記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

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第二章

第二十話 ショタは巨大モンスターと遊ぶ

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『ギャオオオオオオオオオオォォォォォォォン!』

    突然ウイークさんが霧に包まれてモンスターに姿を変えた。

 建物と同じくらいに大きくなり、口は横に裂けて鋭い牙がある。皮膚はゴツゴツしており、黒光りしている。そして長くて太い尻尾が生えた。

「まさか、ウイーク殿が巨大なモンスターになるとはな。ソフィー、ラルスを連れて逃げるんだ。ワタシが時間を稼ぐ」

 剣を構え直して僕たちに逃げるように言うけど、どう見てもシルヴィアお姉さん1人では、時間稼ぎすらできないような気がした。

 何か良い遊びはないかな? あの巨大なモンスターさんと戦える遊びは?

 一生懸命に考えていると、人が巨人になってモンスターさんと戦う物語を思い出す。

 できるかどうか分からない。だけどごっこ遊びとすれば、もしかしたら奇跡が起きるかもしれない。

 頭の中でイメージを膨らませてユニークスキルを発動する。

 お願い! 上手くいって! 嫌いなビーマンも食べるから、ソフィーお姉さんとシルヴィアお姉さんを助ける力を今だけ頂戴! 神様!

 両手を組んで、心の中で神様に祈りを捧げる。すると、その瞬間僕の体が光出した。

 この感覚、もしかしたらいけるかもしれない。

「変身! ジュワッと!」

 右手を突き上げる。その瞬間、瞬く間に目に映る光景が一気に変わった。

 周辺にある建物と同じくらいの背丈になり、足元には虫さんのように小さなソフィーお姉さんと、シルヴィアお姉さんが居た。

「ラル君が巨大化した!」

「ワタシは幻覚でも見ているのか? こんなことが現実に起きるなんて」

 突然僕が巨大化したことで、お姉さんたちが驚きの声を上げる。

「今の僕はウラトラマンになって、悪いモンスターさんを倒すごっこ遊びをしているんだ。上手く行くかは分からなかったけれど、神様が奇跡を起こしてくれたみたい」

「ウラトラマンって、あの物語に出てくる巨人になれる子ども?」

「ごっこ遊びで物語の登場人物になることができるとはな。ラルスは本当に規格外な力を持っている」

 お姉さんたちが言葉を漏らす中、モンスターになったウイークさんの方を向く。

「ウイークさん。これ以上ソフィーお姉さんやシルヴィアお姉さんに迷惑をかけるなら、容赦はしないよ。僕が相手になるから」

 物語の登場人物と同じ構えを取り、ウイークさんに語りかける。

『ギャオオオオオオオオオオォォォォォォォン!』

 だけど言葉が通じていないみたいで、ウイークさんは吠えると突っ込んでくる。口を大きく開けて鋭利な牙を突き刺そうとしてきたけれど、体を90度回転させて攻撃を躱す。

 そしてモンスターさんの背後に周り、尻尾を掴んだ。そしてそのままソフィーお姉さんたちから距離を空けるように引っ張り、後に下がっていく。

 うん、思ったよりも重くない。ユニークスキルの力で、肉体強化の魔法も同時に発動しているみたい。

 これなら、モンスターになったウイークさんを倒すことができる。

「行くよ! それ!」

 腕に力を入れて振り上げる。するとウイークさんの体が浮いた。

 モンスターの体を浮かすことができた! 楽しい!

 普段できない経験に、思わず興奮してしまう。

 もしかしたら、ウイークさんを吹き飛ばすことができるかもしれない。

 自分の位置を軸に、腕に力を入れて回転させ、浮いた状態のウイークさんから手を離す。するとモンスターの体は吹き飛び、建物に当たると下敷きにした。

「あちゃ、やり過ぎちゃった」

「ラルス! この村の建物は後で解体する予定だ。だから遠慮することなく全力で戦ってくれ! むしろ解体費用がかからなくって助かる」

 少し離れた位置からシルヴィアお姉さんが叫ぶ。

 なんだ。後でここにある建物を壊すんだ。なら、全力で暴れても良いよね。

「それじゃあ、ウォーミングアップは終わり! ここから本気でいくからね!」

 ゆっくりと起き上がるウイークさんに、今度は抱き付くように飛び掛かる。モンスターさんの体に腕を回すと、すぐにジャンプをした。

 僕の中では、軽くジャンプをしたつもりだった。だけど体が大きい分、脚力も上がっているみたいだね。建物が小さく見える。

 高い位置に到達すると、そのままウイークさんを地面に投げ飛ばす。顔を下げて下を見ると、へばり付いたカエルのような体制で、ウイークさんが倒れていた。

 だけど指がまだ動いている。まだ、ウイークさんを倒すことができていない。

 こうなったら、ウラトラマンの最終奥義を使うしかない。

 構えを取り、上手く成功するように神様に祈りを捧げる。すると、目の前に光り輝くものが現れる。

 できた! 後はこいつをぶつけるだけ!

 だけど、最後の最後で僕はやらかしてしまう。

 えーと、この最終奥義の名前って何だったかな?

「えーと、何だっけ? 忘れた!」

 早くしないと、目の前に現れた光り輝くものが消えてしまう。こうなったら仕方がない。技名なんて何でも良いよね。

「食らえ! なんかすごいビーム!」

 声を上げ、光り輝く物体を解き放つ。僕から放たれたビームはウイークさんの体に直撃した。

『ギャオオオオオオオオオオォォォォォォォン!』

 ウイークさんの叫び声が聞こえる。その瞬間、僕の体は元のサイズに戻った。

 そうだった! ウラトラマンは時間制限があったんだ!

 ウラトラマンは巨大化できる時間に制限がある。そのことを忘れていた僕は、そのまま落下した。

 僕はここで死ぬの? 勇者にはなれなかったけれど、ソフィーお姉さんたちを守れたのなら良いか。

 今までありがとう。

 お姉さんたちに感謝の言葉を心の中で言っていると、体に激痛が起きることなく、柔らかい感触を感じる。

 何が起きたのか分からず、瞑っていた瞼を開けた。目に映った光景には、ソフィーお姉さんの顔があった。どうやら僕は、またソフィーお姉さんに助けられたみたいだ。

「ソフィーお姉さん、ウイークさんは?」

「あの男は、光を浴びた途端に消えたわ」

 消えたと聞き、廃屋敷にいた鎧のモンスターさんたちのことを思い出す。

 ウイークさん、無事に成仏してくれると良いなぁ。

 そんなことを思っていると、戦いの疲れが一気に来たようで、瞼が急激に重くなり、とても眠くなる。

 我慢することができなかった僕は、そのまま瞼を閉じて眠りに付いた。
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