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第一章
第十話 レオニダス、赤いバラのリーダーになる
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レオとエリナとの勝負をした結果、俺は無傷で余裕の勝利を収める。
「さすがシロウ。あんな2人、敵ではありませんね」
ニコニコと笑みを浮かべながら、マリーが近づく。
「マリー、頼むから仲違いに俺を巻き込まないでくれ。俺はもう関係ないのだから」
「それは御迷惑をおかけしたと思っております。ですが、あなたに倒されれば、ショックを受けて諦めてくれると思いましたので」
「イテテテテ、いったい何が起きたと言うんだ」
壁にぶつかって意識を失っていたレオが目を覚ましたようだ。手加減をしていたとは言え、体力だけが自慢の彼は、立ち上がった。
「レオ、これで分かったでしょう。あなたはシロウにはけして勝てない」
「マリー様! 俺は諦めませんよ! 絶対に赤いバラに戻ってみせます」
そんなにマリーと一緒にパーティーにいたいのだろう。まぁ、彼からしたら当然のことだ。彼女は全然気づいていないようだが、レオはマリーのことが好きだ。好きな相手とは可能な限り、傍にいたいもの。だからあれほど必死にもなっているし、卑怯な手を使ってでも、俺を倒そうとしたのだろう。
「はぁー、そんなに赤いバラに拘りますの? わかりましたわ。なら、あなたたちに赤いバラのチーム名をくれてあげます」
「あ、ありがとうございます! …………え?」
レオが礼を言うが、その後すぐにアホ面を晒す。
「あなたには呆れました。そんなに赤いバラというチーム名が好きだなんて。まだ正式に手続きはしておりませんので、ワタクシのほうが出て行きます。これでいいですわね」
肩をすくめながら彼女は受付のほうに向かう。どうやら本当に自分で立ち上げたチームを抜け、彼をリーダーにするようだ。
そしてマリーは、どうやらレオが赤いバラというチーム名に拘っているのだと思い込んでいる。本当はチームではなく、彼女に拘っていると言うのに。
好意にすら気づいてもらえないなんて、あまりにも哀れすぎる。マリーは鈍感なところがある。俺が赤いバラに所属していたときは、彼が熱烈にアピールしていた。第三者の俺ですらすぐに気づいたと言うのに、彼女はレオの気持ちにまったく気づけていないようだ。
ドンマイ。
「待ってください。俺は赤いバラに拘っているのではなく――」
「誰だ! 俺のギルドで暴れているやつは!」
レオが勘違いをしていることを告げようとした瞬間、階段から男性が下りてくる。
揉み上げと顎髭がつながっているジャンボジュニアと呼ばれる髭を生やしており、片目には魔物の爪で引っかかれたかのような3本傷のある筋肉マッチョの男だ。
ここのギルドマスターであるオルテガだ。
「何と! 壁にヒビが入っているではないか! この間修理をしたばかりなんだぞ! いったい誰だ! こんなことをしやがったやつは!」
オルテガが大声を上げる。その瞬間、ヒビの入った壁は砕け、外から風が流れてきた。
「壁に穴が空いた! また高い修理費を払わないといけないではないか! 知っているやつは正直に言え!」
「そこにいるレオとエリナですわ」
ギルドマスターが問いかけると、マリーが答える。
まぁ、きっかけを作ったのは俺だが、実際に吹き飛ばされて壁にヒビを入れたのはレオだ。あながち間違ってはいない。そして、エリナは彼の仲間。連帯責任として名前を言っても可笑しくはないだろう。
「お前たちか! よくも壁に穴を開けてくれたな!」
鬼の形相でオルテガはレオに近づく。
「お、俺は被害者だ。シロウが俺を吹き飛ばさなければ、壁が壊れることはなかった」
せめて道連れにとでも思ったのだろう。彼は俺の名前を言う。
まぁ、原因を作ったのは俺だ。だから処罰を受けることになれば、俺も同様の罪を被るし、修理代も出そう。こういうときのために、今までお金を溜めてきたのだし。
「シロウ! それは本当か!」
「ああ、本当だ。悪いな、迷惑をかけて。壁の修理費は俺が出すから」
正直に話すと、彼はもう一度レオのほうを見る。
「そんなの、お前が弱いのがいけないだろうが! お前が弱くなければ、壁が壊れることなどなかった!」
オルテガはレオに向けて理不尽なことを言うと、鍛え抜かれた腕で彼を持ち上げる。そして扉の前に移動すると、レオを外に放り投げた。
「帰れ! 二度とここのギルドに顔を見せるな! もし見かけたら、冒険者としての権利を剥奪するからな!」
オルテガがレオに向けて言葉を吐き捨てる。
「あれ? 私はどうしてこんなところで寝ているの? 確かシロウを倒そうとしてそれで――」
どうやらエリナも目が覚めたようだ。彼女が目覚めた途端、オルテガはエリナを睨む。
「おめぇーもさっさとここから出て行かんか! 俺から追い出されたいか!」
「ひー! ご、ごめんなさい! 理由は分からないけど、とにかくごめんなさい!」
鋭い眼光を向けられたエリナは、急いでギルドから出て行った。
ギルドマスターは不機嫌そうな顔をしながら、俺のところにやってくる。
「あれが元Sランクの冒険者とは、ホワイトチャペルのギルドマスターは本当に見る目がない」
「元Sランク? それってどういうことだ?」
彼の含みのある言葉が気になり、ギルドマスターに尋ねる。
「お前が話してくれただろう。正式な手続きをしていないのに、赤いバラがダンジョンの中で魔物と戦っていたと。そのことをギルド本部にもち込んだ。その結果、赤いバラはAランクに降格。そのリーダーには責任を取って罰金が請求されることが正式に決まった。その手続きは今日の午後にでも行われるだろう」
「あのう、ギルドマスター。ちょっとよろしいでしょうか?」
オルテガが赤いバラの処遇について語ると、マリーが小さく手を上げて彼に尋ねる。
「何だ?」
「ワタクシは先ほど赤いバラを脱退して、チームリーダーをレオに任せたのですが、その場合は、責任はどちらに来るのでしょうか?」
「それは手続きが早い方だ。午後の時間までに書類が纏まれば、あの男が責任を取ることになるだろうよ」
「マリーさん! 終わりましたよ! チームリーダーはレオさんに変わりました。あなたはこれから依頼を受けるときは、ソロとしての活動をお願いします!」
受付嬢が大きめの声で伝えてくる。
そう、この時点で、全責任はレオが負うことになったのだ。彼にとって、今日という日は厄日となるであろう。
本当に運のない男だ。
「さすがシロウ。あんな2人、敵ではありませんね」
ニコニコと笑みを浮かべながら、マリーが近づく。
「マリー、頼むから仲違いに俺を巻き込まないでくれ。俺はもう関係ないのだから」
「それは御迷惑をおかけしたと思っております。ですが、あなたに倒されれば、ショックを受けて諦めてくれると思いましたので」
「イテテテテ、いったい何が起きたと言うんだ」
壁にぶつかって意識を失っていたレオが目を覚ましたようだ。手加減をしていたとは言え、体力だけが自慢の彼は、立ち上がった。
「レオ、これで分かったでしょう。あなたはシロウにはけして勝てない」
「マリー様! 俺は諦めませんよ! 絶対に赤いバラに戻ってみせます」
そんなにマリーと一緒にパーティーにいたいのだろう。まぁ、彼からしたら当然のことだ。彼女は全然気づいていないようだが、レオはマリーのことが好きだ。好きな相手とは可能な限り、傍にいたいもの。だからあれほど必死にもなっているし、卑怯な手を使ってでも、俺を倒そうとしたのだろう。
「はぁー、そんなに赤いバラに拘りますの? わかりましたわ。なら、あなたたちに赤いバラのチーム名をくれてあげます」
「あ、ありがとうございます! …………え?」
レオが礼を言うが、その後すぐにアホ面を晒す。
「あなたには呆れました。そんなに赤いバラというチーム名が好きだなんて。まだ正式に手続きはしておりませんので、ワタクシのほうが出て行きます。これでいいですわね」
肩をすくめながら彼女は受付のほうに向かう。どうやら本当に自分で立ち上げたチームを抜け、彼をリーダーにするようだ。
そしてマリーは、どうやらレオが赤いバラというチーム名に拘っているのだと思い込んでいる。本当はチームではなく、彼女に拘っていると言うのに。
好意にすら気づいてもらえないなんて、あまりにも哀れすぎる。マリーは鈍感なところがある。俺が赤いバラに所属していたときは、彼が熱烈にアピールしていた。第三者の俺ですらすぐに気づいたと言うのに、彼女はレオの気持ちにまったく気づけていないようだ。
ドンマイ。
「待ってください。俺は赤いバラに拘っているのではなく――」
「誰だ! 俺のギルドで暴れているやつは!」
レオが勘違いをしていることを告げようとした瞬間、階段から男性が下りてくる。
揉み上げと顎髭がつながっているジャンボジュニアと呼ばれる髭を生やしており、片目には魔物の爪で引っかかれたかのような3本傷のある筋肉マッチョの男だ。
ここのギルドマスターであるオルテガだ。
「何と! 壁にヒビが入っているではないか! この間修理をしたばかりなんだぞ! いったい誰だ! こんなことをしやがったやつは!」
オルテガが大声を上げる。その瞬間、ヒビの入った壁は砕け、外から風が流れてきた。
「壁に穴が空いた! また高い修理費を払わないといけないではないか! 知っているやつは正直に言え!」
「そこにいるレオとエリナですわ」
ギルドマスターが問いかけると、マリーが答える。
まぁ、きっかけを作ったのは俺だが、実際に吹き飛ばされて壁にヒビを入れたのはレオだ。あながち間違ってはいない。そして、エリナは彼の仲間。連帯責任として名前を言っても可笑しくはないだろう。
「お前たちか! よくも壁に穴を開けてくれたな!」
鬼の形相でオルテガはレオに近づく。
「お、俺は被害者だ。シロウが俺を吹き飛ばさなければ、壁が壊れることはなかった」
せめて道連れにとでも思ったのだろう。彼は俺の名前を言う。
まぁ、原因を作ったのは俺だ。だから処罰を受けることになれば、俺も同様の罪を被るし、修理代も出そう。こういうときのために、今までお金を溜めてきたのだし。
「シロウ! それは本当か!」
「ああ、本当だ。悪いな、迷惑をかけて。壁の修理費は俺が出すから」
正直に話すと、彼はもう一度レオのほうを見る。
「そんなの、お前が弱いのがいけないだろうが! お前が弱くなければ、壁が壊れることなどなかった!」
オルテガはレオに向けて理不尽なことを言うと、鍛え抜かれた腕で彼を持ち上げる。そして扉の前に移動すると、レオを外に放り投げた。
「帰れ! 二度とここのギルドに顔を見せるな! もし見かけたら、冒険者としての権利を剥奪するからな!」
オルテガがレオに向けて言葉を吐き捨てる。
「あれ? 私はどうしてこんなところで寝ているの? 確かシロウを倒そうとしてそれで――」
どうやらエリナも目が覚めたようだ。彼女が目覚めた途端、オルテガはエリナを睨む。
「おめぇーもさっさとここから出て行かんか! 俺から追い出されたいか!」
「ひー! ご、ごめんなさい! 理由は分からないけど、とにかくごめんなさい!」
鋭い眼光を向けられたエリナは、急いでギルドから出て行った。
ギルドマスターは不機嫌そうな顔をしながら、俺のところにやってくる。
「あれが元Sランクの冒険者とは、ホワイトチャペルのギルドマスターは本当に見る目がない」
「元Sランク? それってどういうことだ?」
彼の含みのある言葉が気になり、ギルドマスターに尋ねる。
「お前が話してくれただろう。正式な手続きをしていないのに、赤いバラがダンジョンの中で魔物と戦っていたと。そのことをギルド本部にもち込んだ。その結果、赤いバラはAランクに降格。そのリーダーには責任を取って罰金が請求されることが正式に決まった。その手続きは今日の午後にでも行われるだろう」
「あのう、ギルドマスター。ちょっとよろしいでしょうか?」
オルテガが赤いバラの処遇について語ると、マリーが小さく手を上げて彼に尋ねる。
「何だ?」
「ワタクシは先ほど赤いバラを脱退して、チームリーダーをレオに任せたのですが、その場合は、責任はどちらに来るのでしょうか?」
「それは手続きが早い方だ。午後の時間までに書類が纏まれば、あの男が責任を取ることになるだろうよ」
「マリーさん! 終わりましたよ! チームリーダーはレオさんに変わりました。あなたはこれから依頼を受けるときは、ソロとしての活動をお願いします!」
受付嬢が大きめの声で伝えてくる。
そう、この時点で、全責任はレオが負うことになったのだ。彼にとって、今日という日は厄日となるであろう。
本当に運のない男だ。
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