私はカイン。彼女の代わりに、お前を討たせてもらう!」

「ほう、中々の闘志を持っているな。いいだろう、全力で来るがいい。死にたくないのならな」

「当然だ……!!」


 ああ、また変に煽るからやる気マシマシになってる……。


「はぁっ!!」


――ブォンッ


 地を蹴り、一瞬で近づいてきたカインが大斧を振り抜いた。

 これだけの大きさだ。重さもとんでもないだろうに、あの細腕でこんなに軽々と……。
 やっぱり彼女たちの先祖となる逸脱者って、ハンターの中でも相当強い部類だったんだろうな。


「速く、それでいて洗練されている。受け継いだ力もあるのだろうが、それ以上に相当な鍛錬を積んできたとみえる」

「だったらどうしたって言うんだ! いまさら怖気づいたのか? 泣いて命乞いしたって、ぶちのめすことに変わりはないんだからな!」

「フッ……なに、称賛しているだけのことよ。リリアと言ったか。あ奴も相当な術師であろう? それだけの力を持つ其方らに、オレは敬意を称さねばならんのかもな」

「敬意……だって?」

「ああ、そうだ。敬意をもって、其方らにオレの本気の一端を見せてやろう」


 ……おお。
 これは流石に「おお」だろ。

 なんせメリアちゃんが設定上の本気パワーを出すのは作中でも最終決戦くらいのもの。
 そんな彼女がまさかこんなところで一端とは言え本気を見せるだなんて……それだけあの子たちに何か刺さるものがあったんだろうか。

 ああでも、アルベルトに対しても騎士などに執着した結果が……とかなんとか言っていたっけ?
 もしかしたらメリアちゃんは才を持ちながらも驕らず鍛錬を続ける者が好きなのかも。

 じゃあ俺、完全に範囲外すね。
 メリアちゃんと言う他人の力に乗っかっているだけの凡夫や。
 真っ先にぶちぎれられてぶち殺されるタイプの人間やね。

 そんな……いやだ、メリアちゃんに嫌われたくない。
 そんなことになったら、私は存在しません。
 メリアを最後の一息まで愛します。


「ふ、ふざけたことを……! さっき見せたものでさえ、本気の一端ですらないって言うのか!?」

「当然だ。オレを誰と心得る。黄金士族たる存在が、あの程度なわけがなかろう」

「うぐぐ……黄金士族ってのがそもそもわっかんないよ……! けど、そんなことどうだっていい! やってみろ! 本気だろうがなんだろうが、私は負けない! リリアのためにも!!」

「ほう、真正面から向かって来るか。よかろう。では見るがいい……。これがオレの、メリア・ゴルドランの本気……その一端である」


――ズガンッ


「……へ?」


 大斧を構えたまま走り寄ってくるカインの周りに、大量の金属の柱が飛び出てくる。
 これじゃあもはや逃げることも進むこともできないだろう。
 結果的にとは言え、悪趣味にもさっきリリアから受けた魔法を再現するような形になってしまった。

 しかし、もちろんこれは序章にすぎない。


――ガキンッ、バキンッ


 生やした金属は縦横無尽に動いてカインへと攻撃を仕掛け始めた。
 まさに四面楚歌。完全なる蹂躙だ。

 こうなってしまえばもう、倒すまでもないのだ。
 ……倒すけど。


「くっ……な、なんなんだこれ……! 金属なのに、動いてる……!?」

「ふむ、これだけの攻撃に対応できるとは大したものだ。だが、いつまで続くかな」


 カインは大斧を器用に使って弾いているものの、だんだんと追いつかなくなっている。
 恐らくあと数分と経たずにバテてしまうだろう。

 そうなれば彼女の肉体を金属が貫いて……いや、待って。 
 それは流石に酷いんじゃ……でも、先に攻撃を仕掛けてきたのは王国側だしな……。


「はぁ……はぁ……」

「カイン! 待ってて、今援護を……!」

「駄目! 私が一人で戦わないと……! 勝ったことには、ならないから……!!」

「でもそのままじゃ貴方が……!!」

「いいの、私にはまだアレがあるから……」


 なんと、まだ隠し玉が?
 ちょっと待ってください。これはもしかして……もしかするかもしれませんよ。

 なんならメリアちゃんに一矢報いることができる可能性も……いや、なんで俺は向こうの味方をしているのよ。
 仕方ないでしょ!
 今のメリアちゃん、あまりにも魔王すぎるんだから!


「私の雷撃は……こういうときのために、あるんだから……!」

 
 ああ、そうか。
 彼女のスキルは雷撃。
 どういうスキルかはわからないけど、きっとそこに勝機はあるんだ。

 メリアちゃん、ごめん……俺、今だけは彼女の応援をするよ……!

 うぉー!
 カインちゃんがんばえー!
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