記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

文字の大きさ
5 / 42
第一章

第五話 ショタは鑑定される

しおりを挟む
 お風呂から上がって、ソフィーお姉さんが夕飯を作ってくれると言い、キッチンに向かった。

 その時、家の扉がノックされる音が耳に入り、僕は扉の方を見る。

 まだ日が沈み始めたばかりの時間帯だけど、いったい誰が来たのだろう。

 キッチンを覗くと、ソフィーお姉さんはノックされる音が聞こえなかったみたい。食材を取り出すと包丁を構えていた。

 もう一度ノック音が扉から聞こえてくる。お客さんをあんまり待たせない方が良いよね。

「ソフィーお姉さん、お客さんが来たみたいだよ!」

「え! 本当! 全然気付かなかった。ありがとう」

 握っていた包丁をその場に置き、ソフィーお姉さんは僕の横を通り過ぎて廊下に出る。そして玄関に向かうと扉を開けた。

「あ、シルヴィアじゃない。お城に報告するのは終わったの?」

「ああ、用事が全て片付いたので、ギルドに向かったのだが、ソフィーたちは既に帰ったと聞いてね。急いでここに来た」

 どうやらお客さんはシルヴィアお姉さんみたい。ここからでは姿は見えないけど、声で分かる。

「ところで、あの子供は?」

「あ、ラル君? 居るわよ」

「そうか。確認したいことがある。上がってもいいか?」

「ええ、どうぞ」

 ソフィーお姉さんが招き入れると、長くて青い髪のお姉さんが家に入ってくる。

 やっぱりシルヴィアお姉さんだ。

「よぉ!」

 シルヴィアお姉さんが軽く右手を上げて気さくに声をかけてくる。でも、僕にはあの時、剣を向けられた記憶が離れなくって、思わずキッチンにあるテーブルの下に隠れた。

「どうやら、相当嫌われてしまったようだな」

 シルヴィアお姉さんが小さく息を吐いて肩を落とす。

 もしかして僕がテーブルの下に隠れたから、お姉さんを悲しませてしましたの?

 何だか悪いことをしているような気がする。ここはテーブルから出た方が良いのかな? でも、また剣を向けられたりしない?

「ラル君大丈夫だよ。シルヴィアは君を怖がらせることはしないから」

「そうだ。わたしは君に危害をくわえない。その証拠にわたしの剣は玄関に置いてきた」

 テーブルの下から覗くと、シルヴィアお姉さんは剣を持ってはいなかった。

「本当に怖いことはしない?」

「ああ、寧ろわたしが君にぶっ飛ばされないかが心配だよ。聞いた話しだと、グリゴリーもワンパンで仕留めたらしいじゃないか」

 よく見ると、シルヴィアお姉さんの声は出会った時とあまり変わらないけど、僅かに膝が動いている。

 僕がシルヴィアお姉さんを怖がらせているんだ。

 怖い人が近くにいる時に、不安になる気持ちは僕も知っている。お姉さんを安心させるためにも、ここは僕から歩み寄らないと。

「怖がってごめんなさい。それと僕も怖がらせてごめんなさい」

 テーブルから出ると、頭を下げてシルヴィアお姉さんに謝る。

「な、なな、何を言うんだ。わたしは決して君を怖がってなどいないぞ」

「シルヴィア、強がらないの。人に弱さを見せることも、強くなるためには必要なことよ」

「うっ! わ、分かった。きみを怖がっていたことは認めよう。だけど、ソフィーが君と歩み寄ろうとしている以上、わたしも頑張らなければならない。過去の遺恨は忘れて、今から良き友になろうではないか」

 シルヴィアお姉さんが手を差し伸べてくる。その手を僕は握り返した。

 うわー。シルヴィアお姉さんの手、剣士さんの手だ。ソフィーお姉さんのとは違った安心感がするよ。

「それで、何をしに来たの?」

「ああそうだった。えーと、この子の名前は……」

 ソフィーお姉さんがシルヴィアお姉さんに家を訪ねた理由を聞くと、シルヴィアお姉さんが僕を見て名前を言おうとした。けれどなかなか出てきそうにない。

「ラルスです」

「そうそう、ラルスだったな。ちゃんと覚えていたんだぞ。ちょっとど忘れをしただけだ」

 仕方がないので自分の名前を教えると、シルヴィアお姉さんはど忘れをしていたと言う。でも、本当に忘れていただけなのか怪しい。

「ラルスの知っている人物を探すには、彼のことを知ること一番だと思ってな。城から魔力とユニークスキルを調べる鑑定アイテムを借りて来たんだ」

「よく、そんな高価なものを貸してくれたわね」

「まぁ、普通は無理だな。でも、副団長であるわたしなら、団長を使って間接的に借りることができる」

「副団長?」

「シルヴィアはね、お城の騎士団なのよ。そしてその中のナンバー2なの」

「ナンバー2! 凄い!」

 お城で2番目の実力だと知り、僕はシルヴィアお姉さんに尊敬の眼差しを送る。

「そんなにキラキラした目でわたしを見ないでくれ。気恥ずかしいではないか」

 尊敬の眼差しで見つめていると、シルヴィアお姉さんの顔が赤くなり、顔を背けられた。

 シルヴィアお姉さんがそっぽを向いた! 僕、何かお姉さんを怒らせるようなことをしたの!

 彼女の反応に驚いていると、シルヴィアお姉さんはバックから腕輪のようなものを取り出す。

「これを腕に嵌めてくれ。そうすれば、ラルスの魔力量が分かる」

「高価なものだから、私がラル君に嵌めるわね。万が一落として壊しでもしたら、一生奴隷生活よ」

「一生奴隷生活!」

 ソフィーお姉さんが一生奴隷生活と言った瞬間、体が震えていることに気付く。

 とんでもないものだ。僕のような子どもが決して触れて良いものではないよ。

「ソフィーは少し大袈裟に言っているが、あながち間違いでもないだろうな。危険な海域に住むモンスターがいる海の中で、マブロ釣りを何十年もすることになるだろうな。起きてマブロを釣って夜には寝るという生活を送るようになる」

 それって奴隷と殆ど変わらないんじゃ。

 些細なことを疑問に思っていると、ソフィーお姉さんが僕の腕に腕輪を嵌める。その瞬間、腕輪に付いている数字が動き始めた。

 僕の魔力量っていったいどのくらいあるんだろう?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...